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京アニの覚悟を感じた傑作「聲の形」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年公開された京都アニメーション製作の劇場アニメーション作品『聲の形』ですよー!

正直「障害者」「いじめ」というヘビーそうなキーワードに腰が引けてしまって、結局劇場には行かなかったんですが、レンタルが始まったので今回思い切って観てみました。

 

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

元ガキ大将の主人公と聴覚障害があるヒロインの切ない青春を描いた大今良時のコミックを基に、『けいおん』シリーズなどの山田尚子監督が手掛けたアニメーション。主人公の少年が転校生の少女とのある出来事を機に孤立していく小学生時代、そして高校生になった彼らの再会を映し出す。アニメーション制作を京都アニメーション、脚本を『ガールズ&パンツァー』シリーズなどの吉田玲子が担当。ボイスキャストには入野自由早見沙織らが名を連ねる。

トーリー:西宮硝子が転校してきたことで、小学生の石田将也は大嫌いな退屈から逃れる。しかし、硝子とのある出来事のために将也は孤立し、心を閉ざす。5年後、高校生になった将也は、硝子のもとを訪れることにし……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

原作の話をざっくりと

本作は、漫画家の大今良時さんの原作を元に『けいおん!』の京都アニメーションが製作した劇場版アニメです。

原作の方は、2008年にオリジナル版を『週刊少年マガジン』編集部に投稿、第80回週刊少年マガジン新人漫画賞で入選します。
しかし、聴覚障害者に対するいじめをテーマにしていることなど内容の際どさから掲載は見送られ、以降どこにも掲載されることなく一時「幻の作品」となってしまいます。

その後、大今氏は2010年に創刊されたばかりの別冊少年マガジンにて冲方丁原作のSF小説マルドゥック・スクランブル』の連載を開始しヒット。これを期に別冊少年マガジンの班長・朴鐘顕氏が「どうしても(大今の)受賞作を読者に読んでほしい」と、講談社の法務部および弁護士、さらに全日本ろうあ連盟とも協議を重ねた結果「聲の形」は別冊少年マガジン2011年2月号に掲載することに。(ちなみに、ろうあ連盟からは「何も変えずそのまま載せてください」と言われたそうです

このオリジナル版が人気連載マンガを抜いて読者アンケートで1位を獲得。
週刊少年マガジンへの連載が内定するも、大今が連載版『聲の形』第1話の原稿をマガジン編集部の連載会議に提出した結果「まずは読み切り掲載」でとなります。

こうして発表されたリメイク版は、賛否両論あったものの、その反響の大きさから、発売翌週には正式に連載が決定。2013年8月7日発売の36・37合併号より連載が開始されたんですね。

 そんな原作を、「けいおん!」「たまこラブストーリー」の山田 尚子が監督し、京都アニメーションが製作したのが本作です。

タブーを描くことの覚悟

本作は聴覚障害&いじめ問題っていう二つのデリケートな題材を扱う作品です。

主人公 石田将也はガキ大将的な子供で、クラスもそれなりに和気あいあいとやっているわけですが、そこに聴覚に障害を持つ女の子、西宮硝子が転校してきます。

耳が聞こえない彼女は子供達にとってはいわば異分子で、しかも彼女に対して一切フォローを入れないダメ担任や、フォローの方向性がズレている副担任? だった事も災いし、クラスで浮いてしまった硝子はいじめの対象となってしまい、そんな彼女を率先していじめるのが将也なわけです。

で、「ある事件」をキッカケにいじめの対象は将也へと移り硝子は転校、そして彼は心を閉ざしたまま高校生になって身辺整理のあと自殺をと考えています。

この小学生パートは僕から見てもかなりエグいし、子供独特の残酷さみたいなものをギリギリまで描いているショックも大きくて、正直、批判的な意見が出ちゃうのも分かるなーという感じでしたねー。

そんな将也が、人生の精算として硝子と再開することから物語は始まっていくというのが大まかなストーリーです。

本作では将也と硝子の他に、小学生の時女子グループのリーダーで硝子を無視していた植野 直花
八方美人でいじめの傍観者だった、川井 みき
将也の友達でしたが「ある事件」以降、将也をいじめる側になる島田 一旗
硝子と仲良くしようとしたことで直花にいやがらせされ不登校になる佐原 みよこ

加害者・被害者・傍観者など、いじめの構造に象徴されるキャラクターがそれぞれ登場し、時を経て将也と硝子に出会うことで、“小学生の頃に負った傷”と再び向き合い、関係を再構築していくという物語です。

そんなストーリーの流れから「加害者擁護」的な批判も出ている本作ですが、僕はそうは思いませんでした。

もちろん、いじめが許されないのは当然ですが、加害者、被害者、傍観者といじめに関わった(もしくは巻き込まれた)キャラクターたちは、己の未熟さ故に引き起こしてしまった自分たちの行動に対して、それぞれが心に傷を負っていて、再開をきっかけに自分の罪を再び突きつけられ、向き合うことで、彼らなりの折り合いをつけて前進していくんですよね。

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今の時代に、それを描くのはとてもリスキーで、それだけに関わった人たちは相当な覚悟を決めて本作に取り組んだんだろうなーって思ったし、最後まで観れば決して「加害者擁護」的な物語ではない事も分かるんじゃないかと思います。

特に最後の方で将也が硝子に言う“あるセリフ”は、間違えた者は徹底的に叩いて良しという昨今の風潮に対する、ひとつの答えであり、問いかけなんじゃないかなって思いました。

そしてあのラストは、紆余曲折を経て生まれ変わった、将也の産声だって思いましたねー。

女性監督ならではの視点

僕は原作未読なので、これはあくまで想像なんですが、本作での女子特有の嫌な感じをあれだけ生々しく描けたのは、女性監督である山田さんだからなんじゃないかって思ったんですよね。

女子グループリーダーだった植野 直花や、傍観者・川井 みきの、“あの感じ”って、男性監督だと中々出せないんじゃないかなーとw

で、その辺のリアリティーが、本作に実在感を出してるなーって思いました。

特に川井みきのアレとかね。もう、おーまーえー!! ってなりましたよw

 

確かに、本作のストーリーや描写はかなりエグい部分もあるし、高校生パート展開やオチに拒否反応を示してしまう人の気持ちもよく分かるんですが、少なくとも僕は、いじめと障害、そしてコミュニケーションという題材に対して、関わった人たちが覚悟を持って誠実に描いたと思うし、コミュニケーションの難しさと大切さを描いた傑作だと思います。

興味のある方は是非!!

ただし、あの担任だけは許さん。

 

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