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ニコラス・ケイジはやっぱコッチでしょ! 「赤ちゃん泥棒」(1988) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、今やヒットメーカーであるコーエン兄弟の長編2作目『赤ちゃん泥棒』ですよー!
若き日のニコラスケイジ主演のドタバタコメディーです。

本作は日本公開されたのが1988年という古い映画ということで、今回はネタバレありで感想を書きますよ。
なので、もしも、これから本作を観る予定があって、ネタバレは困るという人は映画を見たあとにこの感想を読んでくださいねー。(さすがにいないとは思いますがw)

いいですね? 注意しましたよ?

 

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

ブラッド・シンプル」のジョエル&イーサン・コーエン兄弟が、ニコラス・ケイジとホリー・ハンターを主演に迎えて手掛けたアクション・コメディ。元強盗の夫と元警察官の妻。子宝に恵まれず悩んでいた2人は、ある大富豪の家に5つ子が誕生したことをテレビで知り、そのうちの1人を奪って逃走する。赤ちゃん泥棒はひとまず成功したものの、夫の刑務所仲間や赤ちゃんを狙う賞金稼ぎが次々と現れて連鎖的に事件が起こり……。(映画.comより引用)

 

感想

本作が劇場公開されたときは、わりとテレビでも紹介されて話題作だったような気がするんですが、赤ちゃんを巡るドタバタコメディーは他にもあったような気もするので、もしかしたら他作品と勘違いしてるかもしれません。

長編デビュー作「ブラッド・シンプル」で高い評価を得たコーエン兄弟の長編映画2作目であり、若き日のニコラス・ケイジが主人公のボンクラ男を好演してます。

一見、どこかで見たようなドタバタコメディーながら、後のコーエン兄弟作品に通じる独特な空気を持つ、ちょっとヘンテコな作品でもありましたね。

どこか古典落語に近い空気を持つ作品

観終わって僕がまず本作に感じたのは、「なんか古典落語っぽい」でした。

立川談志さんの言葉で「落語は人間の業の肯定である」というのがあるんですが(そして僕にはよく意味が分からないんですがw)、本作は、まさにキャラクターそれぞれの「業」を肯定した上で、コーエン兄弟はそれを面白おかしく描いてるような気がしたんですよね。

映画冒頭、アリゾナのダメ男のハイ(ニコラス・ケイジ)が刑務所に収監されるところから始める本作。その時に出会うのが、ホリー・ハンター演じる女性警察官のエドです。

その後、出所しては捕まりを繰り返したハイは、3回目の収監のときエドにプロポーズ、出所後二人は結婚して幸せに暮らしますが、ある日エドが不妊症であることが発覚します。
それが原因で二人の生活にも影が落ち始めたとき、アリゾナで家具屋のチェーンを営む大富豪、ネイサン・アリゾナ夫妻に五つ子が生まれたというニュースを見た二人は、「五人もいるのだから一人くらい貰ってもいいだろう」と、アリゾナ家に忍び込んで赤ちゃんを盗んでくるわけです。

しかし、現実はそう上手くいかず、二人が盗んだ赤ちゃんを巡り、ハイの上司や知り合いの脱獄囚、恐ろしい賞金稼ぎがすったもんだの奪い合いを繰り広げ、その騒ぎを通して自分たちの未熟さ身勝手さを痛感した二人は、アリゾナ夫婦に赤ちゃんを返す。という物語で、それ自体は米コメディーの王道展開です。

ただ、主人公のボンクラ男で気の弱い男ハイ
子供欲しさのあまり旦那に赤ちゃん泥棒をさせる気の強い奥さんのエド
悪党だけどトンマでどこか憎めない二人組の脱獄囚
マタニティーブルー? になって相談するハイに、何故かスワッピングを持ちかけて殴られる上司
明らかに物語のトーンから外れてる、マッドマックスに登場しそうな賞金稼ぎ

そんな登場人物たちが織り成す、ややもすると不条理寸前の展開は、例えば古典落語の『らくだ』や『粗忽長屋』っぽい感じがしたり、最後にサゲ(オチ)をつけての「お後がよろしいようで」的な終わり方も落語的なーと。

ちなみに本作のオチっていうのは、主人公ハイが未来の夢を観るという独白なんですが、沢山の子や孫に囲まれている夫婦の後ろ姿を見て、これは自分たちの未来じゃないかと思うんですね。
ちなみに、ハイが見る夢のラスト、彼の「ユタ(州)かな?」と言うセリフがオチになるんですが、どういう意味か分からなくて。
で、ネットで調べてみたら『アリゾナをデザート(砂漠)=不妊、ユタを牧畜・養禽=多産』とかけたコーエン兄弟のシャレではないかという解釈があって、ああ、なるほどと納得しました。

ニコラスはやっぱコッチだと思うんだ

主演のニコラス・ケイジと言えば、一般的には二枚目俳優枠なんですけど、正直に言うと、僕はこの人を二枚目って言われると、どうも違和感があるんですよねー。(個人の感想です)

いや、手足も長くてスタイルもいいし、カッコイイ役を演じてる時はそれなりにカッコイイんですけど、いわゆる正統派の二枚目っていうよりは、「味のある」二枚目半っていうか。

どちらかといえば、シリアスよりコメディーの方が光る役者さんというイメージがずっとあったんですが、本作を観て「ほら、やっぱり!」って思いましたよw

今まで、何本か彼が二枚目ポジションを演じていた映画では、微妙に噛み合ってない感があったんですが、本作の気の弱いボンクラ主人公に、ニコラス・ケイジが本来持っている「おかしみ」がピッタリハマってましたねー。

本作は、一見ただのドタバタコメディーのようで、実はコーエン兄弟の後の作品に通じるエッセンスが詰まった作品だったように思います。
1980年代の映画なので、今の感覚で観ると若干古い感じがするかもですが、ニコラス・ケイジのハマりっぷりと、赤ちゃんの天使のような可愛らしさと、古典落語のような世界観が堪能出来る秀作なんじゃないかと思いますよ。

興味のある方は是非!