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「キャノンフィルムズ爆走風雲録」(2016) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1980年代のハリウッドを盛りたてたイスラエル出身のメナハム・ゴーランと従兄弟のヨーラン・グローバスの人生を描いたドキュメンタリー『キャノンフィルムズ爆走風雲録』ですよー!

イスラエルからハリウッドに渡り、キャノンフィルムズというインディー映画製作会社を立ち上げた彼らの栄枯盛衰の様子を、当時のプライベートフィルムと本人や周囲の証言を交えて描いた作品です!

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要とあらすじ

故郷イスラエルで大ヒットを飛ばし、満を持してハリウッドに乗り込んできた、映画監督でもあるナメハムとプロデューサーとして高い資質を持つヨーランのコンビ。

そんな二人の会社「キャノンフィルムズ」は最初こそ上手くいかないものの、低予算のジャンルムービーを大量生産し、80年代には次々にヒット作を飛ばし、メジャー映画会社を脅かすほどの大会社へと成長していいく。
その一方で、ジャン=リュック・ゴダール、ジョン・カサベテス、ロバート・アルトマンといった、商業主義とは一線を画する映画作家たちにも出資するなど、あらゆる方面の映画や経営に手を伸ばしていくが……。

そんな波乱万丈のメナハムと従兄弟のヨーランの人生を追っていくドキュメント映画。
監督は、同じくイスラエル人監督のヒラ・メダリア。

 

感想

正直に言うと、僕は『キャノンフィルムズ』という名前を聞いても、あまりピンと来ないんですが、スタローン主演の腕相撲映画「オーバー・ザ・トップ」を作った会社なんですねー。

他にも、チャック・ノリスチャールズ・ブロンソンショー・コスギケイン・コスギのパパ)などのスターを世に出した会社でもあるんだとか。
確かに、劇中何本か僕が子供の頃に見たことのある映画が出てきましたよー。

ハリウッドを相手に戦う『ガハハ親父』奮闘記

本作は、彼らがイスラエルで映画を作り始めるところからスタートします。
イスラエルで製作した映画が大ヒットを飛ばし、その勢いのまま監督兼社長のナメハム・ゴーランと、彼の従兄弟で映画プロデューサーとして天才的な資質を持つヨーラン・グローバスのコンビは、映画の都ハリウッドに乗り込み「キャノンフィルムズ」というインディー映画製作会社を立ち上げます。

最初は上手くいかなかったものの、二人は「数打ちゃ当たる」方式で低予算のジャンル映画を次々に製作。
彼らが製作する、エロ・グロ・バイオレンス・アクションの刺激的な映像と、娯楽に振り切った分かりやすい勧善懲悪の物語は、映画評論家などからは嫌われ、ケチョンケチョンに貶されますが、刺激を求める若者や、いわゆるブルーカラー層の観客に大受け。
次第にその勢力を拡大していくわけです。

そんな当時の彼らの勢いを、特集番組?や大量のプライベートフィルムと共に見ていると、やたら声が大きくて押しの強い様子はなんていうか、田舎の土建屋みたい。

まさに『ガハハ親父』そのものなんですよ。

あと、プライベートフィルムの量も尋常じゃありません。
どんだけ自分スキなんだよwっていう。
中でも小太りのオッサン二人(ナメハム&ヨーラン)が、会社のロゴ入りジャージを着て浜辺をランニングしている様子は、(いろんな意味で)本作一番の見所です。

やがて当時の景気や時流に乗り、じゃんじゃんヒット作を手がけ、やがてキャノンフィルムズはハリウッドの一等地に自社ビルを構えるまでに成長していくのです。

その一方で

そんなイケイケドンドンな二人は周囲の人達から『ゴーゴー・ボーイズ』と呼ばれるようになります。
カンヌ映画祭に出向くと、公開はおろかタイトルも役者も脚本も決まっていない映画の上映権を売りまくり、益々勢いに乗る『キャノンフィルムズ』
そんな様子から「映画のセールスマン」と陰口を叩かれるナメハムでしたが、その一方で、ジャン=リュック・ゴダール、ジョン・カサベテス、ロバート・アルトマンなど、エンターテイメントとは一線を画す芸術性の高い映画監督にチャンスを与え、ヨーロッパー映画の普及にも尽力したりしています。

僕の苦手な、声の大きいガハハ親父 ナメハムが、それでもどこか憎めないのは、その根底に絶対的な映画愛が流れているからなんだと思います。(ナメハム自身も監督ですしね)

衰退・倒産・そして

しかし、そんな『キャノンフィルムズ』帝国も、時流の流れと、手がけたビックバジェットの映画が次々コケまくって、経営が怪しくなってきます。
そんな会社の危機にナメハムが出した回答は、『もっと沢山映画を作る

B級ジャンル映画を大量に作ることで成功したナメハムは、最後までその方法にこだわり続け、そして社運をかけて製作した『スーパーマン4』の大コケで、実質トドメを刺されることになるのでした。

もちろん、ワンマンで強引な二人のやり方を面白く思っていない人や、彼らによって潰された人たちも沢山いるんでしょうけど、その一方で彼らのおかげでチャンスを得て後に大スター・大監督になった人たちも沢山いるわけで。
ただでさえ排他的でシステム化されたハリウッドの中で、『海外』からやってきた無名のガハハ親父がのし上がっていく様は痛快でもあり、衰退していく様子は何とも言えない寂しさもあったりします。

『セールスマン』として優秀だった彼らの中身は、人並外れた『映画バカ』であって、その遺伝子はフィルムを通して次の世代、そのまた次の世代へと確実に受け継がれているんじゃないかなーなんて思ったりしました。

ナメハム・ゴーランは本作撮影後の2014年にこの世を去るわけですが、本作ラストでのサプライズと、会話には胸が熱くなってしまいましたよ。

80年代B級ジャンル映画に青春を捧げてしまったボンクラーズ世代必見の一本です!

興味のある方は是非!