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「アーロと少年」(2016) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ディズニーピクサーの3DCGアニメ作品『アーロと少年』ですよー!

ピクサー作品としては初めての赤字作品なんて言われてたので、そんなにつまらないのか? とドキドキしながら観ましたが、いやいやなんの、面白い作品でしたよ。

 

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画像出典元URL:http://eiga.com/

あらすじと概要

米国では2015年に公開されたディズニーピクサー制作の3DCGアニメーション映画。『恐竜を絶滅に追い込んだ隕石が、もしも地球に衝突していなかったら』という“if“の世界を描く。

今から6500万年前、地球に衝突し恐竜を絶滅に追い込んだ隕石の軌道が逸れ、恐竜たちは絶滅しなかった。
それから長い時間をかけ進化した恐竜たちは、自ら農業や畜産で食料を蓄えることが出来るまでに進化していた。

そんな世界で生まれたアパトサウルスのアーロ(声:レイモンド・オチョア/石川樹)は、優しい父母と2人の兄と共に幸せに暮らしていたが、兄たちに比べ成長が遅く甘えん坊で弱虫な性格。
そんなアーロを心配した父ヘンリー(声:ジェフリー・ライト/山野井 仁)は、彼にある仕事を命じる。
それは、サイロの中に蓄えた備蓄食料を盗み食いする“害獣“の退治だった。

アーロが仕掛けた罠にハマったのは、まだ言葉も持たない原始人の少年(声:ジャック・ブライト)。
少年を殺すことが出来なかったアーロは、彼を逃がすところを父に見つかり二人で追いかけるが、突然の鉄砲水が川岸を歩いていた二人に迫り、アーロを助けようとした父は川に流されてしまう。

父を失ったアーロはある日、元凶の少年を見つけ怒りに任せて追いかけるが、うっかり川に落ちて流され、目が覚めるとそこは全く見覚えのない場所だった。

監督は本作が長編デビューのピーター・ソーン。

 

感想

本作はピクサー初の赤字作品になってしまったわけですが、じゃぁ面白くないのかと言えば、そんなことはなかったです。
少なくとも僕はかなり楽しめたし、内容も王道で感動しました。
子供向けという印象を持たれてる方もいるかもですが、僕は本作は大人と子供、両方の視点で楽しめて感動できる、万人向けの作品だったと思いますよ。

ピクサーの技術が光る。思わず息を呑む自然の描写

本作で、誰もが驚くのが、CGで描かれた自然の描写ではないかと思います。
水面や鉄砲水、草、木、森、太陽などなど、まるで実写と見まごうようなリアルな表現。さすがは天下のピクサー作品です。

ピーターソーン監督自身、

「自然がもつ魔法や美しさ、そして怖さをいかに描くかが課題でした。だからこそ、ストーリーはシンプルにしたのです」

と語っています。

シンプルなストーリー

確かに、監督自ら語っているように、本作のストーリーはビックリするくらいシンプルです。
ものすごくザックリ言うなら、行って帰ってくるだけの物語

近年のピクサー作品としては異例とも言えるほどの捻りのない物語です。
ただ、「捻りがない」と「つまらない」は必ずしもイコールではないし、個人的に本作は“少年の成長物語“として、王道の面白い作品だと思いました。
ピクサーといえば監督なりの世相に対する主張を暗喩したストーリーテリングで大人も観られる作品が多いですが、本作ではもっと普遍的な、“成長“と“家族“に焦点を当てている作品のように感じました。

アーロは自分の臆病さの所為で大好きな父親を亡くしてしまうんですが、その事実に向き合うことが出来ず、事の発端となった人間の少年(後にアーロがスポットと命名)の所為にして憎みます。
しかし、スポットの方は自分の命を助けてくれたアーロに懐き、一緒に冒険を続ける内に二人の絆は次第に強くなっていくという、ある種のバディムービーでもあるんですね。

あと、本作は恐竜版の西部劇でもあります。
世界観が、西部開拓時代のアメリカを恐竜たちがいる時代に見立てて描かれているんですね。
その劇中に登場するカウボーイ役はティラノサウルス
彼らとの出会いやふれあいから、アーロは弱さを受け入れることで強くなることを学んでいくのです。

ピクサー初の失敗作になってしまった理由

個人的にはとても面白い映画でしたが、本作はピクサー映画として初の赤字作品になってしまった理由も同時に見える作品でした。

僕から見ても、ここはどうなの? っていうポイントがいくつかあるんですよね。

例えば、本作では進化した恐竜たちが言葉を話し、農業や畜産を営んでいます。

ただ、その割にはそれほど道具が発達していなかったり、そうかと思うと火を起こしたり、彼らがどのくらい進化しているのかが、少々曖昧なんですよね。(道具に関して言えば、体の大きな恐竜なので、そもそも道具に頼る必要がないとも言えますが)

その辺の曖昧さが、物語に共感するためのノイズになっているのではないかと。

そして、何より問題なのは、主人公を恐竜にする必然性が見えないという問題。
上記のように、本作では恐竜を全滅させた隕石が地球から逸れた、『if』の世界を描いているわけですが、それ以上のモノが見えてこないわけです。

物語自体は別に、原始人の少年と他の動物でも全然成り立ちますしね。

もしも、恐竜が絶滅していなかったらという発想自体は面白いと思いますが、それ以外の『恐竜が主人公でなければいけない理由』を提示しないと、ただの出オチ設定と思われても仕方ないんじゃないかなと思いました。

っていうか、そもそも論で言えばなぜ今頃になって恐竜なのか問題もありますよね。
もっと前の恐竜ブームの頃に公開されていたら、それなりに話題にもなったような気もするんですが、いくらなんでも題材として旬を過ぎているし、後追いの形になる以上は、先達の作品以上に観客の興味を引く『何か』を提示しないとダメだったんじゃないかと。

本作がピクサー初の赤字作品になってしまったのも、そうした企画自体のフックの弱さに原因の一端があったんじゃないかと思いました。

ただ、物語はベタだし捻りもないですが、圧倒的な映像表現とシンプルな物語ゆえに、一回感情移入出来れば、見ごたえのある面白い映画だと思いますよ。

興味のある方は是非!!