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風刺コメディー? それとも……「帰ってきたヒトラー」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ドイツの作家ティムール・ヴェルメシュが2012年に発表した風刺小説「帰ってきたヒトラー(原題:Er ist wieder da)」の実写化作品、『帰ってきたヒトラー』ですよー!

聞いていた噂通り、最初は笑って見てられるんですが、物語が進むうちにどんどん怖くなっていく作品でした!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

そんな訳でまだまだ、DVDレンタルを開始したばかりの作品なので、出来るだけネタバレはしないように気をつけますが、これから観る予定の方はいつも通り、映画を先に観てからこのブログを読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ティムール・ヴェルメシュのベストセラー小説を実写化したコメディードラマ。独裁者アドルフ・ヒトラーが突如として現代に出現し、奇想天外かつ恐ろしい騒動を引き起こす。舞台を中心に活躍するオリヴァー・マスッチがヒトラーを演じ、「トレジャー・ハンターズ アインシュタインの秘宝を追え!」などのファビアン・ブッシュや『ビッケと神々の秘宝』などのクリストフ・マリア・ヘルプストらが脇を固める。21世紀の民衆が、知らず知らずのうちにヒトラーに扇動されていくさまに注目。

ストーリーナチス・ドイツを率いて世界を震撼(しんかん)させた独裁者アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が、現代によみがえる。非常識なものまね芸人かコスプレ男だと人々に勘違いされる中、クビになった局への復帰をもくろむテレビマンにスカウトされてテレビに出演する。何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を、視聴者はヒトラー芸人としてもてはやす。戦争を体験した一人の老女が本物のヒトラーだと気付くが……。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

リアル「ヒトラーおじさん」

本作を観た、ある年代以上の人の中には藤子不二雄の短編マンガ「ヒトラーおじさん」を思い出した人も多いんじゃないでしょうか?
本作を一言で言うなら、まさにリアル?「ヒトラーおじさん」です。
なんたって、主役は現代にタイムスリップした本物のヒトラーですからね。

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画像出典元URL:http://eiga.com 現代にタイムスリップしてきたヒトラー

死の直前、何故か現代ドイツにタイムスリップしてきたヒトラー
しかし周囲の人間は彼をモノマネ芸人だと思い、その完成度の高さ(というか本物だけど)で一躍世間の人気者に。
そして、国民は次第に彼の言動に魅せられていき……。という内容。

最初のうちは、カルチャーギャップネタや勘違い、すれ違いネタ満載でコッチも笑いながら観ているんですが、ヒトラーの人気が高まってくると物語は次第に恐ろしいホラーへと変わっていくのです。

オリヴァー・マスッチの見事な演技

そんな現代に蘇ったヒトラー総統を、ときに滑稽に、ときにチャーミングに、そしてときに恐ろしく演じるのが、ドイツの舞台を中心に活躍する俳優オリヴァー・マスッチ。
この人のヒトラーがまさに絶品で、つけ鼻とかつら、そして皺とトレードマークのヒゲなどの特殊メイクと衣装で見かけもバッチリなんですが、ちょっとした動きや表情、声など、段々ヒトラーにしか見えなくなってくるんですよねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com オリヴァー・マスッチの見事な演技

映画の設定もあるかもですが、ヒトラーが本当に現代に蘇ったような実在感があるというか。
もちろん僕も、「本物」のヒトラーは古いフィルムでしか観たことがないんですが、多分、多くの人の中にあるヒトラーのイメージそのものという感じなんじゃないでしょうか。

半分ドキュメンタリー映画

ヒトラーが目を覚ますと、現代にタイムスリップしていたところから物語はスタートします。

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画像出典元URL:http://eiga.com 最初はモノマネ芸人だと思われているが…

訳が分からず、街の中をウロウロしている彼を見て、人々はモノマネ芸人か映画の撮影だと思い込んで握手をしたり、一緒に記念撮影をしたり。
やがて、偶然が重なって彼はテレビ局をクビになった冴えない男ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)と出会います。
二人は地方を回って撮影した動画で、人気ユーチューバーになり、ついにゴールデンタイムの人気テレビバラエティーに出演し一躍時の人に。

この、地方を回りながら色んな人と政治的な話をするシーンや、人気者になった彼が右派政治団体の人と話をするなどのシーンは、実は役者じゃなく本当に素人の人々にオリヴァー・マスッチが「ヒトラーとして」話をしたり聞いたりしてるんですね。
他にもゲリラ的に行われた撮影で写りこんでいる人たちの多くは一般の人たちだったりします。

この、「一般の人達」の反応が、物語にリアリティーを持たせ、物語のラストシーンへと繋がる大きな伏線にもなっているんですね。

物語の性質上、劇中で使われているのは右寄りな人たちが多いわけですが、それこそ若者からお年寄りまでが移民や避難民に対して排他的な発言をし、さらに「収容所を作ればいい」と言い出す人までいる始末。

ちなみにドイツの名誉のために書いておくと、多くのドイツ国民はヒトラーの格好をするオリヴァー・マスッチに不快な態度だったそうですよ。念のため。

しかし、(偽物だと分かっていたとは言え)ヒトラーの格好をしてヒトラー的な発言をするオリヴァー・マスッチに対して、一般の人(ドイツ内外の人)が好意的な態度を示したり、移民や避難民にたいして排他的な発言をしているのを見ると、何ともそら恐ろしい気持ちになっちゃうんですよねー。

同時にこれはドイツだけでの話ではなく、日本も含めた世界的な「空気」がナショナリズム方向に流れている現代、単なる絵空事のフィクションや他人事とは思えない「リアル」な恐怖なんですよね。

その「リアル」の重さがあるからこそ、ラストでザヴァツキに対してヒトラーが語るセリフに、観ているコッチもギクリとさせられるわけです。

コメディーシーンも秀逸

こんな風に書くと重い映画だと思われるかもですが、もちろんそれだけではなく、本作はコメディーとしても非常に面白い作品です。

ある事件からヒトラーをクビにしたことで、テレビ局の人気が落ちまくって局長が追い込まれるシーンでは、ニコ動の「総統シリーズ」(映画「ヒトラー 〜最期の12日間〜」のヒトラーセリフに嘘字幕をつけたMADシリーズ)に使われる、有名なシーンをまるっとパロディーにしてたり、前述したような面白いシーンも沢山あって、声を上げて笑ってしまいました。

レンタルのブルーレイ版だと、メイキングや主演のオリヴァー・マスッチのインタビューも収納されているんですが、彼の言う「民主主義はとても脆いものだから、みんなで注意深く守っていかなくてはならない」(意訳)という言葉こそがこの作品のテーマなんじゃないかなーと思いましたねー。
もし、レンタルした人は本編と合わせて観て欲しいと思ったし、世界中に排他的で嫌な空気が充満してる今だからこそ、観る価値のある映画だと思いました。

興味のある方は是非!