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後の戦争映画を変えた作品「プライベート・ライアン」(1998)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1998年公開のスピルバーグ作品『プライベート・ライアン』ですよー!

「いつかは観なくては」と思いながら、肉体破壊しまくりな戦闘描写が凄まじいという噂や170分という長尺に、ずっと二の足を踏んでいたんですが、今回意を決してレンタルしてきました!

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp

概要

1944年6月。ノルマンディ上陸作戦は成功に終わったものの、激戦に次ぐ激戦は多くの死傷者を出していた。そんな中、オマハビーチでの攻防を生き延びたミラー大尉に、落下傘兵ライアン二等兵を戦場から救出せよという命令が下された。彼には3人の兄がいたが、全員が死亡。兄弟全てを戦死させる訳に行かないと考えた軍上層部の決定であった。ミラーは中隊から7人の兵士を選び出し、生死も定かでないライアン二等兵を探すために戦場へと出発するのだが……。(allcinema ONLINE より引用)

感想

戦争映画を変えた作品

スティーブン・スピルバーグと言えば、これまで映画界に数々の変革を齎した映画界の巨人。
ジョーズ」ではビックバジェット映画と低予算B級映画というジャンルの壁をとっぱらい、「ジュラシック・パーク」ではCG技術を本格的に導入することで映画を進化させ、本作「プライベート・ライアン」では後の戦争映画の表現を決定的に変えてしまったんですね。

特に冒頭20分に渡る“ノルマンディー上陸作戦”はプライベート・ライアン以前と以後で戦争映画が変わった」と言われています。
手持ちカメラによるドキュメンタリーのようなカメラワークで撮影された臨場感と、容赦ない人体破壊による徹底した「戦場のリアリティー」は、公開から20年経った今観ても古臭く感じることはありません。

それは「ジュラシックパーク」にも言えることで、僕が「ジュラパ」を観たのは公開から約20年後の2014年でしたが、それでもブラキオサウルスの登場シーンや、Tレックスのリアルさや迫力には驚かされたんですよね。

多分そこに映像作家スピルバーグの凄さがあって、CGを観せるためのアニメ的なカメラワークではなく、あくまでスタンダードなカメラワークの中にCGの被写体を入れ込んでいるから、例え20年経っても映像が古く感じないのではないかと。

本作の冒頭20分は、ハンディカメラを多用して撮影。
オマハ・ビーチに着いた上陸用舟艇のハッチが開いた瞬間、待ち構えたナチスドイツ兵から集中砲火、水中で銃弾の軌道が糸を引くように兵士を射抜く様子、敵の攻撃を受け手足が吹き飛ぶ、内臓が飛び出て泣き叫ぶ兵士、火炎放射器で火だるまにされる、顔面が凹んでいる通信兵、兵士たちの血で真っ赤に染まる波。

そうしたディテールは無造作に垂れ流されるのではなく、一つ一つのシーンやカットに、観客がよりショックを受けるような映像的演出がしっかり施されていて、観ているコッチも“地獄”の中に放り込まれたような感覚になるのです。

つまり、スピルバーグは映画を撮るのが超絶上手いってことですね。(←小並感)

実話ベース

本作は基本的にフィクションではありますが、ストーリーは“ナイランド兄弟の逸話”が基になっているそうです。

ライアン二等兵のモデルとなったフレデリック・ナイランド三等軍曹は、Dデイ(作戦決行日)初日に、輸送機パイロットのミスで予定の降下地点からかなり離れた内陸地点に降下。
なんとか原隊に復帰したところ部隊の従軍牧師から3人の兄全員が戦死したと告げられます。
彼は国防省の「ソール・サバイバー・ポリシー」に基づいて前線から引き抜かれ、本国に送還されることとなったのだとか。
ちなみに「ソール・サバイバー・ポリシー」とは、巡洋艦「ジュノー」に勤務していたサリヴァン兄弟が、ジュノー撃沈によって全員死亡したことを受けて制定されたルールだそうです。

本作ではこの史実に脚色を施して、トム・ハンクス演じるミラー大尉が6名の部下+歩兵師団から引き抜いたドイツ語とフランス語が話せるアパム伍長(ジェレミーデイビス)と共に生死のハッキリしないライアン二等兵マット・デイモン)の捜索のため前線に向かうというストーリーなんですね。

アパム伍長

それぞれが先頭のプロであるミラー大尉と6人の部下に対して、アパム伍長は地図作成や情報処理を担当で戦闘経験はなく、ドイツ語とフランス語が話せるという理由だけで同行させられるハメになります。
つまり彼は、観客に一番近い視点を持つキャラクターなのです。

クライマックス、圧倒的不利な状況の決戦で他のメンバーが勇敢に戦う中で彼はすっかりブルってしまい、そのせいでメンバーが死んでしまうため多くのファンから嫌われまくっているんですが、いやいや、戦場という異常な空間のなかで誰もがヒロイズムという狂気に飲み込まれる中で、唯一普通なのが彼なんじゃないかと僕は思うんですよ。

多分このアパム伍長は本作の裏主人公的な存在で、スピルバーグ自身が乗っかっているキャラクターなんじゃないかと思うんですよね。

反戦映画

一見、戦争で散っていった兵士やミラー大尉の英雄譚のように描かれているので誤解する人もいるかもですが、本作はれっきとした反戦映画です。
無謀とも言える作戦の中で四肢を飛び散らせながら惨たらしく死んでいく兵士や、死にたくないと泣き叫ぶ兵士。
多くの部下を失ったショックとプレッシャーから手が震えるミラー大尉は、元々学校の先生で、ライアン二等兵救出を引き受けたのも「いつか故郷に帰ったとき妻に誇れる任務をする」ためなのです。

劇中でも何度となく「一人の命を救うために8人の命をかける」ことの理不尽さを語っているし、感動的な音楽に誤魔化されそうになるけど、軍上層部がライアンの母親へ宛てた(リンカーンの言葉を引用した)手紙のシーンには、スピルバーグの痛烈な皮肉と怒りが込められていますしね。

正直、冒頭20分は観ているだけでキツいし何度も見返したいとは思いませんが、映画史的にエポック・メイキングな作品でもあるし、スピルバーグの凄さを再確認できるので、一度くらいは観ておいて損はない作品だと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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