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世界の“MIIKE“が撮った”洋画“「初恋」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、”世界のMIIKE”こと三池崇史監督久しぶりのオリジナル作品『初恋

』ですよー! 

日本に先駆けて全米公開したことでも話題となった本作ですが、先に個人的な感想を一言で書くと、この作品は「三池崇史が撮った”洋画“」だと思いました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『一命』などの三池崇史監督と『東京喰種 トーキョーグール』シリーズなどの窪田正孝が、ドラマ「ケータイ捜査官7」以来およそ10年ぶりに組んだラブストーリー。負けるはずのない相手に負けたプロボクサーの主人公が過ごす、アンダーグラウンドの世界での強烈な一夜を描く。『ビジランテ』などの大森南朋、『さよなら歌舞伎町』などの染谷将太をはじめ、小西桜子、ベッキー村上淳塩見三省内野聖陽らが出演した。(シネマトゥディより引用)

感想

三池が世界に照準を合わせた作品!?

これまで仕事を断らない職人監督として数多くの原作つき作品に携わる一方で、その強烈すぎる作家性で世界中にファンを持つという二面性を両立している異例の映画監督・三池崇史

非常に多作で知られる監督ですが、それゆえか彼ほど評価の定まらない監督も珍しいのではないでしょうか。

世界中を震え上がらせた「オーディション」や名作時代劇のリメイク「13人の刺客」などの名作を撮る一方で、哀川翔竹内力というVシネマの2台巨頭を直接対決させた「DEAD OR ALIVE」3部作や、幕末の人切り・岡田以蔵をモチーフにしたSF作品IZO」など伝説的なカルト映画も撮り、そうかと思うと「ヤッターマン」「忍たま乱太郎」「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」など、職人監督に徹して原作つきの作品を次々に実写化してみせ、さらに映画にとどまらずテレビドラマ、演劇、歌舞伎の演出から出演まで。

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とにかくジャンルを問わず「仕事は来たもん順で受ける」「映像化可能であれば、まず何でもやってみる」との公言通り、依頼があれば提示された期限・条件・予算の中でしっかり「商品」を仕上げて納品する職人監督でありながら、隙あらば商品に自分の色を混ぜて、しれっと「作品」にしてしまう。僕の中で三池崇史はそんなイメージの監督です。

そんな彼の最新作となる本作は、ヤクザとチャイニーズマフィアの抗争と裏切り、血で血を洗う暴力を描く三池崇史の得意ジャンルで、そんな中、暴力団に売られた少女と余命幾ばくもないボクサーが出会い――という物語。

どうせいつもの三池映画だろ?」と思って本作を観ると、確かに序盤で落っこちた生首がカメラ目線でとぼけた表情をするっていう、ザ・三池ワールドな悪ノリ描写はあるものの、それ以外のシーンはわりと大人しいというか、いわゆる三池印の露悪的な描写は殆どないんですよね。

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暴力を露悪的に「見せる」ことで世界に名前の売れた三池監督が、本作で「見せない」方向に舵を切ったのは、多分、本作を世界基準に合わせたからで、そう考えると登場するキャラクターも、出所したばかりの昔かたぎなヤクザの権藤内野聖陽)、策士で利己的なヤクザの加瀬染谷将太)、ヤクザと繋がって操ろうとする悪徳刑事の大伴大森南朋)、高倉健に憧れるチャイニーズマフィアのチアチー藤岡麻美)、クズのチンピラ・ヤス三浦貴大)とその情婦ジュリベッキー)、父親の作った借金のカタとして(シャブ漬けにされて)体を売らされているヒロインのモニカ/桜井ユリ(小西桜子)と、偶然ユリを救った事で騒動に巻き込まれる余命幾ばくもないボクサーで主人公のレオ窪田正孝)と、基本的にはハリウッド映画のクライム(ギャング)コメディーと同じ構成で、つまり海外の観客も感情移入して観やすい作品になってると思うのです。

まぁ、口さがない人のレビューでは、「タランティーノのパクり」とか「下手くそなタランティーノの物まね」と、わりとボロクソ書かれてるんですが、でもちょっと待ってほしい。

この映画はタランティーノとかハリウッドとか、そんなピンポイントじゃなくて、もっとこう、包括的にこのジャンルの洋画全体(のトレンド)を引用してるというか、前述したように意図的に日本で「洋画」を撮ろうと挑戦した作品に思えるんですよね。

作品のドライさが三池作品をポップにしている

露悪的な暴力や残酷描写もですが、本作ではキャラクターの「業」とか「情念」とかそういう湿気の高い三池要素を意図的にカットしているっぽく、やってること自体はいつもとそんなに変わらないんだけど、全体的にハリウッド映画のようなドライな印象ゆえに、血みどろのクライマックスシーンもそんなに不快感はなく、むしろ死ぬべき人間がちゃんと死ぬことで物語が収束していくので、ある種のカタルシスさえ感じて、なのでモニカとレオのラストシーンには「何か良いもの観た感」すらあるんですよね。

それでいて、要所要所にはしっかり三池印をぶち込んでいて――っていうか、そもそもヒロインが麻薬中毒患者ですからねw

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あとはベッキーあの使い方とか、冒頭とクライマックスの生首ギャグ被せとか、DV親父のカチャーシー踊りとか、染谷将太のブチキレツッコミとか。

そうしたエキセントリックな裏社会の住人たちの中、主役の二人はイノセントなキャラクターとして描かれていて、その辺は(僕も含め)タランティーノ脚本、トニー・スコット監督の「トゥルー・ロマンス」を連想する人も多いんじゃないでしょうか。

日本に先んじて公開された海外では、こういうイノセントな主人公が出会う恋愛コメディを表す「meet-cute(可愛い出会い)」に三池監督の苗字を合わせた「Miike meet-cute」なんて造語も誕生したようで、本作は概ね好評な様子。

そういう意味では、三池監督の挑戦?は成功したと言っていいのかもしれませんし、個人的には久しぶりにちゃんと面白いと思った三池作品でしたねー!

興味のある方は是非!!

 

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