今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

トム・ハーディ版ヴェノム完結「ヴェノム:ジ・ラスト・ダンス」(2024)

ぷらすです。

先日、初日・初回の上映で鑑賞してきました。『ヴェノム:ジ・ラスト・ダンス

SSU(ソニー・スパイダー・ユニバース)シリーズ最初の作品で、マーベルの大人気キャラクター、ヴェノムを主役に据えた三部作完結編です。

というわけで今回は、ネタバレを気にせず感想を書いていくので、まだ本作を未鑑賞で内容を知りたくない人はお気を付けください。

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概要

トム・ハーディが主人公を続投し、マーベルコミックに登場するキャラクター、ヴェノムを描く『ヴェノム』の第3弾。ヴェノムの秘密が明らかになり、それを狙う地球外生命体のシンビオートとの激しいバトルを映し出す。監督などを務めるのは、前2作で脚本などを担当したケリー・マーセル。『死の谷間』などのキウェテル・イジョフォーのほか、ジュノー・テンプルリス・エヴァンスらがキャストに名を連ねる。(シネマトゥディより引用)

感想

SSUって何なのさ

というわけで、まずはSSU(ソニー・スパイダー・ユニバース)「ヴェノム」が何か分からない人のためにざっくり解説していこうと思います。

SSU(ソニー・スパイダー・ユニバース)は、物凄く乱暴に言うと「スパイダーマン」に登場するキャラクターを主人公に据えた作品群のことです。

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「え?スパイダーマンってMCUじゃないの?」と思う人もいるかと思いますが、現在、スパイダーマンの映画化権を所有しているのはソニーで、MCUソニーが提携し、スパイダーマンの一部権利を共有する形でMCUスパイダーマンの映画を制作してたんですね。

一方のソニーは、自社が権利を持っているスパイダーマンのキャラクターを主人公に据えたスピンオフ的なユニバース「SSU」を展開。その第一弾が2018年公開の「ヴェノム」です。

ヴェノムは宇宙からやってきたシンビオートという寄生型宇宙生物で、色々あってトム・ハーディ演じる新聞記者エディ・ブロックと融合。思いがけずバディとなった“二人“は協力しながら様々な敵と戦うという。
日本で言えば「寄生獣」的なストーリー。

この「ヴェノム」のヒットを受けてSSUは「モービウス」(2022)「マダム・ウェブ」(2024)を公開したものの、この2作は興行成績・批評的にも散々だったんですね。個人的にはそこまで嫌いじゃないんですが。うーん。

三部作完結編に相応しい作品に

そんな感じで、SSU第一弾としてスタートした「ヴェノム」でしたが、個人的な感想としてはヴェノムというキャラクターの設定を観客に理解させるため色々盛り込み過ぎた感じで、ぶっちゃけかなりとっ散らかった印象でした。

しかし、そんなストーリー構成の粗を補って余りあるほど、トム・ハーディ演じるエディとヴェノムのある種ブロマンス的な関係性が日本ではネットを中心に話題となり、主演が大スターのトム・ハーディだったこともあって大ヒットに繋がったんですね。

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続く第2作「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」では、前作のエピローグでカメオ登場した原作ファンには大人気キャラクター、カーネイジをヴィランに迎え前作よりもスケールアップした作品でしたが、この時期は丁度MCUソニーの間でスパイダーマンを統合する流れがあって、この作品内でもマルチバース設定などが持ち込まれたことで色々散らかった内容に。エピローグでも明らかにMCUとの統合を示唆する動きがありましたが、その後、MCUマルチバースサーガの失敗もあり計画は白紙に戻されたようで、結局は物語が会社同士の舞台裏に振り回された形になってしまい、評価の方もイマイチな結果に。

そして本作は、そんな前2作でも脚本を担当したケリー・マーセルが監督も担当。ヴェノムのキャラクターや性格、過去2作でヴェノムやエディとのキャラも観客に浸透し、MCUとの絡みもなくなり、物語をヴェノムとエディの関係性に焦点を絞った事で個人的には3作中で一番面白い作品になったと思いましたよ!

あと、MCUや親会社のディズニー作品、もっと言えば多くのハリウッド映画では、物語の中に社会的・政治的な思想や主張みたいなものが入っていて、特に近年はそれが目立ちすぎて説教臭さを感じたり、観ていて疲れる事も多いんですが、SSU作品の場合、良くも悪くもそういう主義主張が全くないのでめっちゃ気楽に観られるんですよね。

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本作も、エディとベノムだけが持つ重要な「鍵」を狙って地球にやってくる過去一ヤバイ敵と、シンビオートを捕獲・研究する軍に狙われる二人のロードムービーになっていて、物語や構成はある種のテンプレに沿っていて特に目新しさはないし先も読めるんですが、その分、エディ&ベノムを主軸にした“キャラもの“として日本のアニメに近い感覚で観られるし、劇中、ヴェノムの寄生や自在に変形するという特性を活かした川でのチェイスシーンや、クライマックスのアクションシーンなどは、3作中一番見ごたえがあって、完結編に相応しい作品になったと思いました。

本作公開前にスパイダーマン第4弾の発表もあったので、もしかしたらエピローグなどでトム・ホランドカメオ出演MCUとSSU統合の“匂わせ“があるかもと思って観ていたんですが、そういうのも一切なく「ヴェノム」三部作としてキッチリ終わったのも、個人的には好感が持てましたね。

まぁ、ヴェノムは人気キャラなので、そのうち別キャスト・別設定でMCUスパイダーマンと合流するかもですが。

あえて言えば

そんな感じで個人的にはめっちゃ楽しんだ本作ですが、これは三部作で脚本を担当、本作では監督も兼任したケリー・マーセルのクセなのかもですが、本作でもせっかく魅力的なキャラクターが多数登場するのに、それぞれの描きこみが足りないのでキャラクターの行動や展開が唐突に感じたり、物語自体が薄味に感じてしまう部分はあるかも。

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とはいえ、そんな粗も込みでSSUの味と言えなくもないし、何よりやっぱ、トム・ハーディ演じるエディとヴェノムの二人が魅力的に描かれているので、それ以外の事はそんなにノイズには感じませんでした。

ちなみに僕は今回「吹き替え版」で鑑賞したんですが、エディ役の諏訪部順一さんとヴェノム役の中村獅童さんの演技も素晴らしかったので、吹き替え版もおススメですよ。

興味のある方は是非!!

エメリッヒ版ゴジラを思い出す「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」(2024)

ぷらすです。

初日初回の上映で観てきました。

2019年公開で主演のホアキン・フェニックスアカデミー賞を受賞した大ヒット作「ジョーカー」の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

日本に先立って公開された本国アメリカでは、あの「マダムウェブ」以下の低評価で大酷評を喰らっているそうで、日本でもすでに賛否両論の本作。

まだ公開されたばかりの作品ですが、作品の構成上どう書いても、前作・そして本作のネタバレを含んでしまうので、今後本作を見ようと思っている人は必ず先に映画を見てからこの感想を読んで下さい

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

孤独な大道芸人の男が、絶対的な悪へと変貌するさまを描いた『ジョーカー』の続編。前作から2年後を舞台に、悪のカリスマとして祭り上げられたジョーカーが謎めいた女性と出会う。トッド・フィリップス監督とホアキン・フェニックスが再び手を組む。『ハウス・オブ・グッチ』などのレディー・ガガのほか、ブレンダン・グリーソンキャサリン・キーナーらがキャストに名を連ねる。(シネマトゥディより引用)

感想

何故酷評されているのか

日本での公開に先立って公開されたアメリカで大酷評を喰らい、映画評価サイト「ロッテントマト」やSNS上では前作の大絶賛から一転。大酷評の嵐となり、公開された映画をアルファベットで格付けする「シネマストア」というサイトではあの「マダムウェブ」より低いD評価という情報を聞き、日本公開日の今日、かなり覚悟して映画館に向いました。

で、先に書いちゃうと個人的には「メッチャ面白いとは言わないけど、酷評する程悪くはない」って感じでした。でも一方で酷評したくなる人の気持ちも分かるかなと。

全米での酷評の理由としては「前作で完結してるのに、なぜ続編を作ったのか」「なぜミュージカルなのか」の2点に集約されるみたい。

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で、映画館で観た後で読んだXで「前作を観てジョーカーと自分を重ねた人が、本作で梯子を外されてブチ切れてる」(意訳)というのがあり、確かに!と膝を打ってしまいました。

個人的に本作はエメリッヒ版ゴジラに似てると思っていて、あれをゴジラだって言われたら「違うよバカ!」って言っちゃうけど、怪獣映画としては結構面白い。みたいな。

そもそもこのトッド・フィリップス版「ジョーカー」は、アメコミ(DC)映画の皮を被っているけど、やってることはマーティン・スコセッシリスペクトで、特に「キング・オブ・コメディ」の影響は大きくて精神的続編と言っても過言ではないんですよね。

つまり最初から、「ダークナイト」やコミック、DCユニバースなど、バットマンヴィランであるアメコミ映画のジョーカーとは完全な別物で、文脈としては「タクシードライバー」や「狼よさらば」のような、アメリカンニューシネマのあとに公開された作品群のグループなんですよね。

なので、バットマンのジョーカーと同一視しちゃうと、本作を見て「こんなのジョーカーじゃない!」ってなっちゃう。

でも、前作も本作もこの「ジョーカー」で描かれているのは最初からアーサー・フレックの物語で、このシリーズにおける“ジョーカー”はあくまで現象でしかないんですよね。その辺は、本作冒頭のアニメシーンで描かれていますけども。

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ただ、本作に怒っている人とレディー・ガガ演じるリーを含め、ジョーカーに心酔し模倣する群衆たちがリンクしてるとこまで込みで、実はトッド・フィリップス監督の計算だったんじゃないかと思ったりして、もしそうだとしたら監督的にはこの炎上も「してやったり」なのかもって思いましたねー。

なぜミュージカルなのか

で、もう一つの批判点「なぜミュージカルなのか」についても、前作からの繋がりで考えればそんなに不自然ではないと思うんですよね。

アーサーはそもそもショービジネスの世界に憧れている設定だし、前作の階段のシーンなんかはそのままミュージカル映画的演出でしたしね。

悲惨な状況の中、主人公の頭の中でミュージカル繰り広げられるのは、個人的にビョーク主演のトラウマミュージカル「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を連想したりしましたよ。

前作でかけた魔法を、本作で解いてアーサー(と観客)に現実を突きつけるというある種の残酷さも、「ダンサー~」のあのラストシーンを思い起こさせるなーと。

そんなあれやこれやを考えれば、本作を酷評する人の気持ちも分かるし、ジョーカーというアメコミを代表するアンチヒーローの名前をタイトルに冠している以上仕方ないとは思うけど、DC映画のジョーカーとは全くの別物。アーサー・フレックという孤独な男が見たうたかたの夢の物語だと思って観れば、評価も変わるんじゃないかなって思いました。

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個人的にはミュージカルシーンもレディー・ガガホアキン・フェニックスの歌がいいので全然見ていられたし、中盤のステージのシーンではグッときて泣きそうになったし、個人的には前作よりもむしろ本作の方が、アーサーに自己投影できた気がしました。

興味のある方は是非!!

”時代劇”への熱いラブレター「侍タイムスリッパー」

ぷらすです。

今回ご紹介するのは安田淳一率いる自主制作映画会社・未来映画社の『侍タイムスリッパ―』ですよー!!

8月17日にたった1館で封切り。しかしその後自主製作映画ながらSNSで大きな話題を呼び全国100館以上に拡大公開された話題の作品です。

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概要

現代にタイムスリップした武士の姿を描くSF時代劇。落雷に打たれて現代の時代劇撮影所にタイムスリップした会津藩士が、剣の腕を生かして斬られ役で生計を立てる。メガホンを取るのは『ごはん』などの安田淳一。『一粒の麦 荻野吟子の生涯』などの山口馬木也、『AI崩壊』などの冨家ノリマサ、安田監督作『拳銃と目玉焼』などの沙倉ゆうののほか、峰蘭太郎、紅萬子、福田善晴らが出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

安田淳一率いる「未来映画社」第三弾

本作を制作した安田淳一さんと「未来映画社」を僕が知ったのは、偶然SNSで流れてきた第1作「拳銃と目玉焼き」の話題でした。その後同作品をレンタルビデオで観て、自主制作映画とは思えないクオリティーの高さに驚いたんですね。

aozprapurasu.hatenablog.com

とはいえ、まだ当時の安田さんや「未来映画社」は知る人ぞ知るという感じだったんですが、本作の公開後「未来映画社」の名前を再びSNS上で見かけるようになり、その高評価に後押しされる形で全国100館以上で拡大公開されたと知り、調べてみたら我が町でも公開されていたので、今回早速観に行ってきました。

自主制作映画ながら異例の大ヒット

自主制作映画で大ヒットしたといえば、上田慎一郎監督の「カメラを止めるな!」を連想する人も多いかと思いますが、ある意味トリッキーなアイデアで観客を驚かせた「カメ止め」に対し、本作の「侍が現代にタイムスリップする」というアイデア自体は、日本の観客にとっては馴染みがあるというか、ある意味で非常にキャッチ―というか。

逆に言えばこれまで何度も擦られてきたネタだけど、それゆえに、逆に飲み込みやすいというか、違和感なく物語に入り込める。という印象でした。

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さらに本作で主役を務める山口馬木也さんと相手役の冨家ノリマサさんは、共に数々の時代劇に出演してきたベテラン俳優だし、殺陣師の関本役を演じる峰 蘭太郎さんは殺陣技術集団「東映剣会」の役員・会長を歴任した大ベテラン。

主人公の高坂新左衛門を世話するお寺の住職夫妻役の紅 萬子、福田善晴さんはそれぞれ関西演劇界の重鎮であり、その他の役の人たちもそれぞれテレビや映画、舞台演劇で活躍する実力派ばかり。さらに本作では数々の時代劇を制作してきた東映京都撮影所が全面協力と、京都伏見を拠点に長年活動してきた「未来映画社」にしか実現できない布陣での制作なんですね。

それゆえ、本作のルックに自主制作ならではの安っぽさは微塵も感じませんでしたよ。

時代劇と侍

そんな本作の素晴らしいところはまずアイデア

侍が現代にタイムスリップという非常に分かりやすくキャッチーな設定ながら、その転移先が時代劇の撮影所という発想はめっちゃ面白いし、時代の流れの中で消えゆく“チャンバラ時代劇”と幕末の侍をリンクさせて物語に落とし込むというアイデアには思わず膝を打ちました。

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さらに演じる山口馬木也、冨家ノリマサという時代劇に通じたベテラン2人の、文字通り熱演も見事。
昨今は現代劇と同じ感覚で観られる時代劇作品も多いし、それはそれで面白いですが、お二人とも多くの時代劇で活躍されてるだけに、殺陣の動きも刀の扱いや所作も発声も、しっかり時代劇のそれなんですよね。クライマックスの殺陣のシーンは迫力と緊張感が凄くて、思わず身を乗り出してしまいました。

ややテンポが悪く冗長に見えるかも?

そんな本作ですが、序盤の導入部分から中盤以降の物語が本格的に動き出すまでの構成は、現在の視点で見るとややテンポが悪く冗長に見えるかもしれません。

「拳銃と目玉焼き」の感想でも似たようなことを指摘していたので、これ自体は監督でもあり脚本も担当している安田淳一さんの作劇のクセなのかもしれませんが、本作に限ってはもしかしたら狙ってそういう作劇にしているのかもと思ったり。

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劇中の関西的ベタベタなコメディシーンも含め、本作では昭和から平成初期にかけて隆盛だったテレビの人情ドラマ的なテンポやセリフを意識的に取り入れているように見えたんですよね。こうした人情劇もまた今では絶滅寸前でもあるので、前述した時代劇や侍という題材にリンクしているのかも?

僕が行った映画館でも、老齢に見えるお客さんがけっこういらっしゃっていて、劇中のコメディシーンではしっかり笑いも起きていましたしね。

SHOGUN 将軍」と本作

先日、真田広之さんが主演とプロデューサーを務めた「SHOGUN 将軍」が米エミー賞で史上最多18部門を受賞を受賞して話題になりましたが、いわゆる歴史上の武将などを主役にした大河などの「歴史時代劇」と本作の様な「チャンバラ活劇」は時代劇を支える両輪でもあるので、「SHOGUN 将軍」を面白いと思った人は、ぜひ本作も観てほしいと思います。

興味のある方は是非!

“俺たちが観たかったMCU”が帰ってきた!「デッドプール&ウルヴァリン」(2024)

ぷらすです。

デッドプールウルヴァリン』を初日・初回の上映で観てきました!

いやもうね、個人的に近年MCUに感じていたモヤモヤを全部吹っ飛ばしてくれる作品でしたよ!

「そうそう。俺たちはこういうヒーロー映画が観たかったんだよ!」って。

というわけで今回はまだ公開直後の作品ということで、物語の根幹に関わるようなネタバレはしないよう気をつけますが、一切ネタバレして欲しくないという人はお気を付けください。

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概要

ライアン・レイノルズ演じるデッドプールヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが共闘を繰り広げるアクション。世界の命運を左右する、あるミッションをめぐって、鍵を握るウルヴァリンデッドプールが助けを要請する。監督を『ナイト ミュージアム』シリーズや『フリー・ガイ』などのショーン・レヴィが務める。(シネマトゥディより引用)

感想

規格外のチートヒーロー。デッドプール

本作はマーベルの大人気ヒーロー「デッドプール」シリーズ第3弾であり、MCU作品としては第1作となります。

どういうことかと言うと、前2作は「X-MEN」シリーズのスピンオフ作品として20世紀フォックスによって制作・公開されていましたが、2019年のディズニーによる20世紀フォックス買収により今回MCUへと編入することになった、その第一弾になるわけです。

で、もしかしたらデッドプールを知らない人もいるかもなので、ざっくりどんなキャラクターかを説明すると、

デッドプールことウェイド・ウィルソンはニューヨークでトラブルシューターをしながら日銭を稼ぎ生活している傭兵でした。

そんな彼はある日、高級娼婦のヴァネッサと出会い、交際を経て結婚を約束。そんな幸せの絶頂だったウェイドを末期がんが襲います。

がんの治療と引き換えに極秘の人体実験の被験者となることを決めた彼は、エイジャックスというミュータントからミュータント細胞を活性化する血清を投与され、色々あって不死身の身体を手に入れるも容姿は醜く変容。もうヴァネッサと会う事は出来ないと絶望したウェイドは自作のコスチュームとマスクを身に着け、デッドプールとしてエイジャックへの復讐を果たすと、そのまま不死身の肉体と特殊部隊で培った武器術を駆使してヒーローとして活躍するようになるんですね。

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そんな彼の特徴と言えば、止まらないおしゃべりと下品で不謹慎なジョーク、そして「自身がコミックのキャラクターであることを自覚」していて、いわゆる“第4の壁“を突破してコミック読者や映画の観客に話しかけたり、映画の演出に口を出したり、主演のライアン・レイノルズが演じるも超不評だった「グリーンランタン」や「X-MEN版のデッドプール」を殺すなどのメタ的なギャグも普通にしちゃうという、いわゆるチートキャラです。

あと、普通にセンシティブネタやコカインネタ、オタク的にヒーロー映画ネタなどを持ち出して皮肉ったり、もう、なんでもありの超自由なヒーローなんですね。

そんなデップーがディズニー傘下のMCU編入ということで、上記のような毒気を全部抜かれて漂白されてしまうのでは?と、僕も含め危惧していたファンも多かったと思いますが、いざ蓋を開けてみればデップーはやっぱりデップーで、コカインを欲しがるブラインド・アルに「コカインネタはNGだとディズニーに言われている」とディズニーから言われた事を逆手に取ってネタにするなどアクセル全開。
まぁ、それでも前2作に比べれば、表現はややマイルドになってる感じもしましたが。

それでも、監督はあのライアン・レイノルズ主演の大傑作「フリー・ガイ」のショーン・レヴィなので、個人的に物足りなさを感じることはありませんでした。

ヒュー・ジャックマン復活!

そんな本作は、タイトルにもある通りデップーとX-MENの大人気ヒーローであるウルヴァリンがタッグを組むという、「マジンガーZvsデビルマン」「ジェイソンvsフレディ」「エイリアンvsプレデター」的なファンにとっては夢の企画。しかも本作でウルヴァリンを演じるのは、20世紀フォックスX-MENシリーズの顔として長年に渡りウルヴァリンを演じ、2017年公開の「LOGAN/ローガン」で壮絶な最後を遂げた、あの、ヒュー・ジャックマンなんですねー。

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公開前は、「LOGAN/ローガン」で綺麗に幕を閉じたヒュー・ジャックマンウルヴァリンが復活には賛否両論あったし、あのMCU総責任者ケヴィン・ファイギからも「戻ってきちゃダメだ、『LOGAN』が最高だったから」と言われたりしていましたがw

でもね、「ロッキー5/最後のドラマ」よりも「ロッキー・ザ・ファイナル」がサイコーだったし、誰に何と言われたって「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」で三人のピーターが揃った瞬間は号泣する。

そ・れ・が、ファン心理ってものでしょう。

確かに「LOGAN/ローガン」は良かったし感動もしたけど、ファン心理として「プロフェッサーやウルヴァリンの最後があんなに寂しく終わるなんて嫌だなー……」という思いがあったのも事実だし、やっぱウルヴァリンは不死身でカッコ良くて大暴れしてほしい。

そんなファン心理を大いに満足させてくれるのがこの作品ってわけなのです。

とはいえ、あれだけ壮絶な最後を遂げたウルヴァリンをどうやって復活させるのか問題はありまして、多くの人は「いや、『マルチバース』にいる別次元のウルヴァリンでしょ」って思うだろうし、実際そこはその通りなんです。

ただ、マルチバース設定は劇中で死んでしまったキャラクターを復活させることを容易にするけれど、それだけに安易に復活をさせれば、そのキャラクターや物語に思い入れがあったファンほど白けてしまう諸刃の剣。

そんなマルチバース設定が許されるマーベル唯一のキャラクターこそが、我らがデップーなんですよね!

元々なんでもありで死の概念も軽いチートキャラであるデップーの世界なら、どんな人気キャラクターを復活させても納得だし、あのキャラやあのキャラを復活させたあと雑に殺すのもメタギャグとして成立してしまう。

そういう意味でデップーだけが、ヒーロー界隈でマルチバースを正しく扱える唯一無二のヒーローと言えるかもしれません。

そして今回のウルヴァリンは予告編でも分かるように、原作準拠バージョン!

これにはうるさ型のファンもニッコリなのではないでしょうか。

瀕死のMCUを救う起死回生の作品

と、ここでちょっとフェーズ4以降(マルチバース ・サーガ)MCUから離れていったファンが多かった原因についてお話をしたいんですが、その大きな理由としてフェーズ3の「アベンジャーズ/エンドゲーム」でアベンジャーズがラスボスのサノスを倒したことで大きな物語に一区切りついたことが大きな要因の一つなのは間違いないでしょう。

そして続くフェーズ4からは

・新旧アベンジャーズの交代があまり上手くいかなかった。
マルチバースという概念を取り入れ複雑化したストーリーがファンに受け入れられなかった。
・そして(フェイズ3の後半から)シリーズが続くにつれ一本の映画で物語が完結しなくなった事や、ディズニープラスのドラマシリーズ乱発により、映画を見ているだけでは全体の流れに追いつけなくなったことなど。

・作品の乱発によりストーリーや映像のクオリティーが下がったことなどなど。

そんな複数の理由から多くのファンがMCUに疲れて、離れていったと思うんですね。

実際、2023年公開の「マーベルズ」はMCU史上最低の興行収益で大赤字だったと言われていますが、それは3人の主人公のうち2人がドラマ版でしか登場してないキャラだったことが大きかったように思います。(個人的には大好き)

まぁ、他にも初代アベンジャーズの後継者の多くが女性や有色人種になっていることで、MCUがポリコレ化していると言われたり、映画の内容とは別に出演俳優のトラブルなど作品外での様々なアレコレもファンのMCU離れを加速させていったのだと思います。

僕は基本的に(「シークレット・インベージョン」以外の)MCU作品は全て褒めるスタンスですが、そんな僕ですら心情的に多少の忖度はしていますしね。

しかし、本作は個人的に久しぶりに忖度一切なしでメッチャ楽しめた作品で、笑ったし、興奮したし感動したし、「そうそう、僕が大好きだったマーベル作品はこういうヤツなんだよなー」って思ったし、もしかしたら本作が瀕死のMCUを救う起爆剤になるかもしれないと思いました。

ただし一般受けはしない

とはいえ、それはこの映画が広く一般にウケるという意味ではなくて、むしろその逆。

比較的コアなMCU…っていうかマーベル映画のオールドファンにこそ受け入れられる作品と言う意味なんですよね。

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1996年には業績不振のため、自社作品の映画化権を20世紀FOXソニーピクチャーズエンターテイメントなどに売るほどのピンチに陥ったマーベル。

その当時は技術的な事もあって、多くのヒーロー映画は子供だましのB級映画扱いだったんですが、そんなヒーロー映画が今日のMCUへと続く「大人も楽しめるエンタメ映画」の先駆けとなったのが1998年~公開の「ブレイド」シリーズと言われていて、その後数々の大人も楽しめる内容のヒーロー映画が製作されました。

そして2000年~公開の「X-MEN」シリーズの世界的大ヒットによって、マーベル自体も持ち直し、今日のMCUへと続いているんですね。

本作では、ディズニーの買収もあって何となく尻すぼみに終わった感のある20世紀フォックス版のマーベル作品やキャラクターにしっかり花道を用意していてくれていて、これにはオールドファンもグッとくるんじゃないでしょうか。

元々、デップー自体が幼少期からずっと恵まれない、不遇な環境を笑い飛ばしてきたキャラクターですしね。

同時に、今回もデップーは昨今のMCUソニー版マーベル、DC作品、さらには親会社ディズニーなど、全方位をおちょくり倒しつつ、フェーズ4以降の「マルチバースサーガ」に対してマーベルファンの声を代弁してくれていて、あぁやっぱデップーは信頼できるなーと思いましたよ。これは最初から最後までふざけ倒してるけど、やるべきことはしっかりやるというデップーのキャラクターそのものでもあるんですよね。

ただ、その一方でMCUからファンになった人やデップーを知らない人には、「何のこっちゃ?」なシーン満載だし「お前誰やねん」なキャラも多数登場します。

「じゃぁ結局他作品も見てないと楽しめないじゃん!」って思われるかもしれないし、デップーに限ってはそういう側面も否めないんですよね。でも個人的にそういう内輪ネタやイースターエッグって知っていれば作品への解像度は上がるけど、それと映画の面白さは別物ってんですよね。

例えば劇中登場する様々な設定とかキャラクターの関係性とか、ぶっちゃけ僕も知らないキャラも何人か登場してましたけど、それも映画観てればどういうことかは文脈で大体わかるので、何のこっちゃなシーンや知らないキャラが登場しても、「それはそうゆうもの」として丸のみしてしまえば十分に楽しめると思います。

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なので、観るのを躊躇している人は臆することなく一度見てほしいと思うし、それでもし面白かったら、前2作もぜひ観て貰えればと思います。

興味のある方は是非!!

前作の解像度を上げる「マッドマックス :フュリオサ」(2024)

ぷらすです。

あの超・超・超・超・大傑作だった前作「マッドマックス/怒りのデスロードの前日譚であり、主人公フュリオサの半生を描いた叙事詩『マッドマックス :フュリオサ』を初日、初回の上映で観てきました!

というわけで今回は、まだ公開したばかりの作品でもあり、また、まだ前作を観ていない人もいると思うので、出来る限り両作のネタバレしないよう気をつけて感想を書きますが、気になる方はご注意ください。

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概要

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に続き、シリーズの生みの親であるジョージ・ミラーが監督を務めるアクション。世界崩壊から45年後、故郷からさらわれたフュリオサがバイカーたちの軍門に降り、荒廃した世界で城塞都市の支配者イモータン・ジョーとの戦いに巻き込まれる。主人公フュリオサを『ラストナイト・イン・ソーホー』などのアニャ・テイラー=ジョイ、バイカー軍団のリーダーを『アベンジャーズ』シリーズなどのクリス・ヘムズワースが演じる。(シネマトゥディより引用)

感想

マッドマックスとジョージ・ミラー

本作は、ジョージ・ミラー監督の伝説的シリーズ「マッドマックス」4作目となる「マッドマックス/怒りのデスロード」(2015)で、実質W主人公の一人だったフュリオサのオリジンを描いたスピンオフ作品です。

というか、そもそも「マッドマックス」シリーズを知らないor観たことがない方もいると思うのでザックリと説明すると、1979年に公開された『マッドマックス』第1作はジョージ・ミラー監督の長編映画デビュー作です。

医者を志して医科大学に進学するも、学生時代に映画コンクールに出品した短編映画がグランプリを獲得したのをきっかけに、テレビと映画界で働くようになったジョージ・ミラーが、数本の短編映画を制作した後オーストラリアで手掛けた低予算のアクション映画で、近未来の荒廃したオーストラリアを舞台に警察官マックスと凶悪な暴走族の戦いを描く復讐劇です。

この作品のヒットで注目を集めたジョージ・ミラーとマックス役を務めたメル・ギブソンはハリウッドに進出。

核戦争によって荒廃した世界を舞台にした続編『マッドマックス2』(1981)は、世界的大ヒットを収め、モヒカンヘアーで暴れまわる暴走族などを描いた世界観は、1980年代全般のSF映画ををはじめ、ジャンプのマンガ「北斗の拳」など多くの作品に多大な影響を与えました。

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そんな社会現象にもなった「マッドマックス2」の勢いを受けて製作された『マッドマックス/サンダードーム』は大物歌手のティナ・ターナーを起用するなど、ハリウッドと大きくコミットしエンタメ色を強めた作品で大ヒットしましたが、マッドマックスのファンの間では賛否両論ではありました。

この三部作でシリーズは一旦ピリオドを打ったものの、1998年に第4弾のアイデアを思い付いたジョージ・ミラーは制作に乗り出しますが9.11、イラク戦争など、度重なるアクシデントによって製作は延期。

紆余曲折を経て2015年、マックス役をトム・ハーディ―に変更しシリーズの世界観を引き継ぐ形で公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、幾度もの延期によって世界観やキャラクターが練り込まれたことでシリーズ屈指の大傑作となり、シリーズのファンのみならず、新たなファンも獲得し世界的な大ヒット作品となりました。

そんな「/怒りのデスロード」でマックスとタッグを組んだのがシャーリーズ・セロン演じるフュリオサで、この時は彼女の壮絶な過去を匂わせる程度でしたが、「怒りのデスロード」へと続くフュリオサのオリジンを描いたのが本作なんですね。

若きフュリオサ役をアニャ・テイラー=ジョイが演じ、そんな彼女の宿敵でバイカー集団「バイカー・ホード」を率いる悪役ディメンタスを、「マイティー・ソー」のクリス・ヘムズワースが演じました。

前作の解像度を上げる作品

そんな本作の感想を一言で言うと、メッチャ面白かったです。

前作の世界観を引き継ぐ形で登場する、改造自動車とバイクの数々は相変わらず狂っていて、前作で登場しフュリオサが運転した「ウォータンク」の前身となる初代ウォータンクは光沢のあるステンレススチールとクローム仕様。
ギラギラに輝くタンクの側面にはイモータン・ジョーの伝説の物語が浅浮き彫りで施されているんですね!

このウォータンクの最後部は鎖で繋がれたトゲトゲ鉄球がぶら下がったドリルになっていて、スイッチを入れるとドリルが回転! 
遠心力で回る鉄球が敵を巻き込んで破壊するという、小学五年生男子が考えたようなメッチャ燃える仕様になってましたよ!!

officialページより

また、今回はバイクが多く登場するんですが、バイクで引っ張ったパラセーリング状態の敵や、後部にプロペラを積んだハンググライダーバイクで空から攻撃。
ディメンタスが駆るのは三台のバイクをくっつけて人が乗る台車を引っ張る「モーターサイクルチャリオット」です。「ベン・ハー」とかで馬が台車を引っ張て闘技場を走るアレのバイク版ですよ!

officialページより

うっは!カッコイイ!!

 

他にも相変わらず狂った車やバイクがジャンジャン登場しては破壊される中盤のチェイスシーンは見どころ満点ですよ!

そして、そんな本作には前作でも登場したイモータン・ジョー(前作でイモータンを演じたヒュー・キース・バーンは亡くなっているので、ラッキー・ヒュームが演じている)やTKBクリクリおじさんこと人喰い男爵や武器将軍などお馴染みの顔も登場。もちろんウォーボーイズたちも登場しますよ!

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あと、前作ではマックスがフェリオサの相棒役でしたが、本作では警護隊長のジャックというキャラクターが彼女の相棒役となります。

ざっくりストーリー紹介

そんな本作のストーリーをザックリ紹介すると、滅亡した世界にあったオアシス「母なる緑の地」から攫われ、愛する母をディメンタスに殺された少女フュリオサが、復讐を誓い「バイカー・ホード」やイモータン・ジョーが統治するシタデルの中で生き抜くというストーリー。

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その過程で、彼女が片腕を失い義手になった経緯や警護隊長としてウォータンクを任される過程が描かれています。

そして、面白いのは本作の悪役ディメンタスが、境遇的にフュリオサと鏡合わせの存在であるということ。彼もまた、愛する娘を失っていて、ゆえに幼いフュリオサをリトルDと呼んで自分の娘と重ねているんですね。

また、イモータンと比べるとディメンタスは明らかに浅慮で小物として描かれていて、相対的にイモータンの方が人としてはクズだけど統治者としては優れているのが分かるという描写も前作の解像度を上げているし、ディメンタスもどこか憎めないんですよね。

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演じるアニャ・テイラー=ジョイとクリス・ヘムズワースの演技も良いし、フュリオサの幼少期を演じたアリーラ・ブラウンもとても良かったです。

メッチャ面白いけれど

そんな本作、前述したようにメッチャ面白いし、いわゆる昨今のビッグバジェット作品の中では平均点を軽くクリアしている名作なのは間違いないんですが、ただ、前作「マッドマックス/怒りのデスロード」があまりにも傑作すぎだし、その前日単ということでハードルが上がり切っての公開ということもあり、その期待を上回るのは正直至難の業。さらに世界観が同じだけにアクションの絵面的にも前作の繰り返しに見えてしまう部分も正直あったんですよね。

あと、前作はアクションとディテールの解像度を上げることで、その向こうにある物語を映像で語っていたんですが、本作はフュリオサの物語を通して前作の、そしてマッドマックスの世界観の解像度を上げる手法を取っているので、前作のテンションで観るとあれ?ってなっちゃうかもしれません。

あと、本作は前作より30分ほど長かったんですが、その分、物語もやや間延びして見えたし、正直やや冗長に感じましたねー。

それだけ、ジョージ・ミラー監督がフュリオサと言うキャラに思い入れがあったということかもですが、個人的にはもう少しエピソードを刈り込んでテンポよく見せてほしかったと思いました。

他のシリーズ作品観なきゃ楽しめない??

ところで、マッドマックスを観たことがない人は、「この作品を楽しむには他のシリーズも観ないとダメ?」と不安に思うかもしれませんが、答えはNO

基本、マッドマックスシリーズはどの作品も一本の映画として完結しているので、他作品を未見の人でも本作だけ見れば十分に楽しめると思います。

officialページより

その上で、もし面白くて他の作品にも興味が湧いたら、ぜひ超・超・超・超・大傑作「マッドマックス/怒りのデスロード」も見てみてください。きっと楽しめると思いますよ!!

興味のある方は是非!!!

 

100年周年を迎えディズニーの魔法が解ける「ウィッシュ」(2023)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはDisney100周年記念作品の『ウィッシュ』ですよ。

うん、まぁ、うん。

僕にとって本作は、やりたい事、言いたい事は分かるんだけど「これが本当に、“あの”ディズニー作品なのか!?」って思ってしまう内容でした。なので、本作をメッチャ楽しめた。面白かったという人は、この感想は読まないでください。多分、最初から最後までけなす事になると思うので。

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概要

ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年記念作品で、願いの力をテーマにしたミュージカルアニメ。最も大切な願いを王様にささげることで願いがかなうとされる国を舞台に、王国の秘密を知った17歳の少女アーシャが悪に立ち向かう。『アナと雪の女王』シリーズなどのクリス・バックがファウン・ヴィーラスンソーンと共に監督を務め、『アナと雪の女王』シリーズなどの共同監督であるジェニファー・リーが脚本を担当。ヒロインの声を『ウエスト・サイド・ストーリー』などのアリアナ・デボーズが担当する。(シネマトゥディより引用)

感想

ディズニーとポリコレ

僕は本作をDisney+で観たんですが、それは個人的に、昨今のディズニー作品に対して映画館で観ようと思うほどの魅力を感じなかったからです。

その大きな理由が今西洋を中心に問題になっているポリコレ。

ポリコレはポリティカルコレクトネスの略称で、 社会制度やあらゆる表現を差別・偏見のないものに変え、人種や性別、年齢、障害の有無などによるマイノリティ・社会的弱者を守るための運動のこと。

個人的にこの理念自体が悪いとは思わないし、まだまだ世界中に差別や偏見が蔓延っているのも事実。とはいえ、行き過ぎたポリコレ思想の押し付けは、逆に反発と分断を呼ぶだけではないかとも思うんです。まぁ、一方でマイノリティーが主人公のエンタメ作品というわけで過剰反応し叩きたがる層もいるので、どっちもどっちという感じではあるんですが。

で、現状エンタメ業界でそんなポリコレ最前線にいるのがディズニー。

僕は、ディズニー作品とのつきあいは決して長くはないけれど、それでも昨今のディズニー作品を観ていると「うーん……」となってしまうんですよね。

また、Disney+の登場とコロナ騒動によって、ディズニー関連作品は劇場公開から1・2か月もしないうちにDisney+で観られるため、わざわざお金を払って劇場で観なくても——という人も増えているんじゃないでしょうか。僕も正直そうだったりします。

まぁ、そんなアレコレもあって、中々本作に手が出せなかったんですが、先日やっと重い腰を上げてDisney+で視聴したわけです。

これがディズニー100周年作品…だと

で、そんな「ウィッシュ」を観た感想なんですが、内容の好き嫌いは抜きにして個人的には今まで観たディズニー作品の中でもかなりヤバいって思いましたねー。もちろん悪い意味で。

本作はディズニー作品「ピノキオ」の主題歌でもある名曲「星に願いを」が本作のモチーフになっていて、どんな“願い”も叶うと言われている “ロサス王国”を舞台に、17歳の少女アーシャが、ある出来事によって王国に隠された秘密を知り、ディズニー史上最恐のヴィラン(悪役)マグニフィコ王に立ち向かうというあらすじなんですけど、実際に観るとその印象はかなり変わると思います。

まずは映像なんですが、こちらはディズニー100周年ということもあって、現在の3DCGアニメに、古き良き手書きアニメのデザインや雰囲気を反映させようという試みがされているんですね。

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ところが、これがどうも上手くいってないからか、人物も背景もなんだか書き割りのように薄っぺらく感じてしまうんですよね。手書きと3DCDがケンカして互いの良さを消し合ってるというか。

でもそれは多分、単純に技術の問題ではなく、むしろ問題なのは演出や作劇。

例えば冒頭。主人公アーシャが国外から来た親子に、本作の舞台であるロサス王国を歌とダンスに乗せて案内するというシーンがあるんですが、このシーンでのロサスの風景がちっとも魅力的に見えないのです。

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これまでのディズニー、「アナと雪の女王」の戴冠式のミュージカルシーンや「ズートピア」の街の様子は見ているだけでワクワクするし、「塔の上のラプンツェル」のランタンのシーンは観ているこっちが震えるくらい美しかったじゃないですか。

本作のこのシーンもそうあるべきで、まずは観ている観客に「この国に住みたい」と思わせるくらい魅力的に町を描くことで、後にアーシャがこの国の真実を知った時とのギャップが活きるハズだし、この冒頭とラストの町の描写と上手く描き分ければ、特に説明はなくても観客は納得できたはず。

ところが本作では終始、この町の描写が平坦で何の魅力も感じないんですよね。

それは人物描写も同じで、主人公アーシャは優しすぎるのが“欠点”に思えるくらい優しい女の子という設定らしいんですけど、それを親友のダリアに言わせるんですよね。

これまでのディズニー作品なら、そこまでにアーシャが優しい女の子である事を映像で見せる描写が入ってたハズだけど、そういう描写は一切なし。
なのでこの設定にもまったく説得力がなくて、その後の彼女の行動にまったく感情移入が出来ず、ただ浅慮で身勝手な小娘に見えてしまうのです。

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今回のヴィランであるマグニフィコ王の王妃アマヤは、長年マグニフィコと寄り添ってきたハズで、彼の人生の苦難も思いも知っているハズなのに、マグニフィコが道を踏み外した瞬間に手のひらを返し、夫をあっさり見捨ててあまつさえ地下牢に閉じ込める薄情な妻に見えてしまうし、アーシャの親友の一人サイモンは作劇の不味さとその後の物語的なフォローがないからただ友人を裏切ったヤツのまま終わってしまう。

アーシャの親友ダリアは見た目アジア人で聡明で足(というか脳)に障害がある女の子。

でも、この足の障害については作中一切触れらる事はなくて、物語にも何の貢献もしないんですね。だったら別に障害の設定とかいらなくね?っていう。

ディズニーの前作「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」でも主人公の男の子がゲイだったり、飼い犬の足が一本無かったりしたけど、その設定も、物語に一切関係がなかったんですよね。

前にも書いたけど、アニメの場合、映像に映る物や人には必ず製作者の意思・意図が反映されるわけで、その設定に物語的な関係がない場合、それはただ、ポリコレの為と思われても仕方ない……っていうか、確実に彼女はポリコレ要員で、僕はそこにとてつもなく嫌な何かを感じてしまうんですよね。

そんな本作で唯一、僕が感情移入出来たのがヴィランであるマグニフィコ王でした。

彼は幼い頃、家族を盗賊の凶行によって失い、その悔しさから鍛錬を重ねて魔法使いになったという過去があり、ロサスの王になり、様々な理由で踏みにじられてきた弱き人々を受け入れて平和に暮らせる国を作った、いわば名君なわけですよ。

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そんな彼を信じて国民は「願い」を預けているわけで、彼自身(少なくとも中盤までは)、国民の願いを大事に保管しているし、最初から全員の願いを叶える約束はしてないわけです。年に1人?願いを叶えますよという約束に、国民も納得していたはず。

なのに、弟子募集に応募した小娘が、自分の祖父(100歳)の願いを叶えないのはおかしいとテロ活動を始めて、今まで散々世話してやった国民もそれに同調しはじめたら、それは「この恩知らずどもが!」ってブチ切れて当たり前でしょ。

お前ら今まで散々よくしてやった俺より、そのヘンテコマスコットを信じるのかよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッって。

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もちろ、「願いは人に適えてもらうものじゃなく、自分で叶えるもの」っていう本作のテーマは分かっているし、本作でやろうとしていたことも分かるけれど、それらを上手く物語に落とし込めていない——っていうか、そもそも作劇が破綻し、演出が杜撰すぎるから、ディズニーの主張ばかりが悪目立ちしてしまっているし、本作唯一の美点であるミュージカルシーンの魅力も半減しちゃってるんですよね。

全体的に作ろうとしているモノに対して、クリエイターのレベルが達していないという印象でした。

現実と物語がリンクしている

っていうか、さすがに意図はしてないと思うけど、本作のマグニフィコ王と国民の関係が、今のディズニーとユーザー(ファン)の関係とまるっと被っているように見えるのは何とも皮肉で、もしもディズニークリエイターが、昨今のディズニー作品に反発するファンたちを揶揄するつもりで本作を作ったのなら、逆に凄い!と思いますけど……まさかね?

来年は、何かと話題なレイチェル・ゼグラー主演の実写版「白雪姫」の公開も控えていているディズニーですけど、この感じが続くなら僕はもういいかな…って正直思ってしまいましたねー。

興味のある方は是非。

 

 

昭和と令和をバランスよくMIX「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(2013)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ですよ。

昨年公開されネット上ではかなりの高評価だった本作。僕は先日Amazonprimeで鑑賞したんですが、評判通りメッチャ面白かったですねー!

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概要

水木しげる原作の「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する鬼太郎の父と、水木という男との出会いを描いたアニメーション。行方不明になった妻を捜すため、とある村を訪れた鬼太郎の父と、密命を帯びたサラリーマンの水木が惨劇に遭遇する。ボイスキャスト関俊彦木内秀信古川登志夫沢城みゆき野沢雅子など。監督を『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』なども担当した古賀豪が務める。(シネマトゥディより引用)

感想

原作版とアニメ版の融合

ゲゲゲの鬼太郎」は、1954年の紙芝居「ハカバキタロウ」からスタート。その後、漫画、アニメ、映画、小説、ドラマ、ゲーム、舞台などに展開しながら、半世紀以上に亘って様々な関連作品が作られ続けている日本を代表するオカルトヒーローです。

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TVアニメ版は1968年の第1期から、キャラデザやストーリーを時代に合わせて変えながら現在第6期まで放送されていて、この第6期をベースに、2008年フジテレビで放送され水木先生の貸本時代のマンガ版鬼太郎をフューチャーした深夜アニメ「墓場鬼太郎」第1話で描かれた鬼太郎出生の物語を融合。その前日譚となるのが本作なんですね。

ざっくりストーリー紹介

そんな本作のストーリーは、血液銀行の職員で龍賀製薬を担当する水木は、龍賀一族の当主・時貞の死に伴い、ある密命を帯びて村を訪れる。そこで謎の男“ゲゲ郎”と出会い最初は反目するも、やがて二人で龍賀一族と、彼らが牛耳る哭倉村のおぞましい秘密に迫る。という物語。

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これはネタバレにはならないと思うので書きますが、このゲゲ郎という男は幽霊族の生き残りであり、生き別れの妻を探してこの哭倉村に来ていて、ゲゲ郎と妻の子供が鬼太郎なんですね。

本作の主人公はゲゲ郎と水木で、鬼太郎は最初と最後以外は登場しないので、鬼太郎の活躍を期待している人は期待外れだと思うし、ストーリーの方は横溝正史の「犬神家の一族」的な、龍賀財閥の遺産相続のイザコザと、一族に支配され外界から閉鎖された村のドロドロした因習や因縁がメインの物語なので、一応PG12指定ですが、実質R-15くらいの内容だと思いましたねー。

絶妙なバランス感覚

鬼太郎の原作者、水木しげる先生といえば戦争で片腕を亡くし、何度も死にかけたという壮絶な体験をされています。
なので貸本時代の鬼太郎は、当時の世相や権力体制を皮肉るようなシニカルなブラックジョークが満載でしたが、「週刊少年マガジン」掲載の1967年に「墓場鬼太郎」から「ゲゲゲの鬼太郎」にタイトルが変更されてから、鬼太郎は悪い妖怪を倒すヒーローとして描かれるようになり、テレビアニメ化以降はみんなが知っているオカルトヒーローの鬼太郎になっていくんですね。

しかし本作はアニメ版第6期をベースにしながらも、ストーリーの時代背景は戦中・戦後になっていて、戦地での上官の保身による理不尽な扱いや無茶な命令によって、無駄に命を落とす仲間の姿を見てきた水木の描写には、明らかに原作者である水木先生自身の体験を基にしています。

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戦後、水木を始め大人たちが会社と言わず列車内と言わずどこでもブカブカ煙草を吸っている描写や、龍賀製薬が開発した眠らなくても戦える(働ける)薬は、当時は合法だった麻薬、ヒロポンがモデルになっていて、「三丁目の夕日」的“古き良き時代”として描かれがちな戦後日本の嫌だ味の部分にフォーカスを当てて描いています。
また龍賀一族の家父長主義や家制度など、前時代的かつ、もしかしたら今も続く日本の権力構造。その理不尽さや嫌だ味と、それらに利用され奪われる龍賀沙代や長田時弥といった被害者たちの姿も容赦なく描いているんですね。

その物語にはまったく救いがなく、結論を言えば誰一人幸せにはならないんですけど、それでも本作を観ていてそこまで辛い気持ちにならないのは、アニメ版「墓場鬼太郎」をブリッジに第6期のイマドキな絵柄で水木とゲゲ郎のホモソーシャル的な関係性を物語の中心に置き、キャラ萌え要素を入れ込んでいる事。

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それと悪役を絞って物語をある程度単純化しつつ、ある種の伝奇ファンタジーとして描く事で、物語の嫌だ味をある程度オブラートに包んでいる事で、エグみの強い物語とのバランスを取っているからだと思いました。

もちろん、それをこのレベルで表現出来るのは、鬼太郎というキャラクターの持つ歴史と、どの時代にも通用する柔軟でありながら普遍的な強度を持つ設定ゆえであり、それは突き詰めていけば水木先生自身の人間性にも通じるんですよね。

アクションとガジェット

そんな本作では、鬼太郎の父親であるゲゲ郎のアクションシーンも見どころになっています。龍賀一族を陰から支え鬼太郎の宿敵でもある鬼道衆との闘いでは、まるでフリーハンドで描いたような線でぬるぬる動くアニメーションと、体内電気やリモコン下駄など鬼太郎でもお馴染みのガジェットが大活躍。また今まで描かれる事が無かった鬼太郎の霊毛ちゃんちゃんこの誕生シーンも描かれています。

そんなガジェットを使いこなして鬼道衆や妖怪たちと闘うゲゲ郎のアクションは、鬼太郎のそれと似ているけど、迫力満点にカッコよく描かれているので、ああ、この人は鬼太郎の父親なんだなと納得できるんですよね。

また、ここまでしっかりとストーリー、メッセージ、アクションを盛り込みながら、わずか105分に収めているのは見事だと思いました。

あと、前日譚ということで関連作品をチェックしないと楽しめないのではないかと心配している人もいるかもですが、基本、何となくでも鬼太郎を知っていれば、本作だけでも十分に物語は分かるし楽しめるようになっているので、安心して観てらえればと思いますよ。

興味のある方は是非!!