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世界を熱狂せたあのバンド“最後”のワールドツアー!「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは米ミュージシャンのライ・クーダーキューバの老ミュージシャンが共同で制作し1997年に出した同名アルバムをキッカケに、1999年に制作したドキュメンタリー映画ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」から18年後の続編となる『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』ですよー!

実は、日本では2000年に公開された前作を僕はリアルタイムで観ていて、アルバムも買っているんですよね。
なので、今回は久しぶりにアルバムを引っ張り出して聴きながら感想を書いていきますよー!

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作品概要

キューバのベテランミュージシャンを中心に結成されたバンドにスポットを当てた『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の続編。ステージ活動の終わりを決めた彼らが敢行したワールドツアーの模様が映し出される。前作で監督を務めたヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を務め、『ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡』などのルーシー・ウォーカーが監督を務める。(シネマトゥディより引用)

感想

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とは

前作は米ミュージシャンでギタリストのライ・クーダーキューバに旅行に行った折、地元の老ミュージシャンとセッションしたのをキッカケに共同でアルバムを制作することに。
レコーディングから米国でのライブ、そしてバンドメンバーたちの背景を交えながら、バンドによるクライマックスでのカーネギーホールライブまでを追ったドキュメンタリー映画です。

CD・映画のタイトルにもなった「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は元々、1950年代にあった黒人専用クラブの名前。
当時は黒人差別が強く、音楽を楽しむクラブも分けられていたそうです。

元はスペインの植民地だったキューバは、西洋音楽ラテン音楽、奴隷として入植した黒人たちの音楽やリズムの要素が加わり、キューバの伝統的な音楽「ソン」が誕生。
1950年代に隆盛を極めますが、その後時代の移り変わりとともに衰退していきます。

しかし、ライ・クーダーが老ミュージシャンたちと制作したアルバム、映画と合わせてアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が大ヒットとなり、一躍人気ミュージシャンになった彼らはワールドツアーを成功させるのです。

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それから18年、メンバーの約半数を失った「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、若いメンバーを加えて「アディオス・ツアー」と銘打って、最後の世界ツアーを敢行。

そんなツアーと合わせて、この18年に彼らの身に起こったこと、高齢によりなくなったメンバーたちの最後の姿、前作では描かれていなかったキューバの成り立ちと歴史、黒人差別問題やキューバ音楽の歴史など、前作では描かれなかった(もしくは描かれても舌っ足らずだった)アレコレを、膨大なインタビューや記録映像を交えてより立体的に描いたのが本作「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」なのです。

続編にして完全版

そんな訳で、本作は一応「続編」という形になってますが、個人的には前作で足りなかった要素を付け加えた「完全版」というイメージの方が強かったです。

前作では、メインボーカルだったイブライム・フェレールを中心に据えたバンドメンバーの人となりや演奏、撮影当時のキューバの日常風景などで構成されていたんですが、本作ではその後のワールドツアーで各国のファンに熱狂的に迎えられた彼らの様子や、渡航ビザが降りずにグラミー賞に出席できなかったこと、オバマ大統領に招かれたホワイトハウスでのライブ風景、亡くなったメンバーの最後のライブ風景やお葬式の様子などなど。

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映画公開からの18年間の彼らの様子や言葉を余すところなく伝えてくれているんですね。

クラシカルで新しく、都会的だけど土着的な音楽

前作が公開された時、彼らの音楽を聞いた僕は驚き痺れました。
元々僕は、その国や土地の風土や文化から生まれた土着的な音楽が好きで、特にラテン系の音楽が大好きなのです。

彼らの音楽「ソン」はキューバ起源のラテン音楽
サルサの原型になった音楽と言われ、マンボやチャチャチャも基本的にはソンを土台に作られたらしいんですね。
クラシカルだけど新しく、洗練された都会的な音楽のようで何処か土着的な匂いがあり、また、(当時)上は90代~若くても60代後半という超高齢バンドながら、楽器の腕前や伸びやかな歌声は年齢を感じさせません。

それでいてその歌声には彼ら自身の積み重ねた歴史が乗っていて、歌詞の意味は分からないけど何故か響くんですよね。
とても、寄せ集めのバンドとは思えないくらい息もピッタリです。(既に引退したり、第一線を退いた“忘れられた”ミュージシャンがほとんど)

映画では、歌詞の一部に字幕がついているんですが、素朴な農民の歌であり、労働階級の歌であり、また黒人差別の歌であり、日本で言えば民謡に近い感じでしょうか。

メンバーのその後

メインボーカルのイブライム・フェレールは幼くして両親を亡くし、歌手として才能に恵まれながらもメインボーカルにはなれず、またジャズなどの台頭でソンが衰退していくことに絶望し、音楽を辞めて靴磨きをしながら暮らしていたのをブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに呼ばれ60代後半になって突然、世界的な大スターになったんですよね。

そんな彼も2005年に亡くなり、他にも最長老でピアノのルベーン・ゴンサーレスなど、オリジナルメインのメンバーの半分以上が亡くなっているのです。

まぁ、みんな前作の時点でお爺ちゃんだったし、それから約20年経ってるんだからそりゃそうだろうって話ではありますが、「アディオス・ツアー」の中に彼らの姿が無いと、やっぱり寂しいと思っちゃうんですよね。

まぁ、ずっと忘れてたくせに我ながら勝手なもんだと思いますけども。

本作では、前作で描かれなかったカーネギーホールライブ以降の彼らの姿や、最晩年の様子なども映っていて、(日本も含めた)世界中をツアーし熱狂的に迎えられて楽しそうに演奏し歌う彼らの姿は、観ていて「(この人たちが報われて)本当に良かった」と思うし、その一方で「ノリノリで聴いてるけど、彼ら(観客)は、この歌詞の意味が分かってるんだろうか」というイブライムの声にドキっとしてしまったり。

「人は人を殺すことはできても音楽は殺せない」という女性ボーカルのオマーラ・ポルトゥオンドの言葉には、激動のキューバを生き抜いてきた彼女の強い信念を感じずにはいられませんでした。

そしてそれは多分、キューバ人としての彼女の矜持でもあるんでしょう。

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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の音楽が政治的に対立していた米国とキューバを直接的に繋いだというような事はもちろんありませんが、彼らの紡いだ音楽が両国だけでなく、国境を超えて多くの人々に届き、(政治とは別に)各国の人々の距離をほんの少し近づけたのは間違いなく、つまりはそれが文化なんだと、本作を観て思いましたねー。

もちろん、本作だけ観ても面白いと思いますけど、出来れば前作と合わせて観た方が、より楽しめるのではないかと思います。

興味のある方は是非!!

 

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