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映像特典のメイキングになるハズが……「ロスト・イン・ラ・マンチャ」(2001)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、鬼才、テリー・ギリアム監督が制作を熱望した作品「ドン・キホーテを殺した男」の準備から挫折までを追ったドキュメンタリー『ロスト・イン・ラマンチャ』ですよー!

ギリアムは19年間の間に9回「ドン・キホーテ~」の映画化に挑戦しては失敗してて、公式サイトでは映画史に刻まれる呪われた企画と銘打たれてるらしいんですが、本作はその第1回目の挫折の様子を追ったドキュメンタリー作品です。

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画像出展元URL:https://www.amazon.co.jp/

概要

テリー・ギリアム監督が次回作「ドン・キホーテを殺した男」の準備に取り掛かったとき、キース・フルトンルイス・ペペはギリアム監督からメイキングの製作を依頼される。やがて2000年秋、ヨーロッパ資本としてはかつてない規模の本作はついに主演のジョニー・デップをはじめヴァネッサ・パラディジャン・ロシュフォールら出演者が顔を揃え撮影を開始した。ところが、撮影は上空を飛び交うNATOの戦闘機の騒音に邪魔されてしまう。さらに、ロシュフォールの病気降板、豪雨によるセットの崩壊という事態が追い討ちを掛けるのだった…。(allcinema ONLINE より引用)

感想

テリー・ギリアムとは

テリー・ギリアムは大学卒業後、広告代理店を経て雑誌「ヘルプ!」の編集者に。
その傍らコミック・ストリップ(新聞の1コマ漫画)家やアニメーターとしても活動を始め、1960年代半ばにはイギリスに渡ってイラストレーターとして活躍。
やがてイギリスの伝説的コントグループモンティ・パイソン」唯一のアメリカ人メンバーとして出演の他、主にアニメーションを担当しています。

1975年には、映画「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」で(テリー・ジョーンズと共同監督)商業映画デビュー。
1977年、初の単独監督作「ジャバーウォッキー」を手掛け、以降「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ 」「ゼロの未来 」など、監督としては比較的寡作ながら、独特な世界観の前衛的なビジュアルやストーリーで、映画マニアの間ではカリスマ的人気を誇る監督なんですね。

しかし、そんなファンとハリウッドの評価は比例せず、ギリアムの独創的な発想は他者に理解されづらく、ゆえに思うように映画を撮れない事も多いらしいんですね。
特に、口先だけの無能なプロデューサー・トーマス・シューリーと組んでしまったことで当初の予算2,000万ドルが最終的には4,600万ドル強に膨れ上がり、史上最大の失敗作と言われた「バロン」(1989)の後、手に負えない監督の烙印を押されたギリアムは新たな企画の立ち上げは不可能に近くなってしまったんですね。

映像特典のメイキングになるハズが……

そんな中企画された「ドン・キホーテ~」はハリウッドでは企画が通らず、欧州で撮影することになったんだとか。
しかし予算は3120万ドルとハリウッド資本とは比べ物にならないほど低く、撮影前の準備段階から作品には暗雲が立ち込めます。

それでも主演のトビー役にジョニー・デップ、ヒロイン役にヴァネッサ・パラディ、そしてドン・キホーテ役には名優ジャン・ロシュフォールを迎え、何とかスペインマドリードでの撮影開始に漕ぎつけたものの、撮影場所がNATOの軍事演習場のすぐ近くだったことから上空をF-16 が飛び回り、翌日には予期せぬ大雨によって現場が洪水に。セットや機材が流されるだけでなく、洪水によって景観や色合いも変わってしまったんですね。
さらに、ジャン・ロシュフォールの腰痛が悪化。椎間板ヘルニアの診断が下され撮影は不可能、映画は完全に頓挫してしまったのです。

本作では最初はノリノリだったギリアムが、度重なるアクシデントで徐々に追い詰められ、そしてとうとう心が折れるまでの様子を追っているわけですが、そもそもこのフィルムは、「ドン・キホーテを殺した男(The Man Who Killed Don Quixote)」のDVDやブルーレイに入る映像特典のメイキングフィルム用に撮影していたフィルムなので、正直事情を知らない人が観ても「何のこっちゃ?」な内容でしてね。

結果、テリー・ギリアムの執念によって2019年「The Man Who Killed Don Quixote(邦題:テリー・ギリアムドン・キホーテ)」が完成、公開されたことでこの企画を巡る一連の騒動と、その様子を記録した本作が再注目を浴びる事になるわけですが、本作単体ではドキュメンタリーとしてはいかにも物足りなく、事情を知るコアなファンしかみないマニアックな珍品止まりだったと思うんですよね。

もっと当時の関係者へのインタビューや後の様子を追加撮影するなどして、一連の騒動を立体的に描き出し、事情を知らない人でも本作を観れば事の一部始終を理解できるようなドキュメンタリーにしていれば、映画史的傑作ドキュメンタリーになっていたかも

しれなかっただけに、単純に残念だと思いましたねー。

まぁ、「テリー・ギリアムドン・キホーテ」の方も評価はかなり分かれていると聞くので、本作と合わせて観て丁度いい感じなのかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

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