ぷらすです。
今回ご紹介するのは、「300」や「マン・オブ・スティール」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」などアメコミ原作映画の第一人者として知られるザック・スナイダーが原案から監督まで努めた完全オリジナル作品『エンジェルウォーズ』ですよー!
この作品をザックは「マシンガンを持った『不思議の国のアリス』」と語っていたそうですが、その言葉通り、ザックの好きな物を全部ぶっ込んだ闇鍋みたいな作品でしたねー。
ちなみに今回は、2011年に公開された作品でもあるので、後半ネタバレありで感想を書いていきます。
なので「ネタバレは(乂'ω')No!!」という人は、先に映画を見てからこの感想を読んでくださいねー。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
暗い現実から逃げるために想像の世界を作り出したヒロインがバーチャル兵器を駆使する4人の女性を集め、自由を手に入れるために幻想的な戦いに挑むアクション・ファンタジー。『300<スリーハンドレッド>』のザック・スナイダーが監督を務め、サムライや悪魔が暗躍する壮大なアドベンチャーを構築。現実と想像の世界のはざまで躍動的な演技を見せるエミリー・ブラウニングら美人女優たちのファイトに注目だ。(シネマトゥデイより引用)
感想
この物語の内容をざっくり言うと、セーラー戦士の少女が霊験あらたかな日本刀とコルトガバメントを武器に、闇落ちした侍・ドラゴン・ナチスのゾンビ・アンドロイドなどを相手に大暴れしてアイテムをゲットするミッションに挑むという映画です。
「ははーん、さてはエイプリールフールだから嘘映画を紹介しようって魂胆だな」と思われるかもですが、残念ながら本当に公開された映画ですw(昨日アップしようと思ったのに寝てしまって、今日アップしたので仕込んだネタが……)
ただ、嘘ってところは当たらずとも遠からずで、この作品の肝は、それらの活躍が全て少女の妄想だっていうところなんですね。
ストーリー
1950年代、母親の死によって、遺産を狙う継父の策略によって精神病院に入院させられてしまった少女ベイビードール (エミリー・ブラウニング)は、一週間後全てを忘れてしまうロボトミー手術を受けることを知ります。
タイムリミットが迫る中、精神病院から逃れ自由を得るためには5つのアイテムが必要だと賢者から教えられた彼女は、仲間と共に様々な時代でミッションをこなしていく。というストーリー。
この物語が特殊なのは、いつの間にか精神病院がショーパブ兼売春宿にすり替わっていて、5日後、彼女は大富豪の“相手”をしなければならないという事になっているところ。もちろんこれはベイビードールの妄想です。
画像出典元URL:http://eiga.com / 気弱なベイビードールだが、一度踊り始めると…
ベイビードールが過酷な現実から目を逸らすためのこの妄想の中では、彼女はダンスの天才ということになっていて、彼女が踊れば男たちは釘付けになってしまうという事になっていて、さらに踊っている間、ベイビードールは様々なファンタジー世界で無敵のセーラー(服)戦士として敵を倒し、与えられたミッションをクリアして、アイテムを集めていく。という妄想をしているんですね。
画像出典元URL:http://eiga.com / 最強のセーラー戦士に!
つまり、この物語は、現実・妄想(第一階層:天才ダンサー)・妄想(第二階層:無敵のセーラー戦士)という三層構造になってるわけです。
で、この物語は入院までの冒頭とラストシーンを除いて、第一階層の売春宿妄想と第二階層の無敵セーラー戦士妄想によって構成されているんですねー。(分かりづらい?)
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無敵のセーラー戦士となった彼女は、4人の仲間と共に様々なミッションに挑んでいくわけですが、CGバリバリの映像や、重力無視、スローモーションからの早回しといういかにもザックスナイダー的なアクションも相まって、まるでゲームのムービー映像を見てるような気分になるんですよねw
日本刀セーラー戦士、マシンガンやショットガン撃ちまくりのコスプレ少女、パワードスーツや飛行機を操縦する少女のグループが敵と戦うっていう、深夜アニメのような映像が延々続いて行く展開に、観ているだけでガンガン偏差値が下がっていくこと必至です。
そんな、いかにもバカ映画といった感じで物語は進んでいくんですが、ラストではある驚愕の展開が待っているんですねー。
というわけで、ここからネタバレですよー!
ベイビードールの置かれた状況
劇中、彼女はダンスを踊る(セーラー戦士としてミッションをクリアする)ことで、様々なアイテムをゲットしていきます。
しかし、そもそも何故、精神病院が売春宿にすり替わっていたのか、そこでアイテムをゲットするためにダンスを踊るということにはどういう意味があるのかと考えると、現実世界での彼女の置かれた状況が見えて来るんじゃないかと思います。
この映画の悪役として登場するブルー・ジョーンズ (オスカー・アイザック)は、最初、継父の策略を知った上で口止め料を貰いベイビーのロボトミー手術の書類を偽造する職員なんですね。
そして、後半では何人かの男性職員も彼に協力していることが分かります。
つまり、現実のベイビードールは精神病院の男性職員相手に(おそらく強制的に)性的な行為をさせられている隙を狙って、病院から脱出するためのアイテムをくすねている。
そんな現実から精神を守るために、ここは売春宿で、天才ダンサーとして男を虜にするという妄想、さらに“ダンス”中は第2の妄想の中で自分を貶める怪物(男たち)に復讐しているっていう、考えただけで嫌ぁぁぁぁぁぁな裏設定があるわけです。
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では、なぜそもそも彼女が精神病院に送られたかというと、母の遺書に全財産をベイビードールと妹の二人に渡すと書いてあり、それに怒り狂った継父に襲われそうになった妹を助けるために撃った銃弾が逸れて、妹を死なせてしまったから。
ただ、この映画は、舞台の幕が開いて始まる――「これから嘘物語が始まりますよー」と宣言しているわけで、上記での現実の設定すら本当か嘘か分からないんですね。
そもそもベイビードールなんて名前の人、現実にいないでしょ。多分。
そう考えると、最初から全て精神を病んだベイビードールの妄想かもっていうドグラマグラ的ストーリーという事かもだし、ロボトミー手術寸前にベイビードールが見た夢かもしれないし、そもそもベイビードールのもうそうかどうかも怪しい(別の誰かの妄想かもしれない)っていう、三層構造の裏に更に何層ものレイヤーが隠されてる(かもしれない)考えれば考えるほどモヤモヤする作りなのです。
ドラゴンや闇侍やゾンビと闘うゲームのような非現実的なアクションシーンの裏に、とてつもなく嫌な現実が隠されている事が暗示されていて、それすらも本当か嘘か分からないというモヤモヤがあるから、日本刀と拳銃を武器に闘う美少女セーラー戦士のスーパーアクションを素直に楽しめないんですよねーw
そんな彼女の状況を暗示するように、戦闘ミッションはどんどん困難になり、仲間を失っていきます。
そうして、困難の末に手に入れたアイテム(地図、炎、鍵、ナイフ)を使って、ベイビードールと唯一生き残った仲間のスイートピー (アビー・コーニッシュ)は、何とか売春宿から逃げ出したものの、外には複数の男たちがいて、そこでベイビードールは自分が主人公(生き延びる人間)ではない事を悟り、自分を囮にスイートピーを逃がすわけです。
そして、寄ってきた男の股間を蹴り上げたベイビードールは、その男に顔面パンチを喰らい今までのシーンが走馬灯のように流れ……。
そこで場面は現実(精神病院)に戻るんですね。
そこにはロボトミー手術を終えた、ベイビードールの後頭部越しに、手術医と責任者の会話がされ、スイートピーと共に逃げたときのアレコレが現実にあった事が分かる(現実でも病人が一人逃げたという話が出ている)んですね。
で、ロボトミー手術を終えたベイビードールは、穏やかな笑みを浮かべているという、「未来世紀ブラジル」のような、超嫌な終わり方になっているのです。
ただ、未来世紀ブラジルと違うのは、その後でスイートピーだった少女が、妄想で彼女たちを導く賢者が運転するバスに乗って去っていく件(くだり)があって、一応はハッピーエンド的な雰囲気にはなってるんですけどね。
この「一応の救いは残してるけど決してスッキリハッピーエンドにはしない」ところは、いかにも「アメリカの虚淵玄」こと中二王ザック・スナイダーらしいって思ったりしましたねーw
とまぁ、狙ってるところは分かるんですが、それが上手くいっているかというと正直微妙なところで、アクションシーンは画面がゴチャゴチャしてる割には人物配置や行動が、しっかり分かるように整理されてて見やすかったし楽しかったけど、ストーリー構成の方はイマイチ上手くいってないというか、三層構造を上手く活かしきれてはいないなーって思ったりしました。
あとはホント好みの問題で、試みとしては面白いけど好き嫌いはハッキリ分かれそうな作品だなーって思ったし、ある程度ザックリテラシーがないと乗れないかもなーなんて思いましたねー。
興味のある方は是非!
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