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「で?」っていう「CLIMAX クライマックス」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、挑発的な問題作を次々と世に送り出す鬼才ギャスパー・ノエ監督最新作『CLIMAX クライマックス』ですよー!

僕は本作がギャスパー・ノエ作品初鑑賞なんですが「好き嫌いが分かれそうな監督だなー」って思いましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

エンター・ザ・ボイド』『LOVE【3D】』などのギャスパー・ノエがメガホンを取った異色作。ドラッグの入った酒を飲んだダンサーたちがトランス状態に陥る。『キングスマン』などのソフィア・ブテラらが出演し、プロのダンサーたちが共演した。ダフト・パンクザ・ローリング・ストーンズの楽曲が使用されている。(シネマトゥディより引用)

概要

ギャスパー・ノエ監督の印象

前述したように僕はギャスパー・ノエ作品ってこれまで観たことがなくて、本作の情報と共に「どうやら問題作ばかり撮っている監督らしい」という情報が入ってきたんですね。

そういう監督って個人的にはあまり得意ではないんですが、予告編が面白そうだったので「この作品は観たいなー」と思っていて、今回アマプラビデオにあったのでレンタルして観たわけです。

で、本作を観て個人的に、「この人は映画が上手い監督」という印象でした。

雪の中を血まみれの女が泣きながら逃げている姿を真上から撮影→いきなりEDロール?が流れるオープニング演出には驚いたものの、その後の22人のダンサーたちのオーディション映像→10分以上のダンスシーン、そしてその後の打ち上げパーティーでの何てことない会話などが、キャラクター個々の性格や関係性を観客に印象付けながら、後半の展開への伏線にもなっているんですよね。

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とはいえ、登場人物が多すぎるのでもちろん全員は把握出来ないんですけど、物語的にあまり重要でないキャラは比較的早めに退場させることで人員整理をして、観ているこっちが混乱しないよう考えられていました。

その辺の見せ方というか、映画としての語り口のスマートさに関心しただけに、グズグズな展開や画面酔いしそうなカメラワークが続く後半は観ていて苦痛でしたねー。

ざっくりストーリー紹介

本作を一言で言うなら「裏・ハングオーバー」です。

ハングオーバー」は泥酔から目覚めた翌日から、散々やらかした前日を振り返るという、ある種のミステリー構成ですが、本作はリアルタイムで酔っ払いの乱痴気騒ぎを延々見せられるという地獄のような映画なんですね。

舞台は1996年の冬、廃墟の校舎。

オーディションで集められた舞踊団のメンバーたちはアメリカ公演に向けての入念なリハーサルを終え打ち上げパーティーを開くんですが、メンバーの”誰か“がサングリアにLSDを混入したからさぁ大変。

麻薬入りサングリアを飲んでラリってしまったメンバーたちは、抱えていた欲求、うっ憤、不満が大爆発。

打ち上げは阿鼻叫喚の地獄に変わっていく――というストーリー。

前述したように前半部分では非常にスマートにキャラ紹介や人間関係などを語って見せたノエ監督でしたが、この後半では、打ち上げパーティーLSD入りのサングリアを飲んでどんどんラリっていくキャラクターたちを、ワンカットの群像劇風に追っていくんですね。

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ただ、ほぼ全員がラリっていて理屈の通った行動はしないので、追ったところでドラマが生まれるでもなく、前半で築き上げた形がただ崩壊していく様を延々見せられるわけです。

多分この作品で、ノエ監督は音楽とダンスとトランス状態という仕掛けを用いて、理性や倫理という皮むいた人間の本性というか獣性みたいな部分を描こうと思って、だからソフィア・ブテラ以外のキャストに役者ではなく、より肉体表現に優れたプロのダンサーを選んだんだと思うんですね。

そんな彼ら(彼女ら)のダンスは現代的だけど、古代の宗教儀式や黒ミサのようでもあり、そんな彼らのダンスを真上から撮影すると超人的な動きも相まって、彼らが別の生き物、もしくは儀式によって召喚された悪魔的な何かにも見えるんですよね。

なので、本作でのノエ監督の狙いは概ね成功していると思うんですが、観ているこっちは酔っ払いどもの乱痴気騒ぎに放り込まれた状態なので、「俺は一体何を見せられているんだ……」という気分になっちゃうっていうw

「で?」っていう

黒人ダンサーの2人組が徐々に盛り上がっていく世界一下品な会話は、「スネークマンショー」の親方と弟子がシンナーでだんだんラリっていくコントと同じ構成だし、ダンサーの後頭部に火が付いて「ギャー!」っていうシーンもほぼコントでしたしね。

太った黒人のおじさんDJが、金髪のカツラを被って青年のダンサーに自分の乳を吸わせたり、金髪の女性ダンサーが仁王立ちでおしっこしたり。

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それ以外のメンバーも泣いたり笑ったり踊ったり叫んだり。

いや、こうやって字で書くと何か楽しそうに感じるかもですが、そんな無節操無秩序な乱痴気騒ぎの様子を原色のライトの中でカメラをグルグル回しながら、超嫌な感じで撮るから画面酔いするし、ドラマ的な進展もなく延々彼らの痴態を見せ続けられるので、これはもうちょっとした苦行と言っても過言ではないです。

いや、やりたい事は何となく分かるし、それ自体は表現出来てると思うけど、観てるコッチ的には「で?」っていうw

(人間の本性を暴いた)その先に”何か“があるわけではない(ように僕には見える)ので、中途半端に放り出されたような気持ちになるっていうか。

オチのない夢の話を延々聞かされたような気持ちになりましたねー。

もしかしたらギャスパー・ノエが好きな人はそこがたまらないのかもしれませんし、他の作品を観れば印象が変わるかもですけどね。

興味のある方は是非!

 

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