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『 BIUTIFUL/ビューティフル』(2011) 感想(ネタバレ有り)

ぷらすです。
今回ご紹介するのは、先日感想を書いた映画『アモーレス・ペロス』や『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品『BIUTIFUL/ビューティフル』ですよー!

2時間超と長い上に、かなり解釈が難しい映画でした。
というわけで、今回はネタバレ有り…というかネタバレ全開で書いていきますので、いつものように本作を観る予定のある方は、感想部分は鑑賞後に読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

http://ecx.images-amazon.com/images/I/81999IwaeaL._SL1500_.jpg画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp/

概要

『バベル』『アモーレス・ペロス』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、製作、原案、脚本による2010年のメキシコ映画。スペインバルセロナのサンタ・コロマ地区に住み、末期ガンに犯された中年男の最後の2ヶ月を追った物語。

主演は『ノーカントリー』『悪の法則』のハビエル・アンヘル・エンシーナス・バルデム。

 

あらすじ

スペインの貧民層に住む中年男ウスバルは、死者の声を遺族に届ける霊能者と、不法移民に仕事を斡旋する非合法な仕事という二足のわらじで生計を立てている。

精神に病を抱える妻と別れ、ふたりの幼い子供を引き取った彼の暮らしは厳しいが、二つの仕事で稼いだ金で、貧しいながらもなんとか日々を暮らしていた。

ところがある日、体調不良のため検査に行った病院で、彼は末期の前立腺ガンに犯され余命2ヶ月と診断され……。

 

感想

本作は一言で言うと『間違い続ける男の物語』です。
とにかく、良かれと思ってやることなすこと全てが裏目に出るんですね。

主人公ウスバルの父親は、フランコ独裁政権の圧政から20歳の若さでメキシコに亡命。母とウスバル、兄のティト(エドゥアルド・フェルナンデス)は、国内矯正移民政策によってバルセロナサンタ・コロマ地区に住むことを余儀なくされ『チャゴネル』と呼ばれて差別された過去があります。

ちなみに現在このサンタ・コロマ地区は海外からの不法移住者が多く住んでいるそうです。(この辺は、劇中では語られてないんですが、ネットで読んだ映画評に書いてありました)

幼くして父母を亡くしたウスバルとティトは、(恐らく)サンタ・コロマ地区で生きるために、色々な悪事に手を染め、結果、劇中のような(不法移住者に仕事を斡旋する)非合法な仕事をするようになったんじゃないかと思います。

一方でウスバルは、死者の魂と会話ができる霊能力もあり、霊能者として死者の声を遺族に届ける仕事もしています。

そんな彼には、アナ(アナー・ボウチャイブ)とマテオ(ギレルモ・エストレア)という二人の幼い子供がいます。

奥さんのマランブラ(マリセル・アルバレス)は、精神に病を抱え、さらにウスバルの兄ティトと寝ちゃうようなビッチで、矯正施設を行ったり来たりで現在は離婚中。

ね? ややこしいでしょ?

冒頭、ウスバルと娘アナの指輪についての会話のあと、彼と謎の若者が冬の森の中で会話をするところから物語は始まります。

二人の間にはフクロウの死体。

若者はウスバルに「フクロウは死ぬときに毛玉を吐き出すのを知っているか」と訪ねます。
この時点では、まったく謎の言葉で若者が何者なのかも分からないまま本編スタート。

体調に不調を感じたウスバルが病院で検査をしています。
採血が下手な看護婦から注射器を取り上げ、自分で採血しちゃうウスバル。
彼が過去麻薬に手を出した経験がある事が映像で分かるシークエンスです。

万事がこんな感じで、ウスバルの性格や置かれている状況がセリフで説明されることは殆どなくて、こういう映像やストーリーの中で徐々に彼の事が分かっていくわけです。

で、この検査の結果、ウスバルが末期ガンであり余命2ヶ月であることが発覚。
自分が死んだあと、ふたりの子供に十分な蓄えと面倒を見てくれる人間が必要なウスバルは、奥さんのマランブラと寄りを戻そうと考えます。

しかし、最初は良かったものの次第にマランブラは子供たちとの生活が苦しくなり、幼くて聞き分けのないマテオに手を挙げ、彼だけを置き去りにアナだけを連れて旅行に行く始末。

一方、中国人の不法移民に偽ブランドのバッグを作らせ、それをセネガルの不法移民に売りさばかせていたウスバルですが、当局の取締が厳しくなりセネガル人たちは捕まって強制送還に。
ウスバルは強制送還されたセネガル青年エクウェメ (シェイク・エンディアイェ)の妻イヘ (ディアリァトゥ・ダフ) とその赤ん坊の住む家を世話するために自分のアパートに住まわせます。(自分たちはマランブラの家に移った)

しかし、マランブラと再び破局したことで、イヘと同居することに。

そして中国人不法移民には兄ティトのコネで、建設現場を世話するんですが、彼らが寝起きする寒い地下室にせめて暖房をつけてやろうとガスストーブを調達するウスバル。
しかし、二人の子供たちに少しでも金を残してやりたい彼は、安物の不良品を買ってしまい、結果、20人以上の中国人不法移民はガス中毒で全員死亡してしまいます。

彼らを取りまとめていたハイ (チェン・ツァイシェン) は同性愛の恋人リウェイ (ルオ・チン) に言われるまま、沖合30mの海に死体を捨てますが、海岸に死体が打ち上げられたことで、大変な騒ぎに。

やることなすこと裏目に出て追い詰められたウスバルは、霊能者仲間? のベア(アナ・ワヘネル)に 苦しい胸の内を涙ながらに打ち明け、ベアはそんな彼に二つの黒い石炭のような石を持たせます。
「この石はお守りだから、最期の時が来たら石を子供たちに渡すように」と。

もちろん、宝石でも何でもないただの石に子供たちを守る効力はなく、ベアもそれは分かっていて、でも、石を渡す時に子供たちに自分の死について話をしないわけにはいかない。それが、子供たちにとってもウスバルにとっても救いになるだろうことを、ベアは見越していたんだと思います。

とは言え、結局子供のことを託せる人は誰もいないウスバル。
しかも、終わりの時はどんどん近づいてきて、体は弱っていく一方です。

そこで、彼は一緒のアパートに住むイヘに金を渡して、子供たちの事を頼みます。
イヘは、金が貯まったらセネガルに帰るからと断りますが、ウスバルは強引に金を渡します。

子供たちとイヘや赤ん坊が一年は暮らしていける大金。

イヘはその金を持ってセネガルに帰ろうと駅まで行くんですが、寸前で思いとどまってアパートに帰ってきます。

そして、命の火もいよいよ燃え尽きようとしているウスバル。
ベッドに入った彼に、アナが話しかけてきます。
そこで、ウスバルは冒頭のシーンと同じ指輪に纏わる会話をするんですね。
ウスバルの父マテオ(息子のマテオは父の名をつけてたんですね)が母に指輪を贈った話をしながら、彼は眠るように旅立ち、アナの呼びかけが遠くで聞こえます。

そして、場面変わって冒頭の森のシーン。
フクロウについて話す若者は、実はウスバルの父親だったんですね。
ちなみに『フクロウが死に際に毛玉を吐く』という話は、物語の前半で息子のマテオがウスバルに話した内容でもあります。
なので、この森が生と死の狭間でウスバルの見ている光景なのか、はたまた今までの経験が薄れゆく意識でごっちゃになった夢なのかは分かりません。

ウスバルの前を歩く父とそれに続くウスバル。
彼の「向こうには何が……」というセリフで物語は幕を閉じます。

なにせ情報量の多い映画なので、色んな人が色んな解釈をしています。
正直、僕もこの物語で監督が何を言わんとしていたのかをちゃんと理解できてるかは甚だ怪しいですが。

最初に書いたようにこの物語は『間違い続けた男の物語』だと思います。
元々彼が善良な人間だったのか、それとも残り少ない人生で善行をつもうとしたのかは分かりませんし、両方なのかもしれませんが、不法移民から紹介料をピンハネしている彼は、しかし、彼ら対してに親身で誠実です。
それは、ウスバル自身が貧しく苦しい最下層の人間だったからかもしれません。
顔見知りの警官に賄賂を渡してセネガル人の商売を見逃すように頼み、強制送還になった青年の奥さんと赤ん坊の面倒をみてやり、中国人には暖房器具を用意してやる。
しかし、それらは全て空回りし、むしろ事態はどんどん悪化してしまうわけです。

自分の死期が近いことを誰にも話さず、一人でなんとかケリをつけようとしますが、結局何も形を残すことはできない彼。とことん間違い続ける人生。
娘に訊かれた「ビューティフル」の綴りさえ、学のない彼は間違えて教えてしまうのです。

彼が人生で残したのは少しばかりのお金と、母から譲受けた指輪だけ。

しかし、ベアの前で泣きながら死への恐怖、ほんの小さなミスで引き起こしてしまった事故への懺悔を吐き出し、アナに死期が近いことを見抜かれ、彼女に「どうか自分のことを忘れないで欲しい」と吐き出し、最後の最後イヘに子供たちへの思いを吐き出し。最後に父母の思い出を娘アナに伝えたことで、体の中の『毛玉』を全て吐き出した彼はその生命を終えて『向こう』に行ったんじゃないかなーと思います。

間違いながらもみっともなく足掻き続け、できることは全てやって、ほんの少しのお金と指輪と石ころと、子供たちにイヘと赤ん坊いう『母親』と、間違えた『BIUTIFUL』の綴りを残してこの世を去る。

人生なんてその程度だし、それで十分なんじゃないかと、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は観客に問いかけてるんじゃないかなと、そんな風に思いました。

まぁ、この感想も『間違ってる』のかもしれませんけどもw

正直、2時間超と冗長なうえに暗くて重くて難しい映画なので、観るには中々覚悟がいりますが、観終わったあとに確かに何かが刻まれる映画でもあります。

興味のある方は是非!

 

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