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全てが完璧!「若おかみは小学生!」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年公開されるやネットを中心に大評判になったアニメ映画『若おかみは小学生!』ですよー!

実は僕、友人に「試写会のチケットあるけど行く?」と聞かれて「でも子供向けアニメでしょ?」とスルーしてしまったんですよねー。
もし過去に戻れるなら、あの時の自分を殴ってやりたい! と思うくらい、素晴らしい作品でした!

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概要

交通事故で両親を亡くし温泉旅館を営む祖母に引き取られた少女が、若おかみの修業に奮闘する児童文学シリーズをアニメ映画化。劇場版では原作、テレビシリーズで描かれていない両親と少女の物語が展開する。ボイスキャストは、テレビアニメ版と同じく小林星蘭松田颯水水樹奈々らが担当。監督は『茄子 アンダルシアの夏』などの高坂希太郎、脚本は『けいおん』『ガールズ&パンツァー』シリーズなどの吉田玲子が務めた。(シネマトゥデイより引用)

感想

ざっくりストーリー紹介

本作の原作は、20巻+スピンオフ4巻に及ぶ令丈ヒロ子の児童向け同名小説。
交通事故で両親を亡くした小学6年生の女の子「おっこ」が、祖母が経営する旅館「春の屋」に引き取られて若おかみの修行を始めることになり、旅館に住み着く幽霊や大手旅館の跡取り娘、様々なお客さんとの交流を通して自身の辛い過去を受け入れ成長していく。というストーリー。

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本作を観る前に僕が一番引っかかったのは、小学生が若おかみとして旅館で働くという荒唐無稽な設定なんですけど、転校先の温泉街の子たちは子供ながら家業のお店を手伝っているのが普通という設定を入れることでクリアしてるんですね。
さらに旅館と縁のある男の子の幽霊“うり坊”との出会いというファンタジー要素を絡めて、なし崩し的におっこが旅館を手伝うよう物語を持っていく展開が上手いなーと思いましたねー。

完璧な映画化

祖母の経営する旅館「春の屋」のある温泉街のお祭りに両親と来ていた主人公おっこが、神社の子供神楽を観ているシーンから物語はスタート。
その帰りに交通事故に巻き込まれ両親を亡くし、祖母の旅館に行くまでのアバンタイトルを手際よく描き、本編に入ってからは彼女が新しい土地や暮らし、若おかみの仕事に次第に慣れて成長していく様子を、クモやヤモリを使ってサラリと観せる映画的演出。

両親を失うという小学生には辛すぎる現実に対して、おっこが不自然すぎるくらい普通にしている違和感が全て、クライマックスに向けての仕掛けだった事が分かったときの衝撃。

そして切れ味のいいラストの小気味よさ。と、もうね作劇が完璧なんですよ!!

もちろん、ジブリ作品を始め数々の名作で経験を積み、「茄子 アンダルシアの夏」「 茄子 スーツケースの渡り鳥」で監督を務めたあの高坂希太郎監督ですから、アニメーションの方も素晴らしい。

何気ない動きの一つ一つや、食べ物の描写がアニメ的に気持ちよかったり超美味しそうだったり。
いわゆるアニメ的な誇張は最小限に、でも高い技術で凄い事をしてるんですが、それを感じさせないくらいサラリと観せているのです。

児童向けアニメだからと子供だましな作劇や演出をするのではなく、子供たちに向けて本気で作っている超良質なアニメーション映画なんですね。

膨大な原作を90分に再構成

前述したように、本作の原作となる同名小説は20巻+スピンオフ4巻という人気シリーズ。
テレビアニメ化もされていて、こちらは24話が放送されていて(僕は未見ですが)かなり原作に忠実に作られているみたいですね。

ちなみに脚本はたまこラブストーリー」「映画 聲の形」「リズと青い鳥などの吉田玲子
原作小説からその賞味90分間の長編映画用に、高坂希太郎監督自身がキモとなるエッセンスを抽出して整理、再構成してまとめた基本プロットを吉田玲子が脚本化という手順で作られたそうです。

主人公おっこを始め登場キャラクターに語らせ過ぎず、一見、何てことないセリフの中に心情を忍び込ませる。しかし児童向けアニメとしてのバランスは崩さないように語るべきところはしっかり語らせる脚本も実に見事でした。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 左から、うり坊、鈴鬼、美陽

両親を失い心に深い傷を負ったおっこが、彼女だけに見える幽霊のうり坊や美陽、子鬼の鈴鬼といったイマジナリーフレンド的存在、優しくも厳しい祖母や旅館の中居さんと料理長、大手旅館「秋好旅館」の跡取り娘で同級生の秋野真月との交流やぶつかり合いを通して、現実を受け入れて成長するまでに物語を絞っているんですね。

三組の宿泊客、三つのエピソード

本作では三組の宿泊客とおっこのエピソードが描かれるんですが、監督によると、彼ら(彼女ら)は、それぞれ「過去・現在・未来」のおっこの象徴なんだそうです。

最初はおっこが自ら招く最初の父子。
息子のあかねはお母さんを亡くした少年なんですが、彼は両親を亡くした現実を受け入れられずにいる「現在のおっこ」に重なるキャラクターです。

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悲しみに打ちひしがれている彼をもてなし傷を癒すことは、つまりおっこが自分自身を励ましているという事なんですね。

次に、占い師のグローリー水領という女性。
彼女は「未来のおっこ」で、彼女の成長したイメージなんだそうです。
水領が気晴らしにおっこを連れ出して買い物をいく、その車中で事故を思い出し過呼吸になるおっこから話を聞くというエピソードは、「未来のおっこ」が両親の代わりとして「現在のおっこ」を一旦、子供に戻してあげるわけです。

三組目、3人家族の子供、翔太は「過去のおっこ」
彼は何の心配もなく両親に甘えていられた頃の、ただ子供でいればよかった頃のおっこで、二つのエピソードで成長したおっこが、今度は翔太(過去の自分)を辛い過去もろとも抱きしめることで受け入れるのです。

なので、あの衝撃的なクライマックスは、それまでの三つのエピソード、(過去・現在・未来)三人のおっこの物語が全て集約され、それまで抑えていた感情がついに爆発したおっこが、水領(未来のおっこ)に全てを受け止めてもらうことで、辛すぎる過去を受け入れ、春の屋で「これから」を生きる覚悟を決めるシーンなんですね……って、

泣き死にするかと思ったわ!!

DVDの特典映像で観られるテレビアニメ版第一話では、春の屋に到着し部屋で一人になったおっこが亡き両親を想って泣いてて、(多分)その後話数を重ねることで徐々に現実を受け入れていく構成だと思うんですが、本作ではそれをクライマックスに持ってきているんですね。

それと並行してイマジナリーフレンドであるうり坊や美陽が、徐々に見えなくなるという描写で、おっこの成長を表すという2重構造になっているのです。

ラストの切れ味の良さ

で、ラストではアバンと対になるように、神社の子供神楽を今度はおっこと真月が舞うんですが、ここで真月の心情が明かされ二人は本当の意味で認め合う友達になる。

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画像出典元URL:http://eiga.com / おっこ(右)にライバル心を抱く真月(左)

同時にうり坊と美陽との別れが刻一刻と近づくわけですが、この別れのシーンを変にベタベタ描かずに、サラリと、でも、とても印象的に描いているのが個人的に凄く良かったです。

そして、神楽を舞終わったところで、物語をスパっと切り上げる切れ味の良さ。
普通なら、うり坊と美陽との別れでもう一山作りたくなるところを、サクッと切り上げる事で、逆に二人との別れが印象に残る設計になっているんですよね。

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あえて言えば

事ほど左様に、長編小説シリーズの映画化としても、一本の映画としても「完璧」な本作ですが、あえて言うなら、あまりに完璧すぎて隙がないところが若干気になりました。

物語に惚れ込んで映画化する時って、大抵は監督自身が映画に乗っかる分、どうしても多少は形が歪になるものですが、本作はまるで映画のお手本みたいに整っていて、テクニックと経験と計算で完璧に作らり上げられた職人仕事のように見えてしてしまうんですよね。

もっと端的に言えば、高坂希太郎監督自身の顔が作品からあまり見えてこないというか。

もちろんテクニックと計算だけでこれだけの作品を作れたとしたら、それはそれで凄いけど、多分それはただの邪推で、監督の情熱や心情は作品の中に当然入ってるんでしょうけど、子供向けの作品ということもあって、言いたいこと、やりたいことはかなり抑えているのではないかなー? という印象を受けました。

「茄子 アンダルシアの夏」の、作品としては少々歪だけど湧き上がるような熱量に圧倒された僕としては、ちょっとだけ「おや?」と思ってしまったんですよね。

うん、つまりただの言いがかりです

最初ナメてたのが恥ずかしくなるくらい作劇も映像演出も素晴らしい作品だし、なんなら僕はこの感想を書きながら思い出し泣きするくらい感動しました。いやマジで。

なので、「とはいえ子供向きアニメでしょ」と観るのを躊躇っている人は、騙されたと思って一回観てください
「どらえもんのび太の恐竜」や「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」と並ぶ大傑作ですので!

興味のある方は是非!!

 

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