ぷらすです。
今回ご紹介するのは、コロナ禍で前作「ソウルフル・ワールド」に続き劇場公開はされずDisney+独占配信になったディズニーピクサー24作目作品、『あの夏のルカ』ですよ。
エンリコ・カサローザ監督もインタビューで話しているように、ジブリ感のある作品でしたねー。
画像出展元URL:http://eiga.com
概要
水にぬれると姿を変える「シー・モンスター」の少年を主人公にした、ディズニー&ピクサーによるアニメーション。人間たちが暮らす町を訪れた彼の冒険と成長がつづられる。監督は、第84回アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた『月と少年』などのエンリコ・カサローザ。製作を務めるのは、アンドレア・ウォーレン。(シネマトゥディより引用)
感想
憑き物が落ちたように爽やかなジュブナイル
ディズニー・ピクサーといえば、「トイ・ストーリー」で世界で初めて3ⅮCG長編劇場アニメを公開、一躍世界的なアニメスタジオとして名を馳せたことで知られています。
その後、「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」「カーズ」など数々の大ヒットアニメを発表するんですが、クリエイターの個人的体験を基に、その時々の世相や社会問題、はては死生観や哲学まで物語に取り込む、世界規模のエンターテイメント・アニメーション・スタジオながら非常に作家性の強い作品群で知られていますよね。
そんなピクサーアニメが極に達したのが前作「ソウルフル・ワールド」と言えるんじゃないかと思うんですが、しかし同時に、制作陣がピクサースタジオ創成期を支えたジョン・ラセターら第1世代から次世代のクリエイターに移っていくことで、その作風にも変化が訪れている印象があったりするんですよね。
つまり、それまでピクサー作品が背負っていた(メッセージや作家性などの)荷物を下ろすというか、憑き物が落ちたというか。
いや、制作体制自体は変わらないだろうから、監督によってはこれまで通り作家性の強い作品も発表されるでしょうけど、少なくとも本作は、物語的には爽やかなジュブナイルものという印象。
もちろん、「無知が恐れと分断を生み、知る事で理解が生まれる」という、現代的なテーマは内包しているものの、これまでのピクサー作品と比べるとそうしたテーマ性はあくまでスパイス程度に抑えられていて、むしろ色彩や動きの気持ちよさ、キャラクターの魅力に注力されている印象で、それを物足りないと感じるか、観やすいと感じるかは人それぞれなのかなと思いましたねー。
ざっくりストーリー紹介
自由自在に海を泳ぐことができる不思議な能力を持つ種族シー・モンスターの少年ルカ(ジェイコブ・トレンブレイ)は、両親の言いつけを守る“良い子“だったが、ある日、陸で暮らす同族の少年アルベルト(ジャック・ディラン・グレイザー)と出会います。
彼らシー・モンスター族は陸に上がると人間と変わらぬ見た目になり、水に濡れると元の姿に戻るんですね。
最初はおっかなびっくり、やがてアルベルトと一緒に陸で遊ぶようになるルカですが、ある日陸に行っている事が両親にバレ、深海の叔父の元に送られそうになったルカは、アルベルトと共に海辺の町ポルト・ロッソに向かう——という物語。
物語の舞台はエンリコ監督の故郷、北イタリア地方で自身の子供のころの体験が本作の基になっているのだそう。
それまではちょっと(かなり?)過保護な両親が世界のすべてだったルカが、アルベルトとの出会いをキッカケに世界を広げて親離れするという物語は、ファインディング・ニモに近いですが、思春期に入ったルカは自らの意思と好奇心から人間たちと関わっていくんですよね。
そして、ポルト・ロッソで憧れの乗り物ベスパを手に入れるため、二人はこの町で出会った少女ジュリア(エマ・バーマン)とチームを組み、毎年夏に開かれるトライアスロンレースに出場を決めるわけです。
画像出展元URL:http://eiga.com
本作におけるベスパは、ルカとアルベルトをどこにでも連れて行ってくれる、いわば自由の象徴であり、翼でもあるわけです。
ジブリ感
そんな本作を観た人は、多分もれなくジブリ作品――というか宮崎駿作品を連想するんじゃないかと思います。
実際、インタビューでエンリコ監督は「紅の豚」や「千と千尋の神隠し」「崖の上のポニョ」などの影響を公言しているし、個人的にイタリアが舞台のジュブナイルものということで「魔女の宅急便」の雰囲気もあるような気がしますねー。
で、水の表現も実写と見間違えるようなCGではなく、あえてピクサー社内で「漫画の水しぶき」と呼ばれる「完全なリアリティを追求しない水」を描き、ビジュアル面で2Dアニメーションを意識した作りになっているんだそうです。
画像出展元URL:http://eiga.com
また、本作はピクサー史上初の「夏」を題材とした作品でもあるんだそうですよ。
レベルは高いがピクサー作品としては…
そんな感じで、もちろんピクサー作品なのでアニメーションとしてのレベルは高いんですが、ピクサー作品にしては正直ストーリーが弱いと感じました。
それはテーマ性が薄いとかではなく、単純にストーリーテリングという意味で。
まぁでも、新型コロナウイルス感染拡大の影響でピクサーの本社が閉鎖され、スタッフの多くは自宅で本作の製作にあたったということらしいので、それまでの全スタッフがアイデアを出し合って物語を作っていくという、ピクサーのストーリーテリングの工程が十分に出来なかった事も関係してるのかもしれませんね。
それに、それもこれもあくまで「ピクサー映画としては」という話で、普通にアニメーション作品としては十分なレベルに達しているし、ジュブナイルものとしても爽やかで楽しい作品でしたよ。
興味のある方は是非!!
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