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ナチの残党医師vsナチ・ハンター「ブラジルから来た少年」(1978/日本では劇場未公開)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アイラ・レヴィンが1976年に発表した小説を元にしたSF?スリラー『ブラジルから来た少年』ですよー!

有名な作品ですが僕は初見で、しかも内容もまったく知らずに観たので物語がどう転がっていくのかハラハラドキドキしながら見ることができましたねー!

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画像出典元URL:http://amazon.co.jp

概要

寡作のスリラー作家アイラ・レヴィンの同名小説を映画化したスリラー。アウシュビッツ収容所で死の天使と言われたメンゲレ博士が、ナチスの残党と共にある計画を発動した。それは、アメリカとヨーロッパにいる、94人もの人物を殺害する、というものだった。そしてそれは、ナチスの復活を告げる悪魔の計画でもあった……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

ナチの残党医師vsナチ・ハンター

有名な作品なのでご存知の方も多いかと思いますが、この映画はいわゆるナチスもの”です。数々の戦犯の逮捕に貢献したナチ・ハンターの老人リーベルマン(ローレンス・オリヴィエ)は、「戦後南米に逃げ延びたナチの残党に不穏な動きがある」とナチスハンターでユダヤ人の若者から連絡を受けます。

最初は相手にしていなかったが、ナチ残党による会議の盗聴・録音に成功した若者が、電話中に押しかけたナチの残党によって殺害されたことで、リーベルマンは独自に調査に乗り出すのです。

若者からの報告によれば、彼らの計画とはアメリカとヨーロッパにいる65歳の公務員94人を、決められた日程通りに殺害するというもの。
しかもターゲットはユダヤ人ともナチスとも無関係だというのですね。
最初は半信半疑だったリーベルマンでしたが、計画の首謀者がアウシュヴィッツの主任医師だったメンゲレ博士グレゴリー・ペック)だったこと、通信社の友人に調べてもらったところ被害者と思われる不審死があり、西ドイツ、マサチューセッツの被害者家族を訪ねたリーベルマンは、そこで信じられないものを目にする――というストーリー。

ちなみに、本作の主人公であるリーベルマンと悪役であるメンゲレには、それぞれ実在のモデルがいて、特にヨーゼフ・メンゲレの方は実名をそのまま使っています。

実在の人物がモデル

リーベルマンのモデルとなったのは、実在のナチ・ハンターであるサイモン・ヴィーゼンタール。
ドイツのナチス政権下時代の戦犯の追及者(ナチ・ハンター)として知られるオーストリアユダヤ教徒で、アドルフ・アイヒマンなど数多くのナチの残党逮捕に貢献した人物です。

一方、ヨーゼフ・メンゲレナチスの医師であり、戦時中アウシュビッツ収容所などで、数々の非道極まりない人体実験を行った戦犯として追われるも、ドイツ南部、アルゼンチン、ブラジルと逃亡を続け、1979年に海水浴中に心臓発作を起こして溺死したのだそうです。

彼はまた、双子に特別な興味を持っていたようで、双子の子供3000人に対しても非道な人体実験を行ったのだとか。

彼が隠れ住んだブラジルの村では、ナチスの主張するアーリア人的特徴を備えた双子が次々に生まれる現象が起き、メンゲレ風の医者に薬を提供された証言が残っているという話もあったりするそうですね。

そして、そうしたメンゲレのエピソードの多くが本作の作劇に使われ、だからこそ劇中のメンゲレの異常性や彼が遂行しようとしている恐るべき計画にもリアリティーが感じられるのでしょう。

メンゲレの計画事態は、今となっては数多くの映画で使われまくった新鮮味のないものですが、本作公開の1978年当時は(ラストシーンも含め)かなりセンセーショナル、かつショッキングだったのではないかと思いましたねー。

鏡合わせの二人

序盤、年老いたリーベルマンはナチ・ハンターとして数々の功績を挙げているものの、時代の移り変わりでユダヤ人協会からの援助もなくなり、厄介者扱いを受けていることが分かります。

それは本人も自覚していて、ナチ・ハンターとしての情熱も消えかけている。
そんな彼のもとに入った、一本の電話から物語は動き始めるんですね。

一方のメンゲレは、最初はナチの残党と共に計画を進めているんですが、ナチの残党のメンバーは計画には懐疑的だし、ぶっちゃけナチス復活の野望などほぼないんですよね。

そんな中、一人やる気まんまんで強行的なメンゲレに彼らは「コイツめんどくせー」って思っていて、中盤、計画を中止し証拠隠滅のためにメンゲレの隠れ家を焼き、関係者も皆殺しにしているわけです。
なぜなら、メンゲレの計画が明るみになって自分たちの居場所がバレれば、捕まるリスクが高まるから。

つまり、リーベルマンとメンゲレは立場は違えど、時代の流れに取り残された鏡合わせの存在なのです。

そしてクライマックスでは、アメリカの片田舎でついにこの二人の直接対決となるんですが、爺さん二人の取っ組み合いっていう、中々新鮮な映像が見られますよw

ただ、それだけでは流石に画が持たないからか、ドーベルマンや拳銃、被害者の息子を入れ込むことで、サスペンスを生み出しているんですよね。

地味だけど秀作

正直、本作はかなり地味な映画ではあるけど物語自体は面白いし、劇中でのメンゲレのエピソードはほぼ実話だし、彼の恐ろしい計画のアイデアも当時としては(多分)かなり早かったと思うんですよね。

メンゲレ役のグレゴリー・ペックローレンス・オリヴィエという名優二人の演技も相まって、今観ても見ごたえのある秀作だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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