ぷらすです。
今回ご紹介するのは「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「デッドマン」で知られるジム・ジャームッシュ監督の話題作『パターソン』ですよー!
スターウォーズ新三部作でカイロ・レンを演じ、世間に一躍名前を知られたアダム・ドライバー演じる平凡なバスの運転手の一週間を淡々と追った地味な作品ながら、観終わったあとは何だか幸せな気持ちになる、しみじみ良い作品でしたねー。
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
『ブロークン・フラワーズ』などのジム・ジャームッシュが監督を務め、『沈黙 -サイレンス-』などのアダム・ドライヴァーが主人公を演じたドラマ。詩をつづるバスの運転手の日常を映し出す。共演は『彼女が消えた浜辺』などのゴルシフテ・ファラハニや、ジャームッシュ監督作『ミステリー・トレイン』にも出演した『光』などの永瀬正敏ら。アメリカの詩人ロン・パジェットによる詩の数々が、作品に趣を与えている。(シネマトゥディより引用)
感想
気になってウィキペディアでジム・ジャームッシュ監督の過去作を調べてみたんですが、僕、多分どの作品も観てない(もしくは観たけど記憶にない)と思うので、本作がジム・ジャームッシュ初体験なのかも。
本作をざっくり一言で言えば「『ある男の視点』で描いた物語」なのではないかと。
これネタバレになるかもですが、本作は基本何も起こりません。
画像出典元URL:http://eiga.com / ちょっと変わった奥さん(ゴルシフテ・ファラハニ)だけど二人はラブラブなのです。
ニュージャージー州パターソンでバスの運転手をしているパターソン(アダム・ドライバー)の代わり映えのしない一週間を“彼の視点”で描いた映画なんですね。
朝起きて→仕事に行って→奥さんとの夕食後→犬の散歩の途中で行きつけのバーでビールを一杯飲んで→寝る。
そんなパターソンのルーティーンのような代わり映えしない毎日に彩りを添えるのが、彼が趣味で書いている「詩」なのです。
彼が詩を書く時のイマジネーションとなるのが、毎日の中で出会った人や、馴染みの仲間や奥さんとの会話、仕事中に聴こえてくる乗客同士の会話など。
それらを一遍の詩に落とし込むことで、何てことない田舎町の景色や彼の平凡な日常が、キラキラした世界に見えてくるんですねー。
ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ
本作はニュージャージー州で町医者で詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズや、ニューヨーク派の詩人ロン・パジェットへのオマージュになっているそうです。
特にウィリアム・カーロス・ウィリアムズはパターソンの町全体を擬人化し、様々な形態の詩をまとめた一冊が、全体で一つの詩になっている「パターソン」が代表作で、本作は彼の詩集「パターソン」にイマジネーションを得て作られているんですね。
西洋の詩(や小説などの文章全般?)は、文章で韻を踏むのが基本だそうで、例えば一節の文章の次の一節の頭・中間・おしりのどこかに同じ母音の言葉を使って言葉にリズムを作っていくラップ的な感じらしいんですが、本作ではその形式を踏襲していて、月曜から次の月曜までを曜日ごとに分けて、それぞれの曜日で映像的な韻を踏んだりしているんですね。
同じように見えて少しづつ違う毎日
上記のように、主役のパターソンの毎日はルーティーン的です。
しかし、例えば起きる時間が少しづつ違うとか、同じベットで眠る奥さんが下着?姿だったり裸だったり、パターソンの通勤路を毎日撮影の角度を毎回変えていたり、やたら意味ありげにちょいちょい双子が登場したり。
画像出典元URL:http://eiga.com / 何か意味ありげに登場する双子
まったく同じように見えて、曜日ごとに少しづつ違うということを映像で説明しているんですね。
劇中、何度か大きな変化はあるものの、その出来ごとで平凡だった毎日が壊れるみたいな展開はなく、変化はあくまでパターソンの心の中で起こり、彼の詩の題材になっていくわけです。
しかし、登場人物がすぐ鉄砲で撃ち合ったり、大麻やコカインでラリったり、カンフーで戦ったり、地球が破壊されかけたり侵略されかけたりするような映画ばかり見ている自他ともに認めるボンクラ映画ファンの僕ですからね。
画像出典元URL:http://eiga.com /愛犬マーヴィン役のネリー(♀)は“パルムドッグ賞”を受賞
劇中で何か事が起こるたびに主演のアダム・ドライバーが「テロリストにバスに爆弾が仕掛けられたんじゃないか」とか「ワンコを殺したギャングを殺し屋スキルを発揮して皆殺しにするのでは」とか「雪に閉ざされたホテルで奥さんを追い回すのでは」とか「キレて、十字ライトサーベルで部屋を壊しまくるんじゃないか」と思ってヒヤヒヤしてしまいましたw
もちろんそんな事は起こりませんでしたけどねw
永瀬正敏も出演
物語後半、ある事件が起きて大切なものを失ってしまったパターソン。
彼がいつも昼食を食べながら詩を書いているグレートフォールズの前で落ち込んでいると、ある日本人の詩人が話しかけてくるんですが、その日本人を演じているのがジム・ジャームッシュ監督の「ミステリー・トレイン」にも出演している永瀬正敏です。
画像出典元URL:http://eiga.com / 永瀬正敏も出演しますよ A-HA?
僕はほとんど事前情報を入れずに本作を観たので、彼がイキナリ登場してビックリしましたよ。
この日本人との会話と“あるプレゼント”が、どん底のパターソンの心に灯りを灯す事になるんですね。
そんな感じで、ビックリするくらい何も起こらない作品なんですが、全然退屈せずに最後まで観られて、なおかつ観終わったあとに心が温まる気持ちにさせてくれる良作でしたし、視点一つで世界の見え方はこんなにも美しいと教えられましたねー。
興味のある方は是非!! A-HA?
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