今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

時代に逆行する男子校映画!「ブルータル・ジャスティス」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはAmazonvideoでレンタルして観た『ブルータル・ジャスティ』ですよー!
劇場長編デビュー作の「トマホーク ガンマンvs食人族」で映画ファンの度肝を抜いた、“暴力の伝道師“こと、みんな大好きS・クレイグ・ザラー監督の最新作です!!

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概要

ブラッド・ファーザー』などのメル・ギブソン主演の刑事アクション。闇取引の金を奪う計画を立てた刑事コンビが、思いも寄らない事態に陥っていく。『人生、サイコー!』などのヴィンス・ヴォーン、『ハリエット』などのトリー・キトルズ、『マッド・ウォーリアーズ 頂上決戦』などのマイケル・ジェイ・ホワイトのほか、ジェニファー・カーペンターウド・キアトーマス・クレッチマンドン・ジョンソンらが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

時代に逆行する超硬派男子校映画!!

S・クレイグ・ザラー監督と言えば本作の前に「トマホーク ガンマンvs食人族」と「デンジャラス・プリズン -牢獄の処刑人-」を監督していますが、この2本は日本では劇場公開されてなくてビデオスルー。
しかし本作は、主演が日本でも知られているメル・ギブソンだからか、公開館数は少ないながら3本目にしてついに劇場公開されたんですねー。

その作風は非常に前時代的というか時代に逆行してるというか。
1作目の「トマホーク~」2作目の「デンジャラス・プリズン」共に、70年代のグラインドハウスを意識した過剰な暴力とブロマンス満載の僕らのようなボンクラ映画ファンしか喜ばないであろう超硬派な、いわゆる「男子高映画」ばかりを専門に撮っている監督なんですねー。

多分、自身も相当なボンクラ映画マニアだと思うし、だからこそ、ボンクラ映画ファンが信頼する”分かってる監督“でもあるのです。

日本で言えば、孤狼の血」の白石 和彌監督に近いかもしれません。

ざっくりストーリー紹介

そんな本作のストーリーをざっくり一言で言うなら「金に困った貧乏刑事が悪党から金を横取りしようとする」という物語。

メルギブ演じるリッジマンと相棒のトニーヴィンス・ヴォーン)は、強引な犯人逮捕により6週間の(無給料)停職処分になってしまいます。

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しかし、リッジマンの奥さんは多動性硬化症という難病を患っていて、貧しい黒人が多い地区に住んでいるため白人である娘は黒人少年に嫌がらせを受けている。
なので、リッジマンは奥さんの治療費と引っ越しのための金が必要なんですね。

そこで彼は、昔馴染みの情報屋の伝手でボーゲルマントーマス・クレッチマン)のヘロインの取引情報を入手。その金を横取りしようとトニーと共にボーゲルマンの動向を見張るのだが――っていう内容です。

こうしてあらすじだけ見れば、物語は超シンプルだし「せいぜい90分くらいのアクション映画だろ?」って思うでしょ?

ところがこの作品、なんと約2時間40分もあるんですよねー。

長尺だからこそ分かる“暴力”の怖さ

なぜそんな事になるかと言えば、主人公リッジマンと相棒トニーのメインエピソードの他に、家族を養うため金の必要な出所したばかりの黒人青年ヘンリー(トリー・キトルズ)のエピソードや、出産後、心が不安定になり「仕事に行きたくないのよー」とごねるも旦那に説得されていやいや出勤する銀行員ケリージェニファー・カーペンター)のエピソード、そしてボーゲルマンの部下の覆面男ブラック・グローブ&グレー・グローブの残虐非道な行いの数々を結構な尺を取ってじっくりじっくり描くので、ある意味で群像劇?っぽいというか。

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また、クライマックスのチェイスシーンや、リッジマンたちとボーゲルマンたちの銃撃戦よりも、リッジマンとトニーが張り込みしてるシーンの方をわざわざ長尺で延々見せたり。
トニーが車中で食事してるシーンを長々見せてから、リッジマンが「84分も飯食ってる音と匂いに悩まされた」「アリでももっと早く食う」と文句を言うシーンなんかは、もう少し短くできるだろっていうw

ぶっちゃけそういう“余分“なシーンを削れば90分にだって収まりそうなのに、映画会社のお偉いさんに言われてもザラー監督は固くなにシーンをカットしなかったそうんですよね。

それはつまり、ザラー監督にとって本作に余分なシーンなど1つもなくて、ゆえに2時間40分の上映時間も全てが必然というわけなのです。

まぁ、その無駄に思える時間の長さとヘンテコなシーンの切り取り方こそがザラー監督のオリジナリティーを担保してるとも言えるし、評価の分かれるところでもあるわけですけどね。

その辺は何と言うか、ちょっと初期のタランティーノに近い部分でもあるし、ザラー作品を評する人の多くが枕詞みたいにタランティーノの名前を出すんですが、こと「暴力映画」という括りで見ればタランティーノとザラー監督は全く違っていて、ザラー監督の資質はどちらかと言えば、 ニコラス・ウィンディング・レフン北野武作品に近いと思うんですよね。

笑っちゃうくらい過剰なのに決して暴力を茶化してないというか、暴力の本質に迫る姿勢みたいな部分が。

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で、そんな暴力の怖さや緊張感を担保しているのが前述した、無駄に長い「キャラクターたちの日常」というわけです。
生活や性格を見せられることで自然とキャラクターに感情移入してしまうし、そんな彼ら(彼女ら)が唐突に理不尽で過剰な暴力の餌食になるから、観ているこっちはショックを受けるし、暴力本来の怖さを思い知るわけですね。

それを悪趣味と取る人もいるだろうけど、個人的にはザラー監督は暴力を描くことに対してとても誠実な監督だと思いましたねー。

そんな”暴力の伝道師“S・クレイグ・ザラー監督が、「パッション」や「アポカリプト」など元祖暴力の伝道師のメルギブを主役に迎えて作り上げた映画ですからね。そんなん面白いに決まってるじゃないですか!

ただし、その面白さは万人には勧められる面白さとは種類が違うんですよねw

興味のある方は是非!!!

 

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きっと誰も見たことがない「透明人間」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年夏に公開され、映画好きの間で話題になった『透明人間』ですよー!
H・G・ウェルズの小説を原作にした1933年公開の同名作品を現代的にリブートしたサスペンスホラーです。

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概要

ゲット・アウト』や『パージ』シリーズなどのジェイソン・ブラムが製作を担当したサスペンス。自殺した恋人が透明人間になって自分に近づいていると感じる女性の恐怖を描く。メガホンを取るのは『アップグレード』などのリー・ワネル。『アス』などのエリザベス・モス、『ファースター 怒りの銃弾』などのオリヴァー・ジャクソン=コーエン、『キリング・グラウンド』などのハリエット・ダイアーのほか、オルディス・ホッジ、ストーム・リードらが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

「ダーク・ユニバース」の忘れ形見

2017年、ユニバーサルスタジオは自社が過去に制作したモンスターホラー映画をリブート&ユニバース化する「ダークユニバース」の第一弾として「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」を公開します。

折しも映画界はMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が起こしたビックウエーブに乗っかろうと、各映画会社が自社作品のユニバース化を始めた時期でもあり、メジャー会社のユニバーサルもこの流れにいっちょ噛みしようと画策したんですね。

で、ユニバーサルは元々、モンスター映画でメジャーまでのし上がってきた会社なので、自社の財産でもあるクラッシックモンスターの復活&ユニバース化を狙ったわけです。
ところが、その第1弾である「ザ・マミー/~」が大コケ
ダークユニバースは事実上消滅し、ユニバーサルはモンスター映画のリブートを、それぞれ単発作品として製作していく方向に舵を切ったのです。

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「透明人間」も、ダークユニバースではジョニー・デップ主演でリブートが予定されていたものの、脚本家エド・ソロモンが降板したことで企画は一度立ち消えに。
しかし2019年、ジェイソン・ブラムがプロデューサーを務め、「ソウ」シリーズの脚本や「アップグレード」の監督で知られるリー・ワネルがメガホンを取り1933年公開のオリジナル版をリブートすることを発表。
昨年7月に公開されるや、映画好きの間で「俺たちが観たかった『透明人間』はコレなんだよ!」と高評価を得たわけです。

「透明人間」の“怖さ”を再構築

では、本作が映画好きのハートを掴んだ理由を一言でいうなら、それは「透明人間の”怖さ“を解体・再構築してみせたという一点に尽きるのではないかと思います。

ミイラや魔女と並んで日本人にはその怖さがいまいち伝わらない透明人間。
例えば、「ミイラ男」は本編よりもそのパロディーから観始めている人の方が多いし、「魔女」だって日本人の場合「魔女っ娘」やディズニーで漂白された「良い魔女」に触れる方が早いので、そもそも恐ろしいモンスターとは結びつかない。もっと言えば「ミイラ」は植民地政策、魔女は反キリスト教(異教徒)という出自のモンスターなので、日本人がピンと来ないのも当然ですよね。

そして(僕も含めた)ある年代の男子にとって「透明人間」とは、ちょっとエッチなラブコメのイメージであり、なんなら当時は自分と透明人間を重ね合わせて見ていたりしたわけですよ。

それは日本に限ったことではなく、透明人間はそもそも、ストーキングや覗き、あるいは対象への性的な支配(レイプ)など、男のほの暗い欲望(タブーを破る)を体現した怪人であり、また歴代の映画やドラマの多くが、怪人(モンスター)であるハズの透明人間自身を主人公に描いているので、常に加害者側の視点で物語が進んでいく=怖くないわけです。

ところが、本作ではそうした「透明人間」が抱える構造的な問題点を解体し、透明人間が持つサイコホラー・サスペンスホラーとしての怖さを正しく再構築してみせたんですねー。

ざっくりストーリー紹介

光化学の権威で大富豪の天才科学者エイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン )の恋人セシリア(エリザベス・モス)はある夜、意を決してセキュリティが張り巡らされた彼の豪邸から脱出。妹エミリー(ハリエット・ダイアー )の協力で、逃亡に気付き追いかけてきたエイドリアンを振り切って何とか逃げ切ります。

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エイドリアンは反社会的な行動や気質を抱えるソシオパスであり、これまでセシリアを自分の思い通りに支配しようとしていたんですね。

その後、エミリーの友人で刑事のジェームズ(オルディス・ホッジ )の家に匿われていたセシリアの元に、エイドリアンが自殺したという知らせがあり、彼の持つ遺産をすべてセシリアに譲ると弁護士から連絡が入ります。
エイドリアンの兄で弁護士のトムによれば、セシリアがエイドリアンの遺産を受け取る条件は、1・精神疾患がない事、2・犯罪を起こさないことの二点。
この一見何て事のない条件そこが、この後セシリアを苦しめる罠なのです。

エイドリアンの死を疑いながらも、セシリアは徐々に落ち着きを取り戻していくんですが、ある日を境に彼女の周囲に不可解な現象が次々に起こり、そこにはエイドリアンが残したとおぼしき痕跡が――というストーリー。

こうしてあらすじだけ読めば、ビックリするくらい古典的な物語に見えると思います。

僕は「本作は『透明人間』抱える構造的な問題点をすべて解体し、透明人間が持つサイコホラー・サスペンスホラーとして怖さを再構築してみせた」と前述しましたが、実はこれまでの「透明人間」と本作が違う点はたった2つ。

1・物語の主人公をセシリアにし、2・透明人間を見えなくした。だけなのです。
それだけで、本作はこれまでの作品とは別の、まったく新しい「透明人間」になっているんですねー。

見えない透明人間

「透明人間が見えないのは当たり前じゃない?」と思われるかもですが、ライムスターの宇多丸師匠がラジオで解説していた通り、実は「透明人間」の映像化の歴史は、透明人間を如何に見せるかを追求する歴史でした。

例えば誰もいないハズなのに部屋に置かれた物質が勝手に持ち上ったり、床に積もった埃に足跡が付いたり、ヒロイン(被害者)が見えない何者かに襲われたり格闘したり。

登場人物には見えなくても、観客に透明人間が見えることでスリルやサスペンスを生む。つまり「志村後ろ―!」的なヤツですね。

そうした透明人間を見せる試みは、特撮・合成・CGなど映画のテクノロジーと共に進化していき、ポール・バーホーベン監督の「インビジブル」で一旦頭打ちになったと言えるでしょう。

ただ、これら透明人間を見せる演出は透明人間(モンスター)が主役だから成立するわけで、被害者側が主人公である場合、透明人間は“見えない方が怖い“のです。

なので本作では、これまでとは違い透明人間を見せない映像演出がされていて、例えばカメラが誰もいない場所にパン(カメラを固定したままフレーミングを縦・横に移動)するとか、セシリアしか映っていないのにあたかも横に誰かがいるような構図で撮るとか。

でもそこには部屋の風景以外何も映っていないので「セシリアの不安な心を映像で表現してるのかな?」と思いながら観ていると、中盤のある場面で「ホントにいたーー!!」となるのです。

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この辺の演出はいわゆるJホラー表現を上手く応用していて、さすが、ハリウッドナンバー1のJホラー演出の使い手でもあるジェームズ・ワンの盟友、リー・ワネル監督だなーと感心しましたねー。

物語の向こうにテーマが視える現代的な作品

事程左様に、本作は主人公を加害者(透明人間)から被害者に移したことによって、前述した透明人間が本来持つ性質が浮き彫りになり、それがフェミニズムやハラスメントといった非常に現代的なテーマと直結。
かと言ってテーマありきの物語ではなく、あくまで物語の中にテーマがある作りになっているんですね。

それはとても上品でスマートだと思うし、基本的にはセリフは最小限に、映像やエリザベス・モスの表情でテーマを語っているのも非常に映画的だし、今回の透明人間のデザインは、一方的な窃視や男から女性に向けられた性的な視線を具象化してみせた秀逸なデザインだったと思いましたよ。

そして、主人公や物語の視点をずらすことで古典的な物語を新たな物語に解体・再構築してみせた手腕の見事さは、高畑勲監督の遺作「かぐや姫の物語」を観た時の衝撃に近いものを感じました。

興味のある方は是非!!

 

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“あの”韓国発ゾンビ映画の続編「新 感染半島 ファイナル・ステージ」(2021)

明けましておめでとうございます!

ぷらすです。

というわけで本日、2021年元日公開の『新 感染半島 ファイナル・ステージ』を観てきましたよー!
2016年に公開し世界をあっと言わせた、あの「新感染 ファイナル・エクスプレス」の続編です!

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概要

韓国発のパニックホラー『新感染 ファイナル・エクスプレス』の4年後を描いた続編。パンデミックを逃れて香港に渡っていた元軍人の主人公が、ある任務のために「半島」に戻りサバイバルを繰り広げる。監督は前作のヨン・サンホが続投。『華麗なるリベンジ』などのカン・ドンウォンが元軍人を演じ、ドラマ「輪舞曲 ~RONDO~」などのイ・ジョンヒョンや『それから』などのクォン・ヘヒョらが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

“あの”韓国発ゾンビ映画の続編

本作は2016年に公開された韓国発のゾンビ映画新感染 ファイナル・エクスプレス」から4年後の世界を描いた続編です。

ゾンビパンデミックにより僅か1日で壊滅した韓国を舞台にしたポストアポカリプスもので、「新幹線」に掛けた前作のタイトルが通じなくなって困った日本配給会社は「新」の後ろにスペースを開け、「感染」の後ろに「半島」を足すことで、「新感線」の続編ながら今回は「半島」に規模を広げたことを表現し、何とか難局を乗り切ったんですねー。(←どうでもいい話)

前作では狭い列車の中に舞台を限定するというアイデアで、ハリウッドなどに比べれば低予算ながら大迫力のゾンビ映画を作りあげたヨン・サンホ監督が本作も続投。

予算が2倍になった本作ではさらにスケールを広げて、“難民”として差別される日々から抜け出すため、香港ギャングからの「3日以内にソウルに乗り捨てられたトラックに積まれた2000万ドルの大金を回収する」という仕事を請け負った主人公たちが、再びゾンビだらけの母国に潜入するという内容で、「ワールド・ウォーZ」並みに大量な走るゾンビや韓国に取り残されヒャッハー化した民兵集団631部隊を相手取りながら、密かに生き残っていた家族とともに地獄と化した韓国からの脱出を図るというストーリー。

前作のゾンビ設定は引き継ぎながらも、本作では完全にサバイバルアクションに振り切っているんですね。

サンホ監督によれば、本作は「マッドマックス」「ザ・ロード」「AKIRA」「ドラゴンヘッド」、そしてロメロの「ランド・オブ・ザ・デッド」に影響を受けているそうで、「なるほど確かに!」と思わせるシーンが多々あるんですが、特に後半、631部隊と主人公たちが繰り広げるカーチェイスのくだりは完全に「怒りのデスロード」でしたねー。

ざっくりストーリー紹介

人を狂暴化させるウイルスの感染爆発から4年後。
姉と甥を救えなかった元軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)は、亡命先の香港で失意の日々を送っていました。

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そんなある日、香港マフィアから「3日以内にソウルに乗り捨てられたトラックから2000万ドルの大金を回収する」という仕事を請け負ったジョンソクは、義兄のチョルミン(キム・ドゥユン)らとともに裏ルートで封鎖された朝鮮半島に上陸。
すぐにトラックを発見した彼らでしたが、港に向かう途中、本能のまま生存者狩りを楽しむ民兵集団631部隊と大量の感染者に襲撃されトラックを奪われてしまうんですね。

押し寄せるゾンビに死を覚悟したジョンソクを間一髪救ったのは、二人の少女ジェニ(イ・レ)とユジン(イ・イェオン)。

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二人は、ミンジョンイ・ジョンヒョン)とソ大尉(ク・ギョファン)と4人で暮らしていて、ミンジョンとユジンは4年前にジョンスクが見捨てた母子だったのです。
そんな4人を地獄から救い出すため、ジョンソクはミンジョンと共に631部隊のアジトに潜入しトラックを奪い返すミッションに挑む――という物語。

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前作と世界観を共有しているものの、登場人物もストーリーも繋がりはないので、本作だけ観ても全然問題なく楽しめると思うし、その上で前作を観ていればさらに楽しめるという感じだと思います。

ただまぁ、アクション映画としては面白いけど、本作でのゾンビは(特にカーチェイスシーンでは)恐ろしい怪物ではなく、ジョンスクvs631部隊のカーチェイスの障害物でしかないため、「ゾンビ映画」としての怖さやスリルはまったくありませんでしたねー。

あと、CG描写は作りの荒さが目立つし、伏線の張り方が如何にもこれ見よがしであまり上手くなかったり、エモーションを優先させるあまりストーリーのテンポが完全に崩れたりしてるし、631部隊のヒャッハー振りがあまりにもテンプレ的で漫画(アニメ)っぽい。っていうか、本作のキャラが全体的に漫画っぽいと思いました。

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まぁ、その辺はヨン・サンホ監督が元々アニメ監督だからっていうのもあるとは思うし、前作でも多少感じた部分ではありますが、前作が劇中の行動でキャラの背景を見せる演出の積み重ねで、ドラマやエモーションに深みを出していたのに対し、本作はストーリーの都合に合わせてキャラが動いている感があるし、キャラのチートな能力(ジェニのドライビングテクニックとか)は、アニメならいいけど実写映画としてはちょっと説得力に欠ける感じでした。

ゾンビと時間

あと、これを言ったら元も子もないし本作に限ったことではないんですが、この世界のゾンビは何を喰って生きてるのかっていうね。
本作のゾンビは死んでいるわけではなく、ウィルス感染によって狂暴化してるという設定で、つまり栄養を補給しないと死んじゃうわけじゃないですか。なのにあれだけの数のゾンビが4年以上生きているってことは……共食い?

これと同じ設定の「28週後...」ではパンデミックから5週後、感染者が飢餓で死に絶えるという設定を取り入れてますよね。

というか、実は「時間」は全てのゾンビ映画が構造的に抱えている問題で、生死にかかわらずゾンビはいつまでゾンビでいられる(ゾンビ状態を維持できる)のかという問題を避けるため、製作者は脚本で上手く時間をぼやかしたり、舞台をパンデミック後数週間に絞ったりしながら、観客に気づかれないようにやりくりしたり、逆に「28週後…」みたいに設定に盛り込んだり、あえてツッコミを入れることでメタ的に笑いにもっていったりするわけです。

ところが本作は、前作から「4年後」とハッキリ時間を設定したことで、前述の「時間の問題」が露わになってしまったんですねー。

withコロナとゾンビ映画

昨年の世界的コロナパンデミックによって、今後観客がゾンビ映画を観る目は確実に変わると思います。
そもそもロメロ以降のゾンビ映画は構造的にパンデミックを連想させる作りになっていて、僕らは昨年「本物」のパンデミックを経験し、今もその渦中にいます。

本作でも、ゾンビパンデミックから他国へ亡命する人々が受け入れを拒否されたり、主人公ジョンスクたちが亡命先の香港で差別を受けている描写があったりしますが、ヨン・サンホ監督はコロナウィルスが世に現れる以前に、本作の構想と撮影を終わらせているので、前述の描写にコロナ後の世界情勢の反映を意図したわけではないでしょう。

しかし、現実のコロナ騒動を経験した我々観客は、どこかで無意識的にリアルを意識しながらゾンビ映画を観しまうと思うんですね。

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そういう意味で、これからのゾンビ映画はどうしたってwithコロナを意識せざるを得ないし、本作は奇しくも「withコロナ」最初のゾンビ映画になってしまったわけです。

まぁ、そんな面倒くさいことは横に置いておいて、個人的には「~怒りのデスロード」と「ワイルド・スピード」と「ワールド・ウォーZ」を足して3で割ったような、あの全てにおいて過剰なカーチェイスだけでも映画館で観る価値はあると思うし、日本とさほど規模の変わらない韓国映画でこれだけの大作アクションが作れたのは素直に凄いなーと感動しましたよ!

興味のある方は是非!!

 

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2020年公開映画、個人的ベスト10発表

ぷらすです。

今年も残り僅かとなりました。

というわけで年末恒例、今年公開された作品の中で僕が個人的に気に入った作品ベスト10をランキング形式でご紹介しますよー!

ご存じのように、今年はコロナ禍の影響で公開されるハズだった映画が次々に延期され、また、私事で恐縮なんですが、数年間ずっと通ってたTSUTAYAが閉店したのを機にAmazonプライムに加入したものの、どうも調子が狂ってしまって思うように映画が見られず。

結局、今年は新旧合わせて例年の半分くらいしか映画が観れなかったんですよねー(´・ω・`)

まぁ、本数が少ない分ベスト10を選ぶのは例年より楽かもですけどねw

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その前に

と、その前にこちらも例年通り、2019年日本公開の作品ながら諸々の事情で昨年中に観られず、今年に入ってから観た2019年作品のベスト10を先に発表しますよー!(下に行くほど順位が上がります)

今年観た2019年公開作品ベスト10

10位 タンク・ソルジャー重戦車KV-1

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昨年はロシアの戦車映画が何故か大当たりした年だったんですが、その先鞭をつけたのが本作「タンク・ソルジャー重戦車KV-1」でした。
いや、ぶっちゃけストーリーの方はテンプレの継ぎ合わせっていうか、すでにうろ覚えなんですが、この映画の主役は重戦車KV-1であり、対戦車戦の駆け引きやドッグファイトこそが真に描きたかった部分だと思うし、本作はその一点において成功してると思うんですよね。

9位 ドクター・スリープ

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スティーブン・キング枠ってことで、「IT/イット THE END」とどちらを入れるか迷ったんですが、幼少期にクローネンバーグの「スキャナーズ」や「マニトゥ」の洗礼を喰らった身としては、本作に軍配を上げざるを得ないなーと。

長年「シャイニング」をオバケに取りつかれた親父に妻子が追い回されるホラー映画だと思い込んでいたんですが、39年ぶりに実は超能力映画だったと教えてくれた本作は、あの作品の続編とは思えない異能バトルが繰り広げられるエンタメ映画に。
もちろん「シャイニング」の映像インパクトとは比べるべくもないですが、続編としては割とそつなく作られてたし、個人的には好みの作品でした。

8位 洗骨

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「ガレッジセール」のゴリさんが本名の照屋年之名義で監督した長編映画です。
現在も沖縄県や鹿児島県奄美群島の一部に残る風習をモチーフに、自ら脚本も担当したという本作。
沖縄映画祭で、協賛している吉本興業の所属芸人が監督・出演する作品が公開される流れみたいのがあって、僕は本作もその中の一本だろうと正直ナメていたんですが、実はゴリさん映画監督はこれが3本目。(うち1本は自主制作映画)
内容的にも基本コメディーながら「洗骨」という儀式を中心に家族再生というテーマを丁寧に描いたところは、ちゃんと映画を分かっている人という印象だったし、奥田英二を始めとした俳優陣の演技も相まって非常に見ごたえのある作品でしたねー。 

7位 ファイティング・ファミリー

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家族全員がプロレスラーという家に生まれたイギリス出身の女子プロレスラー「ペイジ」が、世界最大のプロレス団体WWEのトップ選手になるまでを描く実話を基にしたサクセスストーリーで、WWEスタジオが制作したドキュメントに感銘を受けたドウェイン・ジョンソンがプロデュース、自らも“ザ・ロック”役で出演している作品。
プロレスラー役を役者が演じると、どうしても肝心のプロレスシーンがショボくなってしまいがちなんですが、本作ではWWE所属のコーチの下で主演のフローレンス・ピューらキャスト陣がしっかりトレーニングしていることや、実際のWWEの試合会場を使って撮影していることもあって、クライマックスのプロレスシーンも違和感なく楽しめる作品となっています。

6位 さらば愛しきアウトロー

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俳優だけに止まらず、監督・プロデューサーとしても数々の名作を送り出してきた名優ロバート・レッドフォードの“俳優引退作”。

本作の主人公で、まるでゲームのように犯罪を楽しむ男フォレスト・タッカーとレッドフォード自身を重ね、映画人ロバート・レッドフォードの半生をメタ的に描いた本作は、彼の過去作のオマージュは散りばめつつ映画のルックやテンポなどは意識的に70年代を意識するという、俳優ロバート・レッドフォードの最後を飾るに相応しい作品でしたねー。

5位 きみと、波に乗れたら

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四畳半神話大系」や「夜は短し歩けよ乙女」などで知られる湯浅政明監督が手がけた劇場版長編アニメです。

最初は80年代のホイチョイ・プロダクションを連想させるラブ・ストーリーかと思いきや、物語が進むごとグイグイ引き込まれていくし、特にクライマックスのある意味ドラッギーとも言えるアニメーションは生理的に気持ちがいい。
四畳半神話大系」や「夜は短し歩けよ乙女」が苦手という人も、この作品は楽しめるんじゃなかと思いますよ。

4位 ガリーボーイ

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実在のインド人ラッパーをモデルに、スラム暮らしの青年が思いの丈をぶつけたラップをYouTubeに投稿したことから、運命の扉を開いていく姿を描いたサクセスストーリー。
インド映画といえば、劇中に挿入される歌と踊りが特徴ですが、本作ではそれが劇中で作られるラップのMV&メイキングでになっていて、インド映画の新時代を感じましたねー。
ストーリーや映像も世界基準の普遍的な作劇ながら、しっかり現代のインドという国の問題も入れ込んでいて、近年インド映画のレベルの高さを感じた1作でした。

3位 アルキメデスの大戦

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三田紀房の同名コミックを原作に、山崎貴監督が実写映画化した戦争映画です。

天才数学者の主人公・櫂直を菅田将暉が熱演したことでも話題になり、山崎貴監督作品に厳しい(僕を含めた)映画ファンも、本作だけは褒めているのが印象的でした。

特に山崎監督も所属する日本トップのVFX制作会社「白組」が担当した、冒頭約5分の戦艦大和沈没のシークエンスは歴代邦画の中でもトップレベルだと思ったし、ミステリー映画を思わせるストーリー展開、そして櫂直が軍部のお偉方を相手に数学の知識を用いて対決するクライマックスやラストのどんでん返しも含め、非常に見ごたえのある作品でしたねー!

2位 ロケットマン

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Your Song/ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」やタイトルでもある「ロケットマン」などの名曲で知られるエルトン・ジョンの半生を描いた伝記ミュージカルです。
フレディ・マーキュリーの人生を描いた「ボヘミアン・ラプソディ」が前年公開・記録的大ヒットしたこともあって「二番煎じ感」が出た分、ちょっと割を食った感のある本作ですが、監督も同じで個人的には「ボヘミアン~」より本作の方が好きかも。

エルトンの年齢に合わせて前髪を剃り上げ、薄毛のウィッグを装着したり、(多分)多少の老けメイクや体重の増減などの役作りだけでなく、エルトンの名曲を歌ってみせた(しかも上手かった)タロン・エガートンの熱演も素晴らしかったですねー。

1位 T-34 レジェンド・オブ・ウォー

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第二次大戦中ナチスドイツが、演習目的で捕虜を生きた標的としていた史実を基に、捕虜となったソ連の戦車兵たちが演習用の「T-34」を盗んで決死の脱出に挑むアクションエンターテイメントです。

作劇的には、いわゆる戦争映画というよりある種のコンゲームもの的であり、主人公とナチス将校との切れ者同士のライバル関係は少年漫画的でもあると思いましたねー。

最新のVFXを駆使しつつも主役機のT-34実車を使うなど、大迫力の戦車バトルは最高!戦車好きにもそうでない人にも観てほしい作品でしたねー!

 

というわけで、ここからはいよいよ2020年公開作品の個人的ベスト10発表です!

 

2020年公開映画、個人的ベスト10

10位 デッド・ドント・ダイ

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ストレンジャー・ザン・パラダイス 」や「パターソン」など独特な世界観で知られるジム・ジャームッシュ初のゾンビ映画ということで注目された本作。
ビル・マーレイアダム・ドライバーティルダ・スウィントンら超豪華な布陣で作られたコメディー作品なんですが、個人的にはゾンビ映画としてもコメディー映画としてもイマイチだと思いました。
それでも今回10位にランクインいたのは、単純に映画としてレベルが高かったからなんですよねー。

僕にはハマらなかったけど、好きな人にはハマる作品なのではないでしょうか。

9位  初恋

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世界的に有名な監督ながら仕事を選ばないことで知られる三池崇史監督作品です。
超多作で職人監督的でありながら、どの作品にも隠し切れない作家性が滲み出てしまう三池監督ですが、本作の印象を一言で言うなら「トゥルー・ロマンス」+「パルプフィクション」を三池印の悪ふざけで割ったような感じで、評価は分かれてるようですが、個人的には三池崇史が世界基準に照準を合わせた意欲的な作品だと感じましたねー。

8位  ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY

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2016年にDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)第3弾として鳴り物入りで公開されるも、超酷評された「スーサイド・スクワッド」の中で唯一高評価を受けた、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを主人公にしたスピンオフ作品です。

本作は主演のマーゴット・ロビー自らプロデューサーも兼任、監督にアジア系女性監督として初のスーパーヒーロー映画の監督となるキャシー・ヤン、脚本に「バンブルビー」のクリスティーナ・ホドソンを迎え、ハーレイ・クインを始めとしたメインキャストも全員女性キャラクターという布陣で制作。
男どもに虐げられる女たちが協力して逆襲するという、いわゆるイマドキな志の高い作品ながら、スカッと爽やかなポップコーンムービーとしても楽しめるようチューニングされた見事なエンターテイメント作品でしたねー。

7位  羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜

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WEB公開されている2Dアニメシリーズ(本編)の前日単として制作された中国の劇場アニメ。
随所に日本のアニメやゲームの影響が見えるし、監督自身もインタビューなどで日本アニメの影響を公言している本作ですが、それ以外にもハリウッド映画やディズニーなど洋の東西を問わず面白いと思ったら素直に取り入れるミクスチャー的というか、非常に現代的なセンスの作品でありながら、東洋思想がハッキリその根底にあるのが素晴らしいと思いましたねー。

6位  ワンダーウーマン1984

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「スーパーマン」「バットマン」に次ぐ、老舗アメコミ出版社DCコミックの古参ヒーローの単独映画第2弾。
これまで公開されたどのアメコミ映画とも違う、ワンダーウーマンというヒーローの方向性を示した作品であり、ロマンスあり、アクションあり、エモーション高めなストーリーはアメコミに興味のない人でも楽しめるのではないかと思います。
設定のロジックや細かい辻褄合わせよりも、物語やキャラクターのエモーションを優先させるストーリーテリングは、「鬼滅の刃」に通じるものがあると思いましたねー。

5位  フォードvsフェラーリ

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1966年のル・マン24時間レースをめぐる実話を映画化した本作は、「フォードvsフェラーリ」というタイトルながら物語の大半はフォードの重役vs主人公で、いわばハリウッド版「下町ロケット」みたいな作品でしたよ。

真剣に頑張る主人公たちに半笑いで横やりを入れるフォードの重役たちには(# ゚Д゚)ムキー!ってなるも、それでも作品が重く、暗くならないのは、本作がモノづくりの映画だから。
トライアンドエラーを繰り返しながら、レーシングカーが出来上がっていく様子は、単純にワクワクするし、そのマシーンに乗ってマイルズが勝利するシーンは映画的なカタルシスに溢れてるんですよね。
極力CGを使わず当時の実車を走らせて撮影してるレースシーンも大迫力で見ごたえありですよ!

4位  スパイの妻 劇場版

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第77回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清監督最新作です。
NHK BS8Kで放送されたテレビドラマを劇場用に再編集した作品で、太平洋戦争前夜の1940年の神戸を舞台に、貿易会社を営む福原優作(高橋一生)と聡子(蒼井優)夫婦が、満州である事実を知った事から人生が狂っていく様子を描いたサスペンス映画なんですね。
主演の蒼井優の劇場型の演技とは対照的に、抑えた演技ながら当時のインテリ男性を演じきった高橋一生の上手さに驚いた作品でした。

3位  2分の1の魔法

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魔法が科学に取って代わられたファンタジー世界を舞台に、亡父を蘇らせる魔法を求めて冒険するエルフの兄弟を描いたディズニー・ピクサー作品。

ポスターや予告編のビジュアルは歴代作品と比べてかなり地味だし、コロナ禍の影響をもろに受けた事も手伝って興行的に苦戦を強いられた本作ですが、実際に観たら、あまりに凄すぎて逆に凄さが伝わらないっていう、ストーリーテリングの教科書のような見事な脚本にビックリ。さすがはピクサーって感じでしたねー。

2位  ジョジョラ・ビット

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「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」やMCU作品「マイティ・ソー バトルロイヤル」のタイカ・ワイティティが監督が、第二次世界大戦末期のドイツやナチスによるホロコーストを、ヒトラーに憧れる10歳の少年ジョジョの目を通して寓話的に描いた作品。
ナチスホロコーストという重い史実をモチーフにしながら、ポップで可愛らしいコメディーとして描きつつ、退廃的な空気に支配されつつある現代と敗戦濃厚なドイツをリンクさせてみせたタイカ・ワイティティ監督のセンスが光る作品でしたねー!

1位  パラサイト/半地下の家族

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というわけで、個人的2020年ベスト1全僕の満場一致で「パラサイト」に決定しましたー!拍手喝采!(゚∇゚ノノ”☆(゚∇゚ノノ”☆(゚∇゚ノノ”☆パチパチパチ!!!

まぁ、今年の映画界はパラサイトに始まりパラサイトで終わるって感じなので、何の意外性もないと思いますが、実際面白いんだから仕方ない。

個人的な事で言うと、本作を観たのを機に見逃していた「グエムル-漢江の怪物-」と「母なる証明」もレンタルして観たんですが、ポン・ジュノ監督は現在、世界最高峰の映画監督だと確信しましたねー。

外国人監督の外国語映画ながら、アカデミー作品賞と監督賞をW受賞したのも納得ですよ。

来年の1月8日には地上波でノーカット放送されるらしいので、まだ未見の人は是非!

 

というわけで、今年公開された作品の個人的ベスト10でした。

とにかく今年はコロナ禍の影響で、大作の公開延期が重なるという映画関係者にも映画ファンにも辛い一年になってしまいましたが、来年こそはこのコロナ禍が落ちついて何気兼ねすることなく映画を楽しめることを望むばかりです。

というわけで、2020年公開映画、個人的ベスト10でした!

それでは皆様、よいお年を―!!(´∀`)ノシ

DCEUを救った女神再降臨!「ワンダーウーマン1984」(2020)

ぷらすです。

公開初日に劇場で『ワンダーウーマン1984』を観てきました!

コロナ禍の影響で、今年公開されるはずだったマーベル&DC映画が次々に延期されたことで、今年公開された唯一のアメコミヒーロー映画となってしまった本作が、この年の瀬についに公開されるということで、矢も楯もたまらず公開初日に行ってきましたよ!

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概要

ワンダーウーマン』のガル・ガドットパティ・ジェンキンス監督が再び組んだアクション。恋人を亡くして沈んでいたヒロインの前に、死んだはずの恋人が現れる。前作に続いてクリス・パインが恋人を演じ、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』などのクリステン・ウィグをはじめ、ロビン・ライトペドロ・パスカルらが共演。(シネマトゥデイより引用)

感想

ワンダーウーマンとは

ワンダーウーマンは、スーパーマンバットマンに次ぐアメコミ出版会社DCコミックスの古参ヒーローの一人です。
ギリシア神話に登場する女性だけの部族「アマゾネス」の王女で女神という出自を持つ彼女は、 1941年11月出版の「All Star Comics #8」で初登場。
嘘発見器を発明した心理学者で作家のウィリアム・モールトン・マーストン(PNはチャールズ・モールトン)によって生み出された彼女は、その出自からコミックの枠に収まらずフェミニズム運動や女性の地位向上のシンボル的存在として描かれてきたわけですが、マーストン自身の性的趣向を反映するようなボンテージコスチュームやキャラ設定から、本来味方であるはずのフェミニストの女性たちからも度々批判に晒されてしまうキャラクターでもあるんですね。

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そんな彼女が実写版としてスクリーンに初めて登場したのが、2016年公開のDCEM(DCエクステンデッド・ユニバース)作品第二弾「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」で、長身の美人女優ガル・ガドット演じるワンダーウーマンは、まさにコミックから抜け出てきたような完璧なビジュアルだったので、何かと酷評されていた同作の中で彼女の登場シーンだけはファンが口を揃えて褒めたんですよね。

続く「スーサイド・スクワッド」で三度盛大にやらかしたDCEUは存続の危機に立たされるわけですが、その翌年公開された前作「ワンダーウーマン」はアメコミヒーロー映画初の女性監督パティ・ジェンキンスがメガホンを取った事や、ストーリー的にもポリティカル・コレクトネスやミートゥー運動など、時流の流れを踏まえたメッセージ性の高い物語がウケて大ヒット。特に女性から高評価を得て、結果世間のDCEUに対する風向きすらも変えたという、まさにDCEUにとっての救いの女神となったわけです。

本作は、そんな前作から引き続きパティ・ジェンキンス監督とガル・ガドットがタッグを組むということで、公開前から期待が高まっていたんですよねー。

ざっくりストーリー紹介

1984アメリカ。第1次世界大戦の裏で暗躍する敵を倒して世界を救ったワンダーウーマンことダイアナガル・ガドット)は、身分を隠しスミソニア博物館のキュレーターとして働きながら、密かにヒーロー活動を行っているんですね。

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そんなある日、ダイアナはショッピングモールに店を構える宝石店に入った強盗を捕まえるんですが、実はその宝石店は裏で盗品などを扱う違法な店だったのです。

で、店の倉庫に隠されていた盗品の鑑定を頼まれたのが博物館に着任したばかりの宝石学者バーバラ・ミネルバクリステン・ウィグ)。

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その盗品の中に、何でも一つ望みが叶うという石が紛れ込んでいて、バーバラは冴えない自分を変えダイアナのようになりたいと願い、ダイアナは前作で死別した恋人ティークリス・パイン)との再会を望んでしまう――というストーリー。

ところが、実はその石は持ち主の望みを叶える代償にいくつもの文明を滅亡させてきた呪いの魔石だったからさぁ大変。
劇中でも言われていますが、簡単に言えばこの石は「猿の手」的なアイテムだったわけです。

ワンダーウーマンの方向性を示した作品

ワンダーウーマンが他のヒーローと違うのは、彼女が「平和主義者」であるという部分ではないかと思います。
これは悪と戦うアクションコミックのヒーローとは、ある意味で矛盾する特徴でもあるわけで、実際前作ではストーリーの流れとクライマックスのチグハグさが目立ったというか、「ホントにいたんかーい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」っとツッコミを入れた人も多いのではないでしょうかw

あの展開は多分、DCEUの中の一本ということで脚本に何らかの横やりが入った結果だと思うし、パティ・ジェンキンス監督の本意ではなかったように思ったんですね。

しかし、DCEU自体は現在も継続しているものの、前作「ワンダーウーマン」の成功を踏まえたDCが、MCUのように作品と作品を繋げることを重視するスタイルから、作品単体としてのクオリティを重視する方針に舵を切ったことで、本作では要所要所にド派手でカッコいいアクションシーンは入るものの、作品のメインをバーバラとダイアナ、そして本作の事実上のヴィランであるマックスウェル・“マックス”・ロードペドロ・パスカル)それぞれのドラマと、ダイアナとスティーブのロマンスという二大要素に振り切ってみせたんですね。

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また、設定のロジックや細かい辻褄合わせよりも、物語やキャラクターのエモーションを優先させるストーリーテリングは、同じく女性作家が描く「鬼滅の刃」のストーリーテリングに通じるものがあるなーなんて思いました。
劇中に本当の意味での悪役(加害者)がいないというのも同じですしね。

何よりパティ・ジェンキンスは、平和主義者で愛の戦士であるワンダーウーマンというヒーローが進むべき物語の方向性を本作でしっかりと示したと思うし、あのオチのつけ方はDC・マーベルのどの作品とも違うワンダーウーマンならではの決着だったと思いました。

とはいえ

まぁ、だからと言って本作が文句なしの100点満点の映画というわけではなく、(個人的にはそんなに気にならなかったけど)やっぱ151分は流石に冗長だと思うし、
1984年を舞台にした意図は分かるけど、作劇的な意味はあまり感じられなかったというか。別に現代が舞台でも成立する物語なんだよなーと思ってしまいました。
まぁ、そこは大人の事情が絡んでるんでしょうけどもw

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 あと、キャラや物語の構造上仕方ないけど、ワンダーウーマン(ダイアナ)って若干オカンっぽいというか、正しさ・善良さゆえの説教臭さが出てしまうんですが、そこは監督も分かっていて、鏡像関係にあるバーバラに「説教なんか聞きたくない!」的なツッコミを入れさせてるのは良かったと思いました。

 正直、今年公開のアメコミ映画が本作だけなので他の作品との比較がないことや、もっと単純に新作映画を劇場で観れて嬉しい気持ちが乗っかって、多少評価が甘くなってるのは否めないけど、個人的に大満足な一作でした!

興味のある方は是非!!!

 

*12/26追記
文中、「アメコミヒーロー映画」と書いてますが、DC映画としては3月に「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」が公開されてました。(〃ω〃)>

 

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凄すぎて逆に凄さが伝わらない「2分の1の魔法」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは日本では今年8月に公開されたピクサー作品『2分の1の魔法』ですよー!

公開時は「何か他の作品と比べてパッとしないなー」と食指が動かなかったんですが、今回Amazonvideoでレンタルして観て、劇場に行かなかったあの時の自分をぶん殴ってやりたくなりましたよー!

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概要

ディズニー&ピクサー異世界を舞台に描くアニメーション。科学や技術の発展によって魔法が影を潜めてしまった世界に生きる兄弟の冒険が描かれる。監督は『モンスターズ・ユニバーシティ』などのダン・スキャンロン。声の出演は、『スパイダーマン』シリーズなどのトム・ホランド、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズなどのクリス・プラットのほか、ジュリア・ルイス=ドレイファス、オクタヴィア・スペンサーら。(シネマトゥディより引用)

感想

ピクサーとは

本作は1995年公開の「トイ・ストーリー」から数えて22作目となるピクサーのアニメーション作品です。
ピクサーは最初ルーカスフィルムの一部門でしたが、その後スティーブ・ジョブズに買収され、ハードウェアとCG用のソフトを開発、販売する会社としてリスタート。

しかしコンピュータおよびソフトウェアの業績が悪かったことから、ジョン・ラセターらアニメーション開発部門は商品宣伝のためCGアニメーションを制作、その後ディズニーと共同制作で「トイ・ストーリー」を制作、この1本で世界中にピクサーの名を轟かせ、2006年にディズニーに買収されてディズニー・ピクサーとなって現在に至るわけです。

そんなピクサーの特徴は、全作品がスタッフの実体験からくる私小説的な作品であるということ。
例えば「トイ・ストーリー」シリーズは子供たちの成長を見守るオモチャたちを描いたシリーズですが、これはピクサースタッフと子供たちの関係のメタファーであり、またオモチャというモチーフは=ピクサー(アニメーションスタジオ・アニメーター)のメタファーになっています。

それ以外の作品やシリーズでも、親子、家族というモチーフはピクサー作品の多くで描かれており、それは監督・スタッフの実体験が出発点になっていることが多いためと言われています。

つまり、ピクサー作品は個人的なエピソード=私小説的ストーリーを基に、極上のエンターテイメント作品を作り上げているところが他スタジオのアニメーションとは一味違うところでもあるのです。

で、そんなピクサー22作目となる本作は、それまで長年にわたってピクサースタジオを率いていたジョン・ラセターの手を離れた最初の作品で、監督は「モンスターズ・ユニバーシティ」も手掛けたダン・スキャンロン

本作の主人公イアンと同じく自身が1歳の頃に父親を亡くした経験や兄との実体験を基に本作の脚本を練り上げていったそうですよ。

ざっくりストーリー紹介

まずはそんな本作のストーリーをざっくりご紹介。
誰もが簡単に使える便利な科学に取って代わられ、すっかり魔法が廃れてしまったファンタジー世界が舞台。
内気なエルフのイアントム・ホランド)は、引きこもり?で“歴史”オタクの兄バーリークリス・プラット)、シングルマザーの母ローレル(ジュリア・ルイス=ドレイファス)と3人暮らし。

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16歳の誕生日、イアンは母から亡き父親が残したプレゼントを渡されます。
それは魔法の杖と魔石、そして「復活の呪文」のセット。
兄バーリーによれば、この杖と石を使って呪文を唱えれば24時間だけ死者を復活させることが出来るというんですね。
早速バーリーが呪文を試しますが魔法は発動せず、一人になったイアンが何気なく呪文を口にすると魔法が発動します。

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すわ「お父さんに会えるのか!?」と思ったら、魔石のパワーが足りず復活したのは父親の下半身だけ

1/2の父親を完全復活させるため、イアンとバーリーはもう一つの魔石を求めて冒険に出るのだが――というストーリーなんですね。

この、「魔法が科学に取って代わられた世界」という設定も、主人公の兄弟が少年でもなく大人でもなく、高校生と大学生の青い顔をしたエルフの兄弟というビジュアルも、これまでのピクサー作品と比べて正直パッとしないというか、新鮮味がなく興味をそそられないって思った人は多いのではないでしょうか。

例えば
モンスターズ・インク」でサリーとマイクが務める大企業モンスターズインク(通称MI)やモンスターの世界。
「ウォーリー」でウォーリーが取り残されたゴミの山と化した地球の姿。
リメンバー・ミー」でミゲルが迷い込む『死後の世界』などなど。

ピクサー作品といえば観客がそれ一発でワクワクするような世界観を描いたビジュアルが売りだと思うけど、本作ではビニールプールでスマホをいじる人魚や、野良化して町中のゴミ箱を漁るペガサスはいるけど、舞台はいかにも現代のアメリカの田舎町だし、現代人と変わらない生活を送るファンタジー世界の住人というキャラ設定は既視感があるし、何なら色合いもちょっと地味目で全然ワクワクしない。

と・こ・ろ・が!

いざ観始めると、とにかくそのストーリーテリングの完璧さにビックリしてしまうんですよねー。

凄すぎて凄さが伝わらない

まず本作の世界観は、TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)の古典「ダンジョンズ&ドラゴンズ」がモチーフになっているんだそうです。
兄バーリーは大学にもいかずTRPGマジック・ザ・ギャザリングがモチーフのカードゲームなどにハマっているゲームオタクなんですが、本人曰く、これらのゲームは史実を基に作られているのだそう。
そんな“歴史“を愛するバーリーは、遺跡を取り壊して開発しようとする工事の邪魔をしたりしてみんなに街の厄介者扱いされているんですが、父親を復活させる旅の過程で、彼の主張が正しかったことが次々と証明されていく。つまり、この冒険は厄介者で役立たずだと思われていたバーリーを再評価=多様性の受容する旅でもあるし、本作が典型的な行きて帰りし物語」のテンプレをなぞっているのにも、ちゃんと理由があったのです。

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また、主人公のイアンがいつも自分に自信が持てないのは、病で亡くなった父親との記憶がない事に起因していて、逆にバーリーがファンタジー世界に傾倒しているのも父親との死別が(多分)原因なんですね。

で、イアン16歳の誕生日に父親から贈られた魔法セットは、成長した息子たちと一目会いたいという父親の願いでもあり、その思いは息子たちと共有され、その思いの達成が本作の原動力になっているわけです。

そんな彼らが魔石の地図を求め最初に向かうのが、ライオンの体にコウモリの羽、サソリの尻尾を持つマンティコアの酒場。

いかにも恐ろし気な館のドアをバーリーが恐る恐る開けると、中はすっかり郊外のファミレスのようになっていて、経営者のマンティコアもすっかり野性を失っているんですよね。

ここはもちろん一流の面白ポイントではあるものの、実は世界中の「物語」を略奪しては漂白して子供向けにしてしまう親会社ディズニーへの痛烈な批判でもあり、そう考えると野性を取り戻したマンティコアが炎でマスコットキャラの着ぐるみを燃やしてしまう件は、中々痛快だったりします。

で、そんな冒頭から中盤にかけての、キャラの何てことないセリフや行動・ギャグが実は全部クライマックスからラストに向けての伏線になっていて、それもいわゆる「伏線の為の伏線」ではなくて、ちゃんとエピソードを有機的にリンクさせてクライマックスに向けて物語にドライブをかけていく歯車として機能しているんですよ!

ネットでは「兄のバーリーがウザすぎるうえに最後まで役立たずでむかつく」みたいな感想も目にしましたが、いやいや、ちょっと待ってくれと。

イアンが冒険で成功するときは必ずバーリーのサポートがあるときだし、逆に失敗するときはバーリーの言うことを信じない時です。

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まぁ、バーリーがウザいのは事実だから仕方ないけど、その実、彼はずっと弟をサポートし続けていて、それがあったからクライマックスのイアンの決断、そしてあの感動のラストへと繋がっていくわけですよ。

あと、残念ながら魔法の杖は使えないバーリーですが、彼に関わったキャラクターたちは劇中で(結果的に)失っていたものを取り戻す=世界が少しだけ変わるわけです。
それはつまり、人と人が影響し合うことでほんの少しだけ世界が変わる事がまさに魔法なんだよ。的なメッセージも込められているわけですね。

そういう意味で、本作の脚本はストーリーテリングの教科書のような見事で一分のスキのない脚本なんですが、あまりに凄すぎて逆に凄さが伝わらないというか、あまりに完璧すぎてテンプレに乗っただけの無個性で工業的な作品にすら見えちゃうっていうか。

逆に、物語的にもう少し若干の齟齬や歪さがあった方が、作家性のある作品だと観客は思ったかもしれません。
トイ・ストーリーなんかはシリーズを重ねるうちに、そうなってましたよね。

ともあれ、ピクサーの過去作品と比べてもビジュアル面は群を抜いて地味な本作ですが、ことストーリーで言えばピクサー作品の中でも1・2を争うくらい見事だと思ったし、個人的に大好きな作品でしたよ!

興味のある方は是非!!!

 

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アートの本質を問うドキュメンタリー「バンクシーを盗んだ男」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、世界を股に掛けるストリートアーティストのバンクシーが、2007年にパレスチナベツレヘムで描いた「ロバと兵士」という壁画の行方を追いながら、アートの本質に迫るドキュメンタリー映画バンクシーを盗んだ男』ですよー!

この作品もあるネット番組で知りアマプラに入っていたので、早速観ましたよ!

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概要

アーティストのバンクシーが描いた1枚の絵が、世界に与えるインパクトに迫るドキュメンタリー。パレスチナイスラエルを分断する巨大な壁に描かれたバンクシーの絵がオークションにかけられ、波紋が広がる。ミュージシャンのイギー・ポップがナレーションを担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

「ロバと兵士」の足跡を追う旅

バンクシーと言えば、メッセージ性の強いステンシル画を世界各国の壁に描く、正体不明、神出鬼没のストリートアーティストで、社会的、政治的な自身のメッセージをユーモアと皮肉込めて描くスタイルで知られています。

2018年のオークションでは、1億5千万で競り落とされた途端、額に仕込まれたシュレッダーで絵を裁断したことで話題になりましたよね。

その一方で、ディズニーランドを正面から皮肉ったテーマパーク「ディズマランド」を設営したり、パレスチナベツレヘム地区にある分離壁の目の前に“ 世界一眺めの悪いホテル”「T h e Walled Off Hotel」を開業したり。
かと思えばマドンナやBlurのアルバムジャケットを手掛けるなど、その活動は多岐にわたります。

本作は、2007年にバンクシーが1 4 人のアーティストと共にパレスチナイスラエルを分断する高さ8m、全長450kmにも及ぶ超巨大な壁にグラフィティアートを描くプロジェクトで手掛けた6作品の1つ「ロバと兵士」を、パレスチナの商人が描かれた壁ごと切り取ってネットオークション「eBay」で売ったという話からスタートするんですね。

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「ロバと兵士」は(イスラエル)兵士がロバのIDをチェックしているという風刺的なグラフィックですが、これを見たパレスチナの人たちに「自分たちをロバ呼ばわりするのか!」(中東ではロバは侮辱の意味がある)と怒りを買い、本作冒頭で登場する135㎏の巨漢タクシー運転手ワリド”ザ・ビースト”の提案で彼のボスが壁画が描かれた建物を買い取り、絵の描かれた壁を切り取って「eBay」に出展、海外に売り払ってしまったというのです。

この行為にバンクシー本人は怒ったらしいですが、ここから本作はストリートアート(無断で描かれる壁画)の所有権・著作権は誰にあるのか、壁に描かれた絵を第三者が勝手に移動(保存)する事の是非について――という話にシフトしていくんですね。

要約すると、

1・バンクシーらストリートアーティストは、そもそも人の家や公共の建物に無断で描いた落書きと同じなのだから、建物の所有者がその絵を消そうが売ろうが文句は言えない説。
2・それが名のあるアーティストの”作品“である以上、著作権は作者にあるのだから勝手に売買するのは違法だろ説。

3・バンクシーを始め、多くのストリートアーティストの作品は、描いた場所にメッセージや意図があるわけで、作品を切り取って場所を移してしまえば文脈は失われ作者が作品に込めたメッセージも失われてしまう説。

4・雨風に晒され風化し数年で消えてしまえば、その作品に込められた作者の意図やメッセージも“無かったこと“になってしまう。だから、芸術史観的な意味でも作品の保護、保存が必要である説。

ベツレヘムから海を渡りデンマーク→ロンドン→ロスアンゼルス→ロンドンという「ロバと兵士」の足跡を追うのと同時進行で、美術品の収集家やディーラー、芸術修復家、キュレーター、著作権専門の弁護士、ストリートアーティスト、そしてパキスタンの人々などへのインタビューを重ねることで本作は構成されていますが、それぞれの立場、スタンスで多少の相違があれど、概ね上記の4つの意見に分かれるんですね。

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さらには、
ピカソの絵が競売に掛けられた時、語られるのは彼の芸術ではなく競り落とされた金額だけ」(意訳)

「(文脈というなら)ゴッホの絵だってアルルの明るい日差しの下でこそ観られる価値がある――という事になってしまう」(意訳)

と、話はストリートアートに留まらず、アートとビジネスの関係、アートの所有権と役割という、より本質的な方向へと掘り下げられていくのです。

そして6年後、再びベツレヘムに戻ったスタッフは、ワリドや「ロバと兵士」を売り払った彼のボスで地元の名士M・カナワティベツレヘムの市長や壁の前でバンクシーの絵のプリントグッズを売って生計を立てているおじいさんなどのインタビューを行うんですね。

ボスのM・カナワティは「ロバと兵士」を売り払ったお金を全て教会に寄付したと言い、ボスから一銭の分け前も貰えなかったワリドはバンクシー嫌いに拍車がかかり、分離壁が作られる前は地元住民相手の雑貨店を営んでいたおじいさんは壁の出現で経営困難になるも、2007年のプロジェクト作品を見にやってくるようになった観光客相手に、バンクシーの絵をプリントしたグッズを売って暮らしているんですね。(バンクシー公認らしい)

入れ子構造

とまぁ、そんな感じで本作は「ロバと兵士」をメインに据えながら、アートの在り方を言及するドキュメンタリー映画になっていて、もちろんそれだけでも十分に見ごたえがあるんですが、観終わった後に振り返ってみるとこの作品が実は「入れ子構造」になっていることに気づきます。

“大国“の都合と思惑によって分断の壁で分けられたイスラエルパレスチナ

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「ロバと兵士」はそんな状況への批判や平和への願いを込めて描かれた作品なのでしょうが、作者であるバンクシーの意思とは無関係に壁から切り取られ、売り払われ、バイヤーや収集家に振り回されるように北欧、イギリス、アメリカを転々とします。

それって大国(第三者)の意思によって勝手に祖国を分断され、居場所を追われたたパレスチナ人と重なりませんか?

つまり、本作はバンクシーとストリートアートを描くドキュメンタリーでありながら、その実、監督のマルコ・プロゼルピオパレスチナの国や人と「ロバと兵士」を意図的に重ねて本作を「入れ子構造」にすることで、国と人と世界というより普遍的なテーマを観客に突きつけているのだと僕は思いました。

興味のある方は是非!!!

 

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バンクシーを盗んだ男

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