今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

現代の西部劇でありイージーライダーの続編でもあり「ノマドランド」(2021)

ぷらすです。
今回ご紹介するのは、今年の冬に公開予定のマーベル映画「エターナルズ」の監督作品でもあり、また今年のアカデミー賞では監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督作『ノマドランド』ですよー!!
Amazonレンタルで視聴。前作「ザ・ライダー」は未見の状態。
今年3月公開ということで、ある程度の内容や事情は把握して見たんだけど、最初に感じたのは「映画館で観るべきだった」という後悔でしたねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/93570/photo/c56531eb2f7ab438/640.jpg?1611882573

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション小説を原作に、「ノマド(遊牧民)」と呼ばれる車上生活者の生きざまを描いたロードムービー金融危機により全てを失いノマドになった女性が、生きる希望を求めて放浪の旅を続ける。オスカー女優フランシスマクドーマンドが主人公を演じ、『グッドナイト&グッドラック』などのデヴィッド・ストラザーンをはじめ、実際にノマドとして生活する人たちが出演。『ザ・ライダー』などのクロエ・ジャオがメガホンを取り、第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞を獲得した。(シネマトゥディより引用)

感想

「物語」というよりはセミドキュメンタリー

本作では主人公のファーンを演じるフランシス・マクドーマンドと、ファーンに想いを寄せるデイブを演じるデヴィッド・ストラザーン以外、本当にノマド生活を送る人たちをキャストに起用しているそうです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/93570/photo/dfd890fa10f1a8b1/640.jpg?1615511437

画像出展元URL:http://eiga.com  /実際にノマド生活を送るリンダ・メイ

それはクロエ監督の前作「ザ・ライダー」とほぼ同じ手法らしく、「ザ・ライダー」では主人公を始め、登場人物は役者さんではなく本人らしいんですね。

つまり本作は、役者さんの演技でストーリーを見せるタイプの作品ではなく、映像で物語を語るタイプの作品であり、彼ら、彼女らの背後に映る雄大な自然もまた本作の重要なファクターなのです。
という事を踏まえると、自室の36インチテレビの画面では、本作本来の魅力がかなり目減りしてしまうのは間違いないんですよねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/93570/photo/6ef8720bc4eee14f/640.jpg?1611882573

画像出展元URL:http://eiga.com

画面に映し出される雄大で美しい自然の中で、開拓時代を思わせる放浪生活を送るノマドの人々。
本作の、そうした絵画のように美しい画は、映画館の大画面で観てこそ100%の魅力が伝わる様に設計されていたんですね。

現代の西部劇であり「イージーライダー」の続編でもあり

本作に登場するノマドの人たちは総じて高齢者であり、日本で言えば団塊の世代
つまり、美しい理想の世界と自由を求めたヒッピー(フラワーチルドレン)世代なんじゃないかと思います。

しかしながら、夢破れて社会の一部に収まったハズの彼ら彼女らが老年を迎えた今、様々な事情で社会から放り出され、幌馬車のようなRV車で季節労働をしながら国中を放浪するとは、何とも皮肉な話だと思わずにいられない。
しかもその原因がかの悪名高きリーマンショックですからね。
放浪はしないまでも家を失いトレーラー生活の人も沢山いると聞くし、もっと酷い生活をしたり、全てを失った人々も。
にもかかわらず、リーマンショックの責任者は莫大な年金をもらって悠々自適の老後とか、もう、ふざけるのもいい加減にしろ!って話ですよ。
主人公のファーンが住んでいたネバダ州の企業城下町エンパイアの町は企業の倒産によって郵便番号までなくなり、住人はみんな町を追い出されたわけですね。
で、夫を亡くしていたファーンは、自ら改造したオンボロRV車に最低限の荷物と夫との思い出の品を積み込んでノマド生活を始めるのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/93570/photo/944ab30b095c1cf7/640.jpg?1599544937

画像出展元URL:http://eiga.com

これって何もアメリカだけの話ではなく、日本だってリーマンショックの余波を喰らって以降めっちゃ不景気状態が続いてるし、毎年のように起こる自然災害に加え、コロナ禍によって事態は悪化の一途で明るい未来が見えない。
なので、僕くらいの年齢になると本作のノマドたちは近い未来の自分の姿かもしれないと思ってしまうんですよね。とても他人事だとは割り切れない。

劇中、自由を謳歌する誇り高きノマドたちの後ろに迫る「老い」と「自己責任」という名の不安に、どうしても目が行ってしまって心の奥がザワザワするというか。

僕は原作は未読だけど、内容的には彼ら高齢のノマドを安い賃金で使い搾取するAmazonを始めとしたアメリカの大企業や政府への問題提起がメインのノンフィクションらしいんですね。

ただ、本作はそんな原作とは少々趣を変え、ファーンの目を通して見聞きしたノマドの人たちの自由で誇り高き暮らしぶりを、壮大な自然をバックに(その厳しさも含めて)抒情的に描いているように見えました。
それは決して原作の意向を無視しているわけではなく、ノマドという生き方を送る人々に対する最大限の敬意なのだと思いましました。

冒頭、バッタリ出会った臨時教師時代の教え子に「先生はホームレスになったの?」と聞かれ、「ホームレスではなくハウスレス。全然違うのよ」と答えたファーンが、後半で大きな”ホーム”を手に入れる。
ストーリーを要約すると、本作はそういう物語なんですよね。

興味のある方は是非!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング