ぷらすです。
今回ご紹介するのは、巨匠マーティン・スコセッシが香港映画「インファナル・アフェア」をリメイクしたアクションサスペンス『ディパーテッド』ですよー!
主演にマット・デイモンとレオナルド・ディカプリオ、ギャングのボス役には名優ジャック・ニコルソンという豪華な布陣で挑んだ意欲作です。
で、この映画結構入り組んだ構造になっているので、今回は若干ネタバレありで感想を書いていきたいと思います。なので、これから本作を観る予定の方は、映画のあとに感想を読んでくださいね。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
あらすじと概要
巨匠マーティン・スコセッシが、香港映画『インファナル・アフェア』をリメイクしたアクションサスペンス。マフィアに潜入した警察官と、警察に潜入したマフィアの死闘がスリリングに描かれる。レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンが主人公の警察官とマフィアをそれぞれ熱演。名優ジャック・ニコルソンがマフィアのボス役で脇を固める。ボストンを舞台に描かれた本作は、スコセッシ監督らしいバイオレンスシーンと、敵対組織に潜入した男ふたりの心理描写に注目。
ストーリー:犯罪者の一族に生まれたビリー(レオナルド・ディカプリオ)は、自らの生い立ちと決別するため警察官を志し、優秀な成績で警察学校を卒業。しかし、警察に入るなり、彼はマフィアへの潜入捜査を命じられる。一方、マフィアのボス、コステロ(ジャック・ニコルソン)にかわいがられて育ったコリン(マット・デイモン)は、内通者となるためコステロの指示で警察官になる。(シネマトゥディより引用)
感想
元ネタを知らない方が楽しめる!?
まず最初に書いておきたいのは、ネットレビューなどを何本か読んでみると、リメイク作品としての出来は良くないという評判だったんですが、僕は本作の元となった『インファナル・アフェア』は観ていないんですね。
ただ、本作は『インファナル・アフェア』をベースにはしているものの、マサチューセッツ州ボストン南部、通称「サウシー」というアイルランド系アメリカ人のコミュニティーや、実在のアイリッシュギャングをモデルにしたキャラクターなどの要素を入れ込んでいるので、結末なども含め『インファナル・アフェア』とは別物と考えたほうがいいのかもしれません。
登場キャラクターたち
本作の大筋は『インファナル・アフェア』と同じで、二人の若者がギャングと警察にそれぞれ送り込まれ、密告者として任務を遂行する物語です。
画像出典元URL:http://eiga.com
レオナルド・ディカプリオ演じるサリバンは、警察学校を卒業し私服刑事になりますが、父型の親族が全員ギャングのボス、コステロの息のかかった犯罪者という家系。
父親は犯罪には手を染めずに空港職員として働き、サリバンは母親の下で育ったんですね。
で、刑事になった途端に潜入捜査官としてコステロの一味になるよう命令されます。
一方のマット・デイモン演じるコリンは、子供の頃からコステロに可愛がられて育ち、コステロに言われて警察学校へ。
同じく私服警官として州警察の組織犯罪担当の部署に配属されます。
そこで彼はコステロの手駒として、警察の動向をスパイしているわけです。
で、冷酷無比なアイリッシュギャングのボス、フランク・コステロを演じるのが名優ジャック・ニコルソン。
ちなみにこのフランク・コステロは架空のキャラクターですが、実際に「サウシー」を牛耳っていたアイリッシュギャングのジェームズ・ジョセフ・バルジャーがモデルになっているそうです。
ブルーレイの特典映像では、このバルジャーの経歴が解説されてるんですが、バルジャーの写真を見ると、ジャック・ニコルソンが容姿をかなりバルジャーに寄せている事が分かりますね。
本作の脚本を担当した ウィリアム・モナハンは、このボストン南部の出身だそうで、バルジャーについても詳しく、劇中のコステロの性格や言動はバルジャーそのものだそうです。こんな人絶対近づきたくないw
また、コステロがFBIに情報を流す代わりに逮捕されないという設定も、実際のバルジャーと重なるんだそうですね。
サウシーと差別
ご存知の様に米国は移民の国でして、なので肌の色だけでなく白人同士でも差別があるそうです。
物凄くざっくり書くと、アメリカ人の圧倒的多数はイングランド系で、アイルランドはイングランドに支配されていたこと。
また、カトリックとプロテスタントというキリスト教派閥の違いなどから、アイルランド系アメリカ人は差別を受けていたようなんですね。(その他にも入植の順番とかもあるっぽいですが)
なので、アイルランド系の「サウシー」の人々は繋がりが強く、政府や警察に頼らずコミュニティーの中で問題を解決するという背景があり、そんな背景の中からバルジャーのようなギャングも多数生まれてくるわけです。
スコセッシが好んで描くイタリア系ギャングも同じような背景があり、本作の当時も差別によって選べる職業が少ないため犯罪組織を選ぶ若者が多いようで、劇中の「警察かギャングのどちらかしか選べない」というコステロのセリフはここから来ているわけですね。
冒頭、先輩刑事ディグナム(マーク・ウォルバーグ)がディカプリオ演じるサリバンに罵倒罵声侮辱的な言葉を吐くんですが、それはサリバンの潜入捜査への適正を確かめるだけでなく、多分アイリッシュ系の(しかも父型の親族がもれなくコステロ配下の人間だった)サリバンに対しての差別心があるんでしょうね。
また、順調に出世していくコリンへの同僚や上司の態度が何となく冷たいのも、同じくアイリッシュ系という彼の出自が関係しているんだと思います。
まったく正反対の二人
ここから、サリバンはギャングの構成員として、コリンはエリート警察官として、それぞれの組織(サリバン→警察・コリン→ギャング)に情報を流していくわけですが、二人の置かれた状況は正反対。
コリンはエリート警察官として順調に出世し(コステロに手柄を回してもらってるから)、素敵なマンションに住んで精神科医の彼女も出来ます。
対して、サリバンの方はギャングに信用されるために経歴を消して刑務所に入り、ギャングの取立て、望力、殺人などを一年以上見せられ、しかもバレたら即殺害されるという緊張の日々。彼は次第に心を病んでいきます。
そんな正反対な二人を繋ぐのがヴェラ・ファーミガ演じるマドリンで、コリンと恋人になった彼女の「患者」として訪れるのがサリバン。
やがて、マドリンはサリバンにも惹かれていき……。っていうね。
情報が筒抜けなので、双方にスパイがいる事を悟った二人は、互いの正体を探るために罠を張り、お互いの情報源を使って、通報者の正体を突き止めようとします。
そこは『インファナル・アフェア』と同じで、いつサリバンとコリンの正体がバレるのか、双方の駆け引きが、本作を引っ張る物語の牽引力となるのです。
封筒の中身
で、色々あってついにお互いの正体を知った二人の対決となるんですが、その前にサリバンはマドリンに一通の封筒を託します。
この封筒の中身についてはネットレビューでも諸説あるようですが、僕はこの封筒にはコリンが内通者であることの証拠(か告発文)が入っていて、自分が死んだ場合ディグナムに渡して貰う手はずになっていたんだと思います。
唯一信用出来る上司が亡くなり、他にもギャングの内通者がいるかもしれないと思ったサリバンは最後に、自分を嫌い、上司を殺され、アイリッシュ系を憎んでいたディグナムだからこそ信用し、全てを託したんじゃないかなーと思うんですよね。
面白いけど……。
と、実に盛りだくさんの2時間30分で、個人的には凄く面白かったんですが、ただ、色々盛り込みすぎて全体的に散らかっている感じがある気がしました。
それでも、映画としては十分に面白いんですが、スパイサスペンスというコンセプトが、スコセッシの持つカラーを薄めてしまった感が否めないように思いましたねー。
舞台もニューヨークではなく、ギャングもイタリア系じゃなくてアイリッシュ系だったからか、スコセッシのギャング描写がいつもより距離があったように見えたというか。
なので、スコセッシのギャング映画を期待した人には少々物足りなさが残るだろうし、『インファナル・アフェア』のリメイクとして観た人にはコレジャナイ感があったんじゃないかと思います。
ただ、映画職人としてのスコセッシの手腕はさすがで、僕は2時間30分が早く感じたし、物語的にもとても面白かったですよ。
興味のある方は是非!!!