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めっちゃお金をかけたトロマ映画!「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」(2021)

ぷらすです!!
今日、劇場で観てきましたよ!

ジェームズ・ガン監督の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』をね!!

いやいやもうね、かなり控えめに言って――

最☆高!!でしたーーー!!(」*゚∀゚)」ウェーイ!

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概要

DCコミックスの悪役たちを集めて結成された「ザ・スーサイド・スクワッド」が、巨大な敵に立ち向かう姿を描くアクション。圧倒的に不利な条件の下、減刑と引き換えに悪役たちが激しいバトルを繰り広げる。監督と脚本を手掛けるのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズなどのジェームズ・ガン。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』などのマーゴット・ロビー、『パシフィック・リム』などのイドリス・エルバ、『ロボコップ』などのジョエル・キナマンらが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

スーサイド・スクワッド」って何なのさ

タイトルにもなっている”スーサイド・スクワッド“は日本語に直訳と「自殺部隊」になります。
第2次世界大戦中のロシアやドイツ軍では、軍規を犯した犯罪者に戦死確実の超過酷な任務をさせたという史実があったそうで、(恐らく)それをヒントに戦後ハリウッドでは、ならず者たちの使い捨て部隊が自殺同然の困難な任務をやり遂げるという戦争娯楽映画が数多く作られたんですね。
日本映画で言えば「兵隊ヤクザ」なんかもこの流れなのかな?

で、それらの映画にヒントを得てDCコミックは、政府が刑務所に収監されているDCヴィランたちで組織した使い捨て部隊、「タスクフォースX」が様々な裏の任務をさせられるというコミックを1959年から刊行、1987年にはバージョンアップされた第2弾が刊行され、シリーズは現在も続いているんですね。

そして、MCUの成功に倣い、デヴィッド・エアー監督版の「スーサイド・スクワッド」が2016年、DCヒーローを一つの世界に集結させる映画シリーズ「DCエクステンデッド・ユニバース」(DCEU)の3作品目として、公開されます。

この作品、予告編の異常な出来の良さから、観客の期待値はMAX状態だったんですが、いざ蓋を開けてみたら「あれ……?何か、思ってたのと違う……」ってなりましてね。
興行成績は結構良かったハズだし、この映画でマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインというキャラクターが跳ねたわけですが、作品の評価としては(僕の知る限り)かなり低かったように思います。

一方、マーベルコミックの実写映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)で2014年に公開された「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(GotG)は、監督も登場キャラクターもまったくの無名ながら、公開されるやファンのハートを鷲掴み、MCU作品――というより、その年のジャンル映画――いや、洋画ナンバー1ヒットを叩き出したんですね。

そのGotGでメガホンを取ったのが、当時はまだ知る人ぞ知るインディー監督だったジェームズ・ガン

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画像出展元URL:http://eiga.com / 新生”スースク”のメンバーたち。ハーレイクインとリック・フラッグ大佐は前作から続投。

そんな彼のキャリアのスタートは「悪魔の毒々モンスター」シリーズなど、グロ・悪趣味・エロ・不謹慎など、インパクト重視のバカバカしい低予算映画、いわゆる「Z級映画」専門のインディー映画制作会社トロマ・エンターティメント
そこで彼は2本の作品を制作、2002年公開の「スクービー・ドゥー」や2004年公開「ドーン・オブ・ザ・デッド」では脚本を担当し、脚本家、映画監督として名前を上げていき、そしてMCUに大抜擢されGtoGの大ヒットで一躍名を知られる存在になるのです。

そして続編「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVOL.2」も大ヒットし、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのガンでしたが、好事魔多し

リベラル派のガンはTwitterでトランプ批判を行いますが、これに腹を立てたトランプ派の男がガンのツイートを漁り、ガンが過去に呟いた不謹慎ギャグを掘り起こして晒したんですね。(なんか、どっかで聞いたような話)

ちなみにその件のツイートに関してガンは、GtoGの監督をする前に謝罪しているんですが、それを知らなかった人も多く、結構な騒ぎになったらしい。
で、マーベルの親会社でもあるディズニーはガンとの契約を解除となり、ガンの監督生命もGtoG3も消滅の危機に立たされるわけです。

そんな傷心のガンに声をかけたのがDCで、ガンは手始めに「ブライトバーン/恐怖の拡散者 」という、もしも子供時代のスーパーマンが反抗期を迎えたらヤバイっていうホラー作品を制作。
そして、「スーサイド・スクワッド」の続編(というか事実上のリブート)である本作の監督に抜擢され、コロナ禍での延期を含みながらも日本では2021年8月13日、めでたく公開に至ったわけですねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 向かって左から、 ポルカドットマン、ピースメイカー、ブラッドスポート、ラットキャッチャー2。

ちなみに、ファンやGtoGキャスト・スタッフらの嘆願と(多分)金の卵をDCに引き抜かれた焦りから、ディズニーは慌ててガンを呼び戻し、GtoG3もめでたく製作される運びになり、彼はDCEUとMCUを股にかけて作品を製作する稀有な監督となったわけです。

その辺はガン監督の人望と実力あればこそだと思いますし、個人的に件のトランプ派の男を一生許す気はありませんが、結果として彼のおかげでマーベル・DC両社でガン監督作品が観られることになったのは行幸というほかなく、まぁ結果オーライなのかなとw

めっちゃお金をかけたトロマ映画=これがザ・スーサイド・スクワッド!!

というわけで、新生スーサイド・スクワッドを観てきたわけですが、感想を一言で言うならめっちゃお金をかけたトロマ映画でしたw

お行儀のいいディズニー傘下のマーベルでは絶対不可能であろう超露悪的な切り株ゴア描写満載、もろもろ不謹慎な描写も満載、お下品&超くだらないギャグも満載。

これぞトロマ魂!っていうか本来ジェームズ・ガンはこっち側の人だった!と思い出させてくれる超楽しい一作だったし、スースクのキャラクターって基本、ジョーカーやペンギンなどの人気ヴィランとは違い、DCヴィランの中でも二流三流の使い捨てヴィランばかりで、そのへんが本作での”トロマ感”ともピッタリハマっていたんですよね。

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画像出展元URL:http://eiga.com / カイジュウも登場!?

それでも観ていて不快にならないのは、作品の根底に弱者やはぐれ者たちに対して徹底的に寄りそう、ガン監督の姿勢…というか視線?あればこそ。

その姿勢は、インディー時代の「スリザー 」 (2006) や「スーパー!」(2010)から一貫しているし、その一方で「正義(ジャスティス)」もしくは「正義の味方(ヒーロー)」に対してガンは、常に懐疑的な視線も投げかけているんですよね。正義そのものというよりは力(権力)の傲慢さや暴走なのかな。

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画像出展元URL:http://eiga.com / ハーレイ・クインは今回も最高!

ジェームズ・ガン作品では常にこの2つの視線が混在していて、それが彼の作家性にも繋がってるし本作もまさにそういう物語で、ネタバレになっちゃうので詳しくは書けませんが、本作の悪役はそのままアメリカという国のメタファーになってるし、だからアレも星の形になってるのかなーなんて勘ぐったりしました。
そういう意味で本作は非常に政治的メッセージを含んだ物語で、極めて露悪的なグロ描写は本作のテーマを絵的に表現しているとも言えますが、逆にそのメッセージ性を盾にエログロやりたい放題している面もあって、その辺は表裏一体なのかなとw

また、ガンは元々脚本家ということもあって、ストーリー構成が見事なんですよね。
本作も132分と昨今のビックバジェット作品としては短めですが、その枠の中にストーリーに必要な情報、テーマ性、笑いやアクションなどなどエンターテイメントに重要なものは全部キッチリと収めているのが実に見事です。

さらにワードセンスも抜群で、例えば、敵地潜入の休憩中、眠ってしまったラットキャッチャー2ことクレオ・カゾ (ダニエラ・メルシオール)を、お腹を空かせたキング・シャーク(シルベスタ・スタローン)が頭から丸かじりしようとするシーン。

そこはブラッドスポートイドリス・エルバ)が間一髪止めるんですが、その後クレオが「友達も食べるの?」と聞くと、キング・シャークは「友達はいない」って答える。

その短いやりとりと周りの表情を映すことで、キング・シャークのこれまでの人生だけでなく、彼ら(スースクメンバー)が同じ孤独を抱えている事が分かるわけですねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 嘘みたいだろ…こいつ、スタローンなんだぜ…

ぶっ飛んだ展開やバカバカしい笑いの合間に、こういうちょっとしたワードやシーンを積み重なることでキャラが立ち、だからクライマックスのあるシーンでは観てるこっちも、爆笑しつつも思わずグッときてしまう。

まさにジェームズ・ガンの真骨頂と言った感じだったし、これがスースクだろ!って思いましたよ。

もちろん劇中挿入される楽曲選びや、ポップでカラフルでちょっとレトロフューチャーな色使いも最高でした。

興味のある方はぜひ!!!

 

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車大喜利ここに極まる!「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」(2021)

ぷらすです。

今日、劇場に見に行ってきましたよ。
ワイルドスピード/ジェットブレイク」をね!

いやー、間にホブス&デッカードW主演のスピンオフを挟んでいるとはいえ約5年ぶりのシリーズ最新作は、最初から最後まで見せ場山盛りアクション全部乗せって感じでしたねー!

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概要

人気カーアクション『ワイルド・スピード』シリーズの9作目。主人公ドミニクと苦楽を共にしてきたファミリーの絆を揺るがす新たな試練が描かれる。ドミニク役のヴィン・ディーゼルをはじめ、ミシェル・ロドリゲスジョーダナ・ブリュースターらおなじみの面々が集結し、『ワイルド・スピード ICE BREAK』に出演したシャーリーズ・セロン、プロレスラーのジョン・シナらが共演。『ワイルド・スピード EURO MISSION』などシリーズ4作の監督を務めたジャスティン・リンがメガホンを取る。(シネマトゥディより引用)

感想

ワイスピ・クロニクル

2001年公開の「ワイルドスピード」から約20年をかけシリーズ9作目となる本作は、本来昨年公開の予定がコロナ騒動で1年延期され、また劇中の人気キャラ・ホブス&デッカードW主演のスピンオフ作品「ワイルドスピード/スーパーコンボ」(2019)を挟んだとはいえ、前作「ワイルド・スピード/ ICE BREAK」(2017年)から約5年ぶり。まさにファン待望の新作になります。

今でこそマッスルカ―やスポーツカーを使ったド派手過ぎるおバカアクションが売りの本シリーズですが、2001年の第1作は低予算ではないけど今ほどビックバジェットでもなく、わりと中規模でストーリーもしっかり練られた硬派な映画という印象でした。

続く第2作「ワイルド・スピードX2」(2003年)では主役の一人ドミニク・トレット役のヴィン・ディーゼルと監督のロブ・コーエンが降りたことで、もう一人の主役ブライアン・オコナー役のポール・ウォーカーを単独主演にジョン・シングルトン監督で制作するも、前作ほどのインパクトや面白さには届かず。

3作となる「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」(2006)では、ヴィン・ディーゼルに続き、ポール・ウォーカーら前作までのメインキャストを確保できなかったことから、舞台を東京に移して独自の文化「ドリフト」にスポットを当てた作品を制作。
ここで初めて、後に6作目までシリーズを牽引することになるジャスティン・リン監督が初登板するんですが、そもそも主役の二人が出ない「ワイルド・スピード」の評価は低く、興行成績もイマイチの結果に。

一方、ヴィン・ディーゼルの方も、この間に出演した主演作がことごとく失敗。
そこで、ジャスティン・リンが監督を続投し、ヴィン・ディーゼルポール・ウォーカーミシェル・ロドリゲスジョーダナ・ブリュースターらオリジナルメンバーが再度集結する形で続く第4作「ワイルド・スピード/MAX」(2009)を公開。評価は割れたものの久しぶりのヴィン、ウォーカーのW主演ということで作品はヒットします。

続く5作目「ワイルド・スピード/MEGA MAX」では、ストリートレースやカーマニア要素はほぼ排して車を使った強盗アクションシリーズに転換。
銃撃戦や乱闘、強盗などのアクションとチームプレイがメインになり、また元プロレスラーで人気アクション俳優の“ロック様“ことドウェイン・ジョンソンがホブス捜査官として初登場した事でも話題に。

そして2013年公開の第6作「ワイルド・スピード EURO MISSION」では、第4作で死んだはずのドミニクの恋人レティ(ミシェル・ロドリゲス)が実は生きていたり、ドミニカたちがレーシングカーやスポーツカーで戦車と戦うなど、盛りだくさんの内容に。

この勢いのまま製作に入った第7作「ワイルド・スピード/SKY MISSION」(2015)では、監督をジャスティン・リンから「ソウ」シリーズなどのジェームズ・ワンに交代。
ところが、撮影途中で主役格の一人ポール・ウォーカーが突然の交通事故により死亡。
残りのシーンを彼の兄弟などの協力を得て撮影し、また、ヴィン・ディーゼルドウェイン・ジョンソンジェイソン・ステイサムら豪華キャスト集結ということで作品はシリーズ最高の興行収入を叩き出し、ここに「ワイルドスピード」シリーズは一つの頂点を迎えるんですね。

ちなみに、ポール・ウォーカーが演じていたブライアンは、劇中ではドムたちと分かれて家族と平穏暮らすことを選んだ(つまり生きている)という設定になっています。

続く8作目「ワイルド・スピード/ICE BREAK」(2017)では、敵役に「MADMAX:怒りのデスロード」のシャーリーズ・セロンを迎え、ついには車で潜水艦と戦ったり、魚雷を素手で掴んで敵に投げつけたりと、何かもう行くところまで行った感じでしたが、前作ほどのインパクトは残せずという印象。

そして、前述したようにホブス&デッカードを主役に据えたスピンオフ「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」を挟む形で、2021年の今年、ヴィン・ディーゼルと共にワイスピシリーズを支えてきた功労者、ジャスティン・リンが2作品ぶりに監督に復帰して本作「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」が製作・公開されたんですねー。

あらすじ紹介

そんな本作のあらすじをざっくりご紹介すると、息子のリトルB(なんとヴィン・ディーゼルの実の息子らしい)と人里離れた田舎で平穏に暮らすドムヴィン・ディーゼル)とレティミシェル・ロドリゲス)夫婦のもとに、ある日、チームの仲間テズ(クリス・“リュダクリス”・ブリッジス)、ローマン(タイリース・ギブソン)、ラムジー(ナタリー・エマニュエル)の三人が訪ねてきます。

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と言うのも、彼らの素にCIAのミスター・ノーバディカート・ラッセル)から救難要請が送られてきたというんですね。

どうも、ノーバディーは専用機で超ヤバイ兵器(というかガジェット)を輸送中に襲われたようで、彼らがGPSを辿って墜落場所に着くと、当然のように襲い掛かってきた敵の中に、なんとドムの実の弟ジェイコブジョン・シナ)の姿が。

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画像出展元URL:http://eiga.com プロレスラーで俳優のジョン・シナと前作から引き続き登場のシャーリーズ姐さん

ちなみにそのヤバい兵器とは、世界中のコンピューターをハック出来る装置らしく、ジェイコブと仲間たちはそれを使って世界転覆を企んでいるらしい。

ドムと仲間たちは、そんなジェイコブらの計画から世界を守るため世界を駆け巡り――という物語。

うん、まぁ、つまりはいつものワイスピですよw

これは予告編でもバンバン流れているのでネタバレじゃないですが、第9作目にしてドムに弟がいたとか、3作目で死んだハズの仲間ハン(サン・カン)が実は生きてたとか、もう今さら驚きもしませんよ。

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画像出展元URL:http://eiga.com すっかりオッサンになったサン・カン演じるハン

ワイスピシリーズでは後付け設定なんて普通だし、死んだハズのキャラは実は生きてた――も当たり前ですからね。

とはいえ一応、今回語られるドムとジェイコブの過去の因縁(の原因)については、第1作で語られてはいるんですが、これは第1作の時点で本作の構想(ドムに兄弟がいる設定)を考えていたわけではなく、多分、本作の設定を考えてる時に第1作で語られた設定を思い出したって感じなんでしょうね。

さらに本作では、第3作「TOKYO DRIFT」の主役ショーン・ボズウェル(ルーカス・ブラック)を始め過去作で登場したキャラクターたちが次々に登場。

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画像出展元URL:http://eiga.com こちらもすっかりオッサンになったルーカス・ブラック

さしずめワイスピ版「アベンジャーズ」的なお祭り感満載なんですよね。

というのも、本作はワイスピ最終章三部作の第1作に位置付けられていて、残り2作でワイスピはシリーズの幕を閉じるという事らしいです。

大喜利ここに極まれり!

さて、そんなワイスピのもう一つの魅力と言えば、ドムが駆るマッスルカ―、ダッジ・チャージャーを始めとしたスーパーカーを使って何が出来るのかっていう、いわば”車大喜利

その始まりは多分、第5作「MEGA MAX」で、巨大金庫を二台のチャージャーSRT-8で街中引っ張りまわすというカーアクションからだと思うんですね。
で、これでリミッターが外れたというか、続く「EURO MISSION」ではハイウェイ上で戦車と戦い、第7作「SKY MISSION」では車でスカイダイビング。高層ビルと高層ビルの間をジャンプ、そしてクライマックスでは軍事ヘリを撃破。

あげく「ICE BREAK」では潜水艦と戦闘・撃破するなど、本数を重ねるごとに大喜利はインフレを重ね、そして本作では車でバンジーしたり超強力磁石を使ったり、そしてクライマックスではとうとう――。

と、その先は是非ご自身の目で確かめて欲しいんですが、もうね、さすがに行きつくところまで行きついちゃったっていうか、それ以上はありませんよっていう。

ただ、ここでそれをしたのがテズとローマンってところが、第1作から追っているファン的には熱い展開でしてね。

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画像出展元URL:http://eiga.com 古参キャラとしてワイスピを支えるテズとローマン

2人は第2作から登場している古参キャラながら、次々に新キャラが登場する本シリーズでは(元々の資質もあるけど)徐々に脇に追いやられている感じだったんですが、本作では割と序盤からフューチャーされていて、そしてクライマックスではヘタレのローマンがついに男を見せるっていう。

その辺は、やはり4作目~6作目にかけてシリーズやキャラクターをずっと支えてきたジャスティン・リン監督だからこそって感じの展開なんですよねー。

とはいえ、2時間25分はさすがに長すぎるとは思ったりしましたけども。

リアルだからこその迫力

で、本作の白眉でもある超強力磁石を使った街中でのカーチェイスシーン。
予告編でも使われているので観ている人も多いと思うんですが、実はこのシーン、ほぼほぼCGではなく実車を使ってのカースタントなんですよね。
YouTubeで探すと公式で短いメイキングが観られるんですが、走行してる車や停車してる車をワイヤーで引っ張って衝突させたり、跳ね上げ機を使って車を吹っ飛ばしたり。

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もちろんCGは使われてるんでしょうけど、それはあくまでワイヤーを消すとか補助的な役割であって、実はワイスピってシリーズ1作目から、人間と実車によるスタントやアクションにこだわっているし、だからこそ車の質感や質量を伴ったリアリティーと迫力溢れる映像になってるんですよね。

まぁ、さすがにやり過ぎてて毎回笑っちゃうんですけどもw

あと、本作でもブライアンがちゃんと“いる”ことにしてくれているところは、思わずグッときてしまいました。

そんなわけでシリーズも残すところあと2作。楽しみにしたいと思います!

興味のある方は是非!!

 

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ファンの後押しにより配信で復活「ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前々から観なきゃ観なきゃと思いつつ中々手が出なかった『ジャスティス・リーグザック・スナイダーカット』ですよー!!

うん、先に結論から言っちゃいますけど………

めっっっっっちゃ面白かった!!

多分、あちこちの配信で観られると思うので、劇場版「ジャスティス・リーグ」(2017)に納得のいってない人は絶対観た方がいいです。
まぁ、4時間あるけどねw

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概要

2017年に公開された『ジャスティス・リーグ』を制作中に降板したザック・スナイダー監督が抱いていた構想に基づき、追加撮影や再編集を施したディレクターズカット版。バットマンワンダーウーマンたちがチームを結成し、世界の存亡を懸けた戦いに挑む。バットマン役のベン・アフレック、スーパーマン役のヘンリー・カヴィルワンダーウーマン役のガル・ガドットらが出演している。(シネマトゥディより引用)

感想

ファンの後押しで配信作品として復活

まず、「ジャスティス・リーグザック・スナイダーカット」とは何かについて、軽く説明します。

2017年公開の「ジャスティス・リーグ」はスーパーマンバットマンワンダーウーマン、フラッシュ、アクアマン、サイボーグというDCヒーローがチームを組んで、闇の支配者ダークサイドから地球を守るという、いわばDC版「アベンジャーズ」的作品で、当初「マン・オブ・スティール」(2013)、「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」(2016)も手掛けたザック・スナイダーが監督で制作が進んでいました。

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しかし、製作途中に娘さんを亡くしたことで、ザックは監督を途中降板。
MCUで「アベンジャーズ」(2012)を手掛けたジョス・ウェドンがノークレジットながら監督を引き継ぎ、2017年に劇場版「ジャスティス・リーグ」が公開されるんですね。

ところが、この「ジャスティス・リーグ」は興行成績も批評も散々な出来に。
まぁ、ザックがほぼ撮影を終わらせ編集に入るタイミングで降板、作品を引き継いだジョス・ウェドンにワーナーブラザーズは、当初前後編になる予定だった作品を2時間にまとめるよう指示したとも言われていて、流石のジョス・ウェドンもあらすじをまとめるだけで精一杯だったんじゃないでしょうか。

そして、この作品の失敗でDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)はシリーズ化を断念。ホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」から、DCの人気キャラクターを主役に据えた作品をそれぞれ単独映画として作っていく方向に舵を切ったわけです。

その後、ザックが退任前に考えていた作品の構想が明らかなると、ファン、スタッフ、キャストはザックスナイダー版の公開を嘆願。
これを受けて「ジャスティス・リーグザック・スナイダーカット」が、HBO Maxで2021年3月18日に公開されたわけですね。

4時間越えの超大作

ただまぁ、個人的に「マン・オブ・スティール」や「bvs ジャスティスの誕生」と、明らかにフランク・ミラーアラン・ムーアらモダン・エイジ世代のアメコミ大好きかつ多大な影響を受けているザックの中二病的作風や、やたらスローモーションを多用したテンポの悪いアクションが正直苦手で。
なので、ぶっちゃけていえば世間的には評判の悪いジョス・ウェドン版の「ジャスティス・リーグ」を観た時だって「そうそう!こんな明るく楽しいDC映画が観たかったんだよ!!」って思ったくらいですよ。

なので、この「スナイダーカット」の配信が始まって、あちこちから良い評判を聞くたび気になりつつも、本編だけで4時間越えという長尺に、正直、観るのめんどくさい!って中々食指が伸びなかったわけです。基本的な内容はジョス版と変わらないという話だったので尚更。

でもまぁ、僕もヒーロー映画好きなボンクラの端くれとして「ジャスティス・リーグ」の別バージョンがあると聞けば観ないわけにはいかないわけで、この度、意を決してAmazonvideoでレンタルし、本作を観たわけです。

で、まず最初に思ったのは「なんだよやれば出来るじゃんザック!」で、次に思ったのは「いままでナメててゴメン…」でした。

僕はこれまでノーランの、やたら暗くて重くて、冗長でシリアスぶってる割にアチコチ間の抜てるストーリーテリングを引き継いだようなザックの監督作品には正直辟易したんですが、彼は決してスト―リーテリングが下手だったわけじゃなく、前2作(「マン・オブ・スティール」143分&「BvS」152分)では単純に時間が足りてなかったんだってのが、今回の作品でやっと分かりましたよ。

というのも、ザック・スナイダーという作家はゴリゴリのアメコミオタクゆえに、普通なら物語や映像的にテンポが悪くなるから切るようなカットやシーンも絵面優先でカッコいいと思ったら全部入れちゃう。つまり、映画を撮ってるというより大好きなアメコミの世界を忠実に再現することが彼の作風だった訳です。

なので本作では、バットマンスーパーマンワンダーウーマン、そして本作が映画デビューのフラッシュアクアマンサイボーグらの背景や心情を描いたドラマパートとカッチョイイ見せ場がたっぷり用意されつつ、前作、前々作の伏線もしっかり回収され、ついでに言えばジョス・ウェドン版ではよく分からなかったステッペンウルフやダークサイドといった悪役の輪郭も立体的に描かれているんですね。そりゃあ4時間かかるよって話ですが、おかげで本作の物語には厚みと説得力があるのです。

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まぁ、だからって4時間はいくらなんでも長いし観るまでには相当な覚悟がいるけれど、作品が章立てになってることもあり、一度観始めちゃえばグイグイ物語に引き込まれていくんですよね。

1本の映画を観てるというより全6話の海外ドラマを一気見してる感覚に近いかもしれません。

オータムに捧ぐ

そんな本作のラストには「オータムに捧ぐ」の文字が。

オータムというのは、ザック・スナイダーと妻でプロデューサーのデボラ・スナイダーの娘さんの名前。
伝え聞く話によれば、彼女オータムはスナイダー夫妻が「ジャスティス・リーグ」の制作中に自死したのだそうです。

むろん、彼女が死に至った理由、両親との関係性などは他人の僕には知る由もありませんが、作中で描かれた若きスーパーヒーロー・サイボーグことビクター・ストーンレイ・フィッシャー)と父親エリノア・ストーン(カレン・ブライソン)とのドラマパートにザックの娘さんへの悔恨と贖罪の気持ちが重なっているように見えるんですよね。

サイボーグの父親エリノアは作中に登場する、宇宙人のテクノロジーの解析を行う博士で、研究に没頭するあまり息子ビクターとの関係に深い溝が出来てしまっているんですね。
そんなある日、妻とビクターが交通事故に遭い、妻は即死、息子ビクターは瀕死の状態に。そんな息子の命を救うため、彼はビクターと太古に封印されたマザーボックスを融合させるのです。

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その結果、文字通りサイボーグになったビクターは、それ以前の確執も手伝って自分をそんな醜い姿にした父親を恨み、エリノアの方もその不器用さからビクターとの関係を修復出来ずにいるのです。

2017年のジョス・ウェドン版ではこのサイボーグと父親との関係はほとんどカットされていたわけですが、今回のスナイダーカットでは物語の中心に置かれる重要なパートであり、またサイボーグ以外のキャラクターたちにも親子や恋人など大切な人との関係を描くパートが随所に挿入されているんですよね。

つまり、本作のテーマは「家族」なのです。

もちろん撮影時のザックはそんなこと意識してなかったと思うし、僕の勝手な妄想かもしれませんが、エンターテイメント作品に徹しながらも随所で描かれる「親子」と「贖罪」は、ザック・スナイダーから亡くなったオータムさんへのメッセージのように思えるし、奇しくもそのことが、映像でアメコミを再現することにしか興味のなかったオタク監督、ザック・スナイダー作品では今まで感じた事のなかった質量というか、各キャラクターに生命の重みのようなものを感じて、グッときてしまいましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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新時代への願いを込めて「ブラック・ウィドウ」(2021)

ぷらすです。

上手くタイミングが合わず公開から1週間遅れになってしまいましたが、やっと観てきましたよ!
MCU24作目にしてフェーズ4の1作目――になるハズだった『ブラック・ウィドウ』をね!いやー、この2年間、待ちに待ってやっと公開されただけに、本当に感無量でしたねー。

というわけで、今回はまだ劇場公開されたばかりの作品なので、出来る限り本質的なネタバレしないよう気を付けて感想を書きますが、内容について一切触れてほしくないっていう人は、先に劇場で本作を観た後に、この感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

すご腕の暗殺者で世界最高のスパイ、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフが主人公のアクション。超人的な身体能力と、類いまれな美貌を持つヒロインの秘密をひもとく。『アベンジャーズ』シリーズなどでブラック・ウィドウを演じてきたスカーレット・ヨハンソンが続投し、『女王陛下のお気に入り』などのレイチェル・ワイズらが共演。『さよなら、アドルフ』などのケイト・ショートランドがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

2年間、待ちに待った新作がついに公開

ブラック・ウィドウ」は、当初2020年5月1日に日米同時公開の予定で、僕も楽しみにしていたわけですが、ご存じの通り世界的コロナパンデミックによって、都合3度公開が延期され、当初の予定ではMCUフェーズ4の1作目として公開されるハズが、ディズニープラスで配信されるドラマ「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」に先を越される形になり、さらに6月9日から配信されている「ロキ」の途中で公開される形に。

しかも、その間にも都市圏では緊急事態宣言が繰り返され、今回だって本当に公開されるのかビクビクだったわけです。

しかし7月8日、本作は何とか無事公開され、そして今日、僕もやっと観ることができたんですねー。

もうね、ぶっちゃけ内容がどうこうっていうより、久しぶりにスクリーンで見るマーベルのロゴ・イントロが出た瞬間、思わず泣きそうになってしまいましたよ。

ザックリストーリー紹介

本作はMCUシリーズ24作目の作品で、本来はフェーズ4の1作目になるハズだった作品です。
内容は「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」と「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の間を埋める物語で、これまでしっかり語られる事のなかったブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフスカーレット・ヨハンソン)の過去に迫る内容になっているんですね。

まぁ、過去作品の中でもナターシャが旧ソ連KGB部門の一つ、デパートメントXが運営し少女たちを暗殺者・スパイにするべく訓練する「レッドルーム」の出身であることや、元々暗殺者として多くの人々を手にかけていたことは断片的に明かされていますけどね。

で、本作はアベンジャーズの仲間割れで逃亡犯になってしまったナターシャのもとに、”妹”のエレーナ(フローレンス・ピュー)が送りつけてきたケースを狙った敵が急襲するところから物語がスタート。

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色々あって責任者ドレイコフレイ・ウィンストン)を倒しレッドルームを壊滅させるべく、ナターシャとエレーナは“父“のアレクセイ(デヴィッド・ハーバー)と、”母”のメリーナレイチェル・ワイズ)を訪ねる――というストーリー。

そこにド派手なアクションと、“スパイ映画”らしいスリルやどんでん返しがふんだんに盛り込まれたMCUらしいエンターテイメント作品になっているんですね。

その一方で、これまで断片的にしか描かれてこなかった「レッドルーム」や責任者のドレイコフが如何に残酷で恐ろしく醜悪な敵なのかもしっかり描いているのです。

フェーズ3最終作ではなくフェーズ4の1作目だった理由

本作はいわば「アベンジャーズ/エンドゲーム」での、ナターシャがなぜあの決断をしたのかの理由を描く物語であり、エンドゲームでは入りきらなかったブラック・ウィドウの、アベンジャーズ最後の花道を飾る作品になります。

だとしたら、フェーズ3最終作は「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」ではなく本作でよかったのでは?って思うかもですが、観た人なら本作をフェーズ3の最後ではなくフェーズ4の1作目にしようとした制作陣の意図が伝わると思うんですよね。

本作はテーマ的に「キャプテン・マーベル」にかなり近いというか、軽くネタバレすると、モラハラ・セクハラ・パワハラなどのハラスメントから女性が解放されるという内容なんですね。

しかもキャプテン・マーベルでは、ある程度抽象化して描いていたハラスメントのリアリティーや、悪質さ、醜悪さをより具体性をもってハッキリと描いているのです。

例えば女性や少女の誘拐・レイプや、子供たちの人身売買、大人から子供への性的搾取や洗脳などなど、(多分)実際の様々な事件をモデルにしたであろう悪質な行為をこのドレイコフや「レッドルーム」は長年に渡って行っていて、ナターシャ、エレーナ、母親のメリーナは、全員その被害者でもあるわけです。

そして、もっとざっくり言うと「レッドルーム」は男性中心の社会構造と、差別される女性(マイノリティー)の象徴であり、“ブラック・ウィドウたち“の解放にはそのまま、これから訪れるであろう新時代がそうであってほしいという願いが込められているのだと思います。
だから本作は、3章の「最後」ではなく4章の「最初」に据えられたわけですね。

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ただ、ですよ。

コロナによる延期に次ぐ延期や、フェーズ4の公開順が変わってしまったことで、制作陣が本作に込めた(であろう)それらのメッセージが薄まってしまった感は否めないって思ったし、それは別に作り手側の所為ではないだけに、何とももどかしい気持ちなんですよね。おのれコロナめ。

ロジャームーア版007オマージュ?

あと、本作はブラック・ウィドウが主役の作品ということで、スパイ映画的な展開も満載なんですが、ここで言うスパイ映画は「裏切りのサーカス」などのシリアス路線ではなく、ユーセ コーイチ (id:ko_iti301083)さんも評の中で書かれてましたが「ムーンレイカー」など、ロジャー・ムーア版ボンドの荒唐無稽なスパイ映画なんですよね。

まぁ、アベンジャーズMCUの世界観には、リアル路線よりもそちらの荒唐無稽なテイストの方が合うという判断なんだろうと思います。

 だからなのか、本作に仕掛けられている伏線やどんでん返しなどは、正直あまり上手くはないんですよね。
それよりもむしろ、劇中でのアレクセイとエレーナ、メリーナとナターシャ、それぞれのキャラや関係性に力を入れているような感じ。

演じる役者さんたちもいいんですよね。

バカで単純で無神経で自己中心的だけど憎めないアレクセイを演じたデヴィッド・ハーバーは映画やドラマで幅広く活躍しているし、一見優しい母親ながら科学者としてどこか冷めた怖さもあるメリーナ役のレイチェル・ワイズも数多くの作品に出演、「女王陛下のお気に入り」(2018)のサラ・チャーチル役では、英米アカデミー賞にノミネートされています。

で、個人的に特に良かったのはエレーナ役のフローレンス・ピューと、ドレイコフ役のレイ・ウィンストン

フローレンス・ピューと言えば、「ミッドサマー」のダニー役を思い浮かべる人も多いかもですが、本作での彼女は常時不貞腐れたような、あのむすくれ顔がメッチャいいんですよねー! あと、ナターシャの着地をイジるのには笑いましたよw さすが妹w

そしてドレイコフ役のレイ・ウィンストンは、ずんぐりむっくりで黒縁メガネが似合う、ぱっと見人の好さそうなオッサンなんですが、クライマックスでのナターシャとのシーンでは、もうマ・ジ・で「うわ、グーで殴ってやりたい!」ってくらいメッチャムカつくんですよ! 近年のMCUでは珍しい、純粋な悪役って感じ。

で、このドレイコフは別に能力者でも超人でもないただの爺さんなんですが、前述したように本作では旧態依然とした悪しき男社会・父権制度の象徴であり、ある種アレクセイの鏡合わせ的な存在であり、ウィリアム・ハート演じるロス長官との対になるキャラクターなのだと思います。要するに老害ってことですね。

あ、あと、ブダペストでナターシャとエレーナが出会うシークエンスで、ナターシャの着替えシーンがあるんですが、上着を脱いだ彼女の背中が青あざだらけなんですよね。
サラッと流されちゃうシーンですが、ここまでMCU作品を観てきた人にとっては、このシーンこそが本作の白眉だと思いましたねー。

もしも順調に公開されていたら、本作は一連のMCU作品の中でも傑作の一本に数えられていたと思うくらい個人的には面白かったし、それだけに、コロナ騒動で2年も宙づりになっていた所為で、物語としての”鮮度”が落ちてしまったり製作者の想いが薄まってしまったのは、本当に不運としか言いようがなく、個人的にも残念でなりません。

何度も言いますが、本作はスカヨハのブラック・ウィドウ最後の花道なので、出来れば映画館の大画面、大音量で鑑賞して欲しいと思います。

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“怪獣プロレス”の頂点「ゴジラvsコング」(2021)

ぷらすです。

公開初日、朝一の回で観てきましたよ!

ゴジラvsコング」をね!

コロナ禍のせいで2020年11月の公開予定が延期されたり、今年3月にヨーロッパと台湾で公開、アメリカでは劇場とHBO Maxでの公開されたり、そうこうしてる間に緊急事態宣言で劇場が閉められたり色々ヤキモキさせられましたが、何とかやっと無事に観ることができました。

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概要

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に続く“モンスター・ヴァース”シリーズ第4弾となるアクションアドベンチャー。モンスターの戦いで甚大な被害を受けた地球にゴジラが再び出現し、人類はキングコングに戦わせようとする。メガホンを取ったのは『サプライズ』『Death Note/デスノート』などのアダム・ウィンガード。『ターザン:REBORN』などのアレキサンダー・スカルスガルドや前作にも出演したミリー・ボビー・ブラウンカイル・チャンドラーなどのほか、日本からは小栗旬らが出演する。(シネマトゥディより引用)

 

感想

それぞれの経緯

そんなわけで、公開されたばかりの映画なので出来る限りネタバレしないよう、気を付けて感想を書いていこうと思いますよ。っていうか、この映画に関してはネタバレしたところで面白さが損なわれるタイプの作品ではないと思いますが、一応ね。

で、本作はレジェンダリー・エンターテインメント製作の「モンスターバース」シリーズ第4作であり、一応シリーズ完結編になると思います。

ちなみに第1作目が2014年公開の「GODZILLA ゴジラ
続く2作目は2017年公開「キングコング: 髑髏島の巨神
そして、2019年公開「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のあと、コロナ禍での公開延期を経てついに今年、本作が公開されたわけですね。

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っていうか、このシリーズ自体が本作「ゴジラvsコング」のための壮大な前振りでもあるわけで、本作は1962年公開の東宝映画「キングコング対ゴジラ」のリブート作品でもあるわけです。

ご存じのようにゴジラの出自はアメリカが行った水爆実験によって生まれた放射能怪獣ゴジラが東京を襲うという映画で、3.11の東電の事故を基に第一作目を現代版にリブートしてみせたのが庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」です。

一方、その見た目のキャッチ―さからゴジラは子供たちの人気を得て、他の怪獣と戦うシリーズが乱造されるようになり、着ぐるみ怪獣が取っ組み合って闘うそれらの映画群は子供だましとして“怪獣プロレス“の蔑称で呼ばれるようになります。
まぁ、ゴジラが背負った”放射能怪獣”という設定は日本にとってはあまりに重く、そう何本も作れる設定ではなかったんですよね。

その後、昭和ゴジラ、平成ゴジラ、ミレニアムゴジラと「vsシリーズ」の流れを汲んだゴジラは、終了と復活を繰り返し、その流れの中で平成ガメラシリーズでも使われた、怪獣は地球の旧支配者であり、地球を守るバランサーでもあるというゴジラの設定が付け加えられ、その設定がそのまま今回の「モンスターバース」に受け継がれていったと記憶してるんですが、うろ覚えなので間違ってるかも。

一方の「キングコング」は1933年の誕生から2005年までの間、(日本版や続編を除けば)ざっくり3回リブートされているアメリカを代表するモンスター。

物語的には、未開の孤島に住む超デカいゴリラのキングコングが人間に発見され、見世物にしようとニューヨークに連れてこられて大暴れした末に殺されるという悲劇で、これはアメリカやヨーロッパ諸国の植民地政策のメタファーではないかと言われたり言われなかったり?

しかし、レジェンダリー版の「~髑髏島の巨神」では髑髏島の生態系のトップとして君臨、様々なモンスターとサミュエル・L・ジャクソンを倒してスッキリ終わってましたねー。

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で、この「モンスターバース」シリーズを一言で説明するなら、怪獣版天下一武道会みたいな内容で、それぞれの作品で怪獣がトーナメントを戦い、キングコングは髑髏島予選を勝ち抜き、対するゴジラキングギドララドンなどなど、東宝の有名怪獣たちとの死闘を勝ち抜き一応暫定王者に。
そして、本作でついに両雄が直接対決、第一回怪獣王が決まるか!?という、小学生男子大興奮な心躍る内容なのです。

その中で、色んな人間たちが色んな思惑で右往左往する様子も描かれますが、まぁね、そんなのは刺身のツマっていうか、オマケみたいなもんですよ。
主役はあくまでゴジラとコングなので。

両雄並び立つ

そんな本作、前作でキングギドラを制して事実上の怪獣王となったゴジラはしばらく落ち着いていたのに、突如、巨大テクノロジー企業「エイペックス(Apex)」の工場?を襲うというところからスタート。

そんなゴジラに「お前前作で味方になったじゃん!チクショー所詮怪獣は怪獣かよ!」と憤るマーク・ラッセカイル・チャンドラー)に「ゴジラが暴れるには何か理由があるハズよパパ」という娘のマディソン( ミリー・ボビー・ブラウン)に「お父さん忙しいんだから家にいなさい。あと陰謀論ユーチューバーを聞くのもやめなさい」と耳を貸さず。

そんなマークに「お前、前作もその態度のせいで一家離散しかけてたろ」と思ったりしましたが、娘は娘で陰謀論YouTubeにドはまりしてて、まぁ、マークの気持ちも分からいじゃないなーって感じ。

一方、色々あってコングは船で南極に輸送されてるわけですが、ここで襲ってくるゴジラとの第一ラウンドが始まるのは既に予告編でも流れてるので描いても大丈夫ですよね。

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この船上での初コンタクトはまさに大迫力、大興奮でしたよ!

予告編繋がりで言えば、コングと手話で心通わせる少女ジア(カイリー・ホットル)。
vsものの宿命というか、例えば「エイリアンvsプレデター」のプレデターや「フレディvsジェイソン」のジェイソンがそうであったように、本作の場合は観客がコングに感情移入するようなストーリーになってる分、コングがかなり人間寄りというかむしろ擬人化されてる感があったりするんですが、ジアという無垢なキャラクターがクッションになることで、上手くバランスを取ってる感じがしました。あと、単純にジア役の子はかわいいですしね。

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一方、マディソンは持ち前の行動力で車持ちでマディソンに好意を寄せるオタク少年ジョシュ(ジュリアン・デニソン)を呼び出し、どハマり中の陰謀論YouTubeバーニー・ヘイズ(ブライアン・タイリー・ヘンリー)に会いに行きます。
契約社員でもあるバーニーの手引きでエイペックス社に忍び込んだ、彼らがそこで見たのは――っていう物語。

ちなみにジョシュ役を演じてるジュリアン・デニソン君はデッドプールの2作目でクソガキのラッセル役を演じてましたよね。

そんなこんなで話は進み、ゴジラキングコングは前述したように海上で1回、その後香港で2回(?)戦う事になるんですが、3度目の最終決戦は最初の予告編が公開された時から登場が仄めかされていたアイツが登場。

まぁ、登場するのは分かってたし、前作のエンディングロール後にあった引きの部分も本作で大体思った通りの展開になってて、個人的には「東映まんが祭り」的展開が懐かしいなーと思ったり、これはこれで熱いなー!と思ったり。

正直、(ハリウッド制作だし)キングコング優勢なのかな?なんて観に行ったんですけど、制作陣はゴジラに対してちゃんと敬意を払いつつ、双方にしっかり見せ場も作ってくれたのはさすがレジェンダリーだなーと思いましたねー。
おかげで最後までノーストレスで楽しく観ることができましたよ。

あと、本作ではゴジラ初の笑顔も見れるので、そこだけでも必見です。

そのうえで、ゴジラの過去シリーズ、キングコングの過去シリーズ、「キングコング対ゴジラ」などのオマージュシーンも豊富に盛り込まれ、もちろん両者の対決は迫力満点だったし、小栗旬は何か面白い感じになってたし、死ぬべきヤツらは全員サクッと死んでたし、シリーズ最終作に相応しい大団円だったんじゃないでしょうか。

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コロナもあるから地域によってはアレですけど、本作に関しては大画面・大音量で観た方が絶対面白いと思うので、状況が許す人は劇場まで足を運ぶことをおススメしますよ。

興味のある方は是非!!

 

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一筋縄ではいかない作品「音楽」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは俳優としても活躍する漫画家・大橋裕之原作の「音楽と漫画」を、岩井澤健治監督が7年をかけて完成させた”自主制作長編アニメ“『音楽』ですよー!

劇場公開時に噂には聞いてましたが、実際に観てみると「おぉぉ…何か凄いもん観た…(;゚Д゚)」感のある作品でしたねー。

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概要

大橋裕之の原作を基に、岩井澤健治監督がおよそ7年かけてほぼ個人制作で作り上げたアニメーション。楽器に触れたことがない不良たちがバンドを結成し、ロックフェスティバルへの出演を目指す様子を、4万枚超の手描きの作画による映像で描き出す。主人公の声を元ロックバンド「ゆらゆら帝国」の坂本慎太郎が担当し、駒井蓮前野朋哉、芹澤興人、竹中直人天久聖一岡村靖幸らがボイスキャストとして参加している。(シネマトゥデイ より引用)

感想

一筋縄ではいかない作品

本作は俳優であり漫画家の大橋裕之原作のマンガ「音楽と漫画」を原作に、岩井澤健治監督がほぼ個人作業で7年かけて作り上げた自主制作アニメです。

以前、当ブログで堀貴秀監督がほぼ個人作業で7年をかけて作り上げたストップモーションアニメ「JUNK HEAD」のご紹介しましたが、 今アニメ業界では7年かけて1人で作品作るのが流行ってるんでしょうかw

で、原作マンガを描いた大橋裕之さんからして漫画家志望で週刊誌に投稿していたけどまったく賞に引っかからず、2005年から自費出版で作品を発表するうち最初は音楽雑誌で商業デビュー。
「週刊ビッグコミックスピリッツ」の巻末コーナーで4コマ漫画の不定期掲載など商業誌やウェブサイトなどでも活躍。竹中直人山田孝之、齊藤工が監督し今年4月2日に全国公開された映画「ゾッキ」の原作も大橋さんのマンガなんですよね。

そんな大橋さん原作の「音楽と漫画」を7年かけて長編アニメ化した岩井澤健治監督は、高校卒業後、映画監督の石井輝男監督に師事。
実写映画の現場から映像制作を始め、その傍らアニメーション制作を始めて2008年に初のアニメーション作品「福来町、トンネル路地の男」を完成させます。

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以後、アニメーションを中心とした短編映画の制作を続けて2011年から自主制作長編アニメーション映画「音楽」の制作を始めたそう。
で、岩井さんは元々実写畑の人だからという事もあるのか、実写で撮影した映像をトレースなどで絵に起こしていく「ロトスコープ」という技法でアニメを制作していて、クライマックスのライブシーンでは実際にステージを組みミュージシャンや観客を動員してのライブを敢行したのだとか。

それだけでも一筋縄ではいかない感じですが、岩井監督はそれらの実写素材を基に、作画枚数40,000枚超を全て手描きで(しかも1人で)7年の歳月をかけて71分の長編アニメを作り上げたわけです。

「JUNK HEAD」の堀貴秀監督もそうですが、手法や制作にかけた年月、そして完成した作品のクオリティー全てにおいて一筋縄ではいかない、ある種の狂気を感じてしまうんですよねー。

どストレートに“初期衝動”を描く

本作の主人公・研二坂本慎太郎)は他校の生徒にも名前を知られた不良少年。(見た目は完全にオッサンですがw)

そんな彼はある日偶然エレキベースを手に入れたのをキッカケに、思い付きで友人の太田前野朋哉)と朝倉(芹澤興人)を誘ってバンド「古武術」を始めるんですね。
しかし研二は、ギターとベースの違いも分からないくらい音楽の素人だし、他の二人も似たり寄ったり。

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音楽室に置かれていたベースとドラムをパクった3人は、研二の部屋で初めて音を鳴らすんですが、初めて音をだした瞬間に音楽の快感に目覚め、同じ高校のフォークバンド「古美術」の森田(平岩 紙)との出会いもあって、地元の音楽フェスに参加する事になるのだが――というストーリー。

まぁ、ざっくり一言で言えば不良少年がバンドを組んでフェスに参加するだけの超シンプルな物語なんですが、この作品が凄いのは、例えば最初はノリで始めたバンドが何らかの壁にぶつかる――とか、3人の間で軋轢が――とか、色んな挫折を乗り越えて――とか、そういうバンドの苦労みたいな描写は一切なくて、もっともっと手前。「音を鳴らすのって楽しい」っていう”初期衝動”を描くことだけに全てを注いでいるんですよね。

なのでストーリーに注目して映画を観るひとに本作は、「都合がよすぎる」とか「そんなバカな」って思うかもですが、そんな本作にリアリティーを持たせて作品を下支えしているのが伴瀬朝彦(片想い)、澤部渡(スカート)、剣持学人(グランドファンク取締役社長)らが手掛けた音楽の力と、それを聞いた森田や観客の、ビートルズの劇場アニメ「イエローサブマリン」を彷彿させるような脳内イメージの描写や、迫力満点なライブシーンの描写です。

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ホントは「古武術」の音楽について色々語りたいけど、残念ながら僕は音楽に対してはホントに無知で、何かを語れるほどの語彙を持ち合わせてないんですよね。

ただ、クライマックスの研二に、最初は思わず笑ってしまうんだけど次第に映像と音に飲み込まれていくような感覚は、中々味わえない貴重な体験なんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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タイトルに偽りなし「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アマプラで配信中のアメリカ映画『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』ですよー!

もうね、こんなタイトルの映画、観ないわけにはいかないでしょ!
って観たら、何か思ったのと全然違うストーリーでしたよ。

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概要

『アリー/スター誕生』などのサム・エリオットらが出演したアクション。隠居生活を送る元兵士の男が、ビッグフットとの戦いに挑む。ロバート・D・チコフスキがメガホンを取り、ドラマシリーズ「風の勇士 ポルダーク」などのエイダン・ターナーらが出演する。『ブレードランナー』などに携ったダグラス・トランブルリチャード・ユリシックが、VFXに参加している。(シネマトゥディより引用)

感想

ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」の物語

正直、本作のタイトルを最初に見た時は「また日本の配給会社が適当な邦題をつけてる」って思ったんですが、実はこのタイトル原題の直訳でしたw

アメリカには、「トール・テール」というホラ話を西部の開拓者たちの間で語る文化があり、これは日本で言えば桃太郎や金太郎などと同じく、ヒーロー譚の原型でもあり、神話を持たないアメリカ文学の発展にも大きな影響をもたらしているんですね。

そして、本作の一見突拍子もない物語とタイトルには、このトールテールの文脈が背景にあるのだそうです。

本作は冒頭、馴染みのバーで一人酒を飲む老人カルヴィンサム・エリオット)の顔面のアップから物語は始まります。その表情に楽しそうな様子はなく、苦虫を嚙みつぶしたような表情のカルディンのアップから回想パートへ。
若き日のカルディン(エイダン・ターナー)はナチスSSの制服を着て、SSの隊員たちが厳重に警備する邸宅にやってきます。

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そこで持ち物チェックのためポケットから、スキットルやライター、ペンなどを取り出し危険物を持っていない事を確認された彼は、再びその持ち物をポケットに仕舞って建物の中に。

そして2階の廊下を早足で歩きながら先ほどのライターやペン、スキットルなどを次々組み立てるんですね。なんとそれらは組み立て式の銃の部品であり、彼はヒトラー暗殺のためナチスに潜入したアメリカ兵だったのです。

そしてその部屋の奥にはヒトラーの姿が――、ここで店主に肩を叩かれて現実に引き戻されるカルディン。

ってな感じで本作は、年老いたカルディンの若き日のロマンスやヒトラー暗殺に至るまでの回想パートをメインにした前半部分と、老カルディンが政府の依頼を受けカナダの山奥にビックフットを殺しに行く後半部分で構成されているんですね。

で、先にネタバレするとカルディンは前半部分でヒトラーを殺し、後半でビックフットを殺してました。って、タイトルそのまんまの内容でしたねーw

こう書くと、アサイラム的な露悪的悪ふざけB級映画的をイメージするかもしれません。

だって、ヒトラーの方はまぁ100歩譲るとして、ビックフットて!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

しかも普通に出てくるし、そんなに大きくもない。多分180㎝くらいしかない。そして今どきCGでもない着ぐるみのルックもめっちゃショボい。
っていうかそもそもなんで70過ぎのおじいちゃんに依頼を!?――って思うでしょ?

実はこのビックフット、放っておくと世界が滅亡するくらい凶悪なウイルスの保菌者で、半径800㎞だかの(鳥以外の)生物は全滅してしまうらしい。
で、ビックフットがこのままアメリカに近づいてパンデミックが起こる前に、大統領はカナダに核爆弾を落としビックフットを抹殺する計画らしい。

しかし、このビックフットのウィルスにも抗体を持つ人間が世界に数人いて、カルディンはそのうちの一人だったのです。(他は子供と老人しかいない)

そして、ビックフット暗殺の依頼にきたFBIの男は、子供の頃に祖父からナチスハンター・カルディンの伝説を何度も何度も聞かされてきたと。
で、ここで英雄であるハズのカルディンがなぜこんなに寂しい老後を送っているのか、彼に影を落としているのが何なのかがカルディンの口から明かされるんですね。

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最初は政府からの依頼を断るカルディンですが、なんやかんやあってその後カナダの山奥でビックフットとの対決に向かうわけですが、正直映像的な驚きもアクションの面白さも一切ありません。

ただ、それは監督の意図的な演出なんですよね。

ヒトラーとビックフットとカルディン

どういうことかというと、この後半のビックフット殺害は前半のヒトラー暗殺と呼応する形になっているんですね。
ナチス党総統として今も世界に悪名を轟かせているヒトラーですが、彼自体は別に魔王でも悪魔でもない、何処にでもいるただのひ弱な中年男で、それは前半でカルディンと相対するシーンでヒトラーの手が震えている描写で分かるようになっています。

しかし、ホロコーストなどの歴史的悪行と(恐らく)事実を脚色することで膨らんでいったある種の都市伝説(ホラ話)が、ヒトラーを実物以上に恐ろしい男に仕立て上げた部分があるんだと思います。

それは、ビックフットも一緒で、実際には人間とさほど変わらない……っていうか、ちょっと厳つい人間なら素手で倒せそうなショボくて無害な生物なのに、発見談に尾ひれがついて、謎のモンスターにされてしまっている。

まぁ、本作ではカルディンと戦わせるため、かなり無理矢理なウィルス保菌設定がついちゃってますけどねw

そしてカルディン自身も、ヒトラーを殺した男として伝説の存在になっていて、FBIの男の祖父などに語られるうち、どんどん本人とはかけ離れた人物像になっていたのだと思われます。

つまり形は違えど、ヒトラーとビックフットとカルディンはある種の同類なんですね。
前半、ヒトラー暗殺で大きな挫折を味わい、大切な人を失ったカルディンは過去に縛られたままずっと立ち止まっていたわけですが、老人になりビックフットとの対決で生まれ変わったこで、前に一歩を踏み出せるようになったというのが、本作の本質的なテーマなんだと思います。

うん。まぁ、言いたい事は分かる。

分かるんだけど……まぁ、それと面白さはまた別の話でしてw

そうは言っても、別にビックフットみたいなUMAじゃなくても物語は成立すると思うし、ビックフットがウイルスを云々や、カナダに核攻撃云々みたいな設定と、本作で語られる本質の部分は、食い合わせが悪いと思いましたねー。

また、思った以上に静かな作品だし名優サム・エリオットの重厚な演技も相まって、特に回想シーンが多いはかなり退屈に感じてしまいました。

いや、前述した隠し拳銃を組み立てるシーンや、ビックフットを倒すため、沢山並んだ武器の中から古いライフルとナイフを選ぶシーンなんかはグッときましたけどね。

興味のある方は是非!!

 

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