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確かにイイ話なんだけど「グリーンブック」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年のアカデミー賞で「作品賞」「助演男優賞」「脚本賞」を受賞した『グリーンブック』ですよー!

いやー、確かに“いい話”だと思いましたよ。…うん。

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概要

黒人ピアニストと彼に雇われた白人の用心棒兼運転手が、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を手に人種差別が残るアメリカ南部を巡る人間ドラマ。『はじまりへの旅』などのヴィゴ・モーテンセンと、『ムーンライト』などのマハーシャラ・アリが共演。『メリーに首ったけ』などのピーター・ファレリーが監督を務めた。アカデミー賞の前哨戦の一つとされるトロント国際映画祭で、最高賞の観客賞を獲得した。(シネマトゥディより引用)

感想

“グリーンブック”とは

本作のタイトルにもなっている「グリーンブック」とは、アメリカ合衆国が人種隔離政策時代の1930年代から1960年代に、自動車で旅行するアフリカ系アメリカ人を対象として発行されていた旅行ガイドブックWikipediaより)のことで、正式なタイトルは「黒人ドライバーのためのグリーンブック(The Negro Motorist Green Book)」だそうです。

書名の“グリーン”はアフリカ系アメリカ人の作家で出版業者でもある、著者のヴィクター・H・グリーンの名前に由来しているんだそうですね。

ほかの映画でも描かれてますが、この当時のアメリカ南部ではジム・クロウ法(アメリカ合衆国南部諸州の州法の総称)など、公然と人種(黒人)差別が行われていて、この本はそんな南部で黒人がトラブルなく泊まれるホテルや食事ができるレストランを紹介したガイドブックなのです。

本作は、黒人ピアニストのドナルド・ウォルブリッジ・シャーリー(ドン・シャーリー)と、後に俳優としても活躍するイタリア系アメリカ人で、当時はクラブの用心棒だったフランク・アンソニー・ヴァレロンガ・Sr(トニー・リップ)の、1962年に実際に行われたアメリカ最南部を回るコンサートツアーを元に、ふたりのインタビューやトニーが妻に宛てた手紙に基づいて、監督のピーター・ファレリーや、ヴァレロンガの息子であるニック・ヴァレロンガによって製作された作品なんですね。

ざっくりストーリー紹介

舞台は1962年のアメリカ。
NYの用心棒をしていたトニー・リップヴィゴ・モーテンセン)は、勤めていたナイトクラブが改装工事のため閉鎖。知人にNYを中心に活躍するピアニスト、ドン・シャーリーマハーシャラ・アリ)がアメリカ中西部、ディープサウスを回る8週間のコンサートツアーの運転手の職を紹介されます。

ドンはトニーの腕っ節の強さと誰にも物怖じしない性格を買って採用を決め、二人はツアーに出かける事になるんですが、その時レコード会社の人間から渡されるのがタイトルにもなった「グリーンブック」なんですね。

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しかし、ドンはトニーの粗野な性格や行動にうんざりし、トニーは「洗練された行動」を求められるドンにうんざりで、旅の始まりから早速2人はぶつかってしまうんですね。

しかし旅が進むうち、トニーはドンの人柄や彼の弾くピアノに感銘を受け、ドンもトニーの人懐っこさや明るさに次第に惹かれていきます。
その一方で、ステージから下りたドンに対する招待主や一般の人間の差別的な扱いに改めて動揺するトニー。

ドンがバーで白人にリンチをされた時は得意のハッタリでドンを救い、ツアー中1人で外出しないよう叱責し、ドンがYMCAプールで同性愛者の白人男性と出会ったところを警官に見つかると、トニーは警官に賄賂を渡して事なきを得るんですが、ドンはこれに憤慨。

元々はトニーも黒人差別主義者で、本当の意味でドンの苦しみは理解できていないわけですね。

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そんな中でも、トニーが妻に送る手紙をドンが手助けするなど、二人は交流を深めていくんですが、夜、国道を外れた道を走っていると、警官に止められ豪雨の中二人は車から引きずり出されてしまう。
その地域では日没後の黒人外出禁止令が州の法律で決まっているらしいのです。
そして、車の外でドンを侮辱されたことに怒ったトニーは、その警官を殴ってしまい2人は逮捕されるのだが――というストーリー。

確かにイイ話なんだけど

事ほど左様に、本作は黒人差別が当たり前だった時代のアメリカ南部を旅する二人を通して、現在、世界中で起こっている差別や分断、トランプ政権への批判などを描いた物語で、何というかこう、確かにイイ話なんですよ。うん。

ただ、個人的には「喉ごしは良いけど後に何も残らない」感じだったんですよね。

観終わったあと、ストーリーも映像も特に印象に残らない。
多分、1ヶ月もすれば内容も忘れちゃう。
そんな映画。

それが別に悪いわけではないし、本作がアルフォンソ・キュアロンの「ローマ」や、同じく黒人差別を描いた「ブラック・クランズマン」を押しのけて、アカデミー作品賞を取ってなければ、ここまでモヤモヤはしなかったと思うのです。

もちろんそれは作品のせいではないし、本作をほかの作品と比較することが良くないのも分かっているつもり。

ただ、“アカデミー受賞作品”という冠が、作品の評価に影響を与えてしまうのは仕方ないと思うし、同年同賞にノミネートされた作品とどうしても比較して観ちゃうんですよね。

つまり、「確かにイイ話だけど、アカデミー作品賞を取るほどの作品かなー?」と思ってしまう。

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もっと言えば本作の受賞に、Netflix配信で外国語映画の「ローマ」にアカデミー賞を独占させないための政治的判断が働いたのではないか。と邪推すらしてしまうんですよ。

大切なことなのでもう一度書きますが、それは作品の内容や評価とは関係ないです。
でもやっぱ、(´ε`;)ウーン…っていうモヤモヤは残っちゃうのですよねー。

いや、製作者が本作で言いたかった事は分かってるつもりだし、そのメッセージ自体はとても正しい。
ある意味で、同じく人種差別を扱った「ブラック・クランズマン」が投げかけたメッセージの、“その先にある希望”を描いた作品とも取れなくはないし、そこが評価されて作品賞を受賞したのかもしれないです。

ただ、個人的な印象としては、物語やテーマの描き方もメッセージも、特に新しさはなくて、むしろ、これまで何十回と観てきた同様のテーマを持つ作品群の焼き直しのように感じてしまうんですよ。

古典的なハリウッドの「漂白された映画」というか。
誰もがストレスなく観やすいようにバランスを調整された映画という印象なのです。

 

ヴィゴ・モーテンセンマハーシャラ・アリの好演

そんな中、個人的にいいなって思ったのが、トニー役のヴィゴ・モーテンセンとドン役のマハーシャラ・アリの好演。
育った環境や性格の違いから最初は反発し合ってるけど、徐々に距離が近づいていく二人の心情の変化をちょっとした表情や仕草、距離感で見事に表していました。
そんな二人のバディ感がまた心地よくて、この二人をずっと見ていたいという気持ちにさせてくれるんですよね。

なんならブロマンス感すら感じるというか。

この二人が演じたことで、本作の作品としての格が上がったのではないかとも思ったりしましたねー。

まぁ、色々文句も書いてしまいましたけど、アカデミー賞云々を抜きで単体の作品として観れば決して悪い作品ではないし、多分、僕も褒めてたと思うんですよ。

内容的にもショックを受けるシーンはそれほどないし、繰り返しになるけどドンとトニーの関係性は観ていて気持ちがいいですしね。

少なくとも「観て損をした」とは思わない映画だと思います。

興味のある方は是非!!

 

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