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乙女ゲーみたいになっとるがな「Diner ダイナー」(2019)

ぷらすです。

「お~れは~~~この店の王だっ!」

ということで、今回ご紹介するのは蜷川実花監督作『Diner/ダイナー』ですよー!
ある意味、2.5次元俳優の元祖と言っても過言ではない、あの藤原竜也の叫び芸が堪能出来そう!というだけの理由でレンタルしてきましたよーw

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概要

さくらん』『ヘルタースケルター』などの蜷川実花がメガホンを取り、藤原竜也が元殺し屋の天才シェフを演じるサスペンス。ある女性がウエイトレスとして身売りされた殺し屋専用のダイナーを舞台に、店主と店を訪れる凶悪な殺し屋たちの異様な世界を描き出す。原作は『「超」怖い話』シリーズなどが映画化されたホラー作家で、監督としても活動している平山夢明の第13回大藪春彦賞受賞作。(シネマトゥディより引用)

感想

映画監督としての蜷川実花

僕は蜷川実花監督作品を観るのは、2007年公開の「さくらん」に続き本作が2作目になります。(ヘルタースケルターは観てない)
「さくらん」は少女が売られた吉原で花魁になるまでを描いた安野モヨコの原作漫画を実写化した作品でしたが、吉原という舞台建てやストーリー、蜷川実花監督のあの毒々しいくらい鮮やかな色使い、土屋アンナの起用がいい感じにハマってて、面白かった…ような気がします。(うろ覚え)

ただ、蜷川実花監督の作品って好き嫌いがハッキリ別れるんですよね。
元々は写真家として名を成した人でアーティストのPVなども手がける才人ですが、こと映画に関しては本作が3作目(「人間失格 太宰治と3人の女たち」が4作目)ということもあり、映画監督としての実力不足を指摘する声も少なくないです。

そんな蜷川実花が、痛い、エグい、グロい、怖いでお馴染みのホラー小説家・平山夢明原作の同名小説を実写映画化したのが本作『Diner/ダイナー』。

独自のセンスを持つ蜷川ワールドと平山ワールド。(恐らく)まったく相容れないであろう異なる世界観が、一体どのような融合を果たすのかが本作の見所になるハズなんですが……。さて。

ざっくりストーリー紹介

幼くして母親に捨てられた(?)事がトラウマになり、すっかり人間不信になった主人公オオバカナコ玉城ティナ)は憧れの地(メキシコ)への旅費を稼ぐため、怪しげなアルバイトに手を染めたことで命の危険に晒されます。

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ギリギリのところで天才シェフ・ボンベロ(藤原竜也)にウエイトレスとして買われたカナコはレストラン“ダイナー”で働くことに。

しかし、そのダイナー。実は殺し屋専門のレストランだった――という物語。

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分かりやすく言うなら「ジョン・ウィック」的世界観なんですが、この原作の方は初出が2009年なので、コッチの方が先らしいですよ。

このダイナーにやって来る客は全員が殺し屋で、シェフのボンベロも元殺し屋。
そんなダイナーで奴隷のように扱われ、たった一つのミスで殺されるかもしれない極限状態の中、カナコは生き延びため、今まで逃げてきた自分自身と向き合うようになっていくのです。

ヒャッハーしかいない世界

で、この店の客ってのが、誰も彼も歩いてるだけで逮捕されそうなビジュアルかつ、全員がテンションMAXなヒャッハー揃いでしてね。

唯一、カナコと心を通わせるまともなヤツだと思われたスキン窪田正孝)ですら、スフレを完食すると突如ヒャッハーに豹変してしまう始末。

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他にも、整形しまくって子供の見た目を手に入れたキッド本郷奏多)という殺し屋もいるんですが、体は子供だけど首から上と声はまるまる本郷奏多でしてね。コイツを観て子供だと思い込むカナコのオツムはどうなん?って思ったり。

おまけにシェフのボンベロは「お~れは~この店の王だ!」なんて高らかに叫んでるし、まぁ、まともなヤツは1人もいないんですよ。

つまりは非常にマンガ的なんですよね。
まぁ、キャラ設定と大筋は原作準拠らしいので、これは蜷川監督が悪いわけではないですが、個人的に、悪者=高テンション・ヒャッハー設定は正直食傷気味

ただ、この突拍子もない世界観自体は、蜷川監督の原色バリバリで作り物っぽい映像には合ってる気はしましたねー。

「ダーク系乙女ゲー」みたいに

ただ、やっぱ映画としては上手くなくて、例えば作中でダイナーの構造が提示されてないので、どこにどの部屋があるのか(何部屋あるのか)、倉庫はどこにあるのか、トイレやキッチンの配置など、位置関係がさっぱり分からない。

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だから、クライマックスのアクションシーンでも、どこで何をやってるのかがまったく分かりません。

そのアクションシーンも、キャラクターの位置関係が全く分からないので、事態への危機感・緊張感が伝わってこないですしね。(多分、監督自身アクションに全く興味がないのでしょう)

冒頭のカナコの独白シーンや回想シーンを舞台演劇っぽく演出するのは、ありっちゃありですが、それが特に映像的・物語的な効果は生んでいないので、ただただ作り物感だけが増していきます。

あと、肝心の料理が美味しそうじゃないとかね。

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まぁ、映像云々はこの際横に置いておくとしても、肝心のストーリーの方も原作とは変わっていて、原作でのボンベロとカナコって恋愛感情は一切見せないらしいんですね。どちらかといえば2人は、人生の負け犬で生殺与奪権を他人に握られているという意味で鏡合わせの存在であり、2人を繋ぐのは共通の境遇と「料理を愛する者同士の共感」らしい。

“らしい”って書いてるのは、僕が原作未読だからです。

なので、最初はお互いに最悪な状態からスタートし、小さなステップの積み重ねで少しづつ距離が縮まっていく。ただ互いの恋愛感情はあくまで匂わせる程度なのだそうです。

それが、本作ではベッタベタなラブストーリーになってるし、何ならボンベロは最初からカナコを元の世界に戻す気マンマンの優しいヤツにすら見えちゃう。
僕なんかこの二人は、過去に何か繋がりがあるんだろうって思ってましたよ。
そんでクライマックスのやりとりなんかは、モロに「レオン」状態。

さらにカナコは出会ってすぐにスキンもメロメロにしちゃうので、まさに両手に花状態で、ちっとも辛そうに見えない。
もうこれ“乙女ゲー”みたいになっとるがな。

もちろん、原作をそのまま映像化するのがいいわけではないし、時間的な縛りもあるんだろうけど、でも、ボンベロとカナコの関係って物語の核になる部分なのでは?と思ったり。

つまり、2人の微妙な関係性や距離感を恋愛という「型」に落とし込むことで、物語が一気に矮小化されちゃってる感じなんですよね。

現に、原作を読んでいない僕は「あー、そういうラブストーリーなのね」って思いましたし。

前にも書きましたけど、僕は原作モノを実写映画化する際に、ビジュアルや物語を変えること自体は肯定派ですが、それは「物語の核の部分さえ守られていれば」という括弧つきなんですね。
そこが出来てないのが、本作で一番の問題だと思いました。

よ、待ってました!

とはいえキャスト陣はみんな良かったと思います。
主人公カナコ役の玉城ティナは、ほかのキャストの大仰な芝居との対比でいい感じにヒロインしてたし、ベテランの小林薫真矢みきから、窪田正孝土屋アンナ武田真治小栗旬など人気俳優勢ぞろいで単純に画面が豪華でしたしね。(その分、俳優の無駄遣い感は否めませんが)

なにより、もはや唯一無二の名人芸の域に達している藤原竜也の叫び芸には「よっ!待ってました!」と心の中で掛け声をかけてしまいましたよw
そういう意味でこの作品は、歌舞伎的ともいえるかもしれませんねー。

興味のある方は是非!

 

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