今日観た映画の感想

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Don’t think, feel 「海獣の子供」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは五十嵐大介の代表作をSTUDIO4°制作で劇場長編アニメ化した『海獣の子供』ですよー!

方々から「難解」というウワサは聞こえてきたので覚悟して観たんですけど、ウワサ通りの難解な作品でしたねーw

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

「リトル・フォレスト」などで知られる五十嵐大介のコミックを、『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO4°Cの制作でアニメ映画化。居場所がない14歳の少女と不思議な兄弟の交流を描く。声の出演に『うさぎドロップ』などの芦田愛菜をはじめ、石橋陽彩、浦上晟周稲垣吾郎らが集結。監督を『宇宙兄弟#0(ナンバー・ゼロ)』などの渡辺歩、音楽を久石譲が担当している。(シネマトゥディより引用)

感想

言語からの解放

本作のテーマを一言で言うと「言語からの解放」に尽きると思います。
そしてこのテーマは原作者の五十嵐大介さんの作品全般に通底しているんですよね。

例えば遺伝子操作で生まれたカエル少女が主人公の「デザインズ」では、生物それぞれの持つ”環世界”が主題になっているし、本作でも、ジュゴンに育てられた少年・海と空は言語以外のコミュニケーションで100%分かり合っている描写がありますよね。

原作版のセリフには「言語は性能の悪い受信機みたいなもので、世界の姿を粗すぎたり、ゆがめすぎたり、ぼやかして見えにくくしてしまう。言語で考えるってことは、決められた型に無理に押し込めて、はみ出した部分は捨ててしまうということなんだ。

というセリフがあって、これは誰もが多かれ少なかれ感じた事があるのではないでしょうか。

五十嵐大介という人は、そうした人間が言語化(知覚)できない”感覚“を描く作家で、だから本作が「難解」と評されるのもある意味当然というか、この作品は「理解」するのではなく「感じ取る」物語、つまりは「Don’t think, feel」なのです。

ざっくりストーリー紹介

湘南に住む少女・安海琉花(芦田愛菜)は、母・加奈子と二人暮らしの中学生です。
夏休み初日、彼女は所属するハンドボール部の練習中に、チームメイトとトラブルを起こし部活から締め出されてしまうんですね。

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目標を失った琉花は、別居中の父が務める水族館でジュゴンに育てられたという不思議な少年・海(石橋陽彩)や、その兄・空(浦上晟周)と出会い、そして想像を絶する体験をすることに――という物語。

ストーリー上は、他者とのコミュニケーションに悩む少女が特別な経験を通して成長(というか進化?)するボーイミーツガール的展開になってますが、琉花の体験ってのが生命の誕生と輪廻の神秘ですからね。事があまりにも壮大すぎて観客は「え?どういうこと?(゚Д゚)」ってなっちゃうんだと思います。

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原作に忠実

そんな本作の白眉は、まるで五十嵐大介さんの漫画をそのまま動かしたような、映像の美しさとアニメーションの凄さ。
原作では、シーンの空気感や感情を表すため、あえてラフなタッチで描かれるコマもけっこうあったりするんですが、その辺も含め本作はかなり忠実に再現されています。

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対して物語の方は、全5巻に及ぶ長大な原作を約2時間の作品にするため主人公・琉花のエピソードに集約。かなりのエピソードを刈り込んでいます。

これによって本作を「分かりやすくなった」という人もいれば、逆に「分かりにくくなった」という人もいますが、僕的には一長一短というか、物語としては分かりやすくなったけど、原作の持つ世界観や細かいディテールの意味は伝わりにくくなったという印象でしたねー。

まぁ「分かりやすくなった」と言ってもそれは”物語の構成が“という話で、内容が難解なのは変わらないわけですけどもw

でも、誰でも分かりやすいように変えてしまったら「海獣の子供」ではなくなってしまうので、アニメ化作品としてはこれがベストだと思いましたよ。

あえて言えば

ただ、あえて言えば、もっと寄りの視点も欲しかったかなと。
これは技術的な話じゃなくてあくまで印象の話ですが、五十嵐さんの原作コミックって、どこかキャラクターを突き放したような「引きの視点」で描かれているんですね。

それは原作がある種の群像劇でもあるからなのかもだし、五十嵐さん自身の性分もあるのかもですが、それゆえ五十嵐作品は読者を選ぶわけです。

対して本作の場合は折角主人公・琉花が中心の物語になっているのだから、もう少し「寄りの視点」があれば、受ける印象は違っていたのかもしれないと思いました。

ただ、そうすると今度は五十嵐作品の持つ魅力からは離れてしまうかもしれないので、難しいところではあるんですがw

ともあれ、そもそもアニメ化がかなり難しい原作を、ここまで忠実に再現したことは素直に凄いと思うし、アニメーションとしてのクオリティーの高さも半端じゃないので、まだ未見の方は一度観てみる価値はあると思いますよ。

興味のある方は是非!!

 

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