今日観た映画の感想

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元ジブリの作画監督が描くロードレースの世界「茄子 アンダルシアの夏」(2003) 「茄子 スーツケースの渡り鳥」(2007)OVA

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、黒田硫黄原作の短編漫画集「茄子」に収録された「アンダルシアの夏」「スーツケースの渡り鳥」を、元ジブリ作画監督でアニメ界きってのサイクリストでもある高坂希太郎が、監督・脚本・キャラクターデザイン・作画監督を務めてアニメ化した同名作品、『茄子 アンダルシアの夏』と続編『茄子 スーツケースの渡り鳥』ですよー!

「~アンダルシア」の方は公開当時観たんですが、「~スーツケース」の方は出てたことに気づかず、ツイッターの紹介で知り「だったら、両作一緒に観てしまえ!」と今回レンタルしました。

というわけで、今回は2本一気に感想を書きますよー!

 

茄子 アンダルシアの夏 (2003)

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

スペイン・アンダルシア地方。そこでは現在、世界3大自転車レースの1つ“ブエルタ・ア・エスパーニャ”が行われていた。ペペはチームの一員としてこのレースに参加していたが、その最中にスポンサーから解雇通告を受けてしまう。やがてレースは彼が生まれ育った村にさしかかった。その頃、村の教会ではペペの兄アンヘルとぺぺのかつての恋人カルメンの結婚式が行われていた。ぺぺの心にこれまでの人生が駆け巡る。それを振り払うようにひたすらペダルを漕ぐペペ。そんな時、突然黒いネコが道に飛び出し、レースは思わぬ展開をみせるのだった…。(allcinema ONLINEより引用)

感想

実は本作の公開当時、僕はてっきりジブリ作品だと思ってました。(制作はマッドハウス
キャラがいかにもジブリだったし、ワイドショーの紹介でもジブリというワードが多かったからだった気がします。
それもその筈で、監督の高坂希太郎は「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」といったスタジオジブリ作品で作画監督を務めていて、宮崎駿の右腕と呼ばれたアニメーターだったんですね。

同時に、アニメ界きってのサイクリストでもあり、自転車ロードレースにも造形が深い香坂氏だけに、今回改めて観直してみると、ロードレースの駆け引きや迫力、緊迫感や臨場感が伝わってくる熱い作品でしたねー!

ロードレース終盤 47分をリアルタイムで体感!

僕のロードレースの知識は「弱虫ペダル」だけだったので、本作の感想を書くにあたってネットで調べてみたんですが、1チーム9人編成で、8人のアシストが、風よけになったり、他のチームを牽制したり、勝負を仕掛け攪乱したり。そんな駆け引きを繰り広げながら、エースをゴールに運ぶチームスポーツなんですね。

面白いのは、勝負に勝つために敵のチームの選手と協力することもあるってところ。

本作の主人公ぺぺは、普段脚光を浴びないそんなアシストの1人なんですが、地元スペイン開催の自転車ロードレース「ヴェルタ・ア・エスパーニャ」参戦中に、所属するチームの不振を彼のせいにされ、レース中に解雇の危機に立たされます。
しかし、あるアクシデントから、急遽エースとして勝負を任されることになるという物語なんですね。

しかも、その日は兄の結婚式で、相手はペペが兵役中(スペインは2001年まで徴兵制があった)兄に取られた元カノで、灼熱のスペインでのトップ争いと、ペペの故郷や家族への愛蔵入り混じる複雑な思いを同時並行で描いていくのです。

そんな本作で圧巻なのは、なんといってもロードレースの描写で、空撮カットやギアチェンジのディテール、監督と選手の無線でのやりとり、強風での陣形、ロードレーサー(競技用自転車)のスピード感などなど、ロードレースの面白さを47分という短い時間にギュッと詰め込んで、(僕を含め)ロードレースを知らない人にも、臨場感や興奮が伝わる作りになっているところ!
ラストのゴール争いは、観ているこっちも思わず体に力が入ってしまいました!

 

茄子 スーツケースの渡り鳥 (2007)*OVA

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51Pgx0o6p%2BL.jpg

画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

黒田硫黄の漫画『茄子』の短編『スーツケースの渡り鳥』を原作としたサイクルロードレースアニメ。2003年に劇場公開された『茄子 アンダルシアの夏』の続編にして、日本アニメとして初めてカンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品されている。“ヴェルタ・ア・エスパーニャ”の最終日前日に国民的英雄レーサーのマルコ・ロンダーニが自殺……。ぺぺのチームメイトのチョッチは同郷レーサーの死から、レーサーとしての生活に疑問を感じはじめるのだった。来年でチームがなくなってしまうパオパオビールだが、ジャパンカップの舞台・宇都宮は地元の応援で盛り上がる。そのレース前日、チョッチは引退をぺぺに告白。ぺぺは勝つために生きていると聞こうとしない。チーム・パオパオはレースに勝つことができるのだろうか?(allcinema ONLINE より引用)

感想

そんな前作から4年。
続編としてOVAで発表されたのが、続編となる本作「茄子 スーツケースの渡り鳥」です。日本では劇場公開されなかったものの、日本アニメとして初めてカンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品されたそうですよ。

本作は毎年10月に栃木県宇都宮市森林公園周回コースで2日間にわたり開催される開催されている「ジャパンカップサイクルロードレース」が舞台で、前作とは真逆で大雨の中で、日本らしいテクニカルなコースを10周するレースなんですね。

本作では、前作の主人公ぺぺはアシストに回り、チームメイトでイタリア人のチョッチが実質的な主人公になってましたねー。

夢を手に入れた男と、夢に届かない男の物語

本作では冒頭、ぺぺのレースシーンから物語はスタートします。
街中を猛スピードで疾走するぺぺの後ろをサポートカーで追いながら「ベンガベンガ」言ってるのは、ぺぺ役の大泉洋が出演してる北海道テレビの深夜番組「水曜どうでしょう」のデレクター藤村忠寿さん、運転手はカメラマンの嬉野雅道さんです。

そういえば、ジブリ内で「水曜どうでしょう」が流行って、その縁で大泉くんが「千と千尋の神隠し」に出演することになったんだっけw

まぁ、それは置いておいて。

そんなレースの様子とオーバーラップするように、イタリアの国民的英雄レーサーのマルコ・ロンダーニが自殺していたことが分かるようになってます。(モデルはマルコ・パンターニ?)

マルコと同郷で、彼を慕っていたぺぺのチームメイト チョッチは彼の死にショックを受け、また自分のレーサーとしての人生に疑問と葛藤を抱きながら、ジャパンカップに挑むという物語なんですね。

チョッチにとってマルコは同業ではあるものの大スターの『持つ者』で、チョッチ自身はその他大勢の『持たざる者』。なのに自分が望む物を全て手に入れたマルコが自ら死を選んだことに彼は怒りを感じているし、同時に『持たざる』自分がいつまでもレースにしがみついたところで将来何も残らないのではと悩むわけです。

そして本作ではもう一人の重要人物ザンコーニという選手も登場します。
彼もまた過去に世界選手権やジロ・デ・イタリアを制した名選手で『持つ者』なんですね。

本作では、ジャパンカップのレースを通して、ペペとチョッチ、マルコとザンコーニがそれぞれ対比として描かれていて、『持つ者』『持たざる者』が夢を追い続けることに対する、彼らそれぞれの「答え」を描いていると思ったし、これってスポーツだけの話ではなく、あらゆる人が感じる普遍的な物語なんですよね。

で、本作でもレースシーンの描写は迫力満点ですが、前作に比べるとドラマ部分に重点が置かれている分、若干控えめな印象を受けましたねー。

あと、前作でバルの亭主と息子として登場したエルナンデスとフランキーが、なんの説明もなく寺の住職と息子して登場してるんですが、これはいかがなものかと。

多分、ファンサービス的なノリなんでしょうけど、日本の寺の住職なのに(劇中では出ないですが)役名はそのままなので観てて混乱したし、もし彼らが日本人だとしたら外国人のペペたちと普通に会話してるのは変じゃない? っていうノイズにもなっちゃうんですよね。

まぁ、それ自体は物語に直接影響しないし、些細なことではあるんですが。

あと、ペペのキャラデザがルパンっぽいなーって思いましたw

 

ともあれ、日本ではマイナースポーツであるロードレースの世界を体感出来る貴重なアニメなのは間違いないし、変に説明過多にしないで登場人物の心情やテーマを物語の流れとセリフ、絵で見せていく演出は映画的で個人的に好感が持てました。

両作合わせても101分しかない短い作品なので、映画を一本観たつもりで両作を一気に観てみるのも面白いかもしれませんね。

興味のある方は是非!!

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