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新時代への願いを込めて「ブラック・ウィドウ」(2021)

ぷらすです。

上手くタイミングが合わず公開から1週間遅れになってしまいましたが、やっと観てきましたよ!
MCU24作目にしてフェーズ4の1作目――になるハズだった『ブラック・ウィドウ』をね!いやー、この2年間、待ちに待ってやっと公開されただけに、本当に感無量でしたねー。

というわけで、今回はまだ劇場公開されたばかりの作品なので、出来る限り本質的なネタバレしないよう気を付けて感想を書きますが、内容について一切触れてほしくないっていう人は、先に劇場で本作を観た後に、この感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

すご腕の暗殺者で世界最高のスパイ、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフが主人公のアクション。超人的な身体能力と、類いまれな美貌を持つヒロインの秘密をひもとく。『アベンジャーズ』シリーズなどでブラック・ウィドウを演じてきたスカーレット・ヨハンソンが続投し、『女王陛下のお気に入り』などのレイチェル・ワイズらが共演。『さよなら、アドルフ』などのケイト・ショートランドがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

2年間、待ちに待った新作がついに公開

ブラック・ウィドウ」は、当初2020年5月1日に日米同時公開の予定で、僕も楽しみにしていたわけですが、ご存じの通り世界的コロナパンデミックによって、都合3度公開が延期され、当初の予定ではMCUフェーズ4の1作目として公開されるハズが、ディズニープラスで配信されるドラマ「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」に先を越される形になり、さらに6月9日から配信されている「ロキ」の途中で公開される形に。

しかも、その間にも都市圏では緊急事態宣言が繰り返され、今回だって本当に公開されるのかビクビクだったわけです。

しかし7月8日、本作は何とか無事公開され、そして今日、僕もやっと観ることができたんですねー。

もうね、ぶっちゃけ内容がどうこうっていうより、久しぶりにスクリーンで見るマーベルのロゴ・イントロが出た瞬間、思わず泣きそうになってしまいましたよ。

ザックリストーリー紹介

本作はMCUシリーズ24作目の作品で、本来はフェーズ4の1作目になるハズだった作品です。
内容は「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」と「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の間を埋める物語で、これまでしっかり語られる事のなかったブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフスカーレット・ヨハンソン)の過去に迫る内容になっているんですね。

まぁ、過去作品の中でもナターシャが旧ソ連KGB部門の一つ、デパートメントXが運営し少女たちを暗殺者・スパイにするべく訓練する「レッドルーム」の出身であることや、元々暗殺者として多くの人々を手にかけていたことは断片的に明かされていますけどね。

で、本作はアベンジャーズの仲間割れで逃亡犯になってしまったナターシャのもとに、”妹”のエレーナ(フローレンス・ピュー)が送りつけてきたケースを狙った敵が急襲するところから物語がスタート。

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色々あって責任者ドレイコフレイ・ウィンストン)を倒しレッドルームを壊滅させるべく、ナターシャとエレーナは“父“のアレクセイ(デヴィッド・ハーバー)と、”母”のメリーナレイチェル・ワイズ)を訪ねる――というストーリー。

そこにド派手なアクションと、“スパイ映画”らしいスリルやどんでん返しがふんだんに盛り込まれたMCUらしいエンターテイメント作品になっているんですね。

その一方で、これまで断片的にしか描かれてこなかった「レッドルーム」や責任者のドレイコフが如何に残酷で恐ろしく醜悪な敵なのかもしっかり描いているのです。

フェーズ3最終作ではなくフェーズ4の1作目だった理由

本作はいわば「アベンジャーズ/エンドゲーム」での、ナターシャがなぜあの決断をしたのかの理由を描く物語であり、エンドゲームでは入りきらなかったブラック・ウィドウの、アベンジャーズ最後の花道を飾る作品になります。

だとしたら、フェーズ3最終作は「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」ではなく本作でよかったのでは?って思うかもですが、観た人なら本作をフェーズ3の最後ではなくフェーズ4の1作目にしようとした制作陣の意図が伝わると思うんですよね。

本作はテーマ的に「キャプテン・マーベル」にかなり近いというか、軽くネタバレすると、モラハラ・セクハラ・パワハラなどのハラスメントから女性が解放されるという内容なんですね。

しかもキャプテン・マーベルでは、ある程度抽象化して描いていたハラスメントのリアリティーや、悪質さ、醜悪さをより具体性をもってハッキリと描いているのです。

例えば女性や少女の誘拐・レイプや、子供たちの人身売買、大人から子供への性的搾取や洗脳などなど、(多分)実際の様々な事件をモデルにしたであろう悪質な行為をこのドレイコフや「レッドルーム」は長年に渡って行っていて、ナターシャ、エレーナ、母親のメリーナは、全員その被害者でもあるわけです。

そして、もっとざっくり言うと「レッドルーム」は男性中心の社会構造と、差別される女性(マイノリティー)の象徴であり、“ブラック・ウィドウたち“の解放にはそのまま、これから訪れるであろう新時代がそうであってほしいという願いが込められているのだと思います。
だから本作は、3章の「最後」ではなく4章の「最初」に据えられたわけですね。

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ただ、ですよ。

コロナによる延期に次ぐ延期や、フェーズ4の公開順が変わってしまったことで、制作陣が本作に込めた(であろう)それらのメッセージが薄まってしまった感は否めないって思ったし、それは別に作り手側の所為ではないだけに、何とももどかしい気持ちなんですよね。おのれコロナめ。

ロジャームーア版007オマージュ?

あと、本作はブラック・ウィドウが主役の作品ということで、スパイ映画的な展開も満載なんですが、ここで言うスパイ映画は「裏切りのサーカス」などのシリアス路線ではなく、ユーセ コーイチ (id:ko_iti301083)さんも評の中で書かれてましたが「ムーンレイカー」など、ロジャー・ムーア版ボンドの荒唐無稽なスパイ映画なんですよね。

まぁ、アベンジャーズMCUの世界観には、リアル路線よりもそちらの荒唐無稽なテイストの方が合うという判断なんだろうと思います。

 だからなのか、本作に仕掛けられている伏線やどんでん返しなどは、正直あまり上手くはないんですよね。
それよりもむしろ、劇中でのアレクセイとエレーナ、メリーナとナターシャ、それぞれのキャラや関係性に力を入れているような感じ。

演じる役者さんたちもいいんですよね。

バカで単純で無神経で自己中心的だけど憎めないアレクセイを演じたデヴィッド・ハーバーは映画やドラマで幅広く活躍しているし、一見優しい母親ながら科学者としてどこか冷めた怖さもあるメリーナ役のレイチェル・ワイズも数多くの作品に出演、「女王陛下のお気に入り」(2018)のサラ・チャーチル役では、英米アカデミー賞にノミネートされています。

で、個人的に特に良かったのはエレーナ役のフローレンス・ピューと、ドレイコフ役のレイ・ウィンストン

フローレンス・ピューと言えば、「ミッドサマー」のダニー役を思い浮かべる人も多いかもですが、本作での彼女は常時不貞腐れたような、あのむすくれ顔がメッチャいいんですよねー! あと、ナターシャの着地をイジるのには笑いましたよw さすが妹w

そしてドレイコフ役のレイ・ウィンストンは、ずんぐりむっくりで黒縁メガネが似合う、ぱっと見人の好さそうなオッサンなんですが、クライマックスでのナターシャとのシーンでは、もうマ・ジ・で「うわ、グーで殴ってやりたい!」ってくらいメッチャムカつくんですよ! 近年のMCUでは珍しい、純粋な悪役って感じ。

で、このドレイコフは別に能力者でも超人でもないただの爺さんなんですが、前述したように本作では旧態依然とした悪しき男社会・父権制度の象徴であり、ある種アレクセイの鏡合わせ的な存在であり、ウィリアム・ハート演じるロス長官との対になるキャラクターなのだと思います。要するに老害ってことですね。

あ、あと、ブダペストでナターシャとエレーナが出会うシークエンスで、ナターシャの着替えシーンがあるんですが、上着を脱いだ彼女の背中が青あざだらけなんですよね。
サラッと流されちゃうシーンですが、ここまでMCU作品を観てきた人にとっては、このシーンこそが本作の白眉だと思いましたねー。

もしも順調に公開されていたら、本作は一連のMCU作品の中でも傑作の一本に数えられていたと思うくらい個人的には面白かったし、それだけに、コロナ騒動で2年も宙づりになっていた所為で、物語としての”鮮度”が落ちてしまったり製作者の想いが薄まってしまったのは、本当に不運としか言いようがなく、個人的にも残念でなりません。

何度も言いますが、本作はスカヨハのブラック・ウィドウ最後の花道なので、出来れば映画館の大画面、大音量で鑑賞して欲しいと思います。

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画像出展元URL:http://eiga.com

興味のある方は是非!!

 

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