今日観た映画の感想

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お前かーーい!ww「ハッピー・デス・デイ2U」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、先日ご紹介した映画「ハッピー・デス・デイ」の続編『ハッピー・デス・デイ2U』ですよー!

丁度、前作と入れ替わりで期間限定公開されたので、劇場で観てきました。
いやー、いい意味で期待を裏切られたって感じでしたねー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

パラノーマル・アクティビティ』『インシディアス』シリーズなどのジェイソン・ブラムが製作を担当したホラーの続編。何者かに惨殺される日を繰り返す現象から抜け出した女子大生が、新たな恐怖に直面する。監督のクリストファー・ランドン、キャストのジェシカ・ロース、イズラエル・ブルサードら前作の面々が集まった。(シネマトゥディより引用)

感想

お前かーい!w

前作「ハッピー・デス・デイ」の内容をざっくり説明するとですね。

ビッチで性格の悪い女子大学生ツリー(ジェシカ・ロース)が、誕生日に大学のマスコットキャラマスクの殺人鬼に殺された瞬間、その日の朝に戻るというループに入り込むんですね。

で、何度も殺されては戻りを繰り返しながら、犯人の正体に迫っていくというある種のミステリー。スラッシャーホラーで真っ先にビッチが殺されるという“お約束”を使いつつ、最終的にはツリーの人間的成長を描くという脚本が非常に面白い作品でした。

ただ、この前作があまりにも素晴らしいラストだっただけに、どうやって続編を作るのかと思ってたんですよねー。

で、本作。

前作でツリーと付き合うことになったカーター(イズラエル・ブルサード)のルームメイト、ライアン(ファイ・ヴ)が、ボロ車で目覚めるところから物語はスタート。

そしてライアンが、カーターとツリーがイチャコラしている部屋に行くまでをカメラがずっと追いかけていくんですが、ここで前作を観た人はピンとくるわけですよ。

「(今回は)お前かーい!w」ってね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 前作ではただのボンクラだと思っていたライアンが…「お前かーい!w」

案の定ライアンはマスコットマスクに殺され、車のなかで目覚めるというループに。
しかし、再び殺されそうになるその瞬間、カーターとツリーに救われ、マスコットマスクを捕えます。
そして、マスクを脱がせると、その正体は何とライアン!

ライアンを殺しにきたライアンの話によると、ライアンはある研究のため作り出した量子反応炉“シシー”によって次元の平行タイムループに陥ったと説明。この状態が続くと、バタフライ効果で更に悪い事が起きると言うんですね。

そう言えば、前作ではユニバーサルロゴがループしていたんですが、本作はユニバースロゴの画面が3つに別れてました

これには一緒に話を聞いていたライアンの研究仲間、サマールドレも困惑。
ともかくこの次元のライアンはタイムループと次元の交差を閉じるべく、“シシー”を作動させますが、そこに“シシー”を没収すべく学部長と警備員が乱入。混乱の中で“シシー”は作動し、光と波動が彼らを包みます。

そしてツリーが目覚ると、そこは前作で誕生日の18日の朝、何度も目覚めたカーター(とライアン)の部屋だったのです。
なんと、ツリーはやっとの思いで抜け出したハズのループに再び囚われてしまうんですね。怒り狂ったツリーは、何も知らずに部屋にやってきたライアンに、シシーで元の時間に戻すよう怒鳴りつけるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 再びシのループに囚われるツリー

で、ここからまたツリーの殺されループが始まるのかと思いきや、どうも様子が違う。

前作でツリー殺しの犯人だった〇〇は犯人ではなく、登場人物のキャラの性格や関係性も少し変わっていて、何より、死んだはずのお母さんが生きている

そう、彼女は“シンシー”によって平行世界に飛ばされていたのだった――というストーリー。

並行世界(マルチバース)へ

前作での彼女がタイムループしたのは、実はライアンのせいだったんですねー。
っていうか、ただのボンクラだと思ってたライアンが、まさかの天才だったっていうw

そして、この並行世界でも結局、誕生日死に戻りループに囚われるツリー
そこで彼女は、何とかして元の次元に帰ろうと奮闘する展開になります。

タイトルの「ハッピー・デス・デイ2U」の“2U”とは、もちろん「to・you」と2作目であることを掛けているんですけど、ツリーが2つのユニバースを行き来するというトリプルミーニングだったんですね!

もちろん、前作同様、殺人鬼が友人ロリの務める病院に収監される件もあり、“真犯人”もいるので、そちらも解決出来るのは未来を知っているツリーだけ。

つまり、本作でツリーは、元の次元に戻る&殺人鬼撃退という2つのミッションをクリアしなくてはならない。しかもこの次元では、まだ“シンシー”は未完成。

ツリーを元の世界に戻すため、シンシーに正しいアルゴリズムを入力すためには、何度も実験を繰り返さなくてはならないんですが、ループが繰り返されるということは、実験を繰り返してもライアンたちの記憶ごとリセットされてしまうわけじゃないですか。

そこで、まったく専門外のツリーが、実験のたび数値や数式を覚えなくてはならない上に、実験を繰り返すには何度も死に戻りをする必要があるわけです。(実験のたび学部長と警備員にシンシーを取り上げられちゃうから)

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画像出典元URL:http://eiga.com / 爆発で死に戻りしたあと、ドリフみたいになってるツリー

そこで、ツリーは実験が失敗するたび自殺するハメになるんですが、最初はお風呂にドライヤーを入れて感電死、次はホームセンターで漂白剤をごくごく飲む、さらにビキニ姿でノーパラシュートスカイダイビングなどなど、今回もバリエーション豊富な死に様を見せてくれるんですね。

もちろん、前作同様、やっぱり彼女の体にはそれ相応のダメージが蓄積されていくし、この次元では、ツリーの恋人だったカーターはビッチ会のリーダーだったダニエル(レイチェル・マシューズ )と付き合っているけど大好きなお母さんは生きている

そこで彼女は、この次元に残るか、元の次元に帰るかの選択をしなくてはならないというのが、本作の肝になっているんですねー。

ミステリーからSFに

前作はツリー殺しの犯人をツリー自身が突き止め、死に戻りループを脱出するという、ホラーミステリーだったわけですが、続編となる本作は、彼女がループに陥ってしまった原因を提示するSFに振り切っています。

ただのタイムリープだけでなく、平行世界(マルチバース)の概念が入ってくることで、前作よりも物語は複雑化しているんですが「SFに詳しくないし…」と尻込みする必要は全くありません

物語のメインはSF要素ではなく、主人公ツリーの奮闘と成長ですから。(劇中で描かれるSF要素も結構デタラメだったりしますしねw)

とはいえ、前作での死に戻りで人間的に成長したツリーですが、実は一つだけ描ききれていなかった事があって、それが彼女が最愛の母の死と向き合うという部分。

前作では、“母の死”という辛い現実から逃げていたツリーが、その事実を受け入れる?ところまでを描いたんですが、本作ではそれを一歩進めて母との思い出(過去)に縛られるのではなく、未来に進む(親離れ)するまでを描いているのです。

母親のいる別世界で生きたいと望むツリーですが、その世界でループを閉じるということは殺人鬼によって殺された人たちは戻ることが出来ない。

しかも友人のロリや殺人鬼を止めようと病院に向かったカーターまでも返り討ちにあって殺されてしまった事を知った彼女は、葛藤の末、全てに決着をつけて元の世界に戻ることを決断するんですね。

理想的な続編

人気作品の続編を作る場合、大雑把に分けて「(作品の)世界観を広げていく」パターンと「(前作の)世界観を深掘りする」パターンのどちらかになっていくと思います。

本作の場合、冒頭で観客に「前者か?」と思わせておいて、実は後者でしたという構成になっているんですが、これが大正解。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 後ろのポスターに注目

主人公のツリーや前作で活躍したカーターだけでなく、ライアンや他のキャストにもスポットを当てて魅力的に描き、問題をチームで解決していくことで、ツリーという女の子の魅力を更に引き出していった本作は、まさに理想的な続編と言えるんじゃないかと思ったし、彼女とお母さんとのシーンは涙なしでは見られなかったです。

その辺は、前作からの引き続き本作を担当した製作陣の手腕や、主演のジェシカ・ロースを始めとしたキャスト陣の魅力もあったと思います。
大いに笑って、泣いて、大興奮の超面白い作品でしたよ。

ビックバジェットだったり有名俳優が出ているわけではないからか、(少なくとも日本では)あまり多くの人に知られていないのが残念ですが、これから本作を観る人には、前作と合わせて2本続けて観ることをオススメしたいです!

興味のある方は是非!!!

 

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“ほのぼの”の仮面を被ったブラックコメディ「ゾンビーノ」(2007)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、カナダ製ゾンビコメディ『ゾンビーノ』ですよー!

映画ファンの間でも人気の高い本作。
一見、ほのぼのゾンビコメディに見えますが、やってることはかなりブラックだったり痛烈な皮肉だったりしましたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

凶暴なゾンビがハイテクアイテムで調教され、人間のペットとして活用される小さな町を舞台にした新感覚のゾンビ映画。監督はカナダの新鋭アンドリュー・カリー。ゾンビと心を通わせ合うようになる主人公の少年を子役のクサン・レイが、その母でゾンビに恋心を抱くようになる女性を『マトリックス』シリーズのキャリー=アン・モスが演じる。時ユーモラスでダークな独特の世界観に注目。(シネマトゥディより引用)

感想

パラレルワールドもの

本作の内容をざっくり紹介すると、地球が放射能の雲に覆われた影響で死者がゾンビとして蘇り人類と戦争?に。本作はその“戦後”のある町が舞台です。

何とかゾンビを退けた人類は、それぞれの町をフェンスで囲って“野良ゾンビ”の侵入を防ぐ一方、ゾムコン社が開発した首輪によって死んでゾンビになった者を手懐け、従順な労働力として“リサイクル”することに成功しているんですね。

主人公ティミー(クサン・レイ)はそんな町に暮らす中産階級の少年。
彼の父親ビル(ディラン・ベイカー)はゾンビとなった父親を“殺した”経験から極度のゾンビ恐怖症(PTSD?)になっていて、召使いのゾンビを飼うのが当たり前のこの町で、彼の家だけはゾンビがいないんですね。

その事でご近所さんから変な目で見られるのではと恐れていた奥さんのヘレンキャリー=アン・モス)は半ば事後承諾のような形でゾンビを購入。

最初はゾンビを恐れていたティミーですが、いじめっ子から助けられた事をキッカケに、ゾンビにファイドビリー・コノリー)と名づけて、交流を深めていくが、ある事故でファイドが近所の老婆を食べてしまい――というストーリー。

本作の時代や舞台はハッキリとは明示されていませんが、ルックは明らかに1950年代の白人中産階級が住む町で、町並みや映画のルックもその当時のテレビドラマのような作りになっています。

つまり、本作は“ゾンビ”がいる1950年代のアメリカというパラレルワールド。もしくは“ if ”の世界なんですね。

ティミーの父親世代は(ゾンビとの)“戦争”を体験していて、子供たちはいつゾンビがフェンスを破ってもいいように、授業でライフルの射撃訓練をしてたりします。

また、町の人間も死ぬとゾンビになってしまうので、ゾンビになった死者は人を襲わなくなる首輪を嵌められ、死後に「社会貢献」をしたり、それを望まない人は死後すぐに首と体を切り離して葬られる「首葬」を行うんですね。(葬式代が高い)

カナダから見たアメリ

ここからは映画評論家の町山智浩さんの受け売りですが、カナダ映画である本作は、カナダから見たアメリがモチーフになっているのだとか。

この1950年代のアメリカは、有色人種の貧困層や移民などが増えて都会の街の治安が悪くなっていたらしいんですね。
そこで中産階級以上の白人系アメリカ人は、車で通うような郊外に建売住宅に移り住み、白人だけのコミュニティーを形成(ホワイト・フライト)していたんだとか。

その上で、いわゆる単純労働や家や庭の手入れなどを、貧困層の非白人にやらせていたという背景があり、カナダ人監督のアンドリュー・カリーが、貧困層の非白人をゾンビに置き換えて皮肉たっぷりに描いたのが、本作だということらしいんですね。

ゾンビ=現実の比喩表現

なので、一見ほのぼのコメディ然としたルックの本作ですが、やってる事はかなりブラックで毒が入っています。

モダンゾンビ映画の父、ジョージ・A・ロメロは、その時々の時事問題や変わりゆくアメリカ(人)への問題提起を、「ゾンビホラー」に置き換えるという手法で、数々の作品を制作してきました。

(ゾンビを始めとする)ホラー映画とはそもそもそういう構造になっていて、優れたホラーは現実で人々が漠然と抱く不安や恐れの比喩表現なんですね。

また、元々のゾンビは本当の死人を生き返らせるのではなく、麻薬などで意志や思考力を奪ってこき使うというブードゥー教の呪術が起源で、その姿が死人のようだったのでそれを見た人が死者が生き返ったと思ったという事なんですね。

それらを踏まえて観ると、本作はゾンビ映画としてかなり優れた作品と言えるのかもしれません。

そもそも、ティミーがゾンビにつけた“ファイド”という名前は、アメリカでよく犬につけられる名前らしく、そう考えるとわりとヒドイですよねw

お父さんに同情

そんな感じで、わりと楽しく見られる作品ではあるんですが、個人的に若干飲み込みずらい部分もあって。

本作で、ティミーのお父さんのビルは家庭を顧みないヒドイ父親として描かれています。
ティミーとのキャッチボールの約束を忘れてゴルフに行ってしまったり、お母さんが誘っても「今日は疲れてるから」なんて断っちゃう。

一家団欒の夕食でも、ビルには(トラウマからの)地雷が多すぎて、話をするにも気を遣うし、ファイドに嫉妬して首輪に電流を流したりするんですね。

で、ティミーとお母さんは、そんなビルよりも少しずつ人間性を取り戻していくファイドの方に惹かれていく的な流れになる。

はい、ここからネタバレしますよ。

 

まぁ、そこまではいいんですよ。問題はラスト近く。
ファイドが老婆を食べてしまった事がバレて(元はティミーのせい)、一家はフェンスの外に追放されそうになるのを、ビルは近所に引っ越してきたゾムコン社の新しい警備主任ジョン(ヘンリー・ツェニー)に頼み込んでファイドはゾムコン社に送り返すだけに留めてもらうんですね。

その後、ファイドの生存を知ったティミーはファイドを取り戻しにゾムコン社に行ったのを見つかって、ジョンにフェンスの外に出されてしまう。

しかし、そこにビルがやってきて息子を救おうとするという描写があるんですよね。
でも結局、ビルはジョンに殺され、ジョンはフェンスを破って侵入したゾンビに殺されてゾンビになってしまう。

で、ビルの「首葬」でお母さんのヘレンが「これでビルも本望でしょ」と言い、ファイドと三人で幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。となるわけです。

ビルが非白人に対する差別主義者、ジョンが強権的な父親の象徴、彼らの行いはアメリカにおける女性差別などの比喩表現なのも分かる。

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画像出典元URL:http://eiga.com

だから、ジョンが最終的にゾンビになって娘のペットになるってのはいいんですけど、ビルは(少なくとも)最後の最後で、体を張って息子を守ろうとしたじゃん?

なのに、邪魔者は消えて二人はゾンビと幸せになりましたとさ。チャンチャン♫ってのは、さすがにビルがちょっぴり気の毒かなって思ったりしました。

まぁ、僕がビルの年齢に近いオッサンだからかもですがw

興味のある方は是非!!

 

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アクション釣瓶打ちの“わんこアクション”映画「ジョン・ウィック/パラベラム」(2019)

ぷらすです。

キアヌ・リーブスが孤高の殺し屋を演じる「ジョン・ウィック」シリーズ第3弾、『ジョン・ウィック/パラベラム』を今日、映画館で観てきましたー!

いやー、今回もアクションが凄かったですねー。

というわけで、今回は劇場公開されたばかりの作品なので出来るだけネタバレしないように気をつけて書きますが、これから本作を観る予定の方やネタバレは絶対に嫌!って人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね?注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

キアヌ・リーヴス演じる殺し屋ジョン・ウィックの復讐(ふくしゅう)劇を描くアクションシリーズの第3弾。追われる身となったジョンが、迫りくる暗殺集団との戦いに挑む。前2作のメガホンを取ったチャド・スタエルスキが続投。イアン・マクシェーンローレンス・フィッシュバーンらおなじみのキャストに加え、ジョンと因縁がある謎の女役で『チョコレート』などのハル・ベリーが参加している。(シネマトゥディより引用)

感想

過去2作をざっくり振り返る

まずは本作の感想に入る前に、過去2作品の流れをざっくり振り返っていこうと思います。

このシリーズ、で主役のジョン・ウィックを演じるのは、みんな大好きキアヌ・リーブス。彼にとってこのジョン・ウィックは「マトリックス」三部作以来の当たり役と言っても過言ではないと思います。

かつて裏社会にその名を轟かせた凄腕の殺し屋ジョン・ウィックは、5年前に最愛の女性ヘレンと出会い足を洗い、平穏な生活を送っていました。
しかしヘレンは病死し、悲嘆に暮れる彼のもとに1匹の子犬が送られてきます。
その子犬は自分の死後、夫を心配したヘレンからの贈り物で、ジョンはその子犬と静かに暮らしていたわけです。

ところが、街のロシアンマフィアのバカ息子がジョンの愛車を盗み、その時子犬を殺してしまったことから、ジョン・ウィックは復讐の鬼となってロシアンマフィアを皆殺しにしてしまうというのが1作目。

 

続く「ジョン・ウィック/チャプター2」は前作から5日後。
かつての借りがあるイタリア系犯罪組織の幹部から誓印を盾に殺しの依頼を受けるも、今度こそ引退を決意していたジョンは断ってしまう。
しかし、その代償は大きく、亡き妻との想い出が残る家が爆破されてしまうわけです。

ジョンはコンチネンタルホテル(殺し屋専門ホテル)のオーナー、ウィンストンに助力を求めるも、裏社会に生きる人間にとって「誓印」は絶対として、ウィンストンは犯罪組織の依頼を受けるよう進めるんですね。
諦めたジョンは依頼を実行するも、今度は口封じのため犯罪組織に命を狙われるハメに。さらに幹部はジョンに700万ドルの賞金を掛け、主席連合(殺し屋協会)を通じてニューヨーク中の殺し屋にジョン・ウィック殺害を依頼するんですね。

次々に襲いかかる殺し屋を返り討ちにしながら、ジョンは幹部を追うも幹部は殺し厳禁が掟のコンチネンタルホテルに逃げ込み、ジョンを挑発。
ウィンストンが止めるのも聞かず、ジョンはホテル内で幹部を射殺してしまい、世界中の殺し屋から命を狙われる事になってしまうんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / いつも通り“ガンフー”あり

マトリックス』など数々の映画でスタントやスタントコーディネーターを手がけたチャド・スタエルスキーの初監督作品ということで、日本のアニメ、マーシャル・アーツ、殺陣、マカロニ・ウェスタンなど、あらゆるアクションが盛り込まれ、特にガンアクションとカンフーをミックスさせた“ガンフー”で多勢の相手を次々葬っていくアクションは、(僕を含む)多くのファンを驚愕・熱狂させました。

また、殺し屋専用金貨や殺し屋専用ホテルなど、まるでマンガのような裏社会のルールも非常に楽しい作品でしたねー。

わんこアクション

この前2作で概ねストーリー上の前フリが済んでいるので、本作は最初から最後までほぼアクションシーンのみで構成された“わんこ(犬じゃないよ)アクション”映画になっていました。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 乗馬アクションあり

正直、序盤の方でお腹いっぱいになっちゃうんですが、それでも“わんこそば”のように次から次へとアクションシーンが釣瓶打ちされていくのです。
確かに1作目はその過剰なアクションシーンを大いに楽しんだ僕ですが、正直2作目で目が慣れてしまい、本作では完全に飽きてしまったんですよね。

いや、製作陣は観客に飽きさせないように、様々なシチュエーションの中で目先を変えたアクションシーンをデザインしてはいるんですよ。

ただ、多勢vsジョン・ウィックという構造自体は変わらないし、基本格闘(銃撃戦)アクションがメインなのでどんどん目が慣れてしまって、やってる事は凄いのに、どのシーンも似たようなアクションに見えて有り難みが薄れていくのです。

また、ストーリー自体がシンプル過ぎるくらいシンプルなので、前作の中盤くらいからアクションとストーリーの釣り合いが取れなくなっているってのもあるような気もしましたねー。ぶっちゃけ本作は物語もほとんど進んでいないですしね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 剣撃あり

いや、そういう映画って分かって観に行ってるんだろと言われればグゥの音も出ませんけど。

3部作じゃない…だと?

で、僕は本作に関してあまり事前情報を入れていなくて、てっきり本作がジョン・ウィック3部作」完結編だと思って観に行ったんですけど、なんと続編に続く形で終わっててビックリしてしまいましたよw

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画像出典元URL:http://eiga.com / 愛犬家仲間のハル・ベリーも登場

本作でついにその全容が明らかになった世界中の殺し屋を束ねて裏社会を牛耳っている主席連合。

本作では、その主席連合に完全に追い詰められたジョン・ウィックと彼の協力者たちが、次回作でついに反撃に出るというストーリーになっていくのかな?

っていうか、いったい何部作の予定なんだろうw

まぁ、そんな文句をつけながらも、次回作が公開されれば、きっと観に行っちゃうんですけどね。

とりあえずは次回作に期待かな!

興味のある方は是非!!

 

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日本ホラー界のニュースター誕生!!「血を吸う粘土」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本のホラー映画『血を吸う粘土』ですよー!

低予算映画ながら、スペインのシッチェス映画祭、カナダのトロント国際映画祭で(ミッドナイト・マッドネス部門)上映。今年公開の続編「血を吸う粘土/派生」もシッチェス映画祭Midnight X-Treme部門コンペティション作品として上映され、大いに盛り上がったんだとか。

先日ご紹介した「怪怪怪怪物!」とシッチェス映画祭繋がりということで、観てみました!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

特殊メイクアーティストとして数多くの映画で特殊メイクや特殊造型を手がけ、アメリカ製ホラーオムニバス「ABC・オブ・デス2」の一編では監督を務めた梅沢壮一が、長編映画で初メガホンをとったホラー作品。とある美術専門学校を舞台に、怨念のこもった粘土の封印を解いたことから、阿鼻叫喚の地獄が広がっていく様を描いた。ある地方の美術専門学校に東京から転入してきた日高香織は、学校の倉庫に乾燥した水粘土の粉が置かれているのを見つけ、水をかけて粘土を元に戻してしまう。しかし、その粘土は無残な死を遂げた彫刻家の怨念がこもった悪魔の粘土「カカメ」だった。カカメは学校の生徒たちをひとりまたひとりと取り込み、恐るべき怪物へと変化していく。主演は講談社主催のオーディション「ミスiD 2017」グランプリの武田杏香が務め、同じく「ミスiD 2017」受賞者の杉本桃花、藤田恵名、牧原ゆゆが共演。(映画.comより引用)

感想

粘土が人を食べちゃう映画

本作の内容を一言で説明すると「呪いの粘土が次々に人を食べちゃう物語」です。

ん?どういうこと?って思うでしょ?
ええ、僕も観る前はそう思っていましたよw

ところが実際観てみると、これが中々よく出来た物語なんですよね。

舞台は山岡県という架空の県にある生徒たった5人の美術教室。(美術大学の予備校的な感じ)

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画像出典元URL:http://eiga.com

最初は、別の場所でやってたんすが地震の影響で倒壊寸前になり、そこで急遽、かつて造形作家の工房だった古い民家を借りて運営することに。

で、オーナー講師の藍那ゆり先生(黒沢あすか)が周囲の草刈りの最中、地面に埋まっていた缶に入ってビニール袋に包まれた造形用の粘土を発見、授業用にと教室の角に置いておくんですね。

そして教室は無事再開。東京の美術大学を目指す生徒が集まってくるんですが、その1人、日高香織武田杏香)は東京から引っ越してきた女の子で、夏の期間は都内の美大予備校に通っていたんですね。

で、友人の望月愛子(杉本桃花)は東京の美術予備校に興味津々。東京の学校のレベルについて香織に色々聞いたりします。

そんな二人の会話に複雑な表情の藍那先生。彼女は芸術家として東京で挫折し、地元に帰ってきたという背景があるわけです。

一方の愛子は元々香織と同等の実力だったわけですが、いつの間にか水をあけられたことを東京の美術予備校のレベルが高いからと感じている。それに教室唯一の男子、山下寛治(篠田諒)も同調します。
環境に不満を漏らす愛子たちを諭す先生でしたが、やがて感情的になって大声を上げてしまう。

年上で2浪の谷レイナ藤田恵名)の一言で言い合いは収まり、粘土造形の授業に入るんですが、高校2年の青木由香(牧原ゆゆ)が新しく入ってきたことで粘土が足りなくなり、香織は地面に埋まっていた粘土を使うことに。

しかし、その粘土にはある恐ろしい因縁があったのだった――というストーリー。

監督の実体験と地方人の複雑な思いを描く

この作品、地方出身で(と言っても神奈川県だけど)過去、美術大学を3回受験し諦めたという梅沢壮一監督の体験や、地方出身者ならではの東京に対する憧れやコンプレックス、ルサンチマンなどを織り込んだ脚本が本作の“粘土が人を襲う”という荒唐無稽なストーリーにある種のリアリティーを与え、特殊メイク、造形アーティストでもある監督だからこその、CGを殆ど使わないSFXメインの造形や映像は、近年の映画では中々観ることの出来ない質量のある生々しさや不気味さを醸し出しているんですよね。(本人曰く低予算だからCGが使えなかったらしい)

また、監督によれば本作の背景には3.11の東日本大震災があるのだとか。

つまり、福島原発で作られた電力の多くが東京で消費されていたにも関わらず、震災後の福島バッシングや未だに解決の糸口が見えない放射性廃棄物や汚染水などの問題ですね。

監督はそこに自身の体験をリンクさせ、地方人の東京に対する憧れと同時にある、妬み嫉みといったネガティブな心情や、地方(田舎)が東京に(一方的に)感じる格差や不公平感などを、物語に練りこんでいったのです。粘土だけに!(←上手くない)

 その一方で、6人のキャストたちの関係性に田舎特有の閉鎖的なムラ社会を匂わせる閉じた空気感のようなものも、同時に描いているんですねー。

日本ホラー界のニューカマー、粘土人形のカカメ

日本ホラー界の二大スターといえば「リング」の貞子と「呪怨」の 伽耶子で、「貞子vs伽耶」という面白作品も公開されたりしましたよね。

とはいえ、この二人はあくまで怨霊(幽霊)です。
海外ホラーと違い、(怪獣を除けば)フレディー、ジェイソン、チャッキーのようなモンスター系の人気キャラクターって、日本だとほとんどいないような気がするんですよね。

そんな邦画界に彗星のごとく現れたのが、呪いの粘土人形カカメくん

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見た目は若干ゆるキャラっぽいというか、なんならちょっとキモかわいい感じすらあるんですが、実は貞子や伽耶子に匹敵する恐ろしい怪物です。

というのも、このカカメくんは元が粘土なので変幻自在に形を変え、しかも絶対に死なないキャラクター。
粘土だけに乾燥してしまうと砂(粉?)状になってしまうという弱点はあるものの、その状態で生き物の体内に入って相手を殺す事も出来るし、水分さえあればすぐに復活する事も出来るんですね。

つまり、殺すことはできないから乾燥→砂状にして水分が入らないように封印することしか出来ないし、粘土状の時は生き物の血液を取り込んでいくらでも巨大化するという非常に厄介なモンスターなのです。

そんなカカメくんは、元々売れない彫刻家の作品(の一体)だったんですが、色々あってその彫刻家の血と骨、そして怨念を取り込んで生まれた呪いの粘土人形

人間とコミュニケーションを取るだけの知性は(多分)なく、本能的に生物(の血液)を捕食しては成長していきます。

とはいえ粘土じゃないですか。
一体どうやって捕食するのかというと、相手の傷口から血を吸ってるんですね。
たとえどんな小さな傷口、もっと言えば口や鼻のような粘膜からでも体内に侵入でき、カカメくんに取り込まれた相手は生きながらにしてカカメくんの一部になってしまうし、カカメくんは取り込んだ相手の形をそっくりにコピーすることが出来るんですね。元々彫刻用の粘土だけに形を変えるのは得意なのでしょう。

そして取り込んだ相手をコピーして、次の獲物を狙うわけです。

そんなカカメくんの最初の犠牲者は2浪の谷レイナなんですが、まだただの粘土状だったカカメくんは、彼女の指→手にまとわりつき、ずっとはむはむしてるわけですよ。ほら歯がないから。

一度はカカメくんを引き離すのに成功したレイナでしたが、助けを呼ぶためスマホのダイヤルをプッシュしようとすると、カカメくんにはむはむされた指は粘土状にグニャグニャになっていてスマホ画面を押すことも出来ない。そうこうするうち、再びカカメくんに囚われーーとなるわけです。

正直笑っていいのか怖がればいいのか分からないけど、よく考えると超厄介だし怖い。そこにカカメくんのカルト的スター性を感じましたねー。

とはいえルックは……

とまぁ、これだけ褒め倒してるので超面白い映画って思われるかもですが、とはいえ邦画の中でもかなりの低予算作品ですからね。

映画としてのルック自体はかなり安っぽいし、ストーリー的にも(梅沢監督の長編デビュー作ということもあり)正直ツッコミどころ満載です。

ただ、例えばB級映画の安っぽさを「ほーら、B級映画ですよ。面白いでしょー」と、自ら茶化すような作り方はしていなくて、少ない予算の中、本気で怖い映画を作ろうとしているし、随所に少しでも面白く見せようと工夫がされている姿勢は(低予算とかインディーとか関係なしに)素晴らしいと思うんですよ。

もちろん、CGを駆使してお金をかければもっと怖くなるかもですが、本作には造形から何から手作りだからこその「チープだけど不気味」感があると思うんですよね。

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そもそも僕は、ホラー映画とCGって、あまり相性が良くないって思ってますしね。

例えば、クライマックスでのカカメくんの正体?を見せるシーンなんかは、コマ撮り撮影されているんですね。今時、自主制作映画でもコマ撮りのシーンなんてそうそう観れないですよ。

でも、そのシーンはコマ撮りだからこその生理的な気持ち悪さや怖さが出ていて、あの感じはCGだと中々出せない(というか別物になっちゃう)と思うんですね。

そして、黒沢清作品を思わせる、あの最高のラストシーンに至っては殆ど怪獣映画で、このラストシーンがあるからこそ本作は多くのファンに絶賛されていると思うし、そこに至るまでの、無駄とも思えるような長尺で見せる時間経過のシークエンスも実は“ラストシーンへのフック”として必要な長さなんですよね。

ただ、あえて苦言を呈するなら、画面が暗すぎて何が何だか分からないシーンがちょっと多かったのはもったいないって思いましたねー。

黒沢あすかの熱演

あと、個人的には美術講師の藍那先生を演じた黒沢あすかさんの熱演が素晴らしいと思いました。
ちなみにこの人、梅沢監督に奥さんなのだとか。

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色々あって、ラスト前に道端で藍那先生が泣くシーンがあるんですが、この時の黒沢さんの全ての感情を絞り出すような演技は本当に素晴らしかったです。

というわけで、低予算の小作品ながら一定のファンにはカルト的な人気だし、僕も大いに楽しんだ本作。
もうすぐ続編の「~/派生」も公開されるらしいし、本作はネットフリックスやAmazonプライムでも観られますよ。

興味のある方は是非!!

 

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この映画ヤバい!「ジョーカー」(2019)

ぷらすです。

シュビドゥビドゥ~・シュシュビドゥ~ア~シュビドゥビドゥ~♫

というわけで、公開初日に観てきてやりましたよ!

『ジョーカー』をね!

いやー、この映画はヤバいですよ!
観終わって結構経ってますけど、まだ“ジョーカー酔い”が収まっていません。

シュビドゥビドゥ~……♫

というわけで、今回は公開したばかりの作品なので、極力ネタバレしないよう気をつけて感想を書こうと思いますが、これから本作を観る予定の方やネタバレは絶対に嫌!という人は、先に劇場でこの作品を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね?注意しましたよ!

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概要

『ザ・マスター』『ビューティフル・デイ』などのホアキン・フェニックスが、DCコミックスの悪役ジョーカーを演じたドラマ。大道芸人だった男が、さまざまな要因から巨悪に変貌する。『ハングオーバー』シリーズなどのトッド・フィリップスがメガホンを取り、オスカー俳優ロバート・デ・ニーロらが共演。『ザ・ファイター』などのスコット・シルヴァーがフィリップス監督と共に脚本を担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

ジョーカーとは

いや、もうそんな人は殆どいないと思いますけど、一応「ジョーカー」というキャラクターを知らない人のためにザックリ説明しようと思います。

ジョーカーはDCコミックのヒーロー「バットマン」に登場する世界的に有名な超人気ヴィラン(悪役)。

1940年4月刊行の"Batman #1"で初登場して以来、約80年に渡ってバットマン最凶の敵として君臨し続けているんですね。

そんなジョーカーを生み出したアーティストは、ビル・フィンガー、ボブ・ケイン、ジェリー・ロビンソンの中の“誰か”と言われていますが、それぞれ「自分が生み出した」と主張。決着がつかないまま3人はこの世を去ってしまったのだとか。

そして現状、実写版でジョーカーを演じたのは全部で5人。

初代ジョーカーは、TVドラマ「鳥人バットマン」 (1966年–1968年)のシーザー・ロメロ。ただ、このドラマは今の「バットマン」ようにシリアス路線ではなく、かなりコミカルなジョーカーだったらしいです。(僕は未見)

2代目はティム・バートンが監督した劇場版「バットマン」  (1989年)のジャック・ニコルソン。今に続く“狂気の男ジョーカー”のイメージは、彼から始まったと言っても過言ではありませんし、ジャック・ニコルソン=初代ジョーカーって思ってる人も多いんじゃないでしょうか。

3代目は「ダークナイト」(2008年)のヒース・レジャー。多分、歴代ジョーカーの中で最も人気の高いジョーカーじゃないでしょうか。僕も一番好きなジョーカーです。

4代目は「スーサイド・スクワッド」のジャレット・レト。多分歴代ジョーカーの中で一番若くて一番ど派手なジョーカーだったと思うし、個人的には大好きなんですがファンの間では大不評だったんですよね。
まぁ、「スーサイド・スクワッド」自体の出来がアレすぎた事もあって、若干割を食ってしまった感は否めないかも。

そして、本作で5代目ジョーカーを演じるのが、「ビューティフル・デイ」などで数々の賞を受賞している実力派、ホアキン・フェニックスなのです。

個人的にはこれまでの歴代ジョーカーの中ではヒース・レジャーがダントツに好きなんですけど、本作でホアキン歴代の中で一番ヤバいジョーカーだと思いました。

これまでジョーカーを演じたキャストは、狂気に自らが飲み込まれることでフィルムの中にジョーカーを顕現させてきた印象なんですが、本作はホアキン=ジョーカーの狂気に、観ているこっちが飲み込まれたような感覚というんですかね。

もちろんそれは作劇や演出・撮影の効果で観客にそう思わせているんですけど、これがホアキン以外の役者だったらここまでだったかな?と思わされるくらい、本作で彼が演じたジョーカーは圧倒的でしたよ。

ジョーカーの“オリジン”を描く

で、本作は「バットマン」のヴィランとしてのジョーカーではなく、初のジョーカー単独映画です。

内容は、一人の男が稀代の悪役ジョーカーになるまでを描いたオリジン=誕生篇なんですね。

実はジョーカーは、ほかのキャラと比べてオリジンが定まっていないません。

1940年に初登場の“初代”ジョーカーのオリジンは、元々“レッドフード”という犯罪者で、バットマンから逃げる際にヤバい化学薬品の樽に落ちて、白い肌&緑髪の狂人ジョーカーになったというもの。

アメコミ原作者のアラン・ムーアが手がけたBatman: The Killing Jokeでは、売れないコメディアンが妊娠中の奥さんのためにお金が必要になり、ギャングの犯罪計画に加担。しかし計画実行前に奥さん(とお腹の中の赤ちゃん)が亡くなり、失意の中で犯罪計画を実行するもバットマンに追われて逃げる際にヤバい化学薬品の樽に落ちて、白い肌&緑髪の狂人ジョーカーになったというもの。(このオリジンは、一番引用されている有名なオリジンです)

他にも、元々犯罪の天才だったジョーカーが、ギャングとの抗争中に頭から化学薬品をかぶるとか、執筆アーティストが変わる毎にオリジンも変わったりするんですよね。

映画「ダークナイト」でもジョーカーが自分の過去を語るけど、人によって言ってることが違うじゃないですか。あれは、原作からしてオリジンが定まってなくて、その事がジョーカーというキャラクターを構成する要素の一つになっていたからなんです。

そして本作で描かれるオリジンは、今まで描かれた数あるオリジンから抽出した要素を組み合わせた完全オリジナル
なので、原作ファンの人も初めて観るジョーカー誕生物語なんですね。

コメディアンに憧れる孤独で心の優しいアーサー・フレックが、色々あってジョーカーになるまでの物語なんですが、本作はこれをアーサー=ジョーカーの“完全一人称”で描くわけです。

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つまり、本作で描かれる世界はアーサーの目から見た“セカイ”であり、観客はアーサー=ジョーカーの脳内を約2時間、追体験するわけです。

なので、物語が本格的に動き始める中盤からラストにかけて、完全に彼の心情に共鳴してしまいジョーカーが引き起こす、ある犯罪に対してカタルシスを感じてしまう。

もっと平たく言うといいぞジョーカー、やっちまえー!(ノ゚ο゚)ノ フオォォォー」って思っちゃうんですよ。

で、映画が終わって( ゚д゚)ハッ!とするっていう。

ジワジワとジョーカーの狂気という毒に侵食されて、自分の倫理観や道徳観が乗っ取られていた事に、映画が終わって気づくのです。

そういう意味でこの作品はかなりヤバい。
エロ描写も極端な残虐描写もないのに、R-15指定になっているのも納得ですよ。

こんなん絶対子供に観せちゃダメだって思いましたもんw

現実(リアル)と地続きの圧力と解放

観客がなぜそこまでジョーカーに肩入れしてしまうのかというと、彼を取り巻く状況や降りかかる諸々が現実の世界と地続きだからです。

心を病みながらも人々に笑いを届けたいと願う貧しい大道芸人アーサーに降りかかる、社会からの孤立や資本主義がもたらす貧富格差、親しい人からの裏切りなどなどは、他人事と思えない人も多いはず。

そんな中で、ついにある一線を超えてしまったジョーカーに対し、観ているこっちは「そりゃそうだよ。他に選択肢がないんだもん」って“同情”というよりは“同調”してしまうのです。まるでストックホルム症候群みたいに。

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その辺は、そこに至るまでの圧のかけ方と解放。アーサーの悲哀、ジョーカーの目に映る風景を美しくロマンチックに撮った映像の美しさなど、作劇や映像の素晴らしさもあるんですけどね。

つまり本作は単に「バットマン」のスピンオフ作品ではなく、一本のピカレスクロマン(悪漢譚)として成立した作品(しかも傑作)であり、同時に「バットマン=ヒーロー映画」と本質的な部分で合わせ鏡のような物語でもあるんですね。

タクシードライバー」と「キング・オブ・オメディー」

監督のトッド・フィリップスは、本作について「タクシードライバー」(1976)と「キング・オブ・コメディー」(1983)から影響を受けていることを公言しています。

そういう意味で、アーサーが憧れるテレビ司会者役に名優ロバート・デ・ニーロをキャスティングしたのは、単なる映画ファンへの目配せだけではなくて、何か作劇的な意図があったのかな?なんて勘ぐってしまいましたねー。

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両作を観た人なら本作のアーサーとトラビス、パンプキンの共通点に気づくと思うし、本作でデ・ニーロが演じるTV司会者は、「キング・オブ~」でパンプキンが憧れる人気コメディアンのジェリーラングフォード(ジュリー・ルイス)と同じ立ち位置なんですよね。

また、本作の舞台は80年代初頭のゴッサムシティということもあり、映画のルックも70~80年代初頭を意識したようなオールドスタイルな印象を受けたし、作劇もほんのりアメリカンニューシネマの匂いを感じたりましたねー。

信用できない語り手

と、ここまで色々書いてきたんですけど、実はまだ一つだけ書いていないことがあります。

それはアーサーには妄想癖があるということ。
つまり彼は、映画における「信用できない語り手」なのです。

実際、序盤からちょこちょこ彼の妄想シーンが挟み込まれていたりしますしね。

もし、これから本作を観る人は、その事を頭の隅に置いて観ると面白いかもしれないって思いましたよ。

興味のある方は是非!!

 

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“青春映画”であり“暴力映画”「怪怪怪怪物!」(2017) *ネタバレ有り

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、台湾発の学園ホラー『怪怪怪怪物!』ですよー!

この作品、TSUTAYAに行く度パッケージやタイトルのインパクトが気にはなってたんですけど、「どうせB級ホラーなんだろう」とスルーしてきたんですよね。
ところが先日、よく観ているネット番組で紹介されていたので気になってレンタルしてきました。

で、この作品はネタバレしてもさほど面白さに影響がないと思うので、今回はネタバレを気にせず感想を書いていくつもりです。
なので、これからこの映画を観る予定の人やネタバレは絶対に嫌!って人は、先に映画を観てからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

日本でリメイク版も製作された大ヒット青春映画「あの頃、君を追いかけた」を手がけた台湾の人気作家ギデンズ・コー監督、オリジナル脚本による学園ホラー。いつもクラスメイトにからかわれ、いじめられているリン・シューウェイはある日、問題を起こし、いじめっ子の3人とともに奉仕活動として独居老人の手伝いを命じられる。そして、手伝いのために訪れた老人宅でシューウェイたちは、夜中に2匹のモンスターと遭遇。モンスターを捕獲したシューウェイたちは、彼らなりの調査と実験をスタートさせ、友情を深めていく。しかし、次第にモンスターがシューウェイたちの手には負えない存在となり……。2017年・第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品。「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2018」(18年10月12日~/東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて開催)上映作品。(映画.comより引用)

感想

青春映画であり暴力映画

 

監督は自伝的ネット小説を自ら映画化して大ヒットした青春映画「あの頃、君を追いかけた」のギデンズ・コー。監督作品としては本作が2作目という新進気鋭の監督らしいです。

で、本作の感想を一言で言うと「超胸糞悪いイヤ~~~~な映画」(褒め言葉)でしたねー。

一応ジャンルとしては“ホラー”ですが、内容はどちらかというと“青春映画”であり、“暴力映画”でもあるって感じで、怖くはないんだけど、とにかく救いがないっていう久しぶりの胸糞映画でしたよ。(*´д`;)…

物語は、まず人を食う怪物の姉妹がいましてね。
彼女たちは姉妹仲がとても良くて、狩った獲物(浮浪者のおじさん)を美味しく頂いているときに、お姉ちゃんが妹に好物?の心臓をあげると妹は嬉しそうにムシャムシャ食べ、それをお姉ちゃんが優しく見守るっていう、ハートウォーミングなシーンからスタートするわけです。(まぁ、おじさんの呻き声がしばらく聞こえてたりしますけどw)

で、場面変わってある高校の教室。

給食費を盗んだ疑いで生徒の前に立たされている主人公リン・シューウェイ目掛けて、クラスメイトが紙くず?を投げつけているんですね。
横に立つ美人教師は、そんな彼らを止めるでもなく「先生には当てないで」なんて言う始末で、もう一発で主人公の置かれている状況が分かる非常に手際の良いシーンです。

もちろん、リンは無実で犯人はリンを犯人に仕立て上げ囃し立てるリーダーのドアンを始めとしたいじめっ子グループ。

彼らの常軌を逸したイジメを告発しようとリンはいじめられている様子をスマホで録音し、担任に証拠として突きつけるも担任教師は決していじめを認めず逆にリンを厄介者扱いし、リンとドアンたちに独居老人のアパートでのボランティアを命じるのです。

しかし、ドアンたちは老人たちに対してもヒドイ仕打ちを行い、それに加担するうちリンも徐々に楽しくなってきちゃうんですね。

で、そんな独居老人の一人がお宝を隠し持っているのでは?と思った彼らは、夜中に忍び込んで彼のアタッシュケースを盗み出すんですが、その時食事中の化物姉妹を発見。

驚いてアパートから逃げ出そうとする彼らを先回りして捕らえようと、道路に飛び降りた妹は、偶然通りかかった車に轢かれてしまいます。

で、ドアンたちは彼女をアジトに連れて行き、太陽の光が弱点だと知ると、鎖で縛り付けて「化物には何をしてもいい( ̄ー ̄)ニヤリ」とヒドイ拷問を始めるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 彼らの化粧を見て、監督は望月峯太郎のファンなのかな?と思いました。

もう、この時点で(主人公を含む)登場キャラのあまりのクソっぷりにゲンナリですよ。(*´д`;)…

リンはといえば、一緒になって妹をいじめるわけですが、彼女が餓死しないよう自分の血を飲ませながら「僕は味方だから」なんて言ったり。
でも、具体的に彼女を助けるアクションは何も起こさないままで、妹への拷問はエスカレートしていくわけです。

そんなある日、リンをいじめた別のクラスメイトを怒ったドアンが病院送りに。
そのせいでクラスメイト親が怒鳴り込んでくるも、担任はドアンの父親が刑務所送りになっていることや、母親が体を売っていることなどを怒鳴り込んできた親に話し、ドアンに赤っ恥をかかせるんですね。

事前の“実験”で、化物の血が太陽に晒されると燃え上がることを知っていたドアンは、担任の水筒に妹の血を混入させます。
すると、その水を飲んだ担任はバスケの試合中に担任は太陽光で自然発火してしまうんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 燃え上がる担任をスマホで撮影する生徒たち。ダメだコイツら…

一方、突然妹がいなくなったお姉さんは悲しみにくれていたんですが、ある日“食事中”にたまたま(獲物の部屋で)観た担任の自然発火ニュースで、妹が高校に捕まってることを確信。しかし誰の仕業かまでは分からないのでその高校の制服を着ている生徒を次々に襲い始めます。

そして、ある晩スクールバスを襲ったお姉さんは、一緒に拷問に参加していたドアンのガールフレンドを含む生徒を全員皆殺しに。(このシーンでスイカジュースがトラウマになる人多数)

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画像出典元URL:http://eiga.com / MK5(マジで殺される5秒前)のガールフレンドは表情を変えずにスマホで怒りのお姉さんをパシャリ。狂ってる。

怒り狂ったドアンは、妹を囮にお姉さんをおびき出し、ガソリンで焼き殺すという復讐計画を立てるのだが――。

はい、ここからネタバレします。

タバレストーリー紹介

しかし、別のクラスメイトから自分を助けてくれたと思ったドアンが、実は自分の獲物(というかオモチャ)を勝手にいじめた事に腹を立てただけだったと知ったリンは、ドアンたちを裏切ってお姉さんに殺させるんですが、その後アジトに入ってきたお姉さんに殺されかけます。
しかし日の出を知らせるアラームを聞き、あらかじめ姉妹の脱出用にとネジを外しておいた板を外して太陽光を部屋に入れると、その光は鎖で縛られた妹を直撃。

お姉さんは自分を盾にしつつ、必死に妹の鎖を引きちぎろうとしますが、既のところで力足りず妹共々燃えてしまうんですね。

いじめっ子も死に、担任も死に、怪物姉妹も死に。これで一件落着かと思ったんですが続きがありまして。

結局いじめっ子がいなくなってもやっぱりいじめられるリン。
ある日、給食のスープを運んでいた彼は、そのスープに妹の血を混ぜてクラスメイトに飲ませ、自分も飲みます。

そして、教室から出て廊下を歩く彼の背後では悲鳴が起こり、彼はその声を聞きながらガッツポーズ。そして彼自身も燃えていく。というオチでしたとさ。

ね?うんざりするほど嫌な話でしょ?

そして、前述したようにこの映画が青春映画であり、暴力映画だと書いた理由も分かってもらえたと思います。

高校生という大人でも子供でもなく、むき出しの残酷さを持つ年代をメインキャラクターに暴力の連鎖を描く本作は、単に暴力を見せる映画ではなく、暴力について考える映画=暴力映画なのです。

同時に、このリンたちのクラスは世界の縮図として描かれていて、「終わらない暴力の輪の中に一度入ってしまえば決して抜け出すことは出来ず、この世界(社会)は強者が弱者を暴力で支配することで成り立っている」というギデンズ・コー監督のシニカルなメッセージが込められているのだと僕は感じましたねー。

そんな本作の中で2人、印象的なキャラクターが登場します。
教室の外(廊下)で授業を受けているいじめられ子の女の子と、主人公が買い物をする商店の知的障害を持つ男の子です。

この二人に対してリンは「僕はお前とは違う!」と言うんですね。
女の子に対しては序盤と最後に2回言うんですけど、序盤と最後ではその言葉の意味は180度変わっています。

本作でこの二人だけが、輪の外にいるキャラクターなのです。

序盤、心配して声をかける女の子に対し、リンは彼女をクラス=社会からはじき出された存在と考えていて、自分も彼女のようになるのを恐れている
商店の男の子に対しても同様に半分は同じ感情だけど、もう半分はそんな彼を羨んでさえいる。
そして最後、妹の血入りのスープを飲もうとした女の子から器を取り上げて捨てたリンが彼女に向かって言う「お前と僕は違う」は、暴力の連鎖で成り立つクソのような社会を見限る勇気が持てなかったリンの悔恨の言葉でもあり、その輪から抜け出した彼女への祝福の言葉でもあるわけですね。

まぁ、その後のクラスの燃え方を見ると、「これ、彼女も巻き込まれてね?」と思ったりするわけですがw

事ほど左様に、内容が内容だけに観る人を選ぶ映画だし、決して爽快な物語ではないんですが、個人的には(好きではないけど)中々見ごたえのある作品だなって思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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ザック・スナイダー症候群「ヘルボーイ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2004年公開のギレルモ・デル・トロ監督「ヘルボーイ」をリブートした『ヘルボーイ』ですよー!

僕は原作は未読なんですが、デル・トロ版が大好きなので早速映画館で観てきました。

で、まだ上映中の映画なので出来るだけネタバレしないように感想を書いていくつもりですが、これから本作を観る人やネタバレは絶対イヤ!という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのニール・マーシャルを監督に迎え、マイク・ミニョーラのアメコミシリーズをスタッフやキャストを一新して映画化。異形のヒーローが、世界滅亡をたくらむ悪と戦う。本作では原作者のマイクが監修を担当し、ドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などのデヴィッド・ハーバーが主演を務める。ミラ・ジョヴォヴィッチが悪役として登場する。(シネマトゥディより引用)

感想

ヘルボーイ”って何者?

感想の前に「そもそもヘルボーイって何者?」っていう人も多いと思うのでザックリと説明しようと思います。

ヘルボーイ」は、ダークホーズコミックから1994年に発刊されたオカルト系アメコミヒーロー。

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

主人公ヘルボーイは、第二次世界大戦末期に敗戦の色濃いナチスによって地獄から召喚された悪魔。
しかし、ナチスの企みを知った超常現象専門家であるブルッテンホルム教授他2名の専門家と米特殊部隊はこれを阻止。まだ赤ん坊だった悪魔にヘルボーイと名づけブルッテンホルム教授が父替わりとなって彼を育てるんですね。

そして成長したヘルボーイは、教授が指揮する超常現象捜査局(B.P.R.D.)のトップ・エージェントとなり、現世の理と安寧を守るために世界各地の魑魅魍魎と戦うというストーリー。

作者はアメコミクリエイターのマイク・ミニョーラで、2004年の実写化1作目&2008年の続編「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー」ではギレルモ・デル・トロ監督と共に自らがモンスターから背景に至るまで多数のデザインを担当しています。

そして本作では原作者・製作総指揮・監修に脚本も担当したことで、原作の持つダークさを前面に押し出したR-15指定のリブート作品になっているんですね。

日本で言うなら、ビジュアルは「デビルマン」、設定は「ゲゲゲの鬼太郎」が一番近いかもしれません。

デル・トロ版との違い

で、僕は前述したようにデル・トロ版「ヘルボーイ」の大ファンでしてね。
続く「~/ゴールデンアーミー」はアメコミ映画としては低予算ながら、ディテールの変態デル・トロのファンタジー&異形愛とフェチズムが詰まった大傑作だったわけですよ。

1作目でヘルボーイロン・パールマン)、念動発火を操るリズ( セルマ・ブレア)、インテリ半魚人のエイブ(ダグ・ジョーンズ)といったB.P.R.D.チームの関係性や異形との戦いを丁寧に描き、続く2作目ではヘルボーイ(異形)と人間の関わりという物語の核心に迫っていくのです。しかし、大いに期待していたものの3作目は作られず。

11年ぶりにリブート作品として作られた本作では、キャスト・スタッフを一新、ヘルボーイロン・パールマンからデヴィッド・ハーバーに交代、リズとエイブは登場せず、代わりに赤ん坊の頃妖精に攫われたことで強い霊能力を得たアリスサッシャ・レイン)と、日系アメリカ人で特殊部隊M-11のベン・ダイミョウ少佐 (ダニエル・デイ・キム)とチームを組み、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じる世界に疫病を撒き散らしアーサー王に封印されるの現代に復活した魔女ニムエと対決するというストーリーで、デル・トロ版よりもダークに、ゴアシーンも増し増しになっていました。

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画像出典元URL:http://eiga.com /左からダイミョウ・ヘルボーイ・アリス

デル・トロ版との違いを打ち出し差別化を図りたいという意図があるのは分かるんですが、それが上手く機能しているかと言うと、個人的には正直、あまり上手くはいってないなーと思いましたねー。(僕がデル・トロ版好きすぎだからかもですが)

ザック・スナイダー症候群

本編を観てまず思ったのは「これ2か3でやるストーリーだろう」と。

リブート作品とはいえ、ぶっちゃけ「ヘルボーイ」ってDCやマーベルのヒーローに比べると明らかにマイナーだし、本作で初めて観るという人も多いと思うんですよ。

なので、第1作となる本作はまずヘルボーイがどんなヒーローなのかを観客に説明しないといけないわけで「皆様ご存知の~」みたいな感じにされても「いや、知らんがな」ってなっちゃうじゃないですか。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 魔女ニムエと覚醒したヘルボーイ。もうどっちが悪役か分からないw

その辺、デル・トロ版は実に上手くやっていて、1作目でヘルボーイの誕生から現在までを手際よく見せていたんですね。
本作でもヘルボーイ誕生については触れているものの、それよりもヘルボーイの出自に関わる「ある秘密」に主軸が置かれているため、登場人物が多く、物語も複雑化して分かりにくくなっいるんですよね。

いやいや、その秘密については続編でやれば良くね?と。

さらに各キャラクター(ヘルボーイ、アリス、ダイミョウ)の過去をいちいち回想シーンで見せているので、その度にストーリーが止まってしまうしダラダラと尺も長くなってしまう

で、本筋とは別件の事件を解決に出向いたヘルボーイが人間に裏切られて命を狙われ人間不信になり、そこにつけ込んだニムエに唆されて人間と魔物との間で悩むエピソードとか、絶対いらないでしょ。

そのくせ、原作読んでないと分からないような超マイナーキャラをフューチャーされてもなー。ファンへの“くすぐり”のつもりかもしれないけど、そんなの極一部のマニアしか喜ばないし、もっと他にやることあるだろっていうね。

あと悪役のニムエの力が強大過ぎて、クライマックスではロンドンの街が文字通りの地獄絵図になるわけですが、1作目でやるには起こる事態があまりに大きすぎて「マン・オブ・スティール」みたいになってるわけですね。

おいおい、いきなりゾッド将軍が敵とか強すぎだろっていう。
スーパーマンとの戦いに巻き込まれて一体何人死んでるんだよ的な。

これ、脚本も担当したマイク・ミニョーラか、それとも監督のニール・マーシャルのアイデアか分かりませんけど、DCEU(DCがマーベルの真似をしたユニバースもの)の初期作品、つまりザック・スナイダーと同じ失敗なんですよね。

観客はまだヘルボーイに感情移入出来てないのに、とんでもない事態に巻き込まれて一般人が死にまくるっていう。
それでもザックは一般人が死ぬ様子を直接は見せてなかったけど、本作では市井の人々が「進撃の巨人」なみに残酷な死に様を見せるので正直ドン引きです。

しかも、そこにヘルボーイは直接関わってなくて、遠く離れた場所でニムエとショボイ戦いの末に何かいい感じの話風にまとめられるんですよね。

なので、いや、お前らのケンカに巻き込まれて死んだ人たちの身にもなってくれよっていう。モヤモヤ感が残ってしまう。

あと、一番の問題はヘルボーイの強さが伝わらない事でして。
基本、ヘルボーイって特殊能力があるわけじゃなくて、ただ超頑丈で腕っ節が強いだけなんですね。
だからこそ余計に、悪者に対して圧倒的な強さを見せないといけないわけですが、本作のヘルボーイは結構序盤から苦戦してるんですよね。

2作目以降とかならともかく、1作目では最初に主人公の強さを見せるのは絶対必要だと思うんですけどね。

魔女がラスボスの映画は…問題

個人的に「ヒーローもので魔女がラスボスの映画は大抵失敗する問題」ってのがあると思うんですね。

スーサイド・スクワッド」しかり「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」しかり「ラスト・ウィッチ・ハンター」しかり「ヘンゼル&グレーテル」しかり。

 一つには、日本人的に魔女=化物という感覚がないっていうのがありますよね。
日本の場合、魔女とか魔女っ子って女児向けアニメのイメージがあるじゃないですか。
なので海外の人に比べて「魔女」に対する恐怖感や嫌悪感がない。

そしてもう一つ、「肉弾戦が見れない問題」があると思うのです。
僕みたいなボンクラがヒーロー映画に期待するのって、最後は正義のヒーローが悪と格闘の末に勝つという展開だと思うんですね。

でも、それを魔女相手にやるとなるとね。

いや、女性が厳ついマッチョをぶん殴って勝つ姿は見ていて爽快だけど、厳ついマッチョが(見た目だけとはいえ)女性をぶん殴る姿とか見てられないじゃないですか。
なので、魔女が悪役の映画って大抵、(魔女の)強力な魔法に苦しみながらヒーローが一瞬の隙をついて勝つor封印する展開になっちゃいますよね。
で、その格闘不足を補うため、厳つい中ボスを出す必要があるので尺が伸びてしまうし、結果的に最終的な決着にカタルシスが生まれづらいような気がするんです。

本作の場合ラスボスは、あの「バイオハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチなので、ヘルボーイとの肉弾戦もアリなんじゃないかと思いましたけど。

https://eiga.k-img.com/images/movie/91101/photo/4e86f5d080d53ba7/640.jpg?1560483938

画像出典元URL:http://eiga.com

あと、ゴア描写に関してもデル・トロ版とは別の世界観を提示したいってのは分かるけど、それだけというか、ゴア描写を見せるためのゴア描写でしかなくて、物語的な必然性はあまり感じられなくて、ただ露悪的に見えちゃうのもどうなのかなと思いました。

まぁ、あまり悪口ばかりでもアレなので良かったところも書くと、ニムエとの決着後のラストシーンで、本当のチームになったヘルボーイ、アリス、ダイミョウが共闘するシーンは爽快感があって良かったし、特にアリスを演じたサッシャ・レインは可愛いしキャラクターとしても印象的で良かったです。

まぁ、本作はアメリカでは大コケしたらしいので続編が作られるかは正直微妙ではありますが(内容的には続編作る気満々でしたけど)、もし続編が作られたら一応劇場に観に行こうかなと思うくらいには楽しめました。

ただ、まだ「ヘルボーイ」を観たことがない人には、まずはギレルモ・デル・トロ監督の「ヘルボーイ」「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー」をオススメしますねー。

興味のある方は是非!

 

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