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世界一ポップで可愛いナチス映画?「ジョジョラ・ビット」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは第92回アカデミー賞では6部門にノミネート、脚本賞を受賞した『ジョジョ・ラビット』ですよー!

僕は公開時「レンタルでいいかー」とスルーしてしまったんですが、その後のコロナ禍や行きつけのTSUTAYA閉店などなど、色んな要因が重なってのびのびになり、昨日、遅ればせながらアマプラビデオレンタルで観ましたよー!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

マイティ・ソー バトルロイヤル』などのタイカ・ワイティティ監督がメガホンを取り、第2次世界大戦下のドイツを舞台に描くヒューマンドラマ。ヒトラーを空想上の友人に持つ少年の日常をコミカルに映し出す。『真珠の耳飾りの少女』などのスカーレット・ヨハンソンや『スリー・ビルボード』などのサム・ロックウェルらが共演。ワイティティ監督がヒトラーを演じている。(シネマトゥデイより引用)

感想

タイカ・ワイティティ監督の面目躍如

家族や恋人など小さなコミュニティーにスポットを当てた小さな物語の向こうに広がる、大きな社会問題や歴史的事件などを間接的に描くという手法は、多くの映画、特に戦争映画ではよく使われていますが、本作「ジョジョ・ラビット」もそうした作品群の1つです。

本作で描かれているのは第二次世界大戦末期のドイツやナチスによるホロコーストを、ヒトラーに憧れる10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)の目を通して寓話的に描くという聊か変則的な作品で、「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」やMCU作品「マイティ・ソー バトルロイヤル」のタイカ・ワイティティが監督と、主人公の少年ジョジョのイマジナリーフレンドであるアドルフ・ヒットラー役を兼任しているんですね。

自らヒトラー役を演じる事に関してワイティティ監督はインタビューで、「父がマオリ、母がユダヤ人の自分に演じられるのは(有色人種とユダヤ人が嫌いな)ヒトラーにとって最大の屈辱だろう」的な事を言ったらしいです。うん確かにw

そんな自身の言葉通り、劇中では(ジョジョの妄想の)アドルフやナチスを茶化しまくっていましたねーw

その辺、もともとコメディー畑出身のワイティティ監督の面目躍如といった感じですが、題材の性質上、作品の賛否が分かれるのは致し方なしかもしれません。

ざっくりストーリー紹介

10歳の主人公ジョジョの目線に合わせたカメラワークでスタートするアバン。
鏡に向かって弱気になっている自分を鼓舞する彼の後ろから、軍服の男(の足が)カットイン。
二人の会話と特徴的なビジュアルから、男はアドルフ・ヒトラーでありジョジョのイマジナリーフレンドであることが分かります。

そして、“アドルフ”に励まされテンションの上がったジョジョは家を飛び出し、町ゆく大人たちに挨拶をしながら目的地に走っていくっていう、ある意味非常に微笑ましい情景なんですが、そんなジョジョの挨拶は「ハイル・ヒットラー」なんですよね。

まぁ、あまりに連呼しすぎて、ちゃんと言えてないあたりが笑いどころになってるんですけどもw

で、ここでナチスヒトラーを支持する若者たちの姿を(多分)ライブラリー映像をコラージュしたOPのテーマ曲はビートルズの「I Want To Hold Your Hand(抱きしめたい)」(ドイツ語バージョン)

つまり、ナチスの登場を熱狂的に支持した当時の国民(若者)をビートルズファンに重ねるという痛烈な皮肉をここで一発かましてるわけですね。

そんなビートルズの曲に乗ってジョジョが向かったのがヒトラーユーゲントのキャンプ。

ヒトラーユーゲントとは、10歳から18歳の青少年が加入するナチス党青少年教化組織で、10歳になったジョジョは、この日からヒトラーユーゲントのキャンプで行われる軍事訓練に親友のヨーキー(アーチー・イェーツ)と参加するわけです。

そんな彼らを指導するのは、戦場で片目を失いキャンプ担当になったという通称「キャプテンK」ことクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)。

ドイツの劣勢ぶりを知り近い将来敗北することが分かっている彼は、投げやりながらもとりあえず職務としてキャプテン役をこなしているという感じ。

初日の座学では、「ユダヤ人は魚と交尾をするからとても臭い」「頭には角が、口には牙が生えている」「芽キャベツの匂い」などと教え込まれるジョジョ達。

ここでは、子供たちに非科学的かつとんちんかんなデマ(とうかヘイト)を教え込むナチを批判する一方で、その内容のあまりの滑稽さを笑いにしてるわけですが、もう一つ、ヘイトや差別の根本的な構造をサクッと見せているんですね。

つまり、子供にヘイトを教えるのは大人たちだと。

ナチスヒトラー)が行ってきた優生思想やホロコーストを通して、排他主義的なヘイトがまかり通る現代社会への批判と警鐘こそが本作のメインテーマなのです。

そして翌日、上級生?に目をつけられたジョジョはウサギの首を折って殺すよう命令されますが、出来ずにウサギを逃がそうとしたことで「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名で囃し立てられ、その場を逃げ出します。

1人落ち込むジョジョの前に現れたのは、またまた妄想のアドルフ。
ヒトラーに鼓舞されたジョジョは、自分が男の中の男であることを証明すべく手榴弾の訓練に飛び込んでいきーーというストーリー。

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ヒトラーに父性を求める少年

ではなぜジョジョが、アイドルのようにヒトラーを崇拝するようになったかと言えば(もちろんナチスの教育もあるでしょうが)父親の不在から。
その寂しさを埋めるために、父性の象徴でもありイマジナリーフレンドでもある“アドルフ“を生み出してしまったわけですね。

またお姉さんのインゲもインフルエンザで亡くなっていて、ジョジョはお母さんのロージー(スカーレット・ヨハンソン)と二人暮らしなのです。

彼女はジョジョを「私の子ライオン」と呼び、まだ自分では結べないジョジョの靴ひもを結んでやり、ナチスヒトラーに傾倒していく彼に悩みながらも、彼の無邪気な”ファンタジーとしてのナチスを頭から否定することはしないし、大怪我を追って家から出ることを怖がる息子の背中を押して一緒に外出する優しいお母さんですが、その一方でユダヤ人を匿い町中で吊るし首にされた人々から目を背けようとするジョジョに「しっかり見なさい」と目を背けることを許さず、「彼らはするべきことをした」と言い切る強さも併せ持っています。

この一言で、劇中での彼女のスタンスも分かりますよね。

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そんな母親に守られ、空想力豊かなジョジョの見るドイツはとてもカラフルですが、物語が進むにつれ色あせていく――つまり現実が空想を侵食していくわけですが、同時にそれはジョジョの成長ともリンクしているんですよね。

こんな風に書くと、メッセージ性の高い重たい映画と思われてしまうかもですが、決してそんな事はありません。だって、基本的にはコメディーですしね。

ただ、前述したようにナチスドイツやホロコーストを描くにあたって、ナチの残酷さ、非道さという”リアル”を描くべき的に考えている人もいるでしょうから、本作をコメディー仕立てにしたことは、評価は分かれるだろうと思います。

あえて10歳の少年に焦点を絞ることで、そうした目を覆いたくなる現実のアレコレはかなりボヤけていますからね。

ただ、本作のメインテーマが、当時のナチズムのようなヘイトが堂々とまかり通る現代社会への警鐘である以上、笑いとヒューマニズムを塗すことで物語を飲み込みやすくするという手法は、よりライトな(普段映画を観ない)層に本作を届けるという意味では有効だと思うし、イマドキの映画にもかかわらず108分と非常にコンパクトに物語をまとめているのも好感が持てましたよ。

それに、ストーリーにキャラクターの魅力、音楽の使い方や前のエピソードから韻を踏むように有機的に後ろのエピソードへと繋がることで物語にドライブがかけていくのも、さすがワイティティ監督だと唸りましたねー。

あ、あと、ジョジョの親友ヨーキーが超絶可愛かったですw

興味のある方は是非!

 

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