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リスペークツ!!「パラサイト/半地下の家族」(2020)

ぷらすです。

遅ればせながら劇場で観てきましたよー『パラサイト/半地下の家族』をね!

いやー素晴らしかったし面白かった!

リスペークツ!

ただ、これ絶対ネタバレしたらダメなやつなんで、さてどうしたものか…。

というわけで、今回は前半はネタバレ無しで、後半からネタバレありの感想にしようと思います。

一つだけ言うと、これからこの映画を観に行く予定の人は、事前情報入れずに観た方が絶対に楽しめると思うので、観に行く日まで本作に関する情報はできる限りシャットアウトする事をオススメします。

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概要

母なる証明』などのポン・ジュノが監督を務め、第72回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した人間ドラマ。裕福な家族と貧しい家族の出会いから始まる物語を描く。ポン・ジュノ監督作『グエムル -漢江の怪物-』などのソン・ガンホをはじめ、『新感染 ファイナル・エクスプレス』などのチェ・ウシク、『最後まで行く』などのイ・ソンギュンらが出演。(シネマトゥディより引用)

感想

外国語映画初のアカデミー作品賞受賞!

本作は「母なる証明」や「スノーピアサー」など、国内外から高い評価を受けるポン・ジュノ監督最新作です。

カンヌ国際映画祭で最高賞である「パルムドール」を受賞したほか、世界中の名だたる国際映画賞を総ナメ。
そして、先日行われた米アカデミー賞では、外国語映画として初の作品賞を受賞するなど、現状、ポン・ジュノ監督の最高傑作と言って差し支えないのではないでしょうか。

で、日本でも公開されるや映画好きの間で賞賛の嵐だったので僕も観に行こうと思っていたんですが、監督自らネタバレしないようにとお願いが発表された事もあって、ちょっと迷っちゃったんですよね。

観たら絶対に語りたくなる作品だろうから、ネタバレ無しで感想を書くのは結構辛いだろうし、レンタルDVDが出るまで待って思い切り語った方がいいかも? と。

そこにアカデミー賞受賞のニュースが入ってきて「もう、こりゃたまらん」と、劇場に観に行ったのです。

いやー、超面白かったし、超ヤバイ映画でしたよ。

ざっくりストーリー紹介

父親のギテクソン・ガンホ)が台湾カステラの事業に失敗し半地下の家に住むキム一家。
長男ギウ(チェ・ウシク)は大学浪人中、妹ギジョン(パク・ソダム)は美大を目指すが貧乏で受験できず、元ハンマー投げのメダリストでギデクの妻チュンスク(チャン・ヘジン)も仕事がなく、配達ピザの箱の組み立てで何とか食いつないでいるんですね。

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そう書くと何だか最初から悲惨な感じですが、この一家は近隣のパスワードの掛かっていないWi-Fiを盗み無料でネットしたり、ピザ屋の人手が足りないと聞けば、すかさず自分たちを売り込んだりとかなり強かで、ゆえにあまり悲惨な感じはないんですよね。

そんなある日、ギウの友人で名門大学に通う青年ミニョク(パク・ソジュン )は、留学が決まった自分の代わりに家庭教師のアルバイトをギウに頼みます。

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相手は、IT企業の社長を務める大富豪のパク・ドンイク (イ・ソンギュン)一家  

ギウは自分は大学生ではなからと躊躇うんですが、高賃金のバイトを逃す手はないと、手先の器用なギジョンが大学の入学証書を偽造し、有名大学生の家庭教師としてパク家に入り込むのです。

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言葉巧みに娘のダヘ (チョン・ジソ)の心を掴んだギウは、奥さんのヨンギョ(チョ・ヨジョン )から息子ダソン(チョン・ヒョンジュン)の絵画の教師を探しているという話を聞き――というストーリー。

そんな感じで、キム家の面々は口八丁と策略を駆使して、全員が使用人としてパク家に入り込む事に成功。ウッハウハな寄生ライフを満喫するわけですね。

ここまではキム家の強かなキャラクターも相まって、コンゲーム(策略を練って敵をワナに嵌める)的な痛快さもあるし、コメディー演出による笑いどころも満載で、こっちも楽しく観ているわけですが、中盤の“あるシーン”を境いに物語のテイストは一変。

そして、怒涛のクライマックスからのラストシーンには、ただ圧倒されるばかりでした!

というわけで、ここからネタバレしていきますよー!!(読みたい人は反転してね)

そのあるシーンというのは、息子ダソンの誕生日でパク家の面々がキャンプ旅行に。
なので、キム一家は主のいない豪邸で宴会をしているんですね。

すると突如呼び鈴が鳴り、インターフォンにはキム一家が策略を用いて辞めさせた(その後釜に母チュンスクが)元家政婦ムングァン(イ・ジョンウン)の姿が。

パク家の家政婦だった頃とは変わり果てたみすぼらしい姿はちょっとしたホラーなんですが、本当のホラー展開はここからなのです。

「地下室の忘れ物を取りに来た」というムングァン。
チェンスクが一緒に降りていくと、彼女は大きな棚を動かします。
すると、棚の裏には地下室から更に下へ続く階段があるんですよ。
ムングァンによれば、それは北朝鮮核兵器に備えたシェルターだそうで、その奥にいたのが、なんと、ムングァンの旦那グンセ(パク・ミョンフン)なんですねー。

ギテクと同じく台湾カステラで失敗したグンセは、ムングァンの手引きで密かにこの地下シェルターに住んでいたという怒涛の展開。

しかも、この二人にギテクたちが実は家族だった(他人を装っていた)ことがバレてしまい、さらにキャンプに行っていたパク一家から急遽帰ってくるとの連絡が。

そして物語は思いもよらぬ方向にハンドルを切るのです。

凶兆を知らせる豪雨

で、このムングァンが訪れるシーンでは大雨が降っています。
そしてポン・ジュノ監督の作品で雨は凶兆の訪れを表す記号にもなっているんですね。
パク一家帰宅の知らせを受けたキム一家は、ムングァンとグンセを地下室に閉じ込め、大慌ててで宴会の痕跡を消すんですが、その所為で逃げ遅れてしまってパク家のアチコチに隠れるハメに。

ここもスラップスティック的な演出がされているんですが、地下室から出てキム一家の正体をバラそうとしたムングァンをチュンスクが蹴り落としたことで、彼女は頭を打って死亡。

リビングのテーブルの下に隠れたギテクは、パク・ドンイクとヨンギョ夫妻が自分の匂いについて陰口を叩いてるのを聞いてしまう。

そして、家政婦のチュンスク以外の3人が何とか逃げ出して家に帰ると、豪雨によって半地下の自宅は水没し、3人は体育館に非難するハメになるんですね。

この、大雨の一夜が、その後の怒涛のクライマックスを決定づけてしまうのです。

格差問題を縦軸で

本作で扱われているテーマは、言うまでもなく格差問題。
ポン・ジュノ監督作で言うと「スノーピアサー」でも同じテーマが扱われていたんですが、スノーピアサーが列車の車両という(後ろの車両ほど貧しくなっていうく)という「横軸」で貧富の差を表しているのに対し、本作は地上(富裕層~中流)・半地下(貧困層)・地下(最下層)という「縦軸」なのが面白いって思いました。

半地下に住むキム一家は、上手くいけば地上に出られる可能性はあるけど、失敗すればグンセのように地下に転がり落ちてしまう。そして一度地下に落ちた者は二度と浮上できないという、格差の構造をパク家の階段をモチーフにして寓話的に語ってみせているのです。

なぜドンイクは殺されたのか

もう一つは「匂い」で、富豪のドンイク社長はギテクの匂いを「古くなった切干大根のような、地下鉄のような匂い」と言っています。
これ、日本に住む僕らにはピンとこないんですが、半地下住宅が結構あるらしい韓国の人にとってはあるあるなのかな?
ともあれ、ここで言う地下の匂いは貧乏の象徴で、おそらく生まれつき裕福だったドン行くにとっては不快な匂いなんですよね。

でも、奥さんのヨンギョは「分からなかった」と言ってるので、恐らく彼女は生まれつき裕福というわけではなく、ドンイクとの結婚によって富豪の仲間入りをしたという事なのだと思うんですよね。

つまり、本作は「匂い」というワードで格差社会を重層的に描いているのです。

で、妻の復讐のためダソンの誕生パーティーに現れ娘を刺殺し妻に刺殺されたグンセに、人目を憚らず鼻をつまむドンイク。

これに、ギテクは完全にぶちキレてドンイクを刺し殺してしまう。
なぜなら、ドンイクはそれぞれの「領域」を犯すことを嫌い、だからギテクの匂いに不快感を示したわけで、そんな彼がクライマックスでグンセの“地下の匂い”に人目も憚らず鼻を摘むという行為で、自らがギテクやグンセの「領域」を犯した。

それまでギテクの匂いについて陰口は言っても、本人に「臭い」とは言わなかったドンイクのメッキが剥がれ、目の前で彼らの尊厳を傷つけてしまった。それがギテクには許せなかったのでしょう。

それともう一つ、パーティー前日の大雨で半地下の自宅が水没してしまった事も、要因の一つとしてあるんでしょうね。
直前まで高台になる豪邸で宴会をしていたキム一家にとって、家の水没や避難所の様子は、パク家との格差を改めて思い知らされるキッカケになっていて、そこに急遽パーティーの仕事の電話が。これに、それまで心の奥に仕舞いこんでいた感情が沸々と溢れ出していたんだと思います。

ソン・ガンホの顔

そんな本作の見所は、やはりギテクを演じたソン・ガンホを始めとしたキャスト陣の演技だと思います。
特に冒頭、パク家の家政婦として完璧な所作で上流階級感すら出していたムングァン役のイ・ジョンウンの、中盤以降の落ちぶれ媚びへつらうあの表情は素晴らしかったし、クライマックスでドンイクを刺す瞬間、ソン・ガンホが一瞬見せる鬼の形相には、思わず震え上がってしまいましたよ。

冒頭とパク家の家政婦に化けてからは別人のようなチュンスク役のチャン・ヘジンの変わり身演技も素晴らしかったですしね。

練りに練られた脚本とそれを言葉に頼らず映像で見せる映画的手腕、そしてキャスト陣の見事な演技が見事に噛み合った結果として本作は傑作になったのだと思うし、韓国の格差問題を描くことで、世界中に広がっている格差構造を浮き彫りにしてみせたポン・ジュノ監督の手腕には、ただただ脱帽せざるを得ません。

まさにリスペークツ!!ですねw

興味のある方は是非!!!

 

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