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作者のキングも恐れたホラー原作の映画化「ペット・セメタリー」(1989)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは米ホラー小説の大御所スティーブン・キング原作の『ペットセメタリー』ですよー!

Twitterでリメイク版が公開されるというニュースを読んで「そういえばまだ、観た事なかったなー」と思ってレンタルしてきました。

キング原作の実写化としては比較的ミニマムで地味な物語ですが、むしろ観終わった後からが怖い映画でしたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

交通事故で最愛の子を失った父親は、裏山のペット墓場の奥に広がる不思議な霊場に遺体を埋めるが……。S・キング自身、気味が悪すぎるという理由で、完成から長い間出版しないでいたといういわくつきの原作を、映画化するならと、彼自身が脚色。恐怖演出は及第点だが、やはり後味が悪すぎる。(allcinema ONLINEより引用)

感想

スティーブン・キング自ら脚本を担当

現代社会の闇や他者の不条理に由来する恐怖を描いたモダンホラーの旗手にして、米ホラー小説界の巨匠スティーブン・キング

その膨大な著作ゆえに、「キャリー」「シャイニング」「デッドゾーン」「ミスト」「ドリーム・キャッチャー」などなど、実写映画化された作品の多い作家です。

そんなキングが「気味が悪すぎる」と完成後長い間出版しなかったといういわくつきの作品を、映画化に際して彼自ら脚本を担当したのが本作「ペットセメタリー」(原作の邦題は「ペットセマタリー」)なんですね。

だからかもですが、今まで僕が観た作品の中でも、本作はかなりキング純度の高い作品になってる感じがしました。

ざっくりストーリー紹介

医師のルイス・クリード(デール・ミッドキフ)は、妻レイチェルデニーズ・クロスビー)と2人の子供エリー(ブレーズ・バーダール)、ゲイジ(マイコ・ヒューズ)、そしてエリーの愛猫チャーチルと昼夜問わず大型トラックが行き交う道路沿いの一軒家に引っ越してきた。
庭には奥に続く細道があり、向かいに住む老人ジャド・クランドル(フレッド・グウィン)によれば、その先にペット霊園があると言う。

赴任早々、病院に運び込まれた瀕死の若者パスコー(ブラッド・グリーンクィスト)を救おうとしたルイスだったが、残念ながら死亡。
その夜、ルイスの枕元に現れた彼は、ルイスをペット霊園に連れて行き「この奥に立ち入ってはならない」「あの土地は腐っている」と奥の裏山を指差し警告。

それからしばらくして、祝日に妻レイチェルはふたりの子供を連れて実家に行くが、彼女の両親と折り合いの悪いルイスは猫とに留守番をすることに。

その夜、猫のチャーチルが死に、ルイスがその事をエリーにどう伝えるか迷っていると、ジャドは「ペット霊園の裏山に死者を蘇らせる場所がある」とルイスに告げ――というストーリー。

いわゆるビックリドッキリ系の怖さはそんなにない作品ですが、観終わって内容について考えていると、じわじわと怖くなるんですよね。

というわけで、ここからネタバレです!

怖さと悲しさ

その後のあらすじを最後までざっくり書くと、猫のチャーチルは本当に蘇って帰ってくるんですがひどく凶暴になり、おまけに酷い匂いが取れない状態に。
ジャドによれば、裏山の山頂はネイティブアメリカンの呪術的な場所で、そこに埋められた死体は蘇り、埋めた本人の元に帰ってくるが、それは生前とは別の物になってしまうのだと。過去の経験を交えて語ります。

一方、実家から帰ってきた妻レイチェルは恐ろしい夢を見ます。
彼女が幼少のころ、姉ゼルダは脊髄の病気を患い、やがて背骨が変形する症状の影響でガリガリに痩せたため、世間から隠されるように寝室に隔離されていたんですね。
そんなある日、両親の留守中にけいれんを起こし、まだ9歳のレイチェルの目の前で亡くなってしまうゼルダ
レイチェルはルイスに「その時の私を友人たちは泣いていたと言っていたが、多分自分は笑っていたのだと思う」と告白します。

その後、最愛の息子ゲイジがトラックに惹かれて死亡。
ルイスはレイチェルとエリーを実家に行かせ、パスコー(幽霊)やジャドの静止を振り切って、墓地から掘り返した息子の遺体を裏山に埋めます。

ルイスの望み通りゲイジは蘇りますが、それは息子の姿をした“別の何か”
疲れて寝込んだルイスのカバンからメスを取り出し、ジャドを殺害するとエリー経由でパスコーにルイスの危機を知らされ、一人戻ってきたレイチェルも殺害してルイスを電話で呼び出します。

チャーチルの一件で、ゲイジが豹変することを予想していたルイスは、隠し持っていたモルヒネの注射器でゲージを殺害しジャドの家に火を放ちますが、彼の腕にはレイチェルの亡骸が。
レイチェルは死んですぐだから、今度こそは成功するはず…」と呟きながら裏山に向かうルイス。

かくして、レイチェルは蘇ってルイスの元に戻り、ルイスは彼女を抱きしめキスを交わしますが、レイチェルの手には包丁が握られていた……。

という物語なんですねー。

つまり、この作品が問いかけているのは「もしあなたの最愛の人が死んだとき、生き返らせる手段があったら使わずにいられるか」ということなんですね。

ルイスの行動は確かに愚かだけれど、もし自分がだったら……って考えると、彼の行動を責めたり嘲笑ったりすることは出来ないよなーっていう。

そう考えると、怖さと同時に切なさや悲しさのある作品と言えるんじゃないでしょうか。

呪われた土地

一方で、ルイス一家に起こった悲劇は、全てが最初から仕組まれていた呪いだったのでは? と考えずにはいられないんですよね。

映画冒頭で映し出されるペットセメタリーの映像から始まるこの物語。
その死因の殆どは、昼夜問わず走る大企業の大型トラックに動物たちが轢かれてしまうからなんですね。
そして、死んだチャーチルを蘇らせると、今度は最愛の息子ゲイジが死ぬ。
息子を生き返らせると、今度は隣人と最愛の妻が……というように、この作品には死の影がつきまとっているのです。

その事を予知していたかのようにルイスに警告し、ルイスの行動を止めるためアリーを通してレイチェルに警告し、一刻も早く彼女がルイスの元に着くよう協力する幽霊のパスクーでしたが、そんな彼の行動が結局裏目に出て、実家にいれば死ぬことのなかったレイチェルも殺されてしまう(被害が広がってしまう)わけですね。

そして、パスクーとジャドが口を揃えて言う「あの土地は腐っている」という言葉。

ジャドによれば、裏山のその場所は元々ネイティブアメリカンのミクマク族の古着屋から教えられたもので、劇中でハッキリとは描かれませんが恐らくは、彼らネイティブアメリカンが死者を蘇らせる呪術的な儀式に使われた場所なのでしょう。

そもそも、愛猫が死に親しくなった娘のアリーを不憫に思ったジャドが、ルイスにあの場所を教えなければ、この惨劇は起こらなかったわけですよね。
しかし、ルイス、ジャド、幽霊のパスクーの三人の行動は、愛情、もしくは善意で行ったわけで、つまりは、彼らの行動やその結果起こった悲劇は全て呪われた土地に巣食う“何か”によって操られ引き起こされていたのではないか。

全てはルイス一家が引っ越した時点で(自動的に)呪いは始まっていたのではないか。……って考えるとじわじわ怖くなって来るんですよね。
つまり、惨劇は最初から何者かに仕組まれた、逃れようのない運命だったっていう。

レイチェルの姉ゼルダ

ただ、一つ腑に落ちないのは、ジャドの家に行ったレイチェルが目にした息子ゲイジの服装。

これ、彼女の実家に飾られた姉ゼルダの幼少期の肖像画と同じ格好なのです。
ということは、本作の惨劇の黒幕はゼルダの怨霊と考えることも出来るわけですが、それだと土地の呪い云々は関係ない事になっちゃうんですよね。
土地の呪いに呼応してゼルダの怨霊を呼び寄せたとも考えられるけど、それにしてはレイチェルの実家は遠いですしね。

もしくは、呪いによってレイチェルの深層心理にあった罪悪感が、ゲイジと姉の姿を被らせてしまったのか。またはゼルダはずっとレイチェルに憑いていて、長い間ずっと復讐の機会を狙っていたのか。

もしかしたら、あの後、蘇ったレイチェルが両親&娘を呼び寄せて……と、呪いによる惨劇はまだまだ続くのかも……。

キング原作のホラー映画として本作は、やる事なすこと全部裏目に出ちゃうトコとか、後味が超絶悪いところが、2008年に映画化された「ミスト」に近いテイストに似てる気がします。
その辺、リメイク版はどんな風に料理されてるのか、今から気になりますよ。

興味のある方は是非!!

 

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