ぷらすです。
中々タイミングが合わずやきもきしてましたが、昨日やっと見てきましたよー!
ギレルモ・デル・トロ最新作『シェイプ・オブ・ウォーター』を!!
まさに、ギレルモ・デル・トロの集大成と言っても過言ではない傑作でしたねー!!
というわけで、今回は公開されてから間がない作品なので、極力ネタバレしないように感想を書くつもりですが、もしこれからこの映画を観る予定の方は、絶対先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね!
観ようかどうか迷っているという人のためにサクッと一言で言うなら「是非、映画館で観てください!」ですね。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出店元URL:http://eiga.com
概要
『パンズ・ラビリンス』などのギレルモ・デル・トロ監督が異種間の愛を描き、第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたファンタジー。米ソ冷戦下のアメリカを舞台に、声を出せない女性が不思議な生き物と心を通わせる。『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのサリー・ホーキンスが主演し、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』などのオクタヴィア・スペンサー、『扉をたたく人』などのリチャード・ジェンキンス、『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』などのマイケル・シャノンらが共演。(シネマトゥディより引用)
感想
まさに、ギレルモ・デル・トロの集大成と言える傑作!
ギレルモ・デル・トロは、幼い頃から日本の怪獣やアニメ、ホラー、SF、ファンタジーと、あらゆるジャンルを網羅したゴリゴリのオタクで、日本で言えば庵野 秀明的な監督です。
彼は子供の頃に観た「エクソシスト」に衝撃を受けて映画界入りを決意。
メキシコ国立自治大学付属映画学校で学んだ後、特殊メイクの第一人者ディック・スミスに師事し、帰国後は自ら特殊メイク・造形の会社を立ち上げ10年以上特殊メイクに携わり、初めて監督した長編映画「クロノス」は、古物商の老人が吸血鬼になってしまう物語で、以降、彼はモンスターやクリーチャーが出てくる映画を作り続けているのです。
そんなギレルモ・デル・トロの代表作といえば、2001年の「デビルズ・バックボーン」と2006年の「パンズ・ラビリンス」が挙げられます。
どちらも独裁政権下のスペインを舞台にしたファンタジー映画ですが、美しく幻想的な映像と残酷さを併せ持つ、いわば「本当は怖いグリム童話」的な作品なんですね。
多分、デル・トロにとって「ファンタジー」とは、美しい夢の世界であると同時に悪夢のような残酷さも秘めている、現実と鏡合わせの世界なのです。
本作は、そんなデル・トロのダークファンタジー作品群に連なる系譜の映画で、彼が子供の頃に観た「大アマゾンの半漁人」(1954年)のストーリーに納得が行かず、半漁人側の立場から本作を作ったのだそうです。
僕は「大アマゾン~」は残念ながら観ていないんですが、この作品はもう一つ、童話「人魚姫」は物語のベースになっていて、いわば半漁人(人魚)と主人公の純愛ストーリーなんですね。
そして、この作品でデル・トロ監督はアカデミー賞二冠ほか、多くの映画賞に輝いたのです。
ざっくりストーリー紹介
本作の舞台となるのは海沿いの町にある、冷戦時代の米政府の研究施設。
主人公は美人ではあるけど“絶世の美女”ってほどではない中年の女性イライザ(サリー・ホーキンス)です。
画像出店元URL:http://eiga.com / 主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)
彼女は発声障害を持った掃除婦で、親友は同僚で黒人女性のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と、絵描きの隣人でゲイのジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)。
画像出店元URL:http://eiga.com / ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)左
画像出店元URL:http://eiga.com / ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)右
そんなある日、彼女とゼルダが務める研究施設にある日、謎の水生生物が運び込まれてきます。“彼”はアマゾンの奥地に住み、原住民たちからは神と崇められている半漁人。
そんな“彼”の見張り役は、マチズモを体現したような軍人ストリックランド(マイケルシャノン)で、彼は半漁人を憎み非道い虐待を行うんですね。
画像出店元URL:http://eiga.com / ストリックランド(マイケルシャノン)左
一方、半漁人に心惹かれたイライザは、徐々に“彼”とコミュニケーションをとるようになり、やがて……という物語。
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あえて強い表現を
映画冒頭、水で満たされた部屋の中でイライザが眠っているシーンから物語はスタート。テーブルや椅子など家具が水で満たされた部屋の中でふわふわと舞い、その奥で水に揺られながら眠っているイライザが、少しづつ降りていってソファーに着地したところで目が覚めるという、非常に幻想的なオープニング。
ところが、次の瞬間にはイキナリ度肝を抜かれるイライザの自慰シーンがスタートしますw
また、ストリックランドと奥さんの、いかにも男性本位なセックスシーンや、浴室を水で満たしてのイライザと半漁人のセックスシーンなど、本作ではヌード、セックス、バイオレンスなシーンが露骨に描かれていて、「そこが嫌」という意見や、「セックスやバイオレンス描写は必要?」という意見も目にしました。
もちろん、それらをもっとソフトな表現に変えることは容易いでしょうし、その方が万人に支持される映画になっていたかもしれません。
けど、それをしてしまったらこの映画は、気の抜けた炭酸飲料みたいな、ボヤけた作品になっちゃってたんじゃないかと思うんですね。
なぜなら、この作品は純愛と同時に、理不尽な暴力を描いた映画でもあるからです。
本作は1960年代の暴力的で排他的なアメリカを舞台にはしてますが、描いているのはトランプ以降の暴力的で排他主義的なアメリカや世界の流れへの批判で、だから、デル・トロは興行収入的に不利な、R-指定がつく事も辞さない強い表現を、あえて使ったのだと思います。
……、まぁ、猫のシーンはさすがに、思わず目を背けてしまいましたけども。
っていうか、デル・トロにとってのファンタジーは、上記したようにただ甘ったるいだけの夢物語ではないのです。
ミュージカル
そんな強い表現の傍ら、本作では、イライザとジャイルズのソファーに座った状態でテレビに合わせてタップを踏むシーンや、イライザが高らかに歌い上げ、半漁人とダンスを踊る、古き良きアメリカのミュージカルをオマージュしたシーンも登場します。
というか、水中で抱き合う半漁人とイライザの姿はまるでダンスを踊っているように美しかったですねー。
ストーリーは単純?
あと、「ストーリー自体は単純」という感想もいくつか目にしました。
確かにその通りで、本作のストーリー自体は非常に単純です。
多分、音声を消して観てもストーリーは解るんじゃないかと思うくらい。
ですが、その分世界観に奥行きがあるというか、物語自体は半漁人とイライザのシンプルなラブストーリーでも、その奥に、イライザたちマイノリティー側から観た「世界のあり方」が、時にはそれとなく、時には露骨に表現されているのです。
これは非常に映画的な手法で、ジョージ・ミラーの「マッドマックス~怒りのデスロード」に通じる高度な表現を成功させているんですね。
ダグ・ジョーンズの功績
映像はもちろん、美術やキャストの演技アンサンブルも素晴らしい本作ですが、そんな本作で忘れてはならないのが、半漁人を演じたダグ・ジョーンズの存在です。
もしかしたら、多くの人は半魚人はCGだと思われてるかもですが、本作の半漁人はゴム製のスーツと特殊メイクで変身したスーツアクター、ダグ・ジョーンズが演じているんですね。
そして、このダグ・ジョーンズがデル・トロ作品で半漁人を演じるのは2作目。
「ヘルボーイ」2作で、彼はエイブ・サピエンという半漁人キャラを演じていて、それ以外でもモンスター役をスーツアクターとして演じているデル・トロ作品の常連で、ファンには名前を知られた俳優なのです。
今回はお喋りなエイプとは違うリアル寄りな半漁人を演じた彼ですが、本作の成功にはダグ・ジョーンズの功績がかなり大きいんじゃないかと思います。
実態として半漁人を演じる彼が目の前にいたからこそ、ほかのキャスト陣もより演技に集中出来た部分もあるんじゃないかと思うんですよね。
というわけで、ほんとはもっともっと言いたいけど、これ以上はネタバレになってしまうのでやめておきます。
が、本作は25年間もの間、モンスター&クリーチャー映画を撮り続けてきたギレルモ・デル・トロがついにたどり着いた集大成的作品だし、非常に見ごたえのある傑作でもあるので、少しでも気になっている人は是非劇場で観てもらいたいです。
興味のある方は是非!!!
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