ぷらすです。
今回ご紹介するのは、昨年日本で公開されたテリー・ギリアム監督の新作『ゼロの未来』ですよー!
僕は代表作『未来世紀ブラジル』はまだ観てないし、『12モンキーズ』は観たけどうろ覚え程度で、テリー・ギリアム作品にはほぼ縁がなく過ごしてきているので、本作がテリー・ギリアム初体験と言っても過言ではないです。
なので、もしトンチンカンな事を書いちゃったらスイマセンw
画像酒店元URL:http://eiga.com/
概要
2013年公開、イギリスの『SF』映画。
監督は『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』などの巨匠、テリー・ギリアム。
主演は『イングロリアスバスターズ』『007スペクター』など話題作に引っ張りだこのクリストフ・ヴァルツ。
あらすじ
天才コンピューター技師? のコーエン(クリストフ・ヴァルツ)は、廃教会に一人で住む変わり者。
そんな彼は、職場である『マンコム社』社長? のマネージメント(マット・デイモン)に在宅ワークを直訴。マネージメントが欲している『ゼロの定理』を証明するプロジェクトに参加する事を条件に、自宅である廃教会での在宅ワークが許可される。
しかし、マネージメントの命令で改造された自宅は、コーエンを監視するカメラが複数取り付けられ、完全に管理された状況。
さらに『ゼロの定理』の証明は難題で、コーエンは次第に追い詰められ心が病んでいく。
そんな彼の正気を保つべく、マネージメントが派遣された風俗嬢ベインスリー(メラニー・ティエリー)やマネージメントの息子で天才少年のボブ(ルーカス・ヘッジズ)とのコミュニケーションで、それまで固く閉ざされていた彼の心のドアを開いていくが……。
感想
難解なようなそうでもないような…
本多くの人が『難解」な作品と評していたので、僕もそれなりに覚悟を決めて本作を観たんですが、観終わって感じたのは「果たして難解な作品なのかなー?」 ということでした。なんかこう、難しいような割とストレートなような…?
で、本作の紹介では近未来の『SF映画』という説明もされてるんですが、「果たしてSFなのかなー?」とも。
概要でSFに鍵括弧をつけたのもそういう理由で、僕は本作を、現代社会を寓話的にデフォルメしたSF風ファンタジー映画だと感じたんですよね。
登場人物の行動や台詞回し、ビジュアルなんかが独特なので難しいような気がしますが、そういうのを全部外して観れば、普通に現代社会のシステムや環境に馴染めない孤独な男の物語に見えるんじゃないかと思います。
多分こんな物語
主人公のコーエンは、「仕事はIT関係だしネットで繋がってるし、会社に出てくる意味が分かんねーッス。ちゃんと結果出すんで在宅ノマド生活送りたいんスけど」って会社に言い続けてるコミュ障中年です。
なのに、飲みニュケーション大好きな上司にパーティーとか誘われてチョー迷惑って思ったら社長のマネージメントが現れて、「じゃぁ在宅ワーク認める代わりに、超難しいしノルマも厳しい仕事しろや」って言われてOKするものの、その仕事が本当に大変で、「もうやだこんな仕事辞めてやるι(`ロ´)ノムキー!!」 ってなるわけです。
そこで、マネージメントはコーエンのガス抜きのために、電脳ヘルスの女の子ベインズリーを派遣。
長らくセカンドDTを患っていたコーエンは、ベインズリーにすっかりお熱。
彼女も自分に恋してくれてると思い込んで毎夜、電脳ヘルスに通っては電脳ビーチで甘い時間を過ごし、さらに仕事のテコ入れで派遣されたマネージメントの息子、天才少年ボブとのコミュニケーションによって、少しづつ人間性を回復していいます。
ところがある日、ベインズリーに熱を上げすぎて「もう、仕事なんかどうでもいい。君と二人でここで暮らすー!」と襲いかかったら、電脳ヘルスに出禁をくらい「あ、結局はお金で雇われただけだったのか |||orz」って傷ついちゃって……みたいな?
ちょっと違うかもですが、大体そんな感じのお話……のハズ。
もちろんそれだけじゃなく、その裏には「生と死」だったり「個としての人間の存在意義」だったりというテーマのメタファーが、これみよがしに何かに置き換えた形で登場したりします。
「あ、コレはアレのメタファーだな」と気づくけど、全編通してひとつの何かを語っているというより、それぞれ独立したメタファー(というか置き換え)を提示することで、巨大なシステムに管理されている現代社会で、個人としてのアイデンティティを踏みにじられていく様子を寓話化し、皮肉たっぷりに批判しているんじゃないかなーと思ったり。
そんな風に書くと、なんか難しい物語みたいですが、前述したようにストーリー自体は割とありがちだし、素直に物語だけを追う分には楽しめる映画なんじゃないかと思います。
映像美を楽しむ
あと、本作の特徴(というかテリー・ギリアム監督の作風)として、レトロフューチャーでカラフルな世界観というのがあります。
普通SF映画って、メタリックで無機的なイメージがあると思うんですが、テリー・ギリアム監督が描く世界は、どこか懐かしさが残った有機的で極彩色の世界。
あと、一つ一つのシーンの情報量が多いですw
なんで、僕は「これ、字幕で観てると画面が追えないな」と思ってすぐに、吹き替えに変えて観ました。
本作で登場する街並みのモデルは、監督が昔来日したときにカルチャーショックを受けた秋葉原がモデルになっているらしいので、その辺を楽しむだけでも見る価値があるんじゃないでしょうか。
解釈の分かれるラスト
ラストで、最終的に主人公コーエンが救われたか救われなかったのかの解釈は観る人によって分かれていて、僕は彼が『自身を世界から隔離すること』で彼の魂は救済されたように感じました。
最初も彼は、他人との関わりを避け社会の歯車になることで自己を守ろうとしていたけれど、ラストでは人間らしさを取り戻した彼の魂は『美しい思い出の中』で安寧を得た。みたいな。
こういう難しそうな映画は、ちょっと敬遠しがちではありますが、観てる最中だけじゃなく、観たあともしばらく考えたり、ネットを検索してほかの人の解釈を読んだりと、長い時間楽しめる? ので、たまにはいいんじゃないかと思ったりしますよ。
興味のある方は是非!!
▼テリー・ギリアム監督の代表作▼