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「トゥルー・グリッド」(2011) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、コーエン兄弟監督の西部劇『トゥルー・グリッド』ですよー!
恥ずかしながら僕はこの映画まったく知らなくて、たまたま手に取ったら監督がコーエン兄弟だったので、慌ててレンタルしました。(〃ω〃)>

 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/91XbFpWpVhL._SL1500_.jpg画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp/

概要

チャールズ・ポーティス原作小説『勇気ある追跡』の再映画化で、1969年のジョン・ウェイン主演の同名西部劇のリメイク作品。
監督は『ノーカントリー』『ファーゴ』などのコーエン兄弟で、製作総指揮をスティーブン・スピルバーグが執った。
出演はジェフ・ブリッジスヘイリー・スタインフェルドマット・デイモンジョシュ・ブローリンバリー・ペッパーなど。

あらすじ

フォート・スミスで牧場の使用人トム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に父を殺され、馬と金貨と銃を盗まれた14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は、復讐のため腕利きと評判の連邦保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇う。
最初は乗り気ではないルースターだったが、マティの直向きな姿勢に心を動かされ、チェイニー逮捕に動く。そこにテキサスレンジャーのラ・ビーフ(マット・デイモン)も加わる。
チェイニーはいくつも偽名を使い、テキサスでも殺人を犯していたのだ。
こうして老ガンマン・テキサスレンジャー・14歳の少女は、トム・チェイニーを追うことになる。

 

感想

上記の通り、僕はこの映画のことも内容も全く知らなくて、前情報なしの状態で観たんですが、結論から言うと凄く面白かったです!

本作は1969年、ジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』のリメイク作品だそうですが、コーエン兄弟は主役のルースターから、14歳の少女マティに視点を移し、より原作小説に忠実なストーリーになっているそうです。

マティの成長譚

本作で殺された父の復讐に燃える少女マティは、父親に14歳で牧場の経営を任されるほど頭がよくて数字に強く、大人相手でも堂々と論破してしまうほど口の立つ勝気な少女です。

そんな彼女は家族にも内緒で父親の復讐を企てていて、そのためにフォート・スミスにやってきたんですね。
ますはその資金を得るために、父の仇チェイニーが売り払った馬を買った業者相手に、訴訟をちらつかせながら交渉し、弁償という形で金と馬を手に入れると、腕利きと評判の連邦保安官ルースター(ジョシュ・ブローリン)を雇おうとします。

彼女にとっての復讐は、父の仇を生かして捕らえ、正式な手続きで罪を償わせるというものなんですねー。
14歳の少女らしい、非常に真っ直ぐな正義感ですが、同時に、正義が勝つ、法律(ルール)は守られる、正論は正しいという、『表向きのルール』を信じて疑わない真っ直ぐさゆえの危うさもあったりします。

正直、契約や訴訟を盾に大人を論破しようとする彼女の行動は、観ていてハラハラさせられっぱなしなんですよねーww

本作では、そんな彼女がルースターやラ・ビーフとの旅で少女らしい弱さを見せたり、旅の経験を通し少しだけ大人に成長するという物語でもあります。

ルースターという男

そんな彼女と旅に出るのが、ジェフ・ブリッジス演じるルースター。
白髪白ひげアイパッチと、中二心をくすぐるビジュアルの渋い西部の男です。

彼は、マティとは正反対。
大酒飲みで気分屋で元泥棒で……世の中の裏も表も知り尽くし、身も心も弱肉強食の『西部の掟』に染まりきっている男なんですね。
彼は最初。マティの依頼に乗り気ではなく、何とかと理由をつけては断ろうとします。
彼女の仇であるチェイニーは、フォート・スミスでは賞金首としては小物で、彼が逃げ込んだ
インディアン領に危険を冒してまで乗り込む価値がないからです。
しかし、テキサスから彼を追ってきたラ・ビーフ(マット・デイモン)によれば、チェイニーはテキサスで議員を撃ち殺した高額賞金首。
それで、ルースターはチェイニーを捉えてテキサスに連れて行こうと、マティを置いてラ・ビーフとチェイニーを追うんですね。

しかし、そんな彼らを追ってきたマティの『ある行動』に彼女の覚悟を見たルースターは同行を許します。いい加減で大酒飲みで荒くれ者だけど、根はいい人なんですよね。

ルースターは旅の途中でチェイニーに昔の自慢話を延々聞かせるんですが、なにせいい加減な男なので、その話もどうも胡散臭い。一方で、悪党との駆け引きではベテランらしいキレ者っぷりもみせる正体の掴めない男でもあるんですね。

本作の魅力はそんな彼と、若く真っ直ぐな少女マティの生き様や価値観の対比。そんな二人のアンサンブルにあるんじゃないかと思いました。

で、この二人の関係って、いわば先生と生徒みたいな感じで、大人とも対等に(言葉で)やり合えると思っている少女が、自分の能力では太刀打ちできない常識の違う『異世界』を旅する冒険譚でもあるわけなんですね。
そんな彼女を導くのが、ルースターなわけです。

ラ・ビーフという男

で、この二人と同行するのがマット・デイモン演じるラ・ビーフです。
僕は観ている間中、このラ・ビーフがマット・デイモンとはまったく気づかなくって、感想を書くためにネットで情報をチェックしてる時に、「お前マット・デイモンだったのかよ!」とビックリしましたw

本作においての彼は狂言回し的な立ち位置で、ルースターとマティの丁度中間くらいのキャラクターです。
洒落者でキザで、表面上は公平な紳士を気取ってるけど、それなりに西部の掟に馴染んでもいて、カッコイイけど少し間が抜けてる愛すべきキャラクターっていう感じです。彼がいることで各キャラクターを繋ぎ、物語がスムーズに進む、とても重要な役どころでしたねー。

あの物語っぽい?

そんな二人に守られながら、マティは危険な荒野を冒険し、大人への階段を上ります。
僕はそんな本作を観て『オズの魔法使い』を連想しました。
もちろん全く違う話ですが、仲間と異世界を冒険して成長する少女というモチーフは、共通するところがあるんじゃないかなーと思ったり思わなかったり。

正統派西部劇

本作は決してド派手な超大作ではない(どちらかといえば)小粒な作品ですが、そこはコーエン兄弟、しっかり面白い作品に仕上げています。
ストーリーやキャラクターはもちろんですが、当時の西部の街や人々の服装などのディテールも素晴らしいし、ロジャー・ディーキンス撮影の映像も美しく、ザ・西部劇という様式を再現しながら、コーエン兄弟特有の雰囲気やユーモアも入っていて、ちゃんと現代に通じるようにアップデートされてる。そんな作品でしたよ。

興味のある方は是非!!

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