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「NO」(2012) 感想(ネタバレあり)

ぷらすです、こんばんは。

今回ご紹介するのは、2012年のチリ映画「No」です。
1988年のチリ。15年間に渡り独裁政権をピノチェト将軍率いる与党から政権を奪うために奮闘する、若き広告マンの奮闘を描いた作品です。

 

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画像出店元URL: http://eiga.com/

概要

『トニー・マネロ』『Post Mortem』に続く、ピノチェト独裁政権三部作の完結編。
アントニオ・スカルメタ脚本の舞台『El Plebiscito』を原作に、パブロ・ラライン監督がメガホンをとった政治サスペンス。
主演はガエル・ガルシア・ベルナル

 

あらすじ

15年にも渡るピノチェト将軍の軍事独裁政権が続いていた南米チリ。
しかし、政権の非人道的行為は冷戦の終焉とともに国内外から批判を受け、ピノチェト将軍は次の8年間政権運営の是非を国民に問う、国民投票の実施を発表した。

反対派を徹底的に弾圧してきたピノチェトや側近は、自分たちを脅かす勢力はないとタカをくくり、自分たちが国民に支持されていることを国外へアピールするための出来レースだったのだ。

一方、反ピノチェト左派連合のメンバー、ウルティア(ルイス・ニェッコ)は、フリーの広告マンで長年の友人であるレネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)に『No』のためのCMを作ってほしいと依頼する。

『No』に与えられたのは、1日15分の深夜帯の放送枠のみ。

ピノチェト側は、自分たちが負けるはずはないと余裕綽々だったが、広告的手法を取り入れた『No』の放送は次第に民衆の支持を集め、これに焦ったピノチェト陣営は妨害工作や『No』の手法を真似たネガティブキャンペーンで対抗しようとする。

 

感想

1973年、アメリカの支援を得てクーデターを成功させてから1988年まで15年にも渡って独裁政権を続け、反体制派に対して、虐殺、拷問、追放など徹底的な弾圧と恐怖政治で国民から反抗の意思を奪ったピノチェト政権でしたが、冷戦の終焉とともに国内外から非人道的な行為を批判され、対外的な圧力もあった中、任期満了を迎えた彼は、次の8年間の続投への賛否を問うために国民投票を行うことを発表するというのが、本作の導入部です。

そこで、ピノチェト将軍に家族や友人を奪われた「No」のメンバーは、政権奪取のため投票までの27日間、1日15分の政見放送を認められます。
そこで白羽の矢がたったのが、リーダーウルティアの古い友人の広告マン レネでした。
最初は気乗りのしなかったレネですが、次第に広告マンのプライドが刺激されるエピソードがあり、本格的に「No」のCM作成にのめり込んでいきます。

ただ本作は、人間関係や状況が入り組んでて、ちょっと分かりにくいんですよね。
画面の中で起こっていることがこんがらがって「??」となる場面も結構あったりしました。

なので、ここでちょっと基本情報を整理すると、

①レネは、一時期、軍事政権を避けて国外で活動していた(らしい)が、政府の緩和政策でチリに戻ってきた。

②レネの上司グスマン( アルフレド・カストロ)は、親ピノチェト派。
レネに対抗した政府(YES)のCMを引受けたり、レネに圧力をかけたりする。

③レネの奥さんベロニカ(アントニア・セヘルス)は、反ピノチェト活動家で度々警察に逮捕されている。息子の安全を考えレネとは別居中?(ただしNoのメンバーではない)

④左派連合のメンバーのカメラマン、フェルナンド(ネストル・カンティリャナ)は、ピノチェト政権に家族を殺されていて、CMの方向性を巡ってレネと度々対立する。

と、この4つを抑えておかないと、観ていてちょっと混乱しちゃうかもです。

というのも、劇映画的なストーリーのアップダウンがあまりなくて、説明も少ないので状況が分かりにくいんですよね。(役者さんも知らない人ばかりなので余計混乱する)

ウルティアに頼まれて、レネが初めて「No」のメンバーに合うシーンで、フェルナンドの作ったCMを観せられるんですが、そのCMはピノチェトや警察・軍人などの非人道的な行いを訴えるもので、それを見たレネは「これでは人は動かない」と言います。

人を動かすのは喜びや楽しさだと。

で、レネは広告屋の手法で「チリの未来を描いた明るいCMを制作」を制作するんですが、最初は「No」のメンバーにも批判されます。
それでもレネは自分を信じて、「独裁の恐怖」ではなく「独裁後の未来」を描くCMを作り続け、そのCMに、すっかり諦めていた民衆の心も次第に動き始めるわけです。

最初は余裕綽々だった政府も、これに焦り、レネの上司グスマンに依頼してCMを作成。グスマンはレネの手法を逆手にとって、「No」のネガティブキャンペーンを張り、さらに政府は「No」のメンバーを監視したり妨害工作をしますが、NoのCMは国民の心をつかみ、国内世論は拮抗状態になっていくわけです。

本作では妨害工作の描写は最小限に抑え、CM合戦の様子をメインに据えて物語を展開していきます。

本作で特徴的なのは、政権派VS半政権派の対決が次第に、第三者であるレネvsグスマンの対決にすり替わっていくところで、広告のプロ同士のプライドのぶつかり合いになっていきます。

特に、グスマンはレネの才能を認めているだけに、広告屋として、レネの上司としてのプライドにかけて絶対に負けたくないんですね。

そうして、CM合戦を続けるうちに、グスマンは自分がレネには勝てないことを悟り、同時にピノチェト政権も負けるという筋立てになっています。

しかし、浮かれるNoメンバーを尻目に、立役者のはずのネオは複雑な表情で会場を去っていきます。
それは、政治や思想に関わったことで、自分が信じて推し進めてきたモノの中身がどんどん変容してしまったという思いがあったからなんじゃないかなと思ったりしました。

まぁ、もう政治に関わるのは懲り懲りだって思っただけかもですがw

あと、この映画は、1988年当時のカメラが使われていて、なので2012年の映画にも関わらず、画面の縦横比が昔のアナログテレビと同じになっているし、画像もかなり荒くなってます。
これは、映画内で使われている当時の映像と合わせるために意図的にやったことで、そのため当時の事件と地続き感のあるドキュメンタリックな迫力が出ていて、そこは凄く良かったと思いました。

諸々、考えさせられる内容でもありますんで、興味のある方は是非!

 

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