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ワンカットのためのワンカット「1917 命をかけた伝令」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは巨匠サム・メンデス監督が祖父から聞いた戦争体験を基に制作した『1917 命をかけた伝令』ですよー!

アカデミー賞で三冠に輝いた作品でもあるし、「007 スカイホール」のサム・メンデス監督作でもあるので、観よう観ようと思いながらも中々気分が乗らなくて、遅ればせながら先日やっとアマプラで観ました。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

第1次世界大戦を舞台にした戦争ドラマ。戦地に赴いたイギリス兵士二人が重要な任務を命じられ、たった二人で最前線に赴く物語を全編を通してワンカットに見える映像で映し出す。メガホンを取るのは『アメリカン・ビューティー』などのサム・メンデス。『マローボーン家の掟』などのジョージ・マッケイ、『リピーテッド』などのディーン=チャールズ・チャップマン、『ドクター・ストレンジ』などのベネディクト・カンバーバッチらが出演する。全編が一人の兵士の1日としてつながって見えることで、臨場感と緊張感が最後まで途切れない。(シネマトゥディより引用)

感想

ワンカット”風“撮影で戦地最前線を追体験

第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランスが本作の舞台。
ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙する中、上官に呼び出されたイギリス軍兵士のブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)とスコフィールド(ジョージ・マッケイ)は、前線から退却を開始したドイツ軍に大規模な追撃作戦を行おうとしているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる伝令を命じられます。

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ドイツ軍の退却は、大規模な砲兵隊が待ち構える陣地に連合軍をおびき出すための戦略的撤退、つまりは待ち伏せ作戦でマッケンジー大佐はその事実を知らないんですね。

しかも、ドイツ軍によって電話線は全て切られて前線との連絡が取れないため、伝令をもって自陣後衛部隊から最前線までをたった2人(しかも徒歩)で、行かなくてはならないという任務を任された若い二人が、戦地を突っ切って目的地に向かう――というストーリー。

そんな二人が体験する地獄めぐりを、ワンカット“風”撮影によって臨場感と没入感たっぷりに観客が追体験するという趣向なのです。

映像は確かに凄いが……

そんな本作の撮影監督は、「007 スカイフォール 」でもメンデス監督とタッグを組んだロジャー・ディーキンスですからね。そりゃぁ、映像は凄いですよ。

アリの巣のように張り巡らされた、狭い塹壕の中でひしめく兵隊たちを押しのけながら進む二人をハンディーカメラで後ろから追いかけ、少し開けたポイントで前に回って今度は二人の表情を撮影したり、敵襲から逃げるため敵味方も分からないような死体の山を乗り越える様をすぐ間近で撮影したり。

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そうかと思えば、遮る物のない銃弾飛び交う開けた平地を突っ走る二人と並走するように撮影して――と、観客自身が主人公の二人と共に戦地を進む第三の兵士になったようなカメラワークで物語が進むので、その臨場感や緊張感は半端ないし、もしこれを映画館の大画面で観てたら圧倒されてたと思うんですね。

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ただ、本作はこのワンカット”風“撮影という手法に、作劇上の「必然性」を感じないんですよね。

ワンカット撮影は映像を観れば誰でもハッキリそれと分かる手法で、カットを割らない分物語の「時間」の流れを観客もリアルタイムで共有出来る、ある種の舞台演劇的楽しみ方が出来る一方で、観る側はどうしてもワンカットという手法に作劇上の意図や意味を探してしまうと思うんですよね。

ところが本作のワンカットには、映像的な臨場感や没入感はあっても作劇的な意味はなく、ワンカットにしなくても物語は成立する――というか、なんなら普通にカットを割った方が、ワンカット撮影という縛りがない分、観客は違和感なく物語に没頭できたのでは?とすら思ってしまうし、本作の場合、ワンカットの為のワンカットになってる感じがするんですよねー。(ワンカット撮影という手法ありきで作られている)

フェティシズム感じられない問題

さらに映像の方も、臨場感、緊張感、没入感は凄いんだけど、いかんせんどの映像も綺麗すぎて引っ掛かりがないというか。

例えば二人が敵軍の銃撃を避けるため、爆撃跡の水たまりに飛び込むとそこには敵味方も分からない死体が積みあがっていて――みたいなシーンがあるんですが、そこで二人が感じる嫌悪感?みたいなものを表現するカットがない(死体の匂いに思わずえづくとか嘔吐するとか)ので、観てるこっちも戦争の悲惨さや残酷さみたいなものをあまり感じることなくサラッと観れちゃうんですよね。

これが、サム・メンデス監督の資質の問題なのか、ロジャー・ディーキンスの撮影の問題なのか、ワンカットだからかは分かりませんが、例えば、スピルバーグや、メルギブや、バーホーベンだったら、人間が肉塊に変わる瞬間を嬉々として見せてくるに違いないんですが、メンデスが見せるのは肉塊になったあとの死体だけだし、その見せ方も悪い意味で「お上品」すぎて、(物語に関係ないけど)戦場の匂いや痛み、武器や軍服、その他もろもろ何でもいいですけど、メンデスならではのフェティシズムが全然入ってないので、だから観てる最中や観終わった直後は「凄い映像観た感」があるけど、多分1か月も経てば観たことも忘れちゃうような凡庸な戦争映画になってしまったと思うんですよね。

まぁ、僕がちゃんと読み取れてないだけの部分も沢山あるのかもしれませんが。

興味のある方は是非!!

 

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