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写らなければ意味がない「狂武蔵」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アクション俳優、現代忍者、ユーチューバー、アクション監督などなど、様々な顔を持つ坂口拓(TAK∴)主演で撮影されるも、大人の事情で未完成のままお蔵入り。

クラウドファンディングなどでしい金を集めながら7年の時を経てついに完成させた時代劇『狂武蔵』(くるいむさし)ですよー!

なんと77分間400人切りをワンカットで撮影したという、色々規格外なチャンバラ映画です。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『RE:BORN リボーン』などのTAK∴こと坂口拓が主演を務め、剣豪・宮本武蔵と吉岡一門との決闘を描いたアクション時代劇。撮影後長らく未完成状態だった作品に追加撮影や再編集を行い、武蔵にふんした坂口が一人で400人の相手に挑む壮絶な死闘が、77分ワンシーン、ワンカットで展開する。『GANTZ』シリーズなどのアクション監督を担当してきた下村勇二がメガホンを取り、園子温監督が原案協力として参加。『キングダム』で坂口と共演した山崎賢人のほか、斎藤洋介、樋浦勉らが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

「狂武蔵」が劇場公開されるまで

僕は坂口拓という人はYouTubeで初めて知ったと思い込んでいたんですが、彼が主演の「VERSUS -ヴァーサス-」を始め、わりと僕が今まで観てきた映画に出演していることをWikipediaで知りました。

ただ、僕が彼を「坂口拓」としてハッキリ意識したのはやはりYouTubeで、彼が現代忍者として肩甲骨を使って戦う戦闘術「ウェイブ」マスターとして活躍していたのを、自粛期間中にたまたま見て興味を持ったんですね。

で、そんな彼が元々は役者だったこと、70分以上のチャンバラアクションシーンをワンカット撮影したチャンバラ映画が未完のままお蔵入りしていること。

そしてクラウドファンディングなどで資金を集め、同スタッフでキャストに山﨑賢人や斎藤洋介などを迎えて追撮影をして7年ぶりに完成、全国公開に至ったのを彼のYouTubeで知ったのです。
まぁ、おらが町の映画館では公開されませんでしたが。

ちなみにこの映画、吉岡家当主・吉岡清十郎と弟の吉岡伝七郎が相次いで武蔵との決闘に敗れメンツを失った吉岡一門が、当時まだ子供だった吉岡亦七郎を担ぎ出す形で、数百人がかりで武蔵を迎え撃とうとした「一乗寺下り松の決闘」のチャンバラシーンだけで構成されています。

400人(実際には数十人のキャストが何度も再登場)の相手と坂口拓アドリブで斬りあう様子を、1台のカメラで77分追い続けるという、とても正気とは思えない実験作だったんですね。

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そこに山﨑賢人や斎藤洋介らを迎え追加撮影した冒頭とラストシーンを付け加えて完成したのが本作で、つまりはチャンバラシーン以外のドラマパートはほぼゼロなのです。

まぁ、その事は僕も事前に知っていたし、こっちもワンカット400人斬りが観たくて本作を観るんだから、とにかくチャンバラシーンさえ面白ければ個人的には全く文句はなかったんですが―――。

まぁ、結論から言うと、残念ながら個人的にはまったくハマらなかったですねー。

写らなければ意味がない

物語は大勢の敵が待つ一乗寺下り松で、武蔵が敵の大将である吉岡亦七郎に奇襲を仕掛け仕留めるところからスタート。
そこから70分以上に渡るワンカットのチャンバラシーンへと続くわけですが、前述した通りこの殺陣は、敵役と坂口拓がアドリブで斬りあうわけですね。

もちろんそれ自体はとんでもない挑戦だし、やり切っただけで凄いです。

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でも、相手役は一応400人とは銘打ってるけど、どう見ても50人いるかいないかくらいの人数で、そんな彼らが武蔵に斬られるとカメラの外にハケて、しれっと別人として戻ってくるわけです。
ただ、それも1度や2度じゃないですからね。顔は出来るだけ写さないよう気は付けてるけど、それでも何度も同じ人が出入りしてれば「あ、コイツまた出てきた」って覚えちゃうじゃないですか。

で、そんなゾンビ剣士どもを武蔵はひたすら斬り続けるわけですが、この時のムーブ(動き)が大体4パターンくらいしかないし、斬られた相手は何度でもしれっと復活するのでまったく「画替わり」しないわけです。

もう、ずーーーーーーーーーーーーーーーっと同じ映像が続く。

正直、観ながら何度も意識を失いましたよ。
で、( ゚д゚)ハッ!っと意識を取り戻してもやっぱり同じ映像ですからねw
これは流石に辛い。

おまけに舞台の地理や的の人数。その配置と武蔵の位置も分からないし、武蔵が何の目的でどこに向かってて、決着方法など、このアクションシーンのルールとゴールが全く分からない。
いや、その場にいる吉岡一門を皆殺しにすれば終わりなのは分かってるけど、でも死んだハズの奴らが次々蘇ってくるじゃないですか。

で、殺陣自体も、剣術というよりはむしろ剣道に近いというか、刀で「斬る」というより「叩く」という感じなんですよね。
で、この殺陣では刀を敵の体に当ててるわけですが、刃物が当たってるのに斬れてる描写がほぼないので、「え、逆刃刀なの!?」って思っちゃう。
普通に刀で斬るような振付でカットを割って良い角度で撮れば、実際に斬れてなくてもちゃんと斬られたように見えるハズだけど、本作では前述したように剣術というより剣道みたいな叩き合いで、もしかしたらそれがリアルな斬りあいなのかもだけど、そうなると余計にカメラワークやカット割りを考えないと、観客はこのアクションに違和感を覚えると思うんですよね。

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前述したように肩甲骨の動きを活かした近接戦闘術の使い手でもある、坂口拓さんの体力やアクション俳優としてのスキルが高いのは周知だし、自身が主演を張るアクション映画では、より実践的でリアル志向のオリジナリティーのあるアクションを目指す志の高さも素晴らしいと思います。
ただ、少なくとも本作に関して言えば、やってることは凄いけどアクション映画ではないなーと。

どんなに凄い動きや技も、それを映像で見せないと意味がないわけで。

そのための振り付けだし(カット割りも含めた)カメラワークじゃないですか。

なので、ラストのアクションシーンは最高だったし、「全編これでやってくれよー!」って思っちゃいましたねー。

でもまぁ、そもそも本作をアクション映画だと思って観るのが間違いで、例えば極真空手の100人組手みたいな、主演の坂口拓がどんどん追い込まれていく様子を追った、ある種のドキュメンタリー映画として観るのが正しいんでしょうね。きっと。

興味のある方は是非!

 

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