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原作とはかなり違うけれど「いとみち」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、越谷オサムの同名人気小説を実写映画化。
青森出身の横浜聡子監督、 駒井蓮主演で製作した『いとみち』ですよー!

個人的に原作のファンだったので、今回Amazonレンタルで観てみました!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

映画化もされた「陽だまりの彼女」などで知られる作家・越谷オサムの小説を原作にした青春ドラマ。強い津軽なまりと人見知りに悩む青森の女子高生が、メイドカフェでアルバイトを始めたことをきっかけに成長していく。監督・脚本は『俳優 亀岡拓次』などの横浜聡子津軽三味線が得意な主人公を『名前』などの駒井蓮、彼女の父を『後妻業の女』などの豊川悦司メイドカフェの先輩を『美人が婚活してみたら』などの黒川芽以が演じるほか、横田真悠、中島歩、お笑いタレントの古坂大魔王らが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

原作と映画

本作「いとみち」の原作は越谷オサムの同名人気小説。
訛りが強く人見知りな少女・相馬いとが人見知りの克服とメイド服への憧れから、青森市内の「津軽メイド珈琲店」でアルバイトを始め、次第に成長していく様子を描いた青春コメディーです。

本作では相馬いと役を青森出身の駒井蓮が演じ、いとの三味線の師匠でもある祖母ハツヱ役を、津軽三味線高橋竹山最初の弟子でもある西川洋子、東京出身の父・耕一豊川悦司が演じています。

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他にも青森出身の古坂大魔王や青森のアイドルグループ・リンゴ娘のジョナゴールドなど、青森出身のキャストが多いのも本作の特徴。

なので、本作で話される津軽弁。特にいととお祖母ちゃんの会話などはネイティブ津軽弁であり、そういう意味でインチキ方言みたいな違和感は感じませんでした。

そんな本作の物語は基本、3冊ある原作シリーズの1巻目からエピソードを抜き出す形で描かれていますが、例えば原作ではお祖母ちゃんとお父さんが実の親子だったのに対し、本作ではお父さんは娘婿という形に。
また原作では145㎝と小柄ないとを演じるのが身長168㎝の駒井蓮が、いかにもやくざ者っぽい厳つく大柄で太っているメイド喫茶のオーナー成田を古坂大魔王が演じるなど、原作ファン的には登場人物のキャラクター像に違和感を感じると思うんですよね。

物語的にもいとと、メイド長の葛西幸子黒川芽以)や漫画家志望の先輩メイド福士智美(横田真悠)、お客さん、親友・早苗ジョナゴールド)との関係性を描く描写が大幅にカットされているので、ストーリー展開やキャラクターの言動が総集編みたいでかなり唐突に感じてしまいました。

もしかしたら横浜聡子監督は『キャラクター』を描くのが苦手なのかも。

あ、でもお祖母ちゃんといとの会話を津軽弁そのままに、変に分かりやすく(例えば字幕とかね)しなかったのは英断だったと思いましたよ。

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ただ、原作ではいとのお祖母ちゃんがヘビメタ好きで、三味線でヘビメタ曲を弾いてそれがYouTubeにアップされて世界的ヘビメタバンドとセッションする――みたいな、マンガ・アニメ的な設定や表現も多く巻数も多いので、そのまま実写化は難しいことは重々理解できるし、個人的には原作通りでなくとも「いとみち」という物語の核心の部分を押さえていればOKで、少なくとも本作ではその部分はクリアしていたんじゃないかなと思いましたねー。

ライブシーンをクライマックスに

本作の一番の特徴は、主人公いとが津軽三味線の奏者だということ。
そして、オーナーが詐欺で逮捕され苦境に陥った店を救うため、引っ込み思案だったいとが店で三味線のライブを行うというのが1巻のクライマックスだったんですが、本作もその原作の流れを汲んで、いとの三味線ライブがクライマックスになっています。

ライブシーンがクライマックスになる映画は、古今東西数多有りますが、本作は物語の性質上、このクライマックスのライブシーンにどれだけ説得力を持たせられるかに、成否がかかっているんですよね。

その描き方には、例えば、主演の駒井蓮がエアで弾いてそれにプロの音を乗せる。

最初の一音を鳴らす瞬間でカットを切ってライブ終わりにジャンプする。

ライブが始まった瞬間に消音してそれっぽいナレーションを乗せる。(堤方式)

などなど、やり方はいくらもありますが、本作で横浜監督が選んだのは、主演の駒井蓮が実際に三味線を弾いて見せるというもの。

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結論から言えば、このやり方は見事成功したわけですが、だからと言って駒井さんの津軽三味線がプロ級に上手いというわけではないんですよね。

まず、映画序盤の祖母との会話の中で、写真で自分が三味線を弾いている姿を見たいとがショックを受け、それ以来三味線から離れていたという前振りがあり、中盤ではいら立った状態で弾いて三味線の皮を破いてしまい、後半、バイト代で三味線を修理し祖母と三味線を弾くという、いとの心情や状況と三味線を物語の中でリンクさせる描写を積み重ねてのクライマックスなので、技量は問題ではなく、店での三味線ライブがいとの成長のあかしであり、演奏が心理的な開放を表す描写になっているし、観客もそれを受け取っているからライブシーンに説得力とカタルシスを感じるわけですね。

その辺の横浜監督の丁寧な演出は見事だなーと感心しました。

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いとと父親の山登りのラストシーンを蛇足と思う人もいるかもだけど、個人的に物語の〆としてあのカットを入れたのは正解だと思ったし、確かに原作とは別物だけど「いとみち」ではあると思いましたよ。

興味のある方は是非!!

 

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