今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

ラスベガスを舞台にスコセッシが描くギャング映画「カジノ」(1996)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「沈黙」のマーティン・スコセッシ監督のギャング映画、
『カジノ』ですよー!

スコセッシxデ・ニーロxジョー・ペシのギャング映画ですからね!
もう、面白くないわけがないのです!(;゚∀゚)=3ハァハァ
その割には初見)

 

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp/

概要とあらすじ

ある天才賭博師を通じて、まだマフィアの支配下にあった1970年代から80年代のラスベガスを描いたニコラス・ピレッジ原作の同名書籍を、「沈黙」「タクシードライバー」「グッドフェローズ」のマーティン・スコセッシが映画化。
主演はスコセッシの盟友ロバート・デ・ニーロ

ストーリー:賭博の才を買われてヴェガスのカジノの経営をまかされる事になるサム・ロススティーン。カジノは売り上げを伸ばし、バックについている組織への上納金も増えていく。美しい女ハスラー、ジンジャーを見初めたサムは彼女と結婚し、生活は順風満帆のように見えた。しかしサムの長年の盟友ニッキーがヴェガスに乗り込んで来た事から事態は急変する。暴力的で破壊衝動の強いニッキーは次々とトラブルを引き起こし、それはカジノの経営にも少なからず影響を及ぼしはじめていた……。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

ギャング映画の名手マーティン・スコセッシ

本作の監督は、現在公開中の話題作「沈黙-サイレンス-」の巨匠マーティン・スコセッシ
タクシードライバー」「ヒューゴの不思議な発明」「 ウルフ・オブ・ウォールストリート」など、多作・多彩な監督ですが、アメリカのイタリア系マフィアの実態を描いた『グッドフェローズ』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ディパーテッド』などなど、彼の真骨頂といえば何と言ってもギャング映画ですね。

フランシ・スフォード・コッポラの「ゴッドファーザー」はイタリアシチリア地方のマフィア一代記を荘厳に描いたマフィア映画の傑作ですが、対するスコセッシはアメリカに住むギャングの俗っぽい実態を生々しい描写でリアルに描く名手。
日本で言えば「仁義なき戦い」の深作欣二的な感じですかね。

本作では、まだギャングに支配されていた頃の金と欲望と暴力が支配していたラスベガスを鮮烈な色彩で描いています。

 

盟友デ・ニーロとジョー・ペシ

本作の主人公、天才ギャンブラー エースことサム・ロススティーンを演じるのは、数々の作品でスコセッシと組んできた盟友、ロバート・デ・ニーロ
冷静沈着で慎重な男サムが成り上がり、人生の絶頂から転落していくまでを見事に演じきっています。

そして、そんなサムとは対照的な、凶暴で感情的、一度キレたら止められない男ニッキを『グッドフェローズ』でも二人と組んだ “近づきたくない男ナンバー1“ のジョー・ペシが演じています。

もうね、スコセッシが監督するギャング映画で、デ・ニーロとジョー・ペシが出演してるんだから面白くならないわけがないんですよ。

ちなみに、本作は実話に基づいたストーリーで、登場するキャラクターにはそれぞれモデルがいます。
主人公のモデルとなったフランク・"レフティ"・ローゼンタールという人は、最初原作者の取材に応じなかったらしいですが、スコセッシが監督でデ・ニーロが自分の役を演じて映画化されると知って、取材に応じたそうです。

また、ニッキのモデルとなったのはアンソニー・"トニー"・スピロトロという、こちらも実在の人物ですが、ジョー・ペシを見たスタッフが本人と間違えたという噂があるくらい、そっくりだったんだとか。

そして、本作でサムが一目惚れて結婚するジンジャー。
感情の起伏が激しい難しい役を『氷の微笑』のシャロン・ストーンが体当たりで演じています。

3時間近い長尺な作品だけど超面白い

本作の内容を一言で言うなら「友達と奥さんはよく選ばないとヒドイ目に遭う」という物語。
徹底的にデーターを集めて分析することでギャンブルに勝ち続け、予想屋として財を成すエースことサムは、その腕を見込まれてシカゴのボスからベガスのカジノ経営を任され大成功。
順風満帆なサムですが、ある日、男を食い物にして荒稼ぎするハスラーのジンジャーに一目惚れ。時を同じくしてシカゴから用心棒として、超短気で凶暴なニッキがベガスにやってきたことがサムの人生の歯車を狂わせていくのです。

このジンジャー、とにかく金遣いが荒くて、ダメンズなヒモに惚れてて、アル中で、メンヘラっていうとんでもない女性で、もうね、観てるこっちがイライライライラしちゃいます。
特に、サムにヒモとの交際がバレてからは、酒浸りの薬浸りで湯水のように金を使いまくわ、ニッキーと浮気するわ、しまいには夜遊びのために幼い娘をベッドに縛り付けて外出するわシッチャカメッチャカで、サムのことも1ミリも愛してないんですよね。

しかし、それはサムも承知だったわけで、それでも最初は十分な金と贅沢な暮らしが彼女の気持ちを変えていくと思っていたんです。
ところが、サムの理詰めな考え方が自由を愛する彼女を次第に追い詰め、事態はどんどん悪化していきます。
結局、二人はまったく別種の人間で、サムの計算違いはそんな彼女を理解、コントロール出来るという勘違いから既に始まっているわけです。

一方のニッキーも、恐喝、強盗、ゆすり、たかりとやりたい放題。
そんな行いが祟って、FBIに目をつけられてカジノに出禁になったりボスに睨まれたり。おまけに一度キレると簡単に人殺しもしちゃうっていう荒くれ者で、そんなニッキーと付き合いがあるサムまでFBIに目をつけられていく。

そんな理解も予測も不可能な二人と関わることで、サムの計算はどんどん狂わされていくという物語。

約3時間もある長尺な作品ですが、本当にテンポが良くて話の展開も早いので、観ていて長いとは感じなかったですねー。

当時のラスベガスの『空気』を写し取る

デ・ニーロとジョー・ペシが交互にナレーションしながら、物語は進んでいくんですが、早い展開とスマートな語り口、そして光と影と色彩を意識した映像が、当時のラスベガスの危険で雑多で勢いに溢れた空気感を見事に写し取っているんですよね。
さすが巨匠スコセッシ。

特にサムの衣装はど派手な原色で、まるでコメディアンみたい。
普通の人が着たら絶対ダサくなる原色のスーツもデ・ニーロが着ると何故か格好良く見えます。
そのくせ彼はズボンにシワが付くのが嫌で、オフィスで一人の時は、ズボンを脱いでネクタイシャツにパンツで仕事する神経質な一面も。

これは、いかにも成金趣味で見栄っ張りで毒々しい派手さで自分を飾り立てる一方で、ズボンのシワさえ気になる神経質で慎重なサムというキャラクターを、衣装の色と行動で観客に分からせるというスコセッシの演出意図だし、服装一つで物語の流れを映像的に表現しているわけですね。

あと、本作でもやっぱジョー・ペシが怖かったですw
特に、敵対勢力ヒットマンの頭を万力で挟んで……のシーンなんか、もうね、
(;Д;)ギャー! ですよw

背が低くて、声も高く、一見人懐っこくて陽気なオッサンに見える彼ですが、それゆえキレて凄んだり暴力を振るいだす瞬間の怖さが際立つんですよねー。
まさに怪優です。

ロバート・デ・ニーロジョー・ペシシャロン・ストーンが織り成すスコセッシのギャング映画。長尺だけど超面白いですよ。

興味のある方は是非!!!

 

人間&吸血鬼&ゾンビの青春ストーリー「フリークス・シティ」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「未体験ゾーンの映画たち2017」上映されたホラーコメディ、
『フリークス・シティ』ですよー!

いかにもB級映画な超バカバカしい設定山盛りなのに、途中で破綻することなく笑いどころも満載。
しかも最後には何か良いもの観た気になれる映画でした!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

人間とゾンビとバンパイアが共存する街を舞台に、突如として襲来したエイリアンから街を守るべく立ち上がった高校生3人組の戦いを描いた青春ホラーコメディ。

ストーリー:アメリカの田舎町ディルフォードでは、バンパイアが上位カースト、人間が中位、ゾンビが下位という制度のもと、住民たちの秩序が保たれていた。ところがある日、上空に無数のUFOが襲来したことによって3種族の共存関係が破綻し、街は壊滅状態に陥ってしまう。人間のダグ、バンパイアのペトラ、ゾンビのネッドら3人の高校生は、手を組んで凶暴なエイリアンたちに立ち向かうが……。

主人公ダグ役に「ウォールフラワー」のニコラス・ブラウン。共演にテレビドラマ「ゴシップガール」のエド・ウェストウィック、「スプリング・ブレイカーズ」「ハイスクール・ミュージカル」のバネッサ・ハジェンズ。「22ジャンプストリート」のオーレン・ウジエルが脚本を手がけた。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。(映画.comより引用)

 

 

感想

2010年、“最も好きな脚本”に選ばれた話題作

本作の内容を一言で言うと、人間と吸血鬼とゾンビが宇宙人と戦う青春映画です。
何を言ってるか分からないと思いますが、本当にそういう映画なんだから仕方ないw

本作の脚本は、2010年のブラック・リスト(映画化されてない脚本リスト)にて“最も好きな脚本”に選ばれた話題作。
「22ジャンプストリート」のオーレン・ウジエルが脚本を手がけ、ジョナ・ヒルの初監督作品になる予定でしたが諸々の事情で一度は中止になり、4年越しでついに完成したというファン待望の話題作だそうです。

確かに本作のストーリーは素晴らしいんですよね。

吸血鬼、人間、ゾンビ、宇宙人、格差、差別、青春、友情、恋愛、スピルバーグビリー・ジョエルなどなど、色んな設定をこれでもかと全部乗っけて、それなのに途中で破綻することなく、テンポよく無駄のない語り口と序盤に散りばめた伏線を大胆に回収しつつ、(多少の無理はあるけど)華麗に着地してみせるという離れ業をやってのけてるのです。

魅力的なキャスト

そんな本作に登場すのは全員一癖も二癖もあるキャラクターばかり。

野球だけが取り柄の主人公、ボンクラ童貞高校生ダグ(ニコラス・ブラウン)。
吸血鬼に恋するも弄ばれて吸血鬼にされた挙句ポイ捨てされる女の子ペトラ(マッケンジー・デイビス)。

天才なのに親父が脳筋バカすぎて理解されず、絶望して自らゾンビになっちゃうネッド(ジョッシュ・ファデム)。

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画像出典元URL:http://eiga.com /左からダグ、ペトラ、ネッド

この三人を軸に、巨乳で色っぽいけどいつも大麻でラリパッパの女の子、成績優秀なネッドが気に入らなくて無理やり落第させようとする吸血鬼の先生、ブリーフ一丁なダグのパパ、優しいけどおバカなゾンビの女の子などなど、脇役も全員個性的。

あと、ゾンビは毎日配給される「脳みそ」を食べるとどんどんバカになっていくっていう設定も斬新でしたねー。

そんな中、僕が特に気になったのが、自らゾンビになっちゃうネッド役のジョッシュ・ファデム。
天才だけど気が弱く、田舎独特の閉塞感と話の通じない家族に絶望して、自らゾンビになっちゃうオタク少年役がハマってて、何か目を引くんですよね。
どの紹介サイトでも名前が載ってないのは日本では無名だからなのかな?

ダグ役のニコラス・ブラウンは背が高くて二枚目なんだけど、本作では野球しか取り柄のない役に立たないボンクラ役がハマってたし、それがちゃんと最後への伏線になってるのも良かったです。

世相を皮肉った実は深い作品!?

前半、約30分かけて、本作の舞台の田舎町ディルフォードの現状が紹介されていきます。異種族が共存し一見平和に見える町ですが、上記したようにバンパイア、人間、ゾンビの順に序列があり、最下層のゾンビは他の住人から差別を受けてるんですね。(本人たちはあまり気にしてないようですがw)

そして田舎町の主な産業は、ご当地グルメ「リブレット」くらいで、その工場の社長が実質町のリーダー的存在で、ダグが所属するチームのオーナーでもあります。
貧乏な田舎町なので住民のIQ(?)は低く、天才児ネッドは家族には理解されず、野球で活躍する脳筋バカの兄貴の方が大事にされる始末だし、高校の教師(バンパイア)は優秀な人間が気に入らないのでネッドを嫌がらせで落第させようとします。

そうした町のカーストは、そのままスクールカーストになり、バンパイアたちはやりたい放題。

そんな、多分アメリカ国内や世界中に根強くある所得や人種間の格差や差別を、「もし世界が100人の村だったら」的なメタファーとして、本作では「一見平和な田舎町」を舞台に描いているんじゃないかなーなんて思いました。

そして、宇宙人の襲来という一大事件に、彼らは一致団結して立ち向かうのではなく、他種族への疑心暗鬼から、それまでギリギリ表面化しなかった不満が一気に吹き出してバトルロワイヤル状態になるわけですが、これも今の世相や巨大な敵に世界が一致団結するブロックバスター映画(予算のでかい映画)を「そんなわけ無いだろう」と皮肉ってコケにしてるんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /宇宙人襲来で平和な町は大騒ぎに

そういうワンクッションを入れてからの「USA! USA!」の大合唱はもう最高でしたw

あと、劇中登場する嫌な奴らが概ねぶっ殺されたりひどい目に会うのもスカっとしましたねー!

本作がどのくらいの規模の作品なのかはよく分かりませんが、少なくとも映画としてのルックは豪華だったし、ストーリーは良く出来てるし、それでいてバカバカしくて面白くて爽快な作品なので、誰でも楽しめるんじゃないかと思いますよ!

興味のある方は是非!!

 

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note.mu

 

まんま女の子版テッドだった 「ベラ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品のドイツ映画
『ベラ』ですよー!

本作を一言で言うと命を持ったテディベアのドタバタコメディー映画『テッド』の女性版です。
孤児院育ちのヤナが唯一父親から貰った、命を持った人形ベラが騒動を巻き起こすブラックコメディー? です。

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ドイツ版「テッド」とも言える異色のロマンティックコメディで、命を宿した女の子のぬいぐるみ・ベラが巻き起こす騒動を過激なブラックユーモアたっぷりに描いた。
ストーリー:結婚を目前に控えた幸せなカップルの前に、突如として現われた赤いおさげ髪の人形ベラ。可愛らしいルックスとは裏腹に毒舌で下ネタが大好きなベラは、酒やタバコ、時にはドラッグまでたしなむトラブルメーカーだった。そんなベラの存在がカップルの関係に波乱を巻き起こし、彼らは婚約解消の危機に陥ってしまう。

監督はドイツのテレビ界で活躍するジョッシュ・ブロエッカー。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品。(映画.comより引用)

 

 

感想

まんま女の子版『テッド』だった

本作は「もし、テッドが女性だったら?」っていう発想で作られた作品で、内容はほぼそのままテッドでしたw
噂には聞いてたけど、正直ここまでとは思いませんでしたよ。

ただ、ベラがぬいぐるみじゃなく「人形」であること以外にも、いくつか変更点があります。

まず、ベラの親友ヤナ(ローラ・ベルリン)は孤児院育ちの女の子。
ヤナは幼少の頃に孤児院に預けられていますが、彼女を捨てた父親の唯一のプレゼントが命を持った人形のベラだったという設定。
しかし大人になったベラはスターを目指し孤児院を出て行き、ずっと音信不通なんですね。

一方のヤナは、同じ孤児院で育ったウォルフガング(トム・ペック)と婚約。
二人の新居も購入予約し順風満帆に思えた彼女のもとに、破産したベラが転がり込み、ふたりの仲をぶち壊そうとするんですね。

で、ベラの性格も破天荒でタバコは吸うし、麻薬も吸うし、乱交パーティーもするしと、まぁ、まんまテッドなわけです。

設定を変えた事でかなり無理のある展開に

じゃぁ面白いのかというと、これが個人的には正直うーん……っていう。
テッドの場合、中年のボンクラ男とボンクラテディーベアがずっと一緒に育ってきたってのが一つポイントだったと思うんですが、本作の場合、前述したようにヤナとベラはかなり前に別々の生活を送っているんですね。

で、このヤナは非常に奥手というか真面目で、今まで付き合ったのはウォルフガングだけ。しかも母親は亡くなり父親は彼女を捨てて音信不通なので、ヤナは愛される事を渇望しつつ自分に自信がもてないっていう、かなり重い設定なんですね。

もちろんコメディーなので、あまり重くは描かれてないものの、この設定を中心に物語が展開していくので、テッド的なバカバカしさを求めて観ると、肩透かしを食らう事になるかもしれません。

展開的にも、冒頭から好き勝手に暮らして破産するベラと、ヤナとウォルフガングのラブラブな生活を交互に見せて、ウォルフガングが新居でヤナにプロポーズするところで、ベラと合流するんですが、このプロローグが長くて少々かったるく感じるんですよね。

あと、ウォルフガングとベラ、ウォルフガングとヤナ、ヤナとベラの関係性もセリフで説明されるだけなのも、感情移入しにくいかなと。
その辺の関係性は映像でも見せて欲しかったなーと思いました。

もちろん面白いシーンもあるけど

思わず笑っちゃう面白いシーンももちろんあるんです。
例えば、酔ったヤナにゲロをかけられたベラがコインランドリーでグルグル洗われたり、部屋干しされたり、車に轢かれたり、車に飛び込んだら窓に張り付いちゃったりと、テッド同様ぬいぐるみ設定の面白ギャグも沢山入ってるんですが、ただ、ベラの弱点や命のルール(例えばどうなったら死んじゃうとか)が曖昧なので、その後の色々な展開にもドキドキもハラハラもないし、そもそもベラが何をどうしたいのかイマイチ分かりづらいんですよね。

下品なギャグに引く

で、ベラの性格はほぼテッドと同じハチャメチャなんですが、例えばベラが男を連れ込んでHしたり、下品なジョークを連発したり、タバコや麻薬を吸ったり、ゲップやオナラをしたりすると、正直ちょっと引いちゃうんですよね。
これが人間の大人の女性なら(多分)平気なんですが、見た目は女の子の人形なだけになんかこう、より下品さが際立っちゃうってうか。

テッドの場合は男(オス?)で、しかもオッサンでクマっていうワンクッション入ってるので、下品さもある程度緩和されて面白さに変わるんですが、人型で見た目女の子の人形だと人間(というか少女)に近い分、下品さが際立っちゃう気がしました。

僕が男だからそう思っちゃうのかなー?

振り切れてない

で、本作の一番の問題は笑いと物語のどちらにも振り切れてないって事じゃないかなーって思います。
テッドを意識して作るなら、いっそ設定からまるっとパクって、幼馴染のダメダメ中年女性コンビの片方に彼氏が出来て…っていうドタバタにしたほうが良かったんじゃないかなと。その上で、男女の友情の違いを描いていく的な。

本作でヤナ役を演じる、ローラ・ベルリンが上品で美人でいい子すぎるので、ダメ要素や下品要素を全部ベラに背負わせる形になっちゃって、ベラの面白さより嫌な感じが前面に出ちゃってるなーと。
監督やスタッフはまさにそんな二人のギャップと友情物語を狙ってたのかもですが、ある種バディもの特有のコンビならではの相乗効果的な面白さが削がれちゃってる感じだし、二人の友情もイマイチ描ききれてなかったように感じました。

という感じで、個人的にはあまり合わない作品でしたが、面白いシーンは沢山あるし、僕も声を出して笑っちゃったシーンもあります。
人によってはテッドより、本作の方が楽しめるかもですしれませんね。

興味のある方は是非。

 

全てにおいて丁度いい面白さ「ペット」 (2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、『ミリオンズ』のスタッフが作った3DCGアニメ『ペット』ですよー!

一言で言うなら「全てにおいて丁度いい映画」って感じでした。(褒め言葉)

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

世界中でヒットを記録した『ミニオンズ』のイルミネーション・エンターテインメントとユニバーサル・ピクチャーズが作り上げた、ペットたちの知られざる世界に迫るアニメ。人間たちの留守中に犬や猫や小鳥といったペットたちが、どのように過ごしているのかをユーモアたっぷりに映す。『ロラックスおじさんの秘密の種』に携ったクリス・ルノーとヤーロウ・チェイニーが監督を担当。飼い主たちが知らないペットたちのキュートな姿に笑いがこみ上げる。

ストーリー:犬のマックスは、ニューヨークで大好きな飼い主のケイティと最高のハッピーライフを送っていた。ところが、ケイティが大型犬デュークを新たに連れてきたことから、マックスの生活環境はガラリと変化する。マックスとデュークが何とか自分が優位に立とうと頑張っていたある日、ひょんなことから彼らは迷子になってしまい……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

本作を一言で言うなら、ペットの日常を覗見る映画です。

ニューヨークに住む犬のマックスは、大好きな飼い主ケイティーと幸せに暮らしています。ふたりの住むアパートには、他にも犬や猫、インコやハムスターなど色々なペットを飼っている人たちがいて、その飼い主が仕事などで外出している間、冷蔵庫を開けて盗み食いしたり、ヘビメタでノリノリだったり、だれかの部屋に集まって談笑やパーティーしたり。

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マックスと同じアパートに住むペットたち。 画像出典元URL:http://eiga.com

そんな、飼い主には決して見せないペットたち姿をこっそり覗き見ちゃうというコンセプトの作品なんですね。

制作は『ミニオンズ』のスタッフ

そんな本作を制作しているのは、世界的にヒットした『怪盗グルー』シリーズのイルミネーション・エンターテインメント。
3Dアニメ制作会社としては、今やディズニー、ピクサー、ドリームワークスと並ぶビックカンパニーですね。

リアルな映像表現に重きを置く競合3社に対し、カートゥーンアニメ的な楽しさを追求している印象があります。

二匹のワンコのバディムービー

大好きなケイティーと幸せに暮らしていたマックスに、ある日とんでもない不幸がやってきます。
ケイティーが保健所から、大型犬デュークを引き取ってくるんですね。

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ケイティーがある日、大型犬デュークを連れてきちゃったからさぁ大変。 画像出典元URL:http://eiga.com

二匹は当然衝突し、マックスは何とかデュークを追い出そうとしますが、ある日散歩に出かけた二匹はある事情から迷子になり、保健所に捕まり、下水道で人間への復讐活動を企む「元ペット軍団」に追い回され、マックスの仲間のペットたちも巻き込んだ大騒動に発展するわけです。

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元ペット軍団のボスのスノーボール 画像出典元URL:http://eiga.com

保健所の職員や元ペット軍団から逃げ延びて家に戻るため、最初はいがみ合っていたマックスとデュークが次第にお互いを認め合っていくという、いわゆるバディムービーの犬版になっているんですね。

画面のあちこちで何かしら起こっている

イルミネーション・エンターテインメント作品の特徴として、本筋と関係なく画面のどこかで常に何かが起こっているってのがあるんですね。
画面の真ん中でメインのキャラクターが動いたり話したりしている奥で、別のキャラクターが別のことをしてコケたりドジッたり。

これは黄色の不思議生物ミニオンズが活躍する「怪盗グルー」シリーズから引き継がれた手法で、笑いや作品の楽しさに繋がってるし、本筋を邪魔しないバランスで常に画面のどこかで何かが動いている楽しさの演出という、実は結構難しいことをサラリとやってのけてるんですよねー。

動物好きなら思わずニヤリとしてしまう、ペットあるあるが満載

映像的リアリティーよりも、カートゥーンアニメ的楽しさに比重を置いている本作ですが、ペットたちと人間のバランスにはかなり気を使っています。
例えばペット同士だと普通に人間の言葉で話す動物たちですが、飼い主と一緒の時は鳴き声で人間と言葉が通じない様子を分かるようにしているし、ペットが理解出来ない(飼い主が昼間どこに行ってるのかとか)事は、本作のペットたちも分からないという前提で物語が進むなど、動物を擬人化しすぎないバランスのとり方を気をつけている感じがしました。

あと、何気にペットたちの動きがリアルなんですよね。
ヒロインのマルチーズがピョンピョンはねる仕草や、猫がパニック状態だったのをごまかそうと、何事もなかったみたいにすまして動くところとか、マックスがお腹を撫でられてる時、気持ちよくて後ろ足がピコピコ動いちゃうトコとか。

そういうちょっとした、でも動物を飼ってる人や動物好きなら思わずあるあるー! と笑ったりニヤニヤしてしまう細かいあるある描写が、本作のキャラクターに実在感を与えているんじゃないかなーって思いました。

全てにおいて丁度いい

ディズニー、ピクサー作品なんかは、(特に最近は)世界で起こっている様々な社会問題を、メタファーとして作品に入れ込んでますよね。
もちろんそこも含めて面白いんですが、体調や気分次第では観るときに少し構えちゃう部分もあったりします。

そういう意味では「ミニオンズ」や本作は、気楽に見られて丁度いい感じだなーなんて思うんですよねw
本作も、(多分)人種や格差問題をメタファー的にうっすら取り入れてはいるんですが、どちらかといえば物語やキャラクターの動きの楽しさの方がメインになってる感じなんですよね。

時間も役1時間30分と大人から子供まで楽しく観るには丁度いいし、映像も物語も観ていて疲れない丁度いいサイズ感。キャラクターデザインもリアルすぎず、崩しすぎず、丁度いい可愛らしさと、とにかく何から何まで「丁度いい」映画(褒め言葉)なんですよね。

なので「映画が観たいけどあんまり重いのはちょっと……」という気分の時に観るのには丁度いい映画なんじゃないかと思いますよ。

興味のある方は是非!!

 

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ゴミ溜めの中でのたうつような青春映画「トレインスポッティング」(1996)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは1996年公開のイギリス映画『トレインスポッティング』ですよー!

前回ご紹介した「シング・ストリート 未来へのうた」と同じ、イギリスを舞台にした青春映画で内容やテーマもほぼ同じですが、内容は正反対。
こちらはスコットランドを舞台に、暴力&ドラッグ&セッ〇スにうつつを抜かす自堕落な若者たちの物語です。

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あらすじと概要

スラムドッグ$ミリオネア』などのダニー・ボイルが、アーヴィン・ウェルシュの小説を映画化した異色青春ドラマ。ドラッグ中毒の主人公と仲間たちのハチャメチャな日々を、スタイリッシュな映像で活写する。今や大スターとなった若き日のユアン・マクレガーが主演を務め、『ビザンチウム』などのジョニー・リー・ミラーらが共演。イギリスをはじめ世界中が熱狂したポップな感性に魅了される。

ストーリー:ドラッグ中毒のマーク(ユアン・マクレガー)と悪友たちは常にハイ状態か、あるいはドラッグを手に入れるため盗みに精を出しているというていたらく。ある日、マークはこのままではいけないと更生するためにロンドンに行き職に就く。ところが、彼らの仲間が会社に押し掛けたことが原因で、マークはクビになってしまう。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

本作がDVD化されてレンタル店に並んでいたとき、パッケージがとにかく格好良くてずっと気になっていたんですが、なんとなく観るタイミングを逃してたまま時が過ぎ、今年、20年ぶりに続編が公開されるという情報を知り「そういえば、見逃してたっけ」と今回レンタルしてきたんですね。

前回ご紹介した「シング・ストリート 未来へのうた」が、清く正しい優等生的青春物語だったのに対し、本作はドラッグ&セックスに溺れる若者たちを描いた青春物語でした。

ゴミ溜めの中でのたうつような青春物語

本作が世界中で注目を浴びた理由は、カッコイイ音楽とスタイリッシュな映像に乗せて、ヘロインとセックスに溺れる若者のリアルな姿を描いたことが大きいと思います。
冒頭、ユアン・マクレガー演じる主人公レントンが万引きをして逃げ回るのシーンで幕を開けるんですが、その映像に乗せて、

「人生を選べ、仕事を選べ、キャリアを選べ、家族を選べ、バカでかいテレビを、洗濯機を、車を、CDプレイヤーを~(中略)未来を選べ 人生を選べ、俺は選ばないことを選んだ」
というナレーションが入ります。

この時の彼は、明日とか将来なんかまったく考えてなくて、とにかくヘロインでご機嫌になることだけが目的の自堕落な生活を送っているわけです。

そんなレントンの友達は、
同じくヘロイン中毒のスパッド(ユエン・ブレムナー
ヘロイン中毒でスケコマシのシック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー
薬はやらないけどケンカ中毒のベグビー(ロバート・カーライル
薬もやらずトレーニング好きで彼女のいるトミー (ケヴィン・マクキッド)

の4人。

本作は、この5人を中心に物語が進んでいきます。

たまり場で、ヘロインを打ちまくりのレントンでしたが、何度目かの禁ドラッグで元気になります。すると今度はヘロインで抑えられていた性欲が湧き出てきてクラブで女の子をナンパ。
女の子の家でHが終わると「帰るか、廊下で寝るかにして」と言われ、廊下で寝て起きたら実はその子はまだ15歳。
さらに就職活動にも失敗して、ヘロイン仲間の赤ちゃんが死んで、再びヘロイン中毒に逆戻りして、ヘロインの金欲しさに万引きをして(これが冒頭のシーン)執行猶予つきの実刑判決をくらい、それでもヘロインを打って死にかけて、部屋に閉じ込められて禁断症状に耐え、更生するも友達のせいでクビになってヘロインに手を出して……。というダメっぷり。

じゃぁ友達はといえば、スパッドはレントンと万引きして一緒に捕まり実刑判決を食らってもドラッグをやめられず、シックボーイは趣味と実益を兼ねてドラッグの売人兼ポン引きになり、ベグビーは強盗で指名手配され、唯一まともだったトミーは彼女に振られ他ショックでヘロインに手を出してエイズになって……。

ほんとお前らどいつもこいつもーー!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

っていうね。

それでも何故かレントンや仲間たちを憎めないのは、彼らが抱える“弱さ“に共感してしまうからなんですよね。
頑張ったところで先が見えてるとか、自分の国が最低とか、高卒じゃ採用されないとか、なんやかんや理屈をつけては、目の前の困難から目を逸らすためにドラッグに逃げる。ダメだと分かっていてもやめられない心地いい敗北に浸ってしまう的な弱さって、誰だって多かれ少なかれ一度は経験があって、本作ではそれをドラッグという形で誇張して描いてますが、その奥にあるテーマは世界中の若者が抱える普遍的な弱さを、肯定も否定もしないでありのままに描いているんですよね。
それゆえに、公開時は「ドラッグ賛美だー!」なんて叩かれたりもしたみたいですが。

ただ、ちゃんと最後まで観れば、本作が上記のような普遍的な物語を描いている事がわかると思います。

その上で、最後にはレントンの成長 物語として落とし込んでいるのも良かったですねー。

スタイリッシュなビジュアルとポップな音楽

そんな普遍的な物語に、ドラッグやセックスという刺激的な香辛料をたっぷりかけて、スタイリッシュなビジュアルとノリノリな音楽で彩ったことで、本作はイギリスだけじゃなく世界中の若者にカルト的な人気を得ます。

若者たちの様子をただリアルに描き出すんじゃなく、ヘロインでトリップしているレントンの視点を入れたり、なんともファンタジックな印象的な映像とユーモアで高揚感と躍動感のある画作りは、今観てもカッコイイなーって思いました。
ちなみに本作の音声はマサヒロ・ヒラクボという日本人の人が担当しているみたいです。

劇中使われる音楽も、イギー・ポップの「ラスト・フォー・ライフ」を始め、ブライアン・イーノプライマル・スクリーム、スリーパー、ニュー・オーダーなどなど、そうそうたるミュージシャンのヒット曲ばかり。

この音楽と映像、キャラクターの魅力、そして普遍的に共感されるストーリーが揃ったことで、本作は長く愛されるカルト的な青春映画になったんですねー。

僕も、もし十代から二十代前半で本作を観ていたら、きっとハマってたんじゃないかって思います。

続編は4月に公開されるらしいので、その前に本作を観てみるのもいいかも。

興味のある方は是非!!

 

トレインスポッティング2予告▼

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甘酸っぱくてほろ苦い青春映画「シング・ストリート 未来へのうた」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ONCE ダブリンの街角で」や「はじまりのうた」で知られるジョン・カーニー監督の最新作『シング・ストリート 未来へのうた』ですよー!

懐かしい音楽に乗せて、少年の淡い初恋と青春を描いた作品です。
1980年代に青春を送った人には、映画を見ながら自分の過去を重ね合わせちゃう作品なんじゃないかと思いますよー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ONCE ダブリンの街角で』などで知られるジョン・カーニー監督の半自伝的青春ドラマ。1980年代のアイルランド・ダブリンを舞台に、さえない日々を送る14歳の少年が一目ぼれした少女を振り向かせるためバンドを組み、音楽活動に没頭する姿を描く。主題歌を、カーニー監督作『はじまりのうた』に出演したマルーン5アダム・レヴィーンが担当。音楽がつなぐ出会いや少年たちの青春を、デュラン・デュランザ・クラッシュザ・ジャムなど当時のヒット曲が彩る。

ストーリー:1985年、ダブリン。両親の離婚やいじめで暗い日々を過ごすコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、音楽好きな兄と一緒にロンドンのミュージックビデオを見ることが唯一の楽しみという14歳。ある日、ラフィナ(ルーシー・ボーイントン)を見掛け瞬く間に恋に落ちた彼は、思わず「僕のバンドのPVに出ない?」と口走ってしまう。慌ててバンドを組んだコナーは彼女を振り向かせようと、クールなPVを撮るため音楽活動に奔走する。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

ざっくりストーリー解説

まず、ざっくりストーリーを書くと、大不況の煽りを受け父親が失業した少年コナーは授業料の安い荒くれ男子校に転校するハメに。
そこで、いじめっ子にいじめられたり、横暴な校長にいじめられたりしていたコナーですが、学校の前に立っている女の子ラフィアに一目惚れし、何とか話しかける話題を作ろうと「ウチのバンドのMV(ミュージックビデオ)に出ない?」とバンドなんかやったこともないのに誘ってしまうんですね。

で、急遽メンバーを集め、当時流行のブリティッシュロックの影響をモロに受けた曲で次々MVを撮影していく。という物語。

音楽だけじゃなく、コナーが次から次へと影響を受けたミュージシャン風のファッションに変わっていくのは観ていて面白いけど、過去の自分を思い出したりして、もう、(*ノェノ)キャーってなっちゃうんですよねーw

若者を取り巻くダブリンの閉塞感

本作の舞台は、監督の故郷でもある1985年のアイルランド・ダブリン。
不況の波で仕事は無くなり、それが原因でコナーの父親は失業し母親とはいつもケンカばかり。
しかも、そのせいで市内の荒くれ男子高に転校させられるわ、母親はパート先の上司と不倫するわ、あげく両親が離婚を決めるわと、思春期の少年にはかなり辛い状況なんですね。
しかし、それはコナーだけじゃなく、コナーが一目ぼれする少女ラフィナは両親に捨てられ孤児院住まいだし、いじめっ子はオヤジがアル中で虐待されてるし、兄貴は引きこもりだし、バンド仲間たちもそれぞれ家庭に何らかの問題を抱えてるんです。

で、ダブリンの若者たちは、海を隔てた50km先のロンドンに行けば……と、淡い希望に思いを馳せているわけです。

つまり、町全体が不景気による閉塞感に包まれてるんですねー。

そんな中、最初はオドオドしていた気弱なコナーはラフィアや音楽と出会うことで、少しづつ成長していくのが、本作の見所なのです。

懐かしい音楽が次々と

僕はあまり音楽には詳しくないんですが、本作でかかる音楽はそんな僕でも耳にしたことのある有名な曲ばかり。

モーターヘッド
デュランデュラン
a-ha
フラッシュ・アンド・ザ・パン
ザ・ジャム
ザ・キュアー
などなど、時代を代表するバンドの名曲が次々流れてきます。

で、コナーたちのバンド「シングス・トリート」はモロにこれらのバンドの影響を受けた“オリジナル曲“を作り出していきます。
寄せ集めの素人バンドな彼らの手で曲が生まれ、やがて音楽の形になっていく嬉しさや楽しさを、ジョン・カーニー監督は曲に乗せてテンポよく、しかししっかりと描いていきます。

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画像出典元URL:http://eiga.com 手作りのMVを撮影するシングストリートのイケてない感がリアルw

この感じって、バンドをやってた人ならみんな共感出来るだろうし、音楽でなくても、初めて自分の手で何かが形になる喜び(お絵かきや小説、手芸や料理、DIYなど)は、誰でも多かれ少なかれ経験はあると思うので、彼らの嬉しさや楽しさは多分、多くの人が共感出来るんじゃないかなーって思うんですよね。

同時にそれは、コナーたちにとって辛すぎる現実からの逃避でもあり、大人たち=社会への反抗でもあるんですね。

兄弟

本作でコナーを導いていく重要な役割を果たすのが、ジャック・レイナー演じる年の離れた兄ブレンダン。
コナーにとってブレンダンは音楽の師匠でもあり、一瞬でも両親の不仲という辛い現実を忘れさせてくれる父親変わりの頼りになる存在なんですね。
ただ、ブレンダンは両親の反対で夢を諦めたっぽいのです。
だから、コナーには諦めないで欲しいと、茶化しながらも背中を押すような言動をしてるんだろうなーと。

両親が1階でケンカしてるの時に、音楽をかけて兄弟(妹)3人で部屋で踊るシーンは超切ないし、ブレンダンが夕方玄関で一人の時間を送る母親の背中を階段に座って見ながらコナーに語りかけるシーン、いよいよ両親の離婚が決まったとき、コナーの一言が引き金になって感情を爆発させるシーンはグッときちゃいました。

本作のEDロールで「すべての兄弟にささぐ」って言葉が出るんですが、監督自身、亡くなったお兄さんをブレンダンに投影しているらしく、僕自身も長男なのでブレンダンに感情移入しながら観てましたねー。(僕はあんなに出来た兄ではないですがw)

“ある曲のMV“の撮影シーンに涙

そんな感じで劇中、コナーが学校の体育館でMV撮影をするシーン。
歌いながらコナーの頭の中で、最高にハッピーな妄想がそれこそMV風に展開されるんですよ。
50年代風の格好で決めたシングス・トリートの演奏に合わせて、生徒や嫌な校長が踊り、ラフィアや両親、ブレンダンもみんないて楽しげに踊ってるっていう、現実とは正反対の脳内MV。クライマックス前の一番悲しいシーンなんですが、映像がハッピーなだけにコナーの心情を思うと、もう号泣でした。

ハッピーエンド?

そんで、シングストリートの初ライブからのラストシーン。
このクライマックス、僕は「桐島、部活やめるってよ」を思い出しましたねー。
そしてラストシーンは、ぱっと見ハッピーエンドっぽいんですが、あえてハッピーエンドとハッキリは描かず、多少の不穏さを残して二人の行く末が不透明な感じで終わってるのも個人的にはとても良かったです。

そんな感じで個人的には大好きな作品なんですが、あえて言うならバンドメンバーとの関係にも、もう少しスポットが当たると良かったかなーと思ったりしましたねー。
まぁ、これは完全な「ないものねだり」なんですけどねw

ともあれ、本作を一言で言うなら、甘酸っぱくてほろ苦い青春映画の傑作だと思います!

興味のある方は是非!!

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吹き替え版で観るのがオススメ! 「ファインディング・ドリー」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2003年公開の『ファインディング・ニモ』の続編(というかスピンオフ?)として昨年公開されたディズニーピクサー作品、『ファインディング・ドリー』ですよー!

公開前は「いまさら続編ってどうなん?」と正直ナメてたんですが、公開後のネット評などを読むと概ね好評だし、ちょっと気になってたんですよねー。
で、今回やっと観てみたら……もうね、号泣ですよ!

なんで劇場に観に行かなかったのかと、2016年の自分を殴ってやりたい気持ちでしたよー。(´Д`)

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

愛くるしいカクレクマノミのキャラクターたちが活躍するアニメ『ファインディング・ニモ』の続編。前作にも登場したちょっぴりドジな愛されキャラ、忘れん坊のドリーに焦点を絞って、彼女の家族捜しの旅に同行する親友ニモと仲間たちの大冒険を映し出す。『ファインディング・ニモ』『ウォーリー』で2度アカデミー賞長編アニメ映画賞に輝いたアンドリュー・スタントンが、本作も監督を担当。新しい仲間たちも加わった心躍る旅路に、大人も子供も引き込まれる。

ストーリーカクレクマノミのニモの大親友であるナンヨウハギのドリーは、すぐに何でも忘れてしまう。ある日、子供のころの思い出がよみがえり、一念発起して家族を捜す旅に出ることを決意する。おっちょこちょいなドリーを心配したニモは、父親マーリンを説得してドリーの旅に同行する。(シネマトゥディより引用)

 

感想

ドリーの人生(魚生?)に13年越しの決着!

本作の主人公は、前作『ファインディング・ニモ』でニモのパパ マーリンの相棒役兼コメディーリリーフとして登場したナンヨウハギのドリー。

本作では、何でもすぐに忘れてしまう彼女の過去に迫ることで、前作では殆ど描かれず何となく宙ぶらりん感のあった、ドリーというキャラクターの人生(魚生?)に13年ぶりで決着がつくという物語です。

前作以降、ニモとマーリンとともに幸せに暮らすドリーはある日、子供の頃の夢を見て思い出が蘇ります。
本作はそんなドリーの幼少のシーンからスタートするんですが、もうねこのアバンのシーンで描かれるドリーの過去の重さがスゴイんですよ。

正直、え、こんなんディズニーピクサーでやっちゃっていいの? と観てるコッチが戸惑うくらい。
子供の頃から何でも忘れてしまう彼女に、両親が心を痛めつつも愛情を注ぐところも、両親とはぐれた彼女が、独りきりで放浪しながら成長していくところも、両親とはぐれた彼女が周りの魚たちに助けを求めるも、成長するごとに記憶が失われ自分が何を探していたのかも分からなくなって行くところも、記憶障害で迷惑をかけてしまうからと、先に謝ってしまうクセがついてるところも。

もう、この時点で涙腺がヤバイ……というか、すでに号泣ですよ
なまじドリーが陽性なキャラクターなだけに、その生い立ちの辛さが際立ってしまうのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com  ドリーが鯨語を話せる秘密が明らかに

そんな過去を突如思い出したドリーは両親を探すべく、ニモ、マーリン親子とともに旅に出ます。

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画像出典元URL:http://eiga.com ベイビードリーと両親

監督は前作と同じアンドリュー・スタントン

監督は「トイ・ストーリー」シリーズの原案・脚本、「モンスターズ・インク」シリーズ、アカデミー作品賞の候補にもなった「ウォーリー」の脚本などを担当し、前作「ファインディング・ニモ」で脚本と監督を務めたアンドリュー・スタントン

ディズニー・ピクサーのヒット作の多くに関わっている超凄い人で、「ウォーリー」は僕のオールタイムベストに入る名作です。

また、ディズニー&ピクサー作品と言えば子供だけでなく、大人が考えるようなテーマを作品に織り込む作風で有名。
同じく昨年公開の「ズートピア」では動物の世界を人種差別のメタファーとして寓話的に描いていたし、「インサイドヘッド」では精神と成長という難しいテーマをエンターテイメントに昇華させていました。

「家族」を通してドリーのアイデンティティーを見つける物語

そして、本作でアンドリュー・スタントン監督が描こうとしたのは前作と同じく「家族」だと思います。
前作「ファインディング・ニモ」で描いたのは過保護な父親マーリンとニモの関係でしたが、本作はそんな前作と対になるようなドリーと両親の関係が描かれています。

一見、ドリーの「記憶障害」がフューチャーされているように見えて、実はそれはあくまで物語のスパイスに過ぎないというか、監督自身はドリーの「物忘れ」を“障害“としてではなく、あくまで“欠点“として扱っているのです。

どんな人でも、何かしら欠けている部分はあるのだから、ドリーは決して特別でも可哀想でもなく、彼女の「忘れっぽさ」はあくまで個性であって、それを補って余りあるモノを彼女は持っているし、欠けている部分を補い合い助け合うのが家族や仲間であり、居場所であり、個人のアイデンティティーになると。

本作はドリーの「家族」探しの物語であると同時に、彼女が自身のアイデンティティーを(長所を武器に)掴み取るという、普遍的なテーマを描いた物語なのです。

確かにやりすぎ感はあるけれど

ただ、個人的にツボに入りまくりだった本作ですが、正直100点満点というわけではないんですよねw
さすがに諸々やりすぎ感は否めません。

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画像出典元URL:http://eiga.com ドリーと万能すぎるタコのハンク

特にタコのハンクがあまりにも万能すぎるし、魚たちが地上を自由に動き回りすぎとかね。
あと、字幕版でシガニー・ウィーバーの役を吹き替え版では八代亜紀さんが担ってるんですが、さすがにビックネーム過ぎて、若干ノイズになってたかなーw

個人的にはアニメの嘘として全然許容範囲でしたけどねw

吹き替え版がオススメ

基本僕は、洋画は出来る限り字幕派なんですが、本作は吹き替え版がオススメです。
ドリー役の室井滋さんの演技がとにかく素晴らしいんですよねー!
あと、幼少期を演じた 青山らら という子の声がカワイイ上に、宇多丸師匠の言葉を借りるなら「泣かせ力」が半端ない。

海外アニメの吹き替え版の場合、配役によってはノイズになっちゃう事もあるんですが、本作においてはむしろ吹き替え版の方が物語に入り込める気がしました。

興味のある方は是非!!