今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

新時代への願いを込めて「ブラック・ウィドウ」(2021)

ぷらすです。

上手くタイミングが合わず公開から1週間遅れになってしまいましたが、やっと観てきましたよ!
MCU24作目にしてフェーズ4の1作目――になるハズだった『ブラック・ウィドウ』をね!いやー、この2年間、待ちに待ってやっと公開されただけに、本当に感無量でしたねー。

というわけで、今回はまだ劇場公開されたばかりの作品なので、出来る限り本質的なネタバレしないよう気を付けて感想を書きますが、内容について一切触れてほしくないっていう人は、先に劇場で本作を観た後に、この感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

すご腕の暗殺者で世界最高のスパイ、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフが主人公のアクション。超人的な身体能力と、類いまれな美貌を持つヒロインの秘密をひもとく。『アベンジャーズ』シリーズなどでブラック・ウィドウを演じてきたスカーレット・ヨハンソンが続投し、『女王陛下のお気に入り』などのレイチェル・ワイズらが共演。『さよなら、アドルフ』などのケイト・ショートランドがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

2年間、待ちに待った新作がついに公開

ブラック・ウィドウ」は、当初2020年5月1日に日米同時公開の予定で、僕も楽しみにしていたわけですが、ご存じの通り世界的コロナパンデミックによって、都合3度公開が延期され、当初の予定ではMCUフェーズ4の1作目として公開されるハズが、ディズニープラスで配信されるドラマ「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」に先を越される形になり、さらに6月9日から配信されている「ロキ」の途中で公開される形に。

しかも、その間にも都市圏では緊急事態宣言が繰り返され、今回だって本当に公開されるのかビクビクだったわけです。

しかし7月8日、本作は何とか無事公開され、そして今日、僕もやっと観ることができたんですねー。

もうね、ぶっちゃけ内容がどうこうっていうより、久しぶりにスクリーンで見るマーベルのロゴ・イントロが出た瞬間、思わず泣きそうになってしまいましたよ。

ザックリストーリー紹介

本作はMCUシリーズ24作目の作品で、本来はフェーズ4の1作目になるハズだった作品です。
内容は「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」と「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の間を埋める物語で、これまでしっかり語られる事のなかったブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフスカーレット・ヨハンソン)の過去に迫る内容になっているんですね。

まぁ、過去作品の中でもナターシャが旧ソ連KGB部門の一つ、デパートメントXが運営し少女たちを暗殺者・スパイにするべく訓練する「レッドルーム」の出身であることや、元々暗殺者として多くの人々を手にかけていたことは断片的に明かされていますけどね。

で、本作はアベンジャーズの仲間割れで逃亡犯になってしまったナターシャのもとに、”妹”のエレーナ(フローレンス・ピュー)が送りつけてきたケースを狙った敵が急襲するところから物語がスタート。

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色々あって責任者ドレイコフレイ・ウィンストン)を倒しレッドルームを壊滅させるべく、ナターシャとエレーナは“父“のアレクセイ(デヴィッド・ハーバー)と、”母”のメリーナレイチェル・ワイズ)を訪ねる――というストーリー。

そこにド派手なアクションと、“スパイ映画”らしいスリルやどんでん返しがふんだんに盛り込まれたMCUらしいエンターテイメント作品になっているんですね。

その一方で、これまで断片的にしか描かれてこなかった「レッドルーム」や責任者のドレイコフが如何に残酷で恐ろしく醜悪な敵なのかもしっかり描いているのです。

フェーズ3最終作ではなくフェーズ4の1作目だった理由

本作はいわば「アベンジャーズ/エンドゲーム」での、ナターシャがなぜあの決断をしたのかの理由を描く物語であり、エンドゲームでは入りきらなかったブラック・ウィドウの、アベンジャーズ最後の花道を飾る作品になります。

だとしたら、フェーズ3最終作は「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」ではなく本作でよかったのでは?って思うかもですが、観た人なら本作をフェーズ3の最後ではなくフェーズ4の1作目にしようとした制作陣の意図が伝わると思うんですよね。

本作はテーマ的に「キャプテン・マーベル」にかなり近いというか、軽くネタバレすると、モラハラ・セクハラ・パワハラなどのハラスメントから女性が解放されるという内容なんですね。

しかもキャプテン・マーベルでは、ある程度抽象化して描いていたハラスメントのリアリティーや、悪質さ、醜悪さをより具体性をもってハッキリと描いているのです。

例えば女性や少女の誘拐・レイプや、子供たちの人身売買、大人から子供への性的搾取や洗脳などなど、(多分)実際の様々な事件をモデルにしたであろう悪質な行為をこのドレイコフや「レッドルーム」は長年に渡って行っていて、ナターシャ、エレーナ、母親のメリーナは、全員その被害者でもあるわけです。

そして、もっとざっくり言うと「レッドルーム」は男性中心の社会構造と、差別される女性(マイノリティー)の象徴であり、“ブラック・ウィドウたち“の解放にはそのまま、これから訪れるであろう新時代がそうであってほしいという願いが込められているのだと思います。
だから本作は、3章の「最後」ではなく4章の「最初」に据えられたわけですね。

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ただ、ですよ。

コロナによる延期に次ぐ延期や、フェーズ4の公開順が変わってしまったことで、制作陣が本作に込めた(であろう)それらのメッセージが薄まってしまった感は否めないって思ったし、それは別に作り手側の所為ではないだけに、何とももどかしい気持ちなんですよね。おのれコロナめ。

ロジャームーア版007オマージュ?

あと、本作はブラック・ウィドウが主役の作品ということで、スパイ映画的な展開も満載なんですが、ここで言うスパイ映画は「裏切りのサーカス」などのシリアス路線ではなく、ユーセ コーイチ (id:ko_iti301083)さんも評の中で書かれてましたが「ムーンレイカー」など、ロジャー・ムーア版ボンドの荒唐無稽なスパイ映画なんですよね。

まぁ、アベンジャーズMCUの世界観には、リアル路線よりもそちらの荒唐無稽なテイストの方が合うという判断なんだろうと思います。

 だからなのか、本作に仕掛けられている伏線やどんでん返しなどは、正直あまり上手くはないんですよね。
それよりもむしろ、劇中でのアレクセイとエレーナ、メリーナとナターシャ、それぞれのキャラや関係性に力を入れているような感じ。

演じる役者さんたちもいいんですよね。

バカで単純で無神経で自己中心的だけど憎めないアレクセイを演じたデヴィッド・ハーバーは映画やドラマで幅広く活躍しているし、一見優しい母親ながら科学者としてどこか冷めた怖さもあるメリーナ役のレイチェル・ワイズも数多くの作品に出演、「女王陛下のお気に入り」(2018)のサラ・チャーチル役では、英米アカデミー賞にノミネートされています。

で、個人的に特に良かったのはエレーナ役のフローレンス・ピューと、ドレイコフ役のレイ・ウィンストン

フローレンス・ピューと言えば、「ミッドサマー」のダニー役を思い浮かべる人も多いかもですが、本作での彼女は常時不貞腐れたような、あのむすくれ顔がメッチャいいんですよねー! あと、ナターシャの着地をイジるのには笑いましたよw さすが妹w

そしてドレイコフ役のレイ・ウィンストンは、ずんぐりむっくりで黒縁メガネが似合う、ぱっと見人の好さそうなオッサンなんですが、クライマックスでのナターシャとのシーンでは、もうマ・ジ・で「うわ、グーで殴ってやりたい!」ってくらいメッチャムカつくんですよ! 近年のMCUでは珍しい、純粋な悪役って感じ。

で、このドレイコフは別に能力者でも超人でもないただの爺さんなんですが、前述したように本作では旧態依然とした悪しき男社会・父権制度の象徴であり、ある種アレクセイの鏡合わせ的な存在であり、ウィリアム・ハート演じるロス長官との対になるキャラクターなのだと思います。要するに老害ってことですね。

あ、あと、ブダペストでナターシャとエレーナが出会うシークエンスで、ナターシャの着替えシーンがあるんですが、上着を脱いだ彼女の背中が青あざだらけなんですよね。
サラッと流されちゃうシーンですが、ここまでMCU作品を観てきた人にとっては、このシーンこそが本作の白眉だと思いましたねー。

もしも順調に公開されていたら、本作は一連のMCU作品の中でも傑作の一本に数えられていたと思うくらい個人的には面白かったし、それだけに、コロナ騒動で2年も宙づりになっていた所為で、物語としての”鮮度”が落ちてしまったり製作者の想いが薄まってしまったのは、本当に不運としか言いようがなく、個人的にも残念でなりません。

何度も言いますが、本作はスカヨハのブラック・ウィドウ最後の花道なので、出来れば映画館の大画面、大音量で鑑賞して欲しいと思います。

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“怪獣プロレス”の頂点「ゴジラvsコング」(2021)

ぷらすです。

公開初日、朝一の回で観てきましたよ!

ゴジラvsコング」をね!

コロナ禍のせいで2020年11月の公開予定が延期されたり、今年3月にヨーロッパと台湾で公開、アメリカでは劇場とHBO Maxでの公開されたり、そうこうしてる間に緊急事態宣言で劇場が閉められたり色々ヤキモキさせられましたが、何とかやっと無事に観ることができました。

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概要

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に続く“モンスター・ヴァース”シリーズ第4弾となるアクションアドベンチャー。モンスターの戦いで甚大な被害を受けた地球にゴジラが再び出現し、人類はキングコングに戦わせようとする。メガホンを取ったのは『サプライズ』『Death Note/デスノート』などのアダム・ウィンガード。『ターザン:REBORN』などのアレキサンダー・スカルスガルドや前作にも出演したミリー・ボビー・ブラウンカイル・チャンドラーなどのほか、日本からは小栗旬らが出演する。(シネマトゥディより引用)

 

感想

それぞれの経緯

そんなわけで、公開されたばかりの映画なので出来る限りネタバレしないよう、気を付けて感想を書いていこうと思いますよ。っていうか、この映画に関してはネタバレしたところで面白さが損なわれるタイプの作品ではないと思いますが、一応ね。

で、本作はレジェンダリー・エンターテインメント製作の「モンスターバース」シリーズ第4作であり、一応シリーズ完結編になると思います。

ちなみに第1作目が2014年公開の「GODZILLA ゴジラ
続く2作目は2017年公開「キングコング: 髑髏島の巨神
そして、2019年公開「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のあと、コロナ禍での公開延期を経てついに今年、本作が公開されたわけですね。

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っていうか、このシリーズ自体が本作「ゴジラvsコング」のための壮大な前振りでもあるわけで、本作は1962年公開の東宝映画「キングコング対ゴジラ」のリブート作品でもあるわけです。

ご存じのようにゴジラの出自はアメリカが行った水爆実験によって生まれた放射能怪獣ゴジラが東京を襲うという映画で、3.11の東電の事故を基に第一作目を現代版にリブートしてみせたのが庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」です。

一方、その見た目のキャッチ―さからゴジラは子供たちの人気を得て、他の怪獣と戦うシリーズが乱造されるようになり、着ぐるみ怪獣が取っ組み合って闘うそれらの映画群は子供だましとして“怪獣プロレス“の蔑称で呼ばれるようになります。
まぁ、ゴジラが背負った”放射能怪獣”という設定は日本にとってはあまりに重く、そう何本も作れる設定ではなかったんですよね。

その後、昭和ゴジラ、平成ゴジラ、ミレニアムゴジラと「vsシリーズ」の流れを汲んだゴジラは、終了と復活を繰り返し、その流れの中で平成ガメラシリーズでも使われた、怪獣は地球の旧支配者であり、地球を守るバランサーでもあるというゴジラの設定が付け加えられ、その設定がそのまま今回の「モンスターバース」に受け継がれていったと記憶してるんですが、うろ覚えなので間違ってるかも。

一方の「キングコング」は1933年の誕生から2005年までの間、(日本版や続編を除けば)ざっくり3回リブートされているアメリカを代表するモンスター。

物語的には、未開の孤島に住む超デカいゴリラのキングコングが人間に発見され、見世物にしようとニューヨークに連れてこられて大暴れした末に殺されるという悲劇で、これはアメリカやヨーロッパ諸国の植民地政策のメタファーではないかと言われたり言われなかったり?

しかし、レジェンダリー版の「~髑髏島の巨神」では髑髏島の生態系のトップとして君臨、様々なモンスターとサミュエル・L・ジャクソンを倒してスッキリ終わってましたねー。

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で、この「モンスターバース」シリーズを一言で説明するなら、怪獣版天下一武道会みたいな内容で、それぞれの作品で怪獣がトーナメントを戦い、キングコングは髑髏島予選を勝ち抜き、対するゴジラキングギドララドンなどなど、東宝の有名怪獣たちとの死闘を勝ち抜き一応暫定王者に。
そして、本作でついに両雄が直接対決、第一回怪獣王が決まるか!?という、小学生男子大興奮な心躍る内容なのです。

その中で、色んな人間たちが色んな思惑で右往左往する様子も描かれますが、まぁね、そんなのは刺身のツマっていうか、オマケみたいなもんですよ。
主役はあくまでゴジラとコングなので。

両雄並び立つ

そんな本作、前作でキングギドラを制して事実上の怪獣王となったゴジラはしばらく落ち着いていたのに、突如、巨大テクノロジー企業「エイペックス(Apex)」の工場?を襲うというところからスタート。

そんなゴジラに「お前前作で味方になったじゃん!チクショー所詮怪獣は怪獣かよ!」と憤るマーク・ラッセカイル・チャンドラー)に「ゴジラが暴れるには何か理由があるハズよパパ」という娘のマディソン( ミリー・ボビー・ブラウン)に「お父さん忙しいんだから家にいなさい。あと陰謀論ユーチューバーを聞くのもやめなさい」と耳を貸さず。

そんなマークに「お前、前作もその態度のせいで一家離散しかけてたろ」と思ったりしましたが、娘は娘で陰謀論YouTubeにドはまりしてて、まぁ、マークの気持ちも分からいじゃないなーって感じ。

一方、色々あってコングは船で南極に輸送されてるわけですが、ここで襲ってくるゴジラとの第一ラウンドが始まるのは既に予告編でも流れてるので描いても大丈夫ですよね。

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この船上での初コンタクトはまさに大迫力、大興奮でしたよ!

予告編繋がりで言えば、コングと手話で心通わせる少女ジア(カイリー・ホットル)。
vsものの宿命というか、例えば「エイリアンvsプレデター」のプレデターや「フレディvsジェイソン」のジェイソンがそうであったように、本作の場合は観客がコングに感情移入するようなストーリーになってる分、コングがかなり人間寄りというかむしろ擬人化されてる感があったりするんですが、ジアという無垢なキャラクターがクッションになることで、上手くバランスを取ってる感じがしました。あと、単純にジア役の子はかわいいですしね。

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一方、マディソンは持ち前の行動力で車持ちでマディソンに好意を寄せるオタク少年ジョシュ(ジュリアン・デニソン)を呼び出し、どハマり中の陰謀論YouTubeバーニー・ヘイズ(ブライアン・タイリー・ヘンリー)に会いに行きます。
契約社員でもあるバーニーの手引きでエイペックス社に忍び込んだ、彼らがそこで見たのは――っていう物語。

ちなみにジョシュ役を演じてるジュリアン・デニソン君はデッドプールの2作目でクソガキのラッセル役を演じてましたよね。

そんなこんなで話は進み、ゴジラキングコングは前述したように海上で1回、その後香港で2回(?)戦う事になるんですが、3度目の最終決戦は最初の予告編が公開された時から登場が仄めかされていたアイツが登場。

まぁ、登場するのは分かってたし、前作のエンディングロール後にあった引きの部分も本作で大体思った通りの展開になってて、個人的には「東映まんが祭り」的展開が懐かしいなーと思ったり、これはこれで熱いなー!と思ったり。

正直、(ハリウッド制作だし)キングコング優勢なのかな?なんて観に行ったんですけど、制作陣はゴジラに対してちゃんと敬意を払いつつ、双方にしっかり見せ場も作ってくれたのはさすがレジェンダリーだなーと思いましたねー。
おかげで最後までノーストレスで楽しく観ることができましたよ。

あと、本作ではゴジラ初の笑顔も見れるので、そこだけでも必見です。

そのうえで、ゴジラの過去シリーズ、キングコングの過去シリーズ、「キングコング対ゴジラ」などのオマージュシーンも豊富に盛り込まれ、もちろん両者の対決は迫力満点だったし、小栗旬は何か面白い感じになってたし、死ぬべきヤツらは全員サクッと死んでたし、シリーズ最終作に相応しい大団円だったんじゃないでしょうか。

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コロナもあるから地域によってはアレですけど、本作に関しては大画面・大音量で観た方が絶対面白いと思うので、状況が許す人は劇場まで足を運ぶことをおススメしますよ。

興味のある方は是非!!

 

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一筋縄ではいかない作品「音楽」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは俳優としても活躍する漫画家・大橋裕之原作の「音楽と漫画」を、岩井澤健治監督が7年をかけて完成させた”自主制作長編アニメ“『音楽』ですよー!

劇場公開時に噂には聞いてましたが、実際に観てみると「おぉぉ…何か凄いもん観た…(;゚Д゚)」感のある作品でしたねー。

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概要

大橋裕之の原作を基に、岩井澤健治監督がおよそ7年かけてほぼ個人制作で作り上げたアニメーション。楽器に触れたことがない不良たちがバンドを結成し、ロックフェスティバルへの出演を目指す様子を、4万枚超の手描きの作画による映像で描き出す。主人公の声を元ロックバンド「ゆらゆら帝国」の坂本慎太郎が担当し、駒井蓮前野朋哉、芹澤興人、竹中直人天久聖一岡村靖幸らがボイスキャストとして参加している。(シネマトゥデイ より引用)

感想

一筋縄ではいかない作品

本作は俳優であり漫画家の大橋裕之原作のマンガ「音楽と漫画」を原作に、岩井澤健治監督がほぼ個人作業で7年かけて作り上げた自主制作アニメです。

以前、当ブログで堀貴秀監督がほぼ個人作業で7年をかけて作り上げたストップモーションアニメ「JUNK HEAD」のご紹介しましたが、 今アニメ業界では7年かけて1人で作品作るのが流行ってるんでしょうかw

で、原作マンガを描いた大橋裕之さんからして漫画家志望で週刊誌に投稿していたけどまったく賞に引っかからず、2005年から自費出版で作品を発表するうち最初は音楽雑誌で商業デビュー。
「週刊ビッグコミックスピリッツ」の巻末コーナーで4コマ漫画の不定期掲載など商業誌やウェブサイトなどでも活躍。竹中直人山田孝之、齊藤工が監督し今年4月2日に全国公開された映画「ゾッキ」の原作も大橋さんのマンガなんですよね。

そんな大橋さん原作の「音楽と漫画」を7年かけて長編アニメ化した岩井澤健治監督は、高校卒業後、映画監督の石井輝男監督に師事。
実写映画の現場から映像制作を始め、その傍らアニメーション制作を始めて2008年に初のアニメーション作品「福来町、トンネル路地の男」を完成させます。

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以後、アニメーションを中心とした短編映画の制作を続けて2011年から自主制作長編アニメーション映画「音楽」の制作を始めたそう。
で、岩井さんは元々実写畑の人だからという事もあるのか、実写で撮影した映像をトレースなどで絵に起こしていく「ロトスコープ」という技法でアニメを制作していて、クライマックスのライブシーンでは実際にステージを組みミュージシャンや観客を動員してのライブを敢行したのだとか。

それだけでも一筋縄ではいかない感じですが、岩井監督はそれらの実写素材を基に、作画枚数40,000枚超を全て手描きで(しかも1人で)7年の歳月をかけて71分の長編アニメを作り上げたわけです。

「JUNK HEAD」の堀貴秀監督もそうですが、手法や制作にかけた年月、そして完成した作品のクオリティー全てにおいて一筋縄ではいかない、ある種の狂気を感じてしまうんですよねー。

どストレートに“初期衝動”を描く

本作の主人公・研二坂本慎太郎)は他校の生徒にも名前を知られた不良少年。(見た目は完全にオッサンですがw)

そんな彼はある日偶然エレキベースを手に入れたのをキッカケに、思い付きで友人の太田前野朋哉)と朝倉(芹澤興人)を誘ってバンド「古武術」を始めるんですね。
しかし研二は、ギターとベースの違いも分からないくらい音楽の素人だし、他の二人も似たり寄ったり。

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音楽室に置かれていたベースとドラムをパクった3人は、研二の部屋で初めて音を鳴らすんですが、初めて音をだした瞬間に音楽の快感に目覚め、同じ高校のフォークバンド「古美術」の森田(平岩 紙)との出会いもあって、地元の音楽フェスに参加する事になるのだが――というストーリー。

まぁ、ざっくり一言で言えば不良少年がバンドを組んでフェスに参加するだけの超シンプルな物語なんですが、この作品が凄いのは、例えば最初はノリで始めたバンドが何らかの壁にぶつかる――とか、3人の間で軋轢が――とか、色んな挫折を乗り越えて――とか、そういうバンドの苦労みたいな描写は一切なくて、もっともっと手前。「音を鳴らすのって楽しい」っていう”初期衝動”を描くことだけに全てを注いでいるんですよね。

なのでストーリーに注目して映画を観るひとに本作は、「都合がよすぎる」とか「そんなバカな」って思うかもですが、そんな本作にリアリティーを持たせて作品を下支えしているのが伴瀬朝彦(片想い)、澤部渡(スカート)、剣持学人(グランドファンク取締役社長)らが手掛けた音楽の力と、それを聞いた森田や観客の、ビートルズの劇場アニメ「イエローサブマリン」を彷彿させるような脳内イメージの描写や、迫力満点なライブシーンの描写です。

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ホントは「古武術」の音楽について色々語りたいけど、残念ながら僕は音楽に対してはホントに無知で、何かを語れるほどの語彙を持ち合わせてないんですよね。

ただ、クライマックスの研二に、最初は思わず笑ってしまうんだけど次第に映像と音に飲み込まれていくような感覚は、中々味わえない貴重な体験なんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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タイトルに偽りなし「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アマプラで配信中のアメリカ映画『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』ですよー!

もうね、こんなタイトルの映画、観ないわけにはいかないでしょ!
って観たら、何か思ったのと全然違うストーリーでしたよ。

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概要

『アリー/スター誕生』などのサム・エリオットらが出演したアクション。隠居生活を送る元兵士の男が、ビッグフットとの戦いに挑む。ロバート・D・チコフスキがメガホンを取り、ドラマシリーズ「風の勇士 ポルダーク」などのエイダン・ターナーらが出演する。『ブレードランナー』などに携ったダグラス・トランブルリチャード・ユリシックが、VFXに参加している。(シネマトゥディより引用)

感想

ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」の物語

正直、本作のタイトルを最初に見た時は「また日本の配給会社が適当な邦題をつけてる」って思ったんですが、実はこのタイトル原題の直訳でしたw

アメリカには、「トール・テール」というホラ話を西部の開拓者たちの間で語る文化があり、これは日本で言えば桃太郎や金太郎などと同じく、ヒーロー譚の原型でもあり、神話を持たないアメリカ文学の発展にも大きな影響をもたらしているんですね。

そして、本作の一見突拍子もない物語とタイトルには、このトールテールの文脈が背景にあるのだそうです。

本作は冒頭、馴染みのバーで一人酒を飲む老人カルヴィンサム・エリオット)の顔面のアップから物語は始まります。その表情に楽しそうな様子はなく、苦虫を嚙みつぶしたような表情のカルディンのアップから回想パートへ。
若き日のカルディン(エイダン・ターナー)はナチスSSの制服を着て、SSの隊員たちが厳重に警備する邸宅にやってきます。

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そこで持ち物チェックのためポケットから、スキットルやライター、ペンなどを取り出し危険物を持っていない事を確認された彼は、再びその持ち物をポケットに仕舞って建物の中に。

そして2階の廊下を早足で歩きながら先ほどのライターやペン、スキットルなどを次々組み立てるんですね。なんとそれらは組み立て式の銃の部品であり、彼はヒトラー暗殺のためナチスに潜入したアメリカ兵だったのです。

そしてその部屋の奥にはヒトラーの姿が――、ここで店主に肩を叩かれて現実に引き戻されるカルディン。

ってな感じで本作は、年老いたカルディンの若き日のロマンスやヒトラー暗殺に至るまでの回想パートをメインにした前半部分と、老カルディンが政府の依頼を受けカナダの山奥にビックフットを殺しに行く後半部分で構成されているんですね。

で、先にネタバレするとカルディンは前半部分でヒトラーを殺し、後半でビックフットを殺してました。って、タイトルそのまんまの内容でしたねーw

こう書くと、アサイラム的な露悪的悪ふざけB級映画的をイメージするかもしれません。

だって、ヒトラーの方はまぁ100歩譲るとして、ビックフットて!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

しかも普通に出てくるし、そんなに大きくもない。多分180㎝くらいしかない。そして今どきCGでもない着ぐるみのルックもめっちゃショボい。
っていうかそもそもなんで70過ぎのおじいちゃんに依頼を!?――って思うでしょ?

実はこのビックフット、放っておくと世界が滅亡するくらい凶悪なウイルスの保菌者で、半径800㎞だかの(鳥以外の)生物は全滅してしまうらしい。
で、ビックフットがこのままアメリカに近づいてパンデミックが起こる前に、大統領はカナダに核爆弾を落としビックフットを抹殺する計画らしい。

しかし、このビックフットのウィルスにも抗体を持つ人間が世界に数人いて、カルディンはそのうちの一人だったのです。(他は子供と老人しかいない)

そして、ビックフット暗殺の依頼にきたFBIの男は、子供の頃に祖父からナチスハンター・カルディンの伝説を何度も何度も聞かされてきたと。
で、ここで英雄であるハズのカルディンがなぜこんなに寂しい老後を送っているのか、彼に影を落としているのが何なのかがカルディンの口から明かされるんですね。

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最初は政府からの依頼を断るカルディンですが、なんやかんやあってその後カナダの山奥でビックフットとの対決に向かうわけですが、正直映像的な驚きもアクションの面白さも一切ありません。

ただ、それは監督の意図的な演出なんですよね。

ヒトラーとビックフットとカルディン

どういうことかというと、この後半のビックフット殺害は前半のヒトラー暗殺と呼応する形になっているんですね。
ナチス党総統として今も世界に悪名を轟かせているヒトラーですが、彼自体は別に魔王でも悪魔でもない、何処にでもいるただのひ弱な中年男で、それは前半でカルディンと相対するシーンでヒトラーの手が震えている描写で分かるようになっています。

しかし、ホロコーストなどの歴史的悪行と(恐らく)事実を脚色することで膨らんでいったある種の都市伝説(ホラ話)が、ヒトラーを実物以上に恐ろしい男に仕立て上げた部分があるんだと思います。

それは、ビックフットも一緒で、実際には人間とさほど変わらない……っていうか、ちょっと厳つい人間なら素手で倒せそうなショボくて無害な生物なのに、発見談に尾ひれがついて、謎のモンスターにされてしまっている。

まぁ、本作ではカルディンと戦わせるため、かなり無理矢理なウィルス保菌設定がついちゃってますけどねw

そしてカルディン自身も、ヒトラーを殺した男として伝説の存在になっていて、FBIの男の祖父などに語られるうち、どんどん本人とはかけ離れた人物像になっていたのだと思われます。

つまり形は違えど、ヒトラーとビックフットとカルディンはある種の同類なんですね。
前半、ヒトラー暗殺で大きな挫折を味わい、大切な人を失ったカルディンは過去に縛られたままずっと立ち止まっていたわけですが、老人になりビックフットとの対決で生まれ変わったこで、前に一歩を踏み出せるようになったというのが、本作の本質的なテーマなんだと思います。

うん。まぁ、言いたい事は分かる。

分かるんだけど……まぁ、それと面白さはまた別の話でしてw

そうは言っても、別にビックフットみたいなUMAじゃなくても物語は成立すると思うし、ビックフットがウイルスを云々や、カナダに核攻撃云々みたいな設定と、本作で語られる本質の部分は、食い合わせが悪いと思いましたねー。

また、思った以上に静かな作品だし名優サム・エリオットの重厚な演技も相まって、特に回想シーンが多いはかなり退屈に感じてしまいました。

いや、前述した隠し拳銃を組み立てるシーンや、ビックフットを倒すため、沢山並んだ武器の中から古いライフルとナイフを選ぶシーンなんかはグッときましたけどね。

興味のある方は是非!!

 

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三島由紀夫に“出会う“映画「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1969年に東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた、三島由紀夫と東大全共闘の討論会の様子を、当時の関係者、ジャーナリストや文学者のインタビューを交えて追ったドキュメンタリー映画三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』ですよー!

劇場公開時、かなり気になっていたんですが上手く時間が合わず、今回アマプラで配信されてたのでやっと観ることができました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

作家の三島由紀夫が自決する1年半前に行った東大全共闘との討論会に迫ったドキュメンタリー。2019年に発見されたフィルムの原盤を修復したことにより、多くの学生が集まった討論会の様子が鮮明に映し出され、当時の関係者や現代の文学者、ジャーナリストなどの証言を交えて全貌が明らかになる。監督はドラマシリーズ「マジすか学園」などの豊島圭介。(シネマトゥディより引用)

感想

三島由紀夫と東大全共闘、伝説の討論会を追ったドキュメント映画

本作は、作家の三島由紀夫自衛隊市ヶ谷駐屯地でのクーデターに失敗し割腹自殺する1年前の1969年5月13日、東大全共闘の学生からの要望に三島が応える形で東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた伝説の討論会を、(テレビ局としては)唯一取材していたTBSが撮影していた当時のフィルムを高精細映像で復元。

そこに当時の関係者や作家の平野啓一郎氏などのインタビューを追加して構成されたドキュメンタリー映画です。

1968年の東大紛争で安田講堂を占拠するも、翌年(1969)年1月に機動隊によって強制排除され事実上の敗北を喫した全学共闘会議

そのままではいかんと思った彼らは士気向上のため、当時本業の作家活動のみならず、戯曲、俳優、映画監督や舞台演出など幅広く活躍し、右翼思想の政治的発言でも知られるスーパースター、三島由紀夫との討論会を計画。

三島を論破して立ち往生させ、舞台上で切腹させる」と900番教室に集まった学生は1000人を超え会場は異常な熱気を帯び、そこに警察が申し出た護衛を断って単身やってきた三島が登壇。

ついに左翼学生と右翼作家三島の討論会の火ぶたが切って落とされる――。

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という内容。

恥ずかしながら僕は三島の小説は一本も読んだことがなくて、ぶっちゃけて言うと彼に対してマッチョ、ゲイ、右翼、割腹自殺という通り一遍のイメージしかなかったんですよ。

しかし、この作品の中で大勢の学生を前に話す三島は、確かに当時の大人ならではの(今から見れば)豪快な雰囲気はありつつも、その語り口はユーモアに富んでいるし、しっかり学生たちの意見に耳を傾け、学生が仕掛けてくる問答にも即答して逆に閉口させる頭の回転の速さなど、僕が今まで抱いていた三島由紀夫のイメージとはずいぶんかけ離れた印象だったんですね。

最初に壇上に上がった三島は、約10分ほど学生たちに向けて語るんですけど、この時点で全共闘の学生たちは毒気を抜かれてたというか、三島由紀夫の魅力に惹かれちゃってる感じで、討論前のピリついたムードが三島の独演会みたいになっちゃうんですよね。

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文字通り「役者が違う」という感じ。

これはもう三島の独壇場か?と思って観ていると、子連れで現れる一人の男によって空気が変わります。
その男とは現在「ホモフィクタス」主宰で劇作・詩・演出・舞踊・俳優・アートパフォーマーと幅広く活躍する芥正彦。

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彼は三島と互角の論戦を繰り広げ、時には三島を追い詰める場面もあるように見えました。

定期的に「解説」が入る親切設計

「~ように見えました」というのは、ぶっちゃけこの二人が何を話しているのかさっぱり分からなかったからです。(〃ω〃)>

何せ東大生とノーベル賞候補作家というガチのインテリ同士の会話で、話してる内容も、こう、非常に観念的っていうか。
なので、集中して聞いているつもりでも、いつの間にか振り落とされてしまうわけですよ。

ただ、ここが本作の素晴らしいところなんですが、この討論会に至るまでの歴史的背景や全共闘の経緯、当時の三島の活躍や右翼的思想に傾倒していく成り立ちなどは冒頭部分でしっかり説明してくれるし、こちらが討論から振り落とされそうになる丁度いいタイミングでインタビューシーンに切り替わり、「ここで彼らが話しているのは~」と、平野敬一郎、内田樹小熊英二有識者が親切丁寧に解説してくれるのです。

なので、三島や全共闘の学生たちが何について語っているのかが分からないという事は全くないし、当時の時代背景などを予習する必要もないんですよね。

正反対だと思ったら

この討論、全共闘の学生は共産主義を目指す左翼だし、対する三島は自分と同じ思想の若者たちを率いて「楯の会」なる自警団的右翼組織?を結成するゴリゴリの右翼で、両者は正反対のように見えます。
しかし、中盤の解説で、形は違えど三島の思想と根底は一緒だということがだんだん分かってきます。
全共闘と三島が目指しているのは、安保反対、憲法改正をして米国の属国から脱却、独立国家を果たすべきという「反米愛国」なんですよね。

そして、両者がそうした政治的スタンスに至ったのは、国や大人ら体制に裏切られたという失望からなのです。

終戦時三島は大学生で、同世代の仲間や友人を戦争で亡くしているし、自身も戦地で殉職する覚悟を決めていたのが、終戦した途端、政治家や大人たちの掌返しを体験してるわけです。

そうした経験が三島を右翼的思想へと駆り立てたのだろうし、その経験があったからこそ全共闘の学生たちに共感し、討論会への参加を決めたのかな?なんて思ったりしました。

 また、この駒場キャンパス以外の大学でも学生と対話をしていることや翌年の彼の行動から考えると、小説家として、自身の思いを乗せた「言葉」がどこまで若者たちに届くのかの実験のようにも思ったりしました。

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女性差別にも言及する社会派ドキュメンタリー「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ハリウッド映画の現場で活躍するスタントウーマンたちをフューチャーしたドキュメンタリー『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』ですよー!

残念ながら地元のシネコンでは公開されなかったんですが、先日Amazonでレンタルが始まっていたので、早速レンタルしましたよ!

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概要

映画史に刻まれる名アクションシーンでスタントを務めた、スタントウーマンたちに焦点を絞ったドキュメンタリー。ハリウッドで活躍する彼女たちの証言を中心に、女性スタントの歴史や危険なカースタント、発火スタントの舞台裏も映し出す。『ワイルド・スピード』シリーズなどをはじめ、数々のアクション映画に出演してきたミシェル・ロドリゲスが製作総指揮とナビゲーターを担当。『マトリックス』『ワイルド・スピード』シリーズなどの作品で披露されてきたアクションシーンが登場する。(シネマトゥディより引用)

感想

ハリウッド映画の舞台裏を描いただけのドキュメンタリーではない

本作はハリウッド映画やドラマの世界で活躍するスタントウーマンにスポットライトを当てたドキュメンタリー映画で、劇場公開時はネット上でも話題になっていたのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

僕の地元では残念ながら公開されなかったんですが、先日Amazonのレンタルが始まっていたので早速観たんですが、単に映画の舞台裏を描くだけではなくハリウッドに今も横たわる男女・人種差別にも言及する社会派な作品でした。

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画像出展元URL:http://eiga.com

1960年代から活躍し、スタントの組合に加入できなかった女性のための組合を設立するなど、スタントウーマン地位確立のために闘ったジュール・アン・ジョンソン

スタント一家に生まれ、70年代からTVシリーズの「ワンダーウーマン」でリンダ・カーターや、「チャーリーズエンジェル」のケイト・ジャクソンのスタントダブルとして活躍したジーニー・エッパー

(当時の)ハリウッドで初めて黒人女性のスタントウーマンで、スタント業界における人種差別の撤廃にも尽力したジェイディ・デイビッドなど。

後進の道を切り開いたレジェンドたちから、スタントウーマンだけでなくアクション監督としても活躍するメリッサ・スタッブス、「ブラック・ウィドウ」までスカーレット・ヨハンソンのスタントダブルを演じたハイディ・マニーメイカら現役組まで30人のスタントウーマンが出演。
製作総指揮も務めた「ワイルド・スピード」のミシェル・ロドリゲスがナビゲーションも務め、普段のトレーニングや現場の映像を挟みつつ、過去から現在にかけてのスタントの移り変わりについて、インタビューを中心に構成されているのです。

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画像出展元URL:http://eiga.com

しかしこの作品、単なるバックステージを描いたメイキングフィルム的なドキュメントではなく、彼女らスタントウーマンが“男性社会“である映画・スタント業界での不当な待遇との闘いの歴史にも言及しているんですね。

マッチョイムズの呪い

僕が子供の頃、アメリカはレディーファーストの国でアジア諸国に比べて人権先進国だと思い込んでいたけれど、近年のミートゥー運動やブラックマターのニュースを見るたび、「あー、そんな事はないんだな」と。
むしろアジア諸国よりずっと遅れている(ように見える)分があったり、リベラル派が主流な印象のある現在のハリウッドですら、未だそうした差別が根強く横たわっていることに問題の根深さを感じずにいられません。

もちろん、アメリカの成り立ちやお国柄もあると思うので一概には言えませんが、女性差別・蔑視問題に限って言うなら、法やシステムとは別に、未だアメリカマッチョイムズの呪いが解けていない社会の構造に大きな問題がある気がするんですよね。

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特に常に危険が伴うスタントの世界は言わずもがなで、そんな“男性社会“の中で自分たちの居場所を守るため数々の理不尽と戦ってきたスタントウーマンたちの告発は、映画業界だけでなく世界中の女性が共感するだろう普遍的な証言集でもあり、そういう意味で本作には映画史的価値の高いドキュメンタリーになっていると思いましたねー。

映像の少なさ

ただ、うーん……。
インタビュー自体は素晴らしいんだけど、全体的な印象としてはもっと現場の映像を見せてほしかったってのが正直なところでした。
まぁ、権利の問題も絡むだろうし、映像が少ないのは本作だけでなく映画系ドキュメンタリー全体にありがちな問題ではあるんですが、特に本作はスタントウーマンを描いた作品ですからね。
映画の出演シーンや舞台裏のメイキング映像などはかなり重要だと思うし、そういう意味で個人的に本作はちょっと物足りない感じがしました。

まぁ、ない物ねだりなんですけどね。

興味のある方は是非!!

 

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圧倒的世界観に溺れる99分「JUNK HEAD」(2021)

ぷらすです。

一足遅れながら地元のシネコンで限定公開されていたので観てきましたよ『JUNK HEAD』をね!

先に一言で感想を言うなら、孤高のクリエイター・堀貴秀の脳内が100%表現された圧倒的世界観に溺れる99分でした!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

絶滅の危機に瀕した人類が地上で暮らし、地下には人工生命体が住む世界を舞台に描くSFストップモーションアニメ。地下調査員が人工生命体たちと協力しながら人類再生の道を模索する。堀貴秀が監督や原案などを一人で手掛け、制作に約7年の歳月を費やした本作は、第21回ファンタジア国際映画祭で、長編アニメーション審査員特別賞を受賞した。(シネマトゥデイより引用)

感想

製作期間7年!クリエイターの執念と狂気

個人的に「JUNK HEAD」という作品自体は、数年前にYouTubeにアップされていた30分版を観て知っていたし、これだけの規模とクオリティーの作品をたった一人で作り上げたという事にビックリしたんですよね。

www.youtube.com

このYouTube版で、 監督、原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形、セット、衣装、映像効果、音楽、声優すべてをたった一人で担当した堀貴秀さんは高校卒業後、本職の内装業の傍ら芸術活動をしてきたそうですが、新海誠さんがデビュー作「ほしのこえ」を1人で作り上げたことを知って「映画は1人でも作れるんだ!」と衝撃を受け、そこから本職の内装業(といってもテーマパークなど、アート色の強い仕事が多かったらしい)と並行しながら2009年から4年の歳月をかけて、このYouTube版「JUNK HEAD1」を独学で完成。

そして、クラウドファンディングに失敗したり、英語が分からなくてハリウッドからのオファーをうっかり断ってしまったりしつつ、平均3名のスタッフと凡そ3年の時間をかけ、YouTube版を膨らませる形で本作、劇場版「JUNK HEAD」を完成させたのだそうです。

こうしてまとめてしまえば「へー凄いね」くらいの感じでしょうが、たった一人、ストップモーションアニメをイチから独学で学びながら計7年もの間作り続ける堀監督の執念には(いい意味で)狂気を感じるし、そのバックストーリーからもう面白いんですよね。

それは再開発で取り壊されそうになった台湾の「彩虹眷村」の建物を自身の壁画で埋め尽くした黄永阜氏と同じで、まず作品に圧倒され、バックストーリーを知って二度圧倒されるみたいな。
そういうある種の狂気すら感じる過剰さが伝播して、観客の心を動かすのです。

堀貴秀の脳内を100%表現した圧倒的世界観

そんな本作を要約すると、遺伝子操作で長寿になった代償に生殖機能がなくなり絶滅の危機にある未来の人類は、地下世界に暮らす人口生命体[マリガン]の遺伝子情報を調査するため主人公を広大な地下世界へと送り込むのだが――というストーリー。

このあらすじだけ聞けば「どっかで聞いたような設定」って思うかもしれません。
しかし、本作の面白さはその発想自体ではなく、自身の発想を自身の手で100%再現した圧倒的世界観と、その世界観を構成するディテールの作り込みにあるのだと僕は思うんですよね。

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画像出展元URL:http://eiga.com  / 職場の倉庫に作られたセット

例えるなら特撮マンから監督になったギレルモ・デル・トロと同タイプの作家性というか。

人間とは違う進化を遂げた人工生物マリガンたちの、グロかわいいルックや作品世界の独自原語(ポルトガル語かロシア語っぽい?)、食物連鎖が日常だったりマリガンたちにも階層や差別があったり。
そういう堀監督の脳内に広がるイメージを、物語の都合で希釈することなく、主人公を通して僕ら観客に追体験させてくれるんですね。

さらに、作劇場重要なキャラクターが割とあっさり死んでしまったり、っていうかそもそも主人公が劇中で計3回死んでしまったりする展開なんかは、いわゆるハリウッド的作劇とは全然違うし、ストップモーションアニメ界のトップランナーでもあるアードマン社やライカとも違う。その死生観も含めどこか仏教的というか東洋思想がベースにあるような。

https://eiga.k-img.com/images/movie/94631/photo/5d91f6f1d5207233/640.jpg?1614232337

画像出展元URL:http://eiga.com  /この人が…

https://eiga.k-img.com/images/movie/94631/photo/d4e0977ce6eefdd4/640.jpg?1614232331

画像出展元URL:http://eiga.com  / こんな姿に

かといって、じゃぁ中国・韓国・インド映画っぽいかというとそういう訳でもなく、もちろん邦画とも何か違う。あえて言うなら純度100%「堀貴秀の世界」なんですよね。

それはつまり、作劇に他人の考えが入らなかったからこそ実現した純度の高さだと思うし、(色々苦労もあったでしょうが)たった一人で制作していた時間が長かった事の恩恵と言えるかもしれません。

”独学”ゆえのオリジナリティー

あと、恐らく堀監督が元々映像や創作畑の人ではないってのも本作のオリジナリティーに繋がっていて、もちろんストップモーションアニメだから出来ないっていうジャンル的制限もあるかもですが、映画関係のプロなら(映像的にも物語的にも)絶対切るだろうっていうシーンが生かされてたり、逆に、入れれば絶対に盛り上がるシーンやカットが抜けていたり。

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画像出展元URL:http://eiga.com 

そんなある種の違和感や歪さは、観る人によって評価の分かれるところなのだと思うんですが、個人的にはもし脚本や映像・編集などのプロが関わって観客が見やすい様に本作の凸凹を均して観やすく整地されてしまったら、こんなには面白くはなってないと思うんですよね。

劇中の違和感や歪さも含めて「JUNK HEAD」という作品世界を構成しているし、物語自体は王道でストレートなのに、本作には油断したら何処に連れていかれるか分からない緊張感が常にあるのです。

で、そんな感じで圧倒されていると、いきなりジャンプの打ち切りマンガみたいな終わり方をするわけですが、実はこの作品、堀監督の計画では3部作の第2部なのだそうです。(SW的な?w)

で、続編が作られるかどうかは本作のヒットおよび、堀監督の会社「株式会社やみけん」で制作されたパンフレットの売り上げに掛かっているらしい。

というわけで、もしこれから本作を観る機会があれば絶対映画館に観に行った方がいいと思うし、続編を観るためにも鑑賞後はパンフ購入必須ですよ!

興味のある方は是非!!

 

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