今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

ラナ・ウォシャウスキーの私小説的作品「マトリックス:レザレクションズ」(2021)


あけましておめでとうございます。
ぷらすです。

年が明けて2022年第一発目は、あのマトリックスシリーズ18年ぶりの新作『マトリックス:レザレクションズ』ですよー!

ファンの間では賛否両論と聞いてたので覚悟して観たんですが、いやいや、個人的には普通に面白かったし最初から最後までニコニコ楽しめましたよ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92522/photo/e60fefae3f3b3190.jpg?1637895931

画像出展元URL:http://eiga.com

概要

斬新なアクションや映像表現でポップカルチャーに影響を与えた『マトリックス』シリーズのその先を描くSFアクション。再び、仮想世界=マトリックスから覚醒した主人公ネオが、マトリックスにとらわれているトリニティーを救うため、新たな戦いに身を投じる。主演と監督はシリーズ過去作と同様にキアヌ・リーヴスとラナ・ウォシャウスキーが担当。キャリー=アン・モスやジェイダ・ピンケット=スミスといった再登場のキャストのほか、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世やクリスティナ・リッチらが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

過去作を復習しないと楽しめない?

本作公開時に、ネット上で色んな人の感想を読んでたんですが、「第1作目だけ知ってれば楽しめる」という宣伝に対し多くの人が「嘘つけ!2・3作目のネタも山ほど出てくるじゃないか!」と怒ってましてね。

で「しっかり楽しみたいなら前3作を復習した方がいい」と。

一方、僕は1作目の「マトリックス」公開時には既に大人で、なので、そもそもマトリックス世代の人ほどこのシリーズに思い入れがない
それでも第1作は面白いと思ったんですが、2・3作目と進むうちに段々内容が分からなくなってきて、なので今回も2・3作目の物語は完全に忘れていて、第1作も、かなりうろ覚えな状態で本作を観に行ったんですね。

確かに、どう考えても前三作の内容を知ってる前提で物語が進むし、2・3作のオマージュシーンも沢山出てきてるっぽい。

なので隅々まで全部楽しみたいと思えば、やっぱり事前に全三作を見返しておいた方がいいと思うんですが、僕の場合は前記の1作目もうろ覚え=マトリックスの設定とメインのキャラくらいしか覚えてなくても……というか覚えてない&マトリックスに特別な思い入れのないフラットな状態だからこそ、本作を“そういうもの“として受け入れ、普通に楽しめたんじゃないかと思います。

なので、これから観るという人は取り合えず本作からスタートして、そこで気になるシーンがあれば遡って全三作を観るという観方でもいいかと思いますよ。

ウォシャウスキー兄弟から姉妹に

前三作の監督   アンディ・ウォシャウスキー&ラリー・ウォシャウスキーウォシャウスキー兄弟が、性適合手術を受けてウォシャウスキー“姉妹“になったという話は有名な話しです。

しかし、マトリックス3部作の頃はまだ、彼女らがトランスジェンダーであることを公表してなかったため、「マトリックス」は一般の人には娯楽大作として、ごく一部の陰謀論者などには彼らの陰謀論を後押しする物語として認識されてしまいます。

そのこともあって、二人はもの物語を思想や政治に利用されないため、続編を制作したと思われていたわけですが、トランスジェンダーである事を公表したことで、遡ってマトリックス」3部作はラナ&リリーのウォシャウスキー姉妹の私小説的作品であると多くのファンが理解したわけですね。

ラナ=ネオ

そんな本作のストーリーをざっくり紹介すると、世界中に多くのファンがいるゲーム「マトリックス」を製作したトーマス・A・アンダーソンキアヌ・リーブス)は、自身の作ったゲーム世界と現実の区別がつかないほど精神を病み、精神科医ニール・パトリック・ハリス)のカウンセリングを定期的に受け、精神安定剤を服用することで何とか心の均衡を保っていた。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92522/photo/d7ad0ca9ca955303/640.jpg?1639196259

画像出展元URL:http://eiga.com

そんなある日、社長(ジョナサン・グロフ)に呼び出されたトーマスは、「親会社のWBがトーマス抜きでシリーズ続編を作ろうとしている」と告げられ、長年断り続けていた続編製作に乗り出すことに。

そんな時、行きつけのカフェで妙齢の女性ティファニーキャリー=アン・モス)に出会い――というストーリー。

まぁ、当然「マトリックス」はゲームではなく”現実にあったこと“で、トーマスはネオ、ティファニーはトリニティーであることが分かるんですが、この冒頭のWBがトーマス抜きで続編を作ろうとしているというのは、現実にWBスタジオがウォシャウスキー姉妹抜きで続編を計画していたこと、それがラナが本作の制作に乗り出したキッカケの一つであることを、かなり露骨な皮肉としてゲームとトーマスに置き換えているんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92522/photo/250810157b612df1/640.jpg?1639196259

画像出展元URL:http://eiga.com

また、続編を作る会議でも仲間たちが好き勝手な事を言うんですが、それも二人がファンに言われた内容そのままだったりするらしいですw

つまり、本作でもネオ&トリニティーは監督であるラナのアバターであり、前三作に引き続き本作もまたラナ・ウォシャウスキー私小説であることが分かるんですね。

ただ、本作の制作にはリリーは関わっておらず、それは別の企画に関わっていたからというのもあるし、両親が亡くなった傷心を癒すため美術学校に入り直し絵を描いていた。悲しみから立ち直るため仕事から離れる時間が自分には必要だったと、インタビューに答えています。

一方のラナも両親の死に痛く傷つき、その悲しみが本作製作へのキッカケの一つであったことも同時に語られています。

つまり、3作目で死んだハズのネオ&トリニティーの復活には、亡くなった両親への彼女の想いが重ねられているんですね。

その辺のマトリックス=ラナの私小説という部分を押さえて本作を観ると、同じく今年公開された庵野秀明監督の「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を連想せずにはいられないですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/57683/photo/f926089d0064d2ab/640.jpg?1614343784

画像出展元URL:http://eiga.com

進化する映像

そんなラナ監督の状況や感情が割とストレートに反映している本作ですが、その一方で「マトリックス」と言えば誰もが驚いたバレットタイムを始めとした先進的映像技術。

当然、本作でもそうした先進的な映像やカンフーをベースにしたワイヤーアクションなどが期待されていたわけですが、とはいえ、現状はすでに「マトリックス」を下敷きに進化したフォロワー作品の映像やアクションが当たり前に観られる時代。つまり、当時あれだけ先進的だった映像技術はその先進性ゆえに後続作品でこすられまくり、すっかり時代遅れになってしまっているんですよね。

劇中で「ワイヤーアクションやバレットタイムなどは今やってもただのギャグにしかならない」と本人たちも言ってます。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92522/photo/9e8cdce316618426/640.jpg?1631236214

画像出展元URL:http://eiga.com

では、ラナ監督はどうしたのかというと逆にアナログ技術の方向に進化していったのです。それまではグリーンバックにCGバリバリだった撮影法から、現在の時流でもある自然光をいかした撮影法に変え、バレットタイムも人力?というか、極めてアナログなアクションでやってみせたんですね。
確かに前三作と比べれば画的に地味だけど、僕は結構ビックリしましたよ。

多くの作品で山谷を経験し、特にファンには強化が高いネトフリドラマ「センス8」などを経て、本作も確実に過去3部作から進化していると、個人的には思いましたよ。

もちろん、褒めシーンばかりではなく、内容的にも映像的にも「あらら?」っていうシーンは多々ありますが、個人的には前述のような変化(進化)は好ましいと思ったし、少なくとも観ている間、退屈を感じるシーンは一個もありませんでしたし、その上で今「愛こそ最強!」と照れることなくハッキリ言い切ってみせるラナ・ウォシャウスキーの胆力には思わずグッときてしまいましたねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92522/photo/f746f178027df361/640.jpg?1639196259

画像出展元URL:http://eiga.com

あと、今もジョン・ウィックシリーズなどでアクション最前線を突っ走るキアヌ・リーブスはともかく、年齢的にはすっかりおばさんになったトリニティー役、キャリー=アン・モスの妖艶な色気と美しさは、もうそれだけで劇場に観に行く価値があると思いましたよ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/92522/photo/eaf62f5c72eb602b/640.jpg?1639196259

画像出展元URL:http://eiga.com

興味のある方は是非!!

 

▼良かったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング