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『リンダリンダリンダ』(2005) 感想

ぷらすです。
今回ご紹介するのは山下 敦弘監督作品『リンダリンダリンダ』ですよー!
山下監督は『苦役列車』『もらとりあむたま子』『味園ユニバース』と、何かと縁のある監督ですw
もう、先に言っちゃいますが、個人的に本作が僕の観た山下作品の中で一番好きな作品でしたー!

 

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

第1回日本映画エンジェル大賞(角川出版映像事業振興基金信託)に映画プロデューサー根岸洋之によるストーリー企画が受賞したことで制作がスタートした本作。
当初の企画では、留年した中島田花子(山崎優子/ME-ISM)が主役だったが、紆余曲折の末に、この形に収まった。

この作品の演技が高く評価され、立花恵役の香椎 由宇が第29回山路ふみ子映画賞新人女優賞を受賞した。

 

あらすじ

とある地方高校。
文化祭を数日後に控えたある日、軽音楽部所属の5人組ガールズバンドのギタリスト 今村萠(湯川 潮音)が指を骨折したことが発端となり、キーボードの立花恵(香椎 由宇)とボーカルの丸本凛子(三村 恭代)がケンカになり、バンドは空中分解してしまう。

残ったのは、恵とベースの白河望(関根 史織/Base Ball Bear)、ドラムの山田響子(前田 亜季)の三人だけ。
恵がギターを務めて何とか文化祭に参加しようとボーカルを探していた三人。
そこに、韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)が偶然通りかかり、バンドに参加することになる。

 

感想

本作は、4人の女子高生の数日を描いた青春映画です。
4人の女子高生がブルーハーツのコピーバンドを組んで文化祭の舞台で演奏するだけの映画で、劇中、葛藤や仲間割れ、挫折や復活、ライバルの出現やバトル展開といった劇的な盛り上がりはまったくなくて、ただただ、四人が練習したり、喋ったり、ちょっと恋したりする様子がオフビートなゆる~~~~いテンポで展開していきます。

な・の・に!

ラストの演奏のシーンでは、思わずグッときちゃうんですよねー。

そこには、山下監督の徹底したリアリズムの追求がまずあるのかなと思いました。
多分、山下監督は劇中で必要な演技パートはソン役のペ・ドゥナに任せて、演技経験の浅い他の子たちには出来るだけ自然な、悪く言えば限りなく素に近い状態を引き出すような演出をしたんじゃないかなー? と思うんですね。

本作は物語の発端で、多分もっとも劇的な展開であろう、ガールズバンドの分裂が終わった状態からスタートしています。

そこにハッキリした説明はなくて、観客は彼女たちの関係性やキャラクター、彼女たちの間に何が起こったのかを、彼女たちの会話や行動からなんとなく察していきます。

その合間に、韓国人留学性のソンの学校での立ち位置や友達が出来てないことなんかをそれとなく織り交ぜながら進めていく手際の良さはさすが山下監督だなーと思いました。

そうして、色々あって残った3人とソンが出会い、バンドを結成してからも、ドラマチックな展開は皆無。
普通ならここで、最初はバラバラだった4人が、やっぱり上手くいかずに諦めかけたり、それでも何かのキッカケで絆を深めたり、一丸となて練習・上達して本番に……なんてドラマ的な要素を入れる余地が沢山ありそうな気がしますが、そんなことはまったくなくて、むしろすでに関係性が出来上がっている3人と、ソンの距離が少しづつ近づいていく様子をじっくりと描いていくんですね。

そういう意味で、本作の大事なキーワードは『距離感』なんじゃないかと思います。

ケンカした凛子と恵が会話する時の気まずさが残る微妙な距離感。
顧問の先生とのソンの距離感。
3人の距離感とソンの距離感。

そういうそれぞれの距離感に、それぞれの心情を乗せながら、小さな変化やエピソードを丁寧に描き積み重ねていくことで、そこにドラマを作り上げていってる――みたいな?

本番前夜、ソンが練習の合間に屋台が並ぶ無人の学校で「やきそばおいしいよー」「くれーぷいかがですかー」と言いながらスキップを踏んで歩き、無人の体育館のステージで一人、韓国語でバンドのメンバー紹介をするシーン。

「ドラム 練習はサボルけどカワイイ響子」「ベース 料理の味付けは少し濃いしあまり喋らないけどキュートな望」「ギター 怒ると一番怖いけどいちばん優しい、アタシをバンドに誘ってくれた恵」
そして、ソンが部室に戻ると3人が待っている。

短い時間とはいえ、バンド練習やたわいないお喋りを重ねることで、彼女たち(特に恵)との距離が縮まり絆が生まれてる事をソン目線で示す、とても印象深い、僕の大好きなシーンです。

そこから、なんやかんやあって最後のライブシーンへ――となっていくわけですが、その辺は是非、自分の目で確認して頂きたいです。

好みは分かれるかもしれませんが、僕はとても好きな映画でした。
高校の文化祭という、限られた時間、限られた空間の中での、ほんの一瞬(かもしれない)瞬きを、過剰に脚色することなくそのまま切り取って観せた、山下 敦弘監督の傑作青春映画です!

興味のある方は是非!!

 

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2016/01/11追記
はてなブロガーの藤田竜一さんも本作についての感想を書かれてます!
良かったら合わせてご一読をー!

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 ▼山下 敦弘監督監督作品