今日観た映画の感想

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日本版エクソシスト「来る」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、第22回日本ホラー小説大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を原作に、「乾き。」や「告白」などの中島哲也監督で昨年実写化したホラー映画『来る』ですよー!

僕の大好物である“お祓い映画”ということで、クライマックスの決戦シーンはガン上がりしてしまいましたよー!(*゚∀゚)=3

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概要

第22回日本ホラー小説大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を、『告白』などの中島哲也監督が映画化。謎の訪問者をきっかけに起こる奇妙な出来事を描く。主演を岡田准一が務めるほか、黒木華小松菜奈松たか子妻夫木聡らが共演。劇作家・岩井秀人が共同脚本、『君の名は。』などの川村元気が企画・プロデュースを担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

ホラーとしてはアレ

実は本作が公開されたとき、ざっくりとした内容は耳に入っていて「これは僕の大好物のやつだ!」って思ったんですが、なんせ超のつくビビリなので劇場で観るのは諦めたんですよね。

で、ようやくDVDレンタルが始まったということで今回レンタルしてきたんですが、これが全っっっ然怖くなかったんですよw

「これなら劇場で観ても平気だったんじゃ…」って思うくらい。

まぁ、それは多分中島監督がそもそも怖がらせようとして本作を作ってないってのもあるんじゃないかなと。

「結局人間が一番怖いよね」的な作品で、むしろ内容的には「乾き。」や「告白」の系譜として作られている気がしましたねー。

その辺は、どうも原作通りの流れではあるみたい(原作未読)なので、中島監督はその部分が気に入って監督を引き受けたんじゃないかな? って思いました。

ざっくり説明すると、本作は田原秀樹という男がメインの第1章、その妻の香奈がメインの第2章、秀樹に依頼されて事件に関わる事になるフリーライターの野崎和浩がメインの第3章からなる、三幕構成になっています。

妻夫木聡演じる田原秀樹はお調子者で“空っぽ”な男で、香菜と結婚後に愛娘の知紗(志田愛珠)を儲けます。

会社仲間や友人たちを新居に読んだり、幸せな家族の様子を書いたブログを毎日アップしイクメンパパぶりをアピールするなど、それなりに幸せにやっていたある日、彼の留守中に地元で伝承されている「ぼぎわん」という化物が妻娘を襲います。

困った秀樹は大学時代からの親友で大学教授の津田大吾(青木崇高)のつてで、オカルト系フリーライターの野崎と、霊能力を持つキャバ嬢の真琴(小松奈々)を紹介されるのだが――というストーリー。

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まぁ、この第1章は、いわばテンプレ的なホラー映画の流れなんですね。

それから数年後、黒木華演じる香奈がメインの第2章では、第1章の裏側というか秀樹がいかに空っぽで自己中心的な男だったかが暴露されていきます。
もちろん第1章でも秀樹の空っぽさや空回り具合は描かれてるんですが、香菜視点で描かれるこの第2章で、すでに家族は崩壊していた事が分かるわけです。

で、この家族に関わった岡田准一演じる野崎の視点で語られる第3章で、ついに全ての真相が明らかになるという構成。

なるほど、物語としては面白いんですが、ぶっちゃけ「ぼぎわん」絡みの件になるまでが長い!

正直、第1章の中盤くらいまでは「一体、何を観せられているんだ……」ってなっちゃうんですが、それは僕が本作を“ホラー映画”として観ているからで、中島監督的にはホラー部分よりも、秀樹、香菜、野崎と、それを囲む“人間たちの暗部”こそが本作で描きたかった部分なんですよね。多分。

まぁ、そもそも中島監督の作風がホラーと相性が悪いってのもあるかもですし、そんな感じなので“ホラー映画”としては”正直、ちょっとアレな感じになっちゃってる気がしました。

日本版「エクソシスト

以前、書いたかもですが僕は超ビビリだけどホラー映画は結構好きだし、中でも悪霊や悪魔と霊能者が戦う「お祓い映画」は大好物だったりします。

そんな僕の目から観た本作の白眉は、何といっても松たか子演じる最強の霊能力者、比嘉琴子とその妹で小松奈々演じる真琴の霊能者姉妹、かつて心霊番組でも活躍していた霊媒師で柴田理恵演じる逢坂セツ子。

名前からも分かるように、琴子は沖縄のシャーマン「ユタ」出身で、日本全国の霊媒師や警察や政府にもコネクションのあるという、まさに最強の霊能者なんですね。

妹の真琴はそんな姉に憧れ、独学で霊能力を身につけていて、逢坂セツ子は訛りなどから恐らく東北出身の霊能者で、過去、悪霊との戦いがキッカケで表舞台から身を引いたことがその風貌から分かります。

で、セツ子は第1部で「ぼぎわん」に右腕を持って行かれ、真琴は第2部で重症を負わされ、そして第3部。

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事態を重く見た最強の霊能者琴子は、警察を動かして田原家が購入したマンションの住人を避難させ、全国の霊能者を招集して「ぼぎわん」退治に挑むんですが、マンション前の広場に巨大な祭壇を拵え、仏教、神道、その他の霊能者がごちゃまぜとなって「ぼぎわん」を迎え撃つという胸熱展開なんですよぉぉ!(*゚∀゚)=3

で、本作を観ると中島監督がやりたかったもう一つの試みが、日本版「エクソシストだった事も分かります。

言わずと知れたホラー映画(&お祓い映画)のクラッシックとも言える名作中の名作。
「ぼぎわん」の使者というか、予兆として出てくるイモムシは、「エクソシスト2」で、悪霊パズズの象徴でもあるバッタを連想させるし、いわゆる宗教的儀式を用いて「ぼぎわん」と対決する展開は、「エクソシスト」でのカラス神父とパズズの最終対決を連想させます。

恐らく、中島監督はいわゆるJホラー的な湿度の高いノリではなく、エクソシスト」や「死霊館」シリーズ的な異能(霊能)対決がやりたかったんじゃないかなと。

その上でカラス神父とカトリックを、ある意味何でもアリな日本の宗教観に置き換えたわけです。

確かに、漫画や小説ではスーパー霊能者が悪霊を祓う作品は多いのものの、実写映画となると(僕の知る限り)人間が悪霊や呪いに打ち勝つ作品は今まで殆どなかったんですよねー。

「ぼぎわん」とは

じゃぁ、その「ぼぎわん」って一体何なのさって話なんですが、原作によると「ぼぎわん」は古文書による言及が存在する三重県に伝わる妖怪とされ、一説には室町時代に宣教師によって伝えられた「ブギーマン」が訛って「ぼぎわん」になったと言われているらしいんですが、実はこれ原作者澤村伊智のオリジナル妖怪&設定なんだそうです。

そう言われてみれば、「悪い子を“お山”に連れて行く」というのはナマハゲや天狗、神隠しっぽくもありますよねw

ちなみに本作の“お山”とはイコール「あの世」のことで、日本に古来から伝わる山岳信仰をベースにしているのでしょう。
また、民俗学者の津田大吾は、江戸時代以前に行われていた、“口減らし”のために行われた子殺しを「ぼぎわん」に攫われたという事にしていたのではないかという説を劇中で話していて、ハッキリとは描かれませんが「ぼぎわん」の正体は、人々の怨嗟や呪いなど、負の感情が招き寄せる“良くないもの”ということみたいです。

ホラー映画で現代社会を斬る

まだ呑気だった80年代~90年代と違って、今や世界のホラー映画のトレンドは現代社会が抱える問題をテーマとして、ホラーのテンプレに乗せる」というもの。

本作もそこをかなり意識的にやっていて、例えば嫌なことからは目を逸らして承認欲求を満たすことしか考えていない秀樹、子育てと仕事に疲弊して育児ノイローゼになり津と浮気をしている香菜。子持ちの主婦に理解がない職場の店長(伊集院光)や、外面はいいけど内に邪悪な思いを抱える津田、失うことを恐れて大切な者を作らず孤独を選ぶ野崎。などなど。

余裕がなく自分のことで精一杯の大人をそれぞれのキャラクターに乗せて、そうさせてしまう現代の日本社会やシステムを、中島監督は本作の中で「告発」しているんですね。

もちろんそこは原作に沿っている部分もあるんでしょうが、中島監督は内容や設定を改変して原作が持つテーマ性をより強く打ち出しているのではないかと思いましたよ。多分。

もちろん、そういうのを抜きにしても「お祓い映画」として超楽しい作品だし、そんなに怖くないのでビビリな人でも安心して観られますよ!

興味のある方は是非!!!

 

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