ぷらすです。
今回ご紹介するのは、アルゼンチン発のホラー映画『マーダー・ミー・モンスター』ですよー!
この作品、映画監督・脚本家でありスプリクト・ドクターでもある三宅隆太氏が選ぶ2019年公開映画の1位だったので前々から気になっていて、今回やっとレンタルしてきましたよー!
というわけで、今回はネタバレありで考察もしたいと思いますので、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対に嫌!という人は作品を観てからこの感想を読んでくださいね。
いいですね?注意しましたよ?
画像出展元URL:http://eiga.com
概要
シッチェス・カタロニア国際映画祭をはじめジャンル映画の祭典で話題を集めた一方、2018年・第71回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門にも出品されたホラーミステリー。平穏で静かな村である日、首無し死体が発見され、捜査を担当する地元警察のクルスは不可解な事件に頭を抱える。すると今度は、クルスの不倫相手であるフランシスカが首無し死体となって発見され、彼女の夫ダビドが容疑者として逮捕される。しかし、死体の頭部には人間の仕業とは思えない、食いちぎられたような跡があり、クルスは人知を超えた怪物によるものとの仮説を立てる。一方、錯乱状態になっていたダビドは、頭の中で繰り返し声がすると訴え……。ヒューマントラストシネマ渋谷の特集「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」内の「WEC ワールド・エクストリーム・シネマ2019」(10月25日~)上映作品。(映画.comより引用)
感想
謎が謎を呼び、謎だけが増えていく不思議ホラー
まず、この作品の凄いところを一言で言うなら、「内容がビタイチ分からない」ってとこだと思いますw
物語的には、のどかな田舎町で起こった連続首なし殺人事件。
すぐに容疑者が逮捕され事件は解決したかに見えたが、違和感を感じた主人公の刑事は独自に調査を続けるうち、やがて精神がおかしくなって虚実が曖昧に。という、まぁ、よくあるストーリーなんです。が、途中、あまりにも気になる事が多すぎてストーリーがまったく頭に入ってこない……というか、ストーリー自体を見失ってしまうというか。
まず、会話のセリフが観念的な上、ちゃんとかみ合っていなかったり、キャラのテンションやリアクションがおかしかったり。
場面が脈絡なく飛んだかと思えば、意図が全く分からない謎シーンが挿入されたりと、謎がまったく解明されないどころか、ストーリーが進むごとに雪だるま式に増えていくという物語というより夢(悪夢)でも観ているような、不思議過ぎて不安な気持ちになる映画なんですねー。
ざっくりストーリー紹介
冒頭、アンデス山脈で羊飼いの女が死ぬシーンから物語はスタート。
彼女は首から大量の血を流しながら絶命するんですね。
事件を調査にやってきた地元警察の刑事クルス(ビクトル・ロペス)らが、容疑者として捕らえた女の亭主である老人の取り調べで、老人は近くの山小屋で放心状態の男の姿を見たと言います。
その男とは、どうもクルスの不倫相手フランシスカ(タニア・カスチアーニ)の亭主、ダビド(エステバン・ビリャルディ)。
フランシスカの頼みで山小屋に隠れていたダビドを保護し自宅に送り届けたクルスでしたが、その後、フランシスカが首なし死体で発見されたことでダビドは連続殺人犯として逮捕されてしまいます。
画像出展元URL:http://eiga.com
しかしクルスは、両被害者の首に残る獣に食いちぎられたような傷跡や傷跡に残る牙に違和感を感じ、独自に捜査を始めるのだが――というストーリー。
つまり、本作はミステリーホラー映画なんですが、前述したように物語はどんどん観念的な方向に進み、(悪)夢と現実の境目がどんどん曖昧になって謎だけが増えていくわけです。
そんな難解すぎるストーリーゆえ、作品の評価も賛否が分かれているようです。
ヘンテコ描写やヘンテコな編集、そして……
正直、僕もまったく意味が分からなくて( ゚д゚)ポカーンだったんですが、観終わったあとネットでいくつかのレビューを読んでみたところ、様々な考察がされていました。
というわけで、ここからはそれらの考察を参考に、ネタバレありで僕なりの考察をしていこうと思いますよー!
この作品がなぜ分かりづらいのかと言うと、(乱暴に言えば)1・説明不足であること。2・謎の描写が多すぎる。という2点に尽きると思います。
1で言うと、捜査を進めるうち段々頭がヤバくなってくるルクスは、3台のバイクに遭遇したり、事故りそうになって急停車した車をのぞき込む謎の老人の幻影?を見たりするんですが、それも一切説明がないのでルクスの妄想なのか現実なのかがまったく分からないんですね。
もちろん、そういう虚実の境目を取っ払って並列に見せていく作品は少なくないんですが、普通そういう演出だと後で「あー、あれはそういう意味か!」って分かるもんですが、本作は最後まで観てもそれが現実か虚構か分からず、モヤモヤだけが残るのです。
あと、シーンやカットが繋がってるような繋がってないような感じで、変なところでカットが切れたり、(多分)物語上飛ばしちゃいけないシーンが飛ばされてたりするんですよね。
もちろんどれも意図的な演出だと思うんですが、その意図がコッチに伝わってこないのです。
2で言うと、例えばルクスとフランシスカのベッドシーン。
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二人とも年相応に緩すぎる体なので、そこからちょっとキツいんですが、フランシスカの願いに応えルクスが全裸でダンスを踊るっていうシーンがあるんですが、この踊りが何かもう……とにかく謎だしヘンテコなんですよ。
しかもルクスも楽しそうに踊ればいいのに、なんかずっと真顔なので余計にヘンテコに見えるんですよね。しかもルクスはフランシスカが殺された後も、ボーリング場の壁に向かって一人でこのヘンテコダンスを踊ったりするんですよね。
何だろう。アルゼンチンでは有名なダンスなのかしらん。
で、ルクスの不倫相手のフランシスカなんですが、演じる女優さんがいかにも南米系の顔立ちなのはいいんだけど、とにかく立派過ぎる眉毛が気になって話が頭に入ってこないw(フリーダ・カーロみたいな感じ)
それでいうと、ルクス役の人もデッサンの狂ったモーガン・フリーマンみたいな顔立ちなんですが、多分物語のテーマを踏まえ、意図的に先住民系の役者さんを配役してるのかな?
あと、開始1時間過ぎても、肝心のモンスターが出てこない。
あまりに出てこないので、「ははーん、この“モンスター“ってのは概念的な意味で、本当は存在しないんだな」って思ってたら、最後の最後に突然登場。しかもその姿が、尻尾は男性器、顔は女性器っていう完全18禁使用の卑猥すぎるモンスターで、観た瞬間思わず爆笑してしまいましたよw
そのモンスターの正体は警察署長だったんですが、クライマックス?でその卑猥な顔を近づけてルクスを食べようとするんですね。
それを止めようとルクスが手を出すと、手にかぶりつくんですけど、バクンっ!って食いちぎる感じじゃなくて、何て言うんでしょうね……歯のないおじいちゃんがスルメ食べる時みたいにモッチャモッチャモッチャモッチャ食べるんですよ。
さそれだけならまだしも、腕を食べながらその卑猥すぎる尻尾でルクスのオカマを掘るんですよね。オッサンxオッサンの薄い本かよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッっていう。
社会問題とLGBTを反映?
他のレビューでも語られてましたが、この映画はホラーという型を使って性差別を描いた作品ってことなんだと思います。
それは、女性警官も含めた被害者が強姦され殺されていること、また首を食いちぎられていること、そしてモンスターのデザインから一目瞭然で、つまり強姦殺人は閉ざされた保守的な地域で女性が性的に搾取されているという事の暗喩だろうし、首を食いちぎられ捨てられるのは女性の発言や権利が弾圧されていることの暗喩だと思われます。
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モンスターの『口』に無数の牙が生えているのは、ミソジニー的な意味もあるのかも?
また、劇中で、署長のルクスに対しての態度を観ると、彼がゲイでありルクスに好意以上の感情を持っている事と、ルクスにその素質?を見出していることが分かるので、ルクスの腕を食べながらオカマを掘る行為は、そのままSEX描写なんですよね。
だから、腕を食べられるルクスが、苦悶とも快楽ともつかない表情を浮かべていたのでしょう。
つまりですね、この映画はホラー版「おっさんずラブ」なんですよ!ナンダッテー!
ただ、だとするとモンスターの正体が署長というのは若干違和感があります。
署長がゲイなのだとしたら、女性被害者たちの首を食いちぎるのはともかく、強姦はしないんじゃないかな?と。
だとすれば、実はモンスターの正体は本作に登場する男たち全員だったのかもしれません。
つまり、羊飼いの奥さんを殺したモンスターは老人だし、フランシスカを殺したモンスターはダビド。女性警官を殺したモンスターは同僚警官みたいな。
そして、全員が死んでただ一人生き残った?ルクスは、ラストシーンでモンスターになり誰もいないアンデスの山に向かって歩いていくっていう。
そう考えると、中々切ない物語といえるかもしれませんね。
あと、本作では「MURDER ME, MONSTER(私を殺せ怪物よ)」というタイトルの頭文字、3つのMがキーワードになっているんですが、シーンの切り替わりで差し込まれる3つの山(Mに見える)がM字開脚で寝転ぶ女性の姿に見えるのも何か物語的意味があるのかもしれないし、結局バイクや老人が何を表しているのかは分かりませんでしたが、テーマに深く関わる何かであることは間違いないんでしょう。
アルゼンチンの人なら見た瞬間ピンとくるのかな??
まぁ、正直面白いかと聞かれれば答えに悩んでしまうし、怖くはないんだけどグロ描写は生理的にキツイものがあるので、積極的におススメは出来ませんが、案外ハマる人はハマる作品かもしれません。
興味のある方は是非!!
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