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良い意味で和洋折衷、前作から更にパワーアップした傑作!「KUBO / クボ 二本の弦の秘密」(2017)

ぷらすです。

日本公開から2ヶ月遅れながら、僕の地元でもついに『KUBO / クボ 二本の弦の秘密』が公開されたので、観に行ってきましたよー!

今回で日本公開は3本目となるライカ作品ですが、前作「パラノーマン ブライス・ホローの謎」の技術を更に押し進め、前作から更にパワーアップした作品になってましたねー!

で、今回は後半部分でネタバレしていくので、これから本作を観る予定の人は、先に映画を観てから、ネタバレ部分を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

 

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

コララインとボタンの魔女 3D』などを手掛けたアニメーションスタジオのLAIKA制作によるストップモーションアニメ。日本を舞台に、魔法の三味線と折り紙を操る片目の少年が出自の秘密を探るべく、壮大な冒険を繰り広げる。監督は『パラノーマン ブライス・ホローの謎』などに携わってきたトラヴィス・ナイトボイスキャストにテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのアート・パーキンソンをはじめ、シャーリーズ・セロンマシュー・マコノヒーらが参加。人形を1コマずつ動かして作り上げた繊細な映像に注目。

ストーリー:クボは三味線を奏でることで折り紙を自由に操ることができるという、不思議な力を持つ少年。かつて闇の魔力を持つ祖父に狙われた際に父を亡くし、片目を奪われたクボは、最果ての地で母と生活していた。しかし、闇の刺客に母までも殺されてしまう。両親のあだ討ちを心に誓ったクボは、面倒見のいいサルと弓の名手であるクワガタを仲間にする。(シネマトゥディより引用)

感想

これまで日本公開されているライカ作品は、「コララインとボタンの魔女 」「パラノーマン ブライス・ホローの謎」そして本作の3本(2014年制作の「ボックストロール」は日本未公開)ですが、新作毎に進化を続けています。

ライカのストップモーションアニメは、パペットアニメーションという人形を少しずつ動かして1コマずつ撮影していくやり方ですが、今回はなんと、体長約5mの巨大パペット体長5cmにも満たない最小のパペットも登場。

また、人形の動きは実際に人間が動く姿を撮影し、その動きを参考にアニメーションで再現したり、海の波や背景は、一旦ミニチュアで作って動かしたものを撮影してVFX(CG)で加工したりしているのだそうですよ。

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さらに、動きに応じて表情を変えるために3Dプリンターで制作したパーツは、口のパーツが8,000x眉のパーツが8,000。組み合わせの可能性としては約4万8000通りもあるそうで、ほんと、気が遠くなるような手間をかけてストップモーションアニメを制作しているんですねー!

本作では、昔の日本が舞台ということで、平安時代の資料を調べて衣装やセットを作り、お盆や灯篭流しといった日本の風習なんかも入念に取材し再現しているようです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 実写と見まごうばかり。美しい灯篭流しのシーン

それでいて、ストーリー作りの骨格はあくまで西洋的なので、良い意味で「和洋折衷」な感じの作品になっていたと思いますねー。

で、過去2作の感想でも書いてきましたが、ライカのアニメーションの凄いところは、動きや映像だけでなく、徹底的に練りこまれたストーリー作りにあるんですよね。

本作も、ぱっと見は一見単純な英雄譚に見えるんですが、その裏にはいくつものストーリーが重層的に折り重なっている、とても深い物語なのです。

というわけで、ここからネタバレしていきますよ!

 

 

ストーリーのベースは「かぐや姫!?」

本作のストーリーをざっくり説明すると、“月の帝”の娘であるクボの母親は、人間の武将ハンゾウと禁断の恋に落ちてクボを出産するんですが、これに怒った帝はクボの目を奪い母子を連れ戻そうとします。

この時、赤ん坊のクボは片目を奪われるものの、父親のハンゾウが命懸けで二人を守り、母親はクボを連れて小舟で海に逃げるんですね。

そして、何とか逃げ延びた二人でしたが、母親は大波に飲まれたときに頭を打ったのが原因で、今では一日の大半をぼんやり過ごし、成長したクボは三味線に合わせて折り紙を動かす能力を使って、母親から何度も聞いた「物語」を語って村で日銭を稼ぐ生活。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 村人に「物語」を“観せて”日銭を稼ぐクボ

そんなある日、お盆の灯篭流しで死んだ父に会いたいと、母の言いつけを破って帰りが遅くなってしまったクボの元に、月の帝の娘で、クボにとっては叔母にあたる二人が、クボの目を奪いにやってきます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 怖い叔母さん達。モデルは『子連れ狼』の弁天来三兄弟だとか。

恐ろしい力を持った2人が村を破壊しクボを捕らえようとしたその時、そこに駆けつけた母親は最後の力を振り絞ってクボを逃がしますが、力を使い果たした彼女は死んでしまいます。

そしてクボは、月の帝や叔母と対決するために、お節介なサルとクワガタ侍をお供に、母親から聞いてた「物語」の、怪物に守られた3種の神器ならぬ武器と防具を集める旅に出る……。という典型的な英雄譚なんですね。

で、敵のラスボス「月の帝」でクボの祖父ってことは、クボのお母さんはかぐや姫って事ですよね。つまりこの物語は、地上に残って人間の男と結婚し子供を授かった、かぐや姫の物語でもあるわけです。

この作品の元になったアイデアは、元ライカでキャラクター・デザインをしていたシャノン・ティンドルという人が考えたそうで、シャノンさんは日本の昔ばなしに精通していたそうですし、ライムスターの宇多丸師匠によれば、ライカスタッフの人たちは宮崎駿の影響を非常に公言してるそうなので、もしかしたら同じジブリ高畑勲監督作「かぐや姫の物語」が本作の元ネタになっているかもとのことでしたが、個人的には藤田和日郎さんのマンガ「月光条例」のテイストにも近い感じがしましたねー。

クボ=ライカ!?

クボは、母親から譲り受けた能力を使い、月の帝とハンゾウの戦いのストーリーを、三味線の音に合わせて折り紙を動かしながら村の人たちに語り聞かせて日銭を稼いでいます。

このクボの姿は、そのまま人形を動かして物語を作るライカのメタファーになっているんじゃないかと思うし、劇中、何度も「物語」をめぐる会話とか議論が出てくるんですが、これはそのままライカの主張でもあるんじゃないかと。

つまり本作は、人間には「物語」が必要で、それは人の死生観にも及んでいるんじゃないかという。

時に、「物語」は辛い現実から逃避するための手段であり、辛い現実に向きあうためのエネルギーであり、人はそれぞれ自分の人生の「物語」を持っている。

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画像出典元URL:http://eiga.com / サルとクワガタと共に冒険の旅に

そして、人は死んでも残された人々に、人生という「物語」を語り継がれることで、子供や孫など後世の人々の中に生き続けるという事を、この作品は語っているのだと思うんですね。

二本の弦の秘密

劇中、クボが肌身離さず持っている三味線。
タイトルでは「二本の弦の秘密」となってますが、本作では、クボが持っているのが3本弦の「三味線」であることが重要だったりします。

三味線に張られた3本の弦は、そのままクボと両親の絆を表しているんですよね。

だからクライマックスでの月の帝との対決で、クボは苦労して集めた3種の武具ではなく、(亡き両親の絆と共に)三味線で戦うんですねー。

なぜ月の帝はクボの目を奪おうとするのか

本作でよく分からないのが、なぜ、祖父である月の帝が、クボの目を奪おうとするのかってトコじゃないかと思います。

別に、クボの目自体に、何か特別な力があるようでもないんですよね。

帝や月世界の住人は人間よりも高位の存在で、なので人間や地球を不完全でうす汚い世界だと見下げています。
そんな「薄汚い世界を見なくていいように」クボの目を奪い月に連れて帰るというのが帝の主張なんですが、もう一つ、目を奪う=相手を(洗脳し)支配する的な意味もあるんだと思います。(「コララインと~」でも目が重要な要素になってましたね。)

で、赤ん坊のクボから片目を奪った帝でしたが、クボは残った目で母親や村の人たちの愛情や優しさを見てきたので、帝の「永遠の命」という甘言に惑わされることがなかったわけですね。

結末

そして、死闘の末にクボが倒された月の帝は、力も記憶も失ってしまいます。
そんな帝に対し、村の人々は「あんたはいい人だった」と口々に言って、クボ共々、村に迎え入れるのです。

本作を観た人の中には、あの結末に「えー…」と思う人もいるかもしれません。(ぶっちゃけ僕も最初はそう思いましたw)

もちろん、無力になった月の帝を、みんなで袋叩きにする事も、真実を突きつけて責め立てる事だって出来たハズ。

けれど、今までクボの語る「物語」で楽しませてもらった彼らは、恨みを忘れてクボとたった一人の肉親となった祖父を「物語」で救う。

本作は、そういう物語なんですねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 折り紙の翼で空だって飛べる

しかし、穿った見方をすれば、村人たちが月の帝に語った物語は、嘘ではなかったのかもしれません。
実は母が幼いクボに、現実世界の両親と祖父との確執を「物語」という形に置き換えて語ったのかも。なんて思ったりするんですよね。(例えば、月の帝は村を治める領主で、娘と部下が禁断の恋に落ちて……的な)
そう考えると、クボの冒険は母の死という辛い現実から逃避するために、彼自身が作り出した「物語」だったのかもなーなんて思ったりもするんですよねー。(考えすぎ?w)

もちろん、別にそこまでゴチャゴチャ考えなくても、少年の英雄譚や成長譚として大人も子供も十分に楽しめる作品だし、前2作に以上に今回もアニメーションの根源的な楽しさを堪能出来る傑作でしたよー!

 興味のある方は是非!!

 

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