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ゾンビの皮を被った青春ミュージカル映画「アナと世界の終り」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ゾンビとミュージカルを融合させたイギリス映画『アナと世界の終り』ですよー!

この映画、超観たかったんですが地元では上映がなかったので、今回レンタルされてやっと観ることができましたよ!(*゚∀゚)=3

思ってたのとは随分違ったけど、歴代ゾンビ映画の中でもかなりよく出来た映画でしたねー。

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概要

シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで上映された異色のゾンビホラー。田舎町を舞台に、校舎に取り残された仲間をゾンビから救おうとする女子高校生たちをミュージカル形式で活写する。監督は短編などを手掛けてきたジョン・マクフェイル。『スティールワールド』などのエラ・ハントを筆頭に、マルコム・カミング、セーラ・スワイアらが出演した。凄惨(せいさん)な描写とミュージカルシーンを融合させている。(シネマトゥデイ より引用)

感想

ゾンビ+ミュージカル

ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」から始まり、今も世界中で作られているモダンゾンビ映画

80~90年代は残酷さや怖さを競い合っていたこのジャンルは、2000年以降になると、いかにオリジナリティーを出して他作品と差別化出来るかという大喜利のようになっていくんですね。

また、子供の頃ゾンビを観て育ったゾンビネイティブ世代が大人になったことで、ゾンビはホラーという枠を飛び越えて、コメディーやアクション、パニック、ディザスター、ミステリー映画などと融合。今も順調に勢力を拡大しています。

例えば、ゾンビコメディーの最高峰「ショーン・オブ・ザ・デッド」や、韓国発のゾンビ映画新感染/ファイナル・エクスプレス」、ゾンビにJ・ホラーの要素を融合したマンガ原作の実写化作品「アイアムアヒーロー」、ゾンビと古典文学を融合した「高慢と偏見とゾンビ」などなど。

そして、本作ではついに、ゾンビとミュージカル映画が融合してしまったんですねー。

子供の頃に観た「ゾンビ」以来、数々のゾンビ映画を観てきた身としては、「ゾンビもとうとうここまで来たか」というある種の感慨を感じてしまいましたよw

まぁ正直、僕はこの作品を出オチ的なコメディー映画だろうとタカをくくっていたんですが、実際観てみると思っていたのとはかなり違ってて、劇中で描かれるゾンビやゾンビパンデミックによる世界の崩壊が、二重三重の意味を持つメタファーとして描かれた、かなりレベルの高い映画でしたねー。

ゾンビの皮を被ったど王道青春ミュージカル

本作の主人公アナ(エラ・ハント)は幼い頃に母を亡くし、イギリスの田舎町リトル・ヘイブンで学校の用務員の父親と二人暮らし。
しかし、旧態然として閉鎖的な町に辟易としている彼女は、バイトでお金を貯めて世界旅行を計画しているんですね。

しかし、その計画を知った父は大反対、二人が喧嘩をしたその翌朝、のどかな田舎町をゾンビパンデミックが襲い――という物語。

映画序盤では、そんなアナや、新聞部員でホームレスの真実を記事に書こうとするステフ(サラ・スワイヤー)、映研?で自主制作ホラーばかり作っているクリス(クリストファー・ルヴォー)など、高校の生徒たちによるミュージカルシーンが始まるんですが、これがまた思った以上にイイ曲だし、キャストたちもみんな歌が上手いし、ダンスの方はアナ役のサラ・スワイヤー自身がつけたらしいですね。

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で、歌っている歌詞をざっくり意訳すると、「この町から逃げ出したい」みたいな内容で、のどかで平和なこの町も、彼女たち高校生には窮屈で息苦しい。
もっと広くて自由な世界へ飛び立ちたいという、田舎の若者たちが抱える普遍的な苦悩だったりするわけです。

そんな田舎町で突如起こるゾンビパンデミックは、いわば若者たちを閉じ込めるこの田舎町そのもののメタファーでもあり、襲い来るゾンビ相手にサバイブするのは、彼女らが自立するための通過儀礼のメタファーでもあるわけですね。

もちろん、その合間にもミュージカルシーンは入ってくるんですけど、歌詞の字幕をちゃんと読んで欲しいです。
例えば、「(生の)人の声を聞きたい=(ネット越しじゃなく)直接繋がりたい」とか、現代に横たわる問題や誰もが心に秘めた苦しさみたいなものを、劇中の曲で歌い上げているのです。

結果、アナたちは友達や親しい人々を失いながらも何とか生き残り、車で故郷を後にするわけですが、しかしゾンビパンデミックは世界的に広がっているわけで、それは僕を含めた大人たちが作り消費してきた、現実の世界や文化の終焉のメタファーになっているのです。

平たく言えば、子供達にとっては世界そのものがオワコンであり、逃げ場などどこにもないという絶望を、高校生であるアナの視点で描いているわけですよね。
本作の原題は「ANNA AND THE APOCALYPSE」なんですけど、まさに“黙示録”というタイトルがしっくり来る苦いラストでした。

安易なハッピーエンドではなく、ラストにこれをぶっ込んでくるあたり、さすがイギリスは皮肉が効いてるなーって思いましたよ。
同時に、このラストは僕ら大人たちへの強烈なメッセージでもあるんですね。

ゾンビ映画としてもちゃんとしてる

その一方で、本作はゾンビ映画の“お約束”もしっかり守られているし、過去のゾンビやホラー、ミュージカル映画の名作のオマージュも盛りだくさん。

アナと“友達”のジョン(マルコム・カミング)が登校途中に墓地でゾンビに襲われるシーンは前述した「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」オマージュだろうし、予告編でも使われた歌うアナの後ろでゾンビに襲撃されている街の様子は、リメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」か前述の「ショーン・オブ・ザ・デッド」オマージュ。

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クライマックスの体育館のシーンなんかはカルト的ミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」っぽいんですよね。

テーマ自体は重く強烈な皮肉も入っているけど、そうした遊び心も盛りだくさんなので誰もが楽しく観られる作品だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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