ぷらすです。
今夏ご紹介するのは、『シックス・センス』の大ヒットで知られるM・ナイト・シャマラン監督のホラー映画『ヴィジット』ですよー!
超面白いんですが、いわゆるアイデア一発勝負系の作品なだけに、内容に触れるとネタバレしてしまいそうな、なんとも感想の書きにくいタイプの映画ですw
というわけで、今回はネタバレ無しで書いていきますが、これから本作を観る予定の方は、まず先に映画の方を観てください。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com/
あらすじと概要
『シックス・センス』の大ヒットで一躍有名監督の仲間入りし、次々とビックバジェットの映画を任されるも、独特な作風が中々受け入れられず、自身も中々納得のいく作品が撮れずにいたM・ナイト・シャマラン監督が、自ら「原点回帰」と銘打って挑んだ意欲作。
幼い頃に父親に捨てられたトラウマを抱える姉弟が、ある事情から、それまで母親と不仲だった祖父母の家に一週間、二人で遊びに行くことに。
昼間は優しいが夜になると奇行を繰り返す祖父母はやがて……。
出演は、キャスリン・ハーン、ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー、エド・オクセンボールド、オリビア・デヨング他。
感想
僕は、正直シャマラン監督の映画はほとんど観ていなくて、「シックスセンス」の印象が一番強かったりするわけですが、本作は監督自身「原点回帰」と言うだけあって、僕のイメージするシャマランっぽさ全開の一本でした。
アイデア一発勝負
「シックス・センス」を観た人なら分かって貰えるんじゃないかと思うんですが、本作も「シックス・センス」と同じくアイデア一発勝負の映画なんですね。
なので、迂闊に内容に触れるとネタバレしちゃいそうだし、ネタバレしたら本作の魅力は一気になくなるっていう、非常に感想が書きにくいレビュアー泣かせの作品でもあります。
正直ネタが分かってしまえば何てことない話だし、むしろ古典過ぎて今や使う人のいないようなベタなネタではあるんですが、そこにたどり着くまでに周到にミスリードを重ねることで、姉弟も観客も「これはきっと〇〇なんだろう」と勝手に解釈しちゃうように仕向けているんですね。
その辺も「シックス・センス」に酷似しているわけですが、数々の作品を手がけた経験からか、作品の出来としては「シックス・ナイン」からさらににレベルアップ素晴らしいモノに仕上がってました。
笑いと恐怖のバランス
本作はホラー映画なので、もちろんビックリしたり怖かったりするわけですが、同時に思わず笑っちゃうシーンも満載で、その恐怖と笑いのバランスは、サム・ライミ監督の「死霊のはらわた」を彷彿とさせる見事な配分でした。
ゲ〇・ウ〇コ・老婆のヌードなど、姉弟にしてみれば悪夢のような超怖いシチュエーションも、観客の視点で見てると下品で下らなくて滑稽で、思わず笑っちゃうんですよね。
昼間は上品そうなお婆ちゃんが、夜になると奇行にはしる。
優しそうなおじいちゃんが、いきなりおかしな行動をとる。
そうした、小さな違和感の積み重ねが積もり積もって、クライマックスに繋がっていくんですが、その違和感とミスリードと笑いの組み合わせが絶妙で、姉弟も観客もすっかり『そういうもの』として受け入れてしまうわけです。
ホラー? いいえジュブナイルです。
しかし、本作のテーマは『暴走する老人は怖い』ではなく、『傷を負った家族の再生』と『許し』です。
その物語を姉弟視点で描いていくジュブナイル映画でもあるわけですね。
この姉弟の母親は、両親(つまり姉弟の祖父母)と大喧嘩の末に、恋する人と駆け落ちして二人を生みますが、その旦那はスターバックスに勤める若い女と浮気→家族を捨てて失踪してしまいます。
ぱっと見、そんな様子は見えない明るい母と姉弟。
しかし、三人三様にそれぞれ傷を負っていて、それはある種の呪いとして家族に大きな影を落としている。
そんな状況を変えるために、姉弟は会ったことのない祖父母の家に行く決断します。祖父母との喧嘩別れを引きずっている母親のために、『万能薬』を記録するのが姉弟の目的だったわけです……って、
君ら、めっちゃええ子やん!・゜・(ノД`)・゜・
本作はシャマラン監督初のPOV形式(登場人物がカメラを撮る一人称形式)のファウンドフッテージ物(一見ドキュメンタリーのように見えるフィクション映画)なんですが、姉弟がカメラを持って撮影するのには、そんなちゃんとした理由があるんですね。
そして、この一週間の出来事を通して、絆を再確認した母子三人はそれぞれにトラウマを克服し、家族として再生していくわけです。
そのへんの構成が、ただビックリドッキリのお化け屋敷的なPOVホラーとは一線を画す、まさに『シャマラン印』になっているんですね。
まさに原点回帰の一作
絆と情は、シャマラン作品全体の根幹にあるテーマだと思うんですが、ビックバジェットの作品では、そうした持ち味を上手く活かせずにシャマラン自身随分苦しんだようです。
そこで、本作では監督自ら制作にも関わり、低予算ながら自由の利く小作品として、有名俳優は一人も使わずに、自身の思った通りに作り上げた、まさに原点回帰の一作となっているそうです。(本人談)
その思惑は見事に当たり、本作は彼の持ち味やセンスが見事に発揮された作品になってるんじゃないかなと思いました。
新進気鋭のラッパー Tダイヤモンドに刮目せよ!
本作で、エンディングも担当している新進気鋭のラッパー『Tダイヤモンド』
要所要所での彼のラップが、この物語に軽やかさや面白みを与えていることは間違いありません。今後の彼の活躍も見逃せませんよー!
もちろんホラー映画なので、ビックリしたり生理的に「ウエー」となるシーンはありますが、いわゆるグロシーンは殆どないし、ホラー映画は苦手という人も(多分)楽しめるんじゃないかと思ます。
興味のある方は是非!!