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「劇場版 境界の彼方 -ILL BE HERE 未来篇」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、京都アニメーション製作のTVアニメ『境界の彼方』の劇場版。『劇場版 境界の彼方 -ILL BE HERE 未来篇』ですよー!

ちなみに劇場版は『~過去篇』『~未来篇』とあるんですが、DVDパッケージに過去編はTVの総集編と書かれていたので、今回は『未来篇』の方をレンタルしてきました。

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

 KAエスマ文庫から刊行されている鳥居なごむの同名ライトノベルを原作に、京都アニメーションが製作したTVアニメ『境界の彼方』のその後を描いた、いわば最終回とも言える作品。3月にTV版を再編集した『過去篇』が公開されている。
監督は、京都アニメーション所属の石立 太一。

 

あらすじ

体の中に最強の妖夢境界の彼方」を持つ不死身で半人半妖の少年 神原 秋人(声:KENN)は、ついにその力が暴走したものの、呪われた血脈の子孫であり、自分の血液を剣にして戦う『異界士』の少女 栗山未来(声:種田 梨沙)のおかげで、一時は体内から「境界の彼方」を取り除くことに成功。
その時「境界の彼方」と共に消滅したと思われていた未来は、しかし、「境界の彼方」を異界に隔離し、一人戦い続けていた。
それを知った秋人が再び「境界の彼方」を受け入れたことで、世界は元通り平穏を取り戻したかに見えたが、その代償として未来は過去の記憶を失ってしまう。

記憶と引き換えに呪われた過去から解放され『普通』の女の子として暮らす事が未来の幸せと思った秋人は、未来を避けるようになるが…。

一方、長月市花野寺町を治める異界士の名門、名瀬家では失踪した前当主 泉(声:川澄 綾子)に代わりに長男の博臣(声:鈴木 達央)が当主として活動していたが、そんなある日、何者かに異界士が次々に襲われる事件が発生する。

 

感想

のその前に。

これから感想を書くのに、キャラクターが分からないと分かりにくいと思うので、まずはざっくりと、TV版の物語とキャラクターの概要を書かせていただきますね。知ってる人は読み飛ばしてください。

栗山未来:本作のヒロインであり主人公です。
自身の血液を剣と化す異能力を持つ「異界士」で、『呪われた血の一族』の末裔として忌み嫌われる存在でした。
そんな彼女の宿命は、最強の妖夢境界の彼方』を倒すこと。そして『境界の彼方』はもう一人の主人公 神原秋人の体内にいることを知った彼女は、秋人を殺すために付け狙うも、不死身の秋人を殺すことが出来ず。
結局秋人や友人の異界士 名瀬家の長男 博臣や次女 美月(声:茅原 実里)らと、人に害なす妖夢を退治するようになります。

神原 秋人:異界士の母と妖夢の父の間に生まれた半人半妖で不死身の体を持つ少年。
限度を超えたダメージを受けると、自我を失い暴走します。暴走時は体中から猛毒の瘴気を出したり、超強い戦闘マシーンになったりします。
でも、普段はとても穏やかで極度の眼鏡フェチの普通の少年です。

名瀬 博臣:長月市花野寺町の大地主である名瀬家の長男で、空間を制御する「檻」という異能力を持つ異界士です。超強くて度を越したシスコンです。

名瀬 美月:博臣の妹で、名瀬家次女。名瀬家の中では力が弱いのがコンプレックス。
趣味は盆栽と秋人いじめです。

名瀬 泉:名瀬家の長女で美月と博臣の姉。名瀬家の当主でもあり、『異能士協会』の偉い人。なんか色々背負った苦労人です。そこを藤真 弥勒につけ込まれて、より強くなるために体内に妖夢を飼ってドーピングしたりします。
TV版では最後に失踪。本作でその真相が判明します。

藤真 弥勒:異界士協会にいながら、世界を破壊するために色々画策したり泉をストーキングしたりする悪いやつです。泉と同じく体内の妖夢を飼うことで能力を強化していました。

作品の世界観:「妖夢」と呼ばれる人間に害を及ぼす存在(妖怪みたいなもの)がいて、それらを退治する特殊能力者「異能士」という職業が市民権を得ているという世界。「妖夢」は千差万別で、中には人間界で共存する者もいたりします。

境界の彼方:最強最悪の妖夢。普段は秋人の体内に収納されてます。

 

ここから感想

「~過去篇」は総集編と前述しましたが、厳密にはTV版から秋人と未来のエピソードを中心に再編集されたものだそうです。
そして、この「~未来篇」に続くわけで、こちらは完全新作。
なのでTVを観てない人も、この両作品を観れば、物語は理解できる作りになっているようですね。

TV版の最終回では、一応ハッピーエンドだったものの、多くのエピソードや伏線が未回収で多少モヤモヤが残ったんですが、それらのモヤモヤ要素も本作でほぼ全部回収されていて、実質、本作が「境界の彼方」真の最終回になっています。

中二設定の奥にある普遍的なテーマ

この作品を物凄くざっくり要約すれば、「現代版陰陽師」と言えるんじゃないかと思います。人に害なす悪い妖怪を退治する能力者の物語ですからね。
そしてその設定は、まさに中二ワールド全開!

京アニの作品は、大きく分けると「日常系」「部活もの」「中二系」の三本のメインラインがあって、中二系作品だと中二病でも恋がしたい!と現在放送中の「無彩限のファントム・ワールド」という作品がありますが、本作はそんな中二系の一本。

なので、一般の人には正直敷居が高いんじゃないかと思うんですよね。

ただ、劇場版2作品では、TV版のコメディー的要素を極力排除して、秋人と未来、二人の関係に焦点を当てているので、中二系は苦手という人にも観やすくなってるかもしれません。

幸せとは何か

本作のテーマは「幸せとは何か」という普遍的なものです。
秋人と未来はその出自、泉は名門である名瀬家を一人で背負う重圧という過去からの因縁に、それぞれ縛られています。

しかし、「~過去篇」で「境界の彼方」一件の代償として記憶を失った未来は、辛い過去の呪縛から開放され幸せになれると秋人は考え、彼女が過去を思い出さないように自ら身を引くんですね。
そんな秋人に周囲の友人たちは「彼女は本当に幸せなのか」を繰り返し問います。

良い思い出も悪い思い出も含めた『過去』が今の彼女を作っている。
その過去と切り離すことが、果たして彼女にとって幸せなのか、それを幸せと決め付けるのは秋人のエゴではないのかと。
しかし、未来の「呪われた血の一族」として迫害された過去と同じく、半妖であり、体内に「境界の彼方」を持つ重い宿命を背負ってきた秋人だからこそ、未来が抱えている苦悩を一番分かっているわけで、だからこそ『普通』の女の子として幸せになって欲しいと願ってしまうんですね。

一方、若くして地元の名家である名瀬家の名代という重責を背負った泉は、その責任を全うする力を求めるあまり、禁術に手を出してしまいます。
彼女の責任感の強さにつけ込んだのは藤真 弥勒ですが、それを選んだのは彼女自身です。もし彼女の辛さを理解してくれる人が傍にいれば、彼女は禁術に手を出すことはなかったのかもしれません。

そういう意味で、泉と、秋人・未来の境遇は正反対ですが、一人で重い過去を抱え込んできた点では鏡合わせです。しかし、秋人と未来には理解し受け入れてくれる仲間がいたのに対し、泉はずっと一人ぼっちだったわけですね。

劇中、過去の因縁に縛られ、振り回されていたヒロイン未来。
そんな彼女は記憶と引換えに平穏な生活を手に入れますが、過去を手放す事は、自分のアイデンティティを失う事でもあります。
(それが例え辛いものでも)『過去』を受け入れないと、先には進めないということを本作は言ってるんじゃないかなと。

そして、一人では抱え切れない苦しい過去も、互いに理解し支えあえる大切な人がいてくれれば乗り越えられるという事なんじゃないかなと思いました。

なんか言葉にしてしまうと陳腐ですけども。

彼らを縛り振り回す能力や設定はただの物語のテンプレでなく、そうした過去や現在のメタファーとして多くの若者が抱える普遍的な悩みでもあって、本作はそんな彼ら彼女らに寄り添いながら、背中をそっと押してあげる物語になってるんじゃないかなーと、そんな風に感じました。

それはそれとして

まぁ、そんな小難しい話はどうでもいいとして、久しぶりに見た栗山未来ちゃんの可愛さに、オジさんはもうメロメロでしたよ!
メガネっ子サイコーーーー!!ヽ(゜▽゜)/

元々動きに定評のある京アニですが、劇場版ということでよりダイナミックに動いてたし、ラストの〆方もバッチリサイコーでしたー!
あと、エンドロールでちゃんとみんなのその後が描かれていたのも凄く良かったです!

アニメ、しかも萌えアニメの劇場版なので一般の方的には抵抗もあるかもですが、出来れば多くの人に見ていただきたい良作でしたよー!

興味のある方は是非!!