今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

一筋縄ではいかない作品「音楽」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは俳優としても活躍する漫画家・大橋裕之原作の「音楽と漫画」を、岩井澤健治監督が7年をかけて完成させた”自主制作長編アニメ“『音楽』ですよー!

劇場公開時に噂には聞いてましたが、実際に観てみると「おぉぉ…何か凄いもん観た…(;゚Д゚)」感のある作品でしたねー。

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概要

大橋裕之の原作を基に、岩井澤健治監督がおよそ7年かけてほぼ個人制作で作り上げたアニメーション。楽器に触れたことがない不良たちがバンドを結成し、ロックフェスティバルへの出演を目指す様子を、4万枚超の手描きの作画による映像で描き出す。主人公の声を元ロックバンド「ゆらゆら帝国」の坂本慎太郎が担当し、駒井蓮前野朋哉、芹澤興人、竹中直人天久聖一岡村靖幸らがボイスキャストとして参加している。(シネマトゥデイ より引用)

感想

一筋縄ではいかない作品

本作は俳優であり漫画家の大橋裕之原作のマンガ「音楽と漫画」を原作に、岩井澤健治監督がほぼ個人作業で7年かけて作り上げた自主制作アニメです。

以前、当ブログで堀貴秀監督がほぼ個人作業で7年をかけて作り上げたストップモーションアニメ「JUNK HEAD」のご紹介しましたが、 今アニメ業界では7年かけて1人で作品作るのが流行ってるんでしょうかw

で、原作マンガを描いた大橋裕之さんからして漫画家志望で週刊誌に投稿していたけどまったく賞に引っかからず、2005年から自費出版で作品を発表するうち最初は音楽雑誌で商業デビュー。
「週刊ビッグコミックスピリッツ」の巻末コーナーで4コマ漫画の不定期掲載など商業誌やウェブサイトなどでも活躍。竹中直人山田孝之、齊藤工が監督し今年4月2日に全国公開された映画「ゾッキ」の原作も大橋さんのマンガなんですよね。

そんな大橋さん原作の「音楽と漫画」を7年かけて長編アニメ化した岩井澤健治監督は、高校卒業後、映画監督の石井輝男監督に師事。
実写映画の現場から映像制作を始め、その傍らアニメーション制作を始めて2008年に初のアニメーション作品「福来町、トンネル路地の男」を完成させます。

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以後、アニメーションを中心とした短編映画の制作を続けて2011年から自主制作長編アニメーション映画「音楽」の制作を始めたそう。
で、岩井さんは元々実写畑の人だからという事もあるのか、実写で撮影した映像をトレースなどで絵に起こしていく「ロトスコープ」という技法でアニメを制作していて、クライマックスのライブシーンでは実際にステージを組みミュージシャンや観客を動員してのライブを敢行したのだとか。

それだけでも一筋縄ではいかない感じですが、岩井監督はそれらの実写素材を基に、作画枚数40,000枚超を全て手描きで(しかも1人で)7年の歳月をかけて71分の長編アニメを作り上げたわけです。

「JUNK HEAD」の堀貴秀監督もそうですが、手法や制作にかけた年月、そして完成した作品のクオリティー全てにおいて一筋縄ではいかない、ある種の狂気を感じてしまうんですよねー。

どストレートに“初期衝動”を描く

本作の主人公・研二坂本慎太郎)は他校の生徒にも名前を知られた不良少年。(見た目は完全にオッサンですがw)

そんな彼はある日偶然エレキベースを手に入れたのをキッカケに、思い付きで友人の太田前野朋哉)と朝倉(芹澤興人)を誘ってバンド「古武術」を始めるんですね。
しかし研二は、ギターとベースの違いも分からないくらい音楽の素人だし、他の二人も似たり寄ったり。

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音楽室に置かれていたベースとドラムをパクった3人は、研二の部屋で初めて音を鳴らすんですが、初めて音をだした瞬間に音楽の快感に目覚め、同じ高校のフォークバンド「古美術」の森田(平岩 紙)との出会いもあって、地元の音楽フェスに参加する事になるのだが――というストーリー。

まぁ、ざっくり一言で言えば不良少年がバンドを組んでフェスに参加するだけの超シンプルな物語なんですが、この作品が凄いのは、例えば最初はノリで始めたバンドが何らかの壁にぶつかる――とか、3人の間で軋轢が――とか、色んな挫折を乗り越えて――とか、そういうバンドの苦労みたいな描写は一切なくて、もっともっと手前。「音を鳴らすのって楽しい」っていう”初期衝動”を描くことだけに全てを注いでいるんですよね。

なのでストーリーに注目して映画を観るひとに本作は、「都合がよすぎる」とか「そんなバカな」って思うかもですが、そんな本作にリアリティーを持たせて作品を下支えしているのが伴瀬朝彦(片想い)、澤部渡(スカート)、剣持学人(グランドファンク取締役社長)らが手掛けた音楽の力と、それを聞いた森田や観客の、ビートルズの劇場アニメ「イエローサブマリン」を彷彿させるような脳内イメージの描写や、迫力満点なライブシーンの描写です。

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ホントは「古武術」の音楽について色々語りたいけど、残念ながら僕は音楽に対してはホントに無知で、何かを語れるほどの語彙を持ち合わせてないんですよね。

ただ、クライマックスの研二に、最初は思わず笑ってしまうんだけど次第に映像と音に飲み込まれていくような感覚は、中々味わえない貴重な体験なんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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タイトルに偽りなし「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アマプラで配信中のアメリカ映画『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』ですよー!

もうね、こんなタイトルの映画、観ないわけにはいかないでしょ!
って観たら、何か思ったのと全然違うストーリーでしたよ。

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概要

『アリー/スター誕生』などのサム・エリオットらが出演したアクション。隠居生活を送る元兵士の男が、ビッグフットとの戦いに挑む。ロバート・D・チコフスキがメガホンを取り、ドラマシリーズ「風の勇士 ポルダーク」などのエイダン・ターナーらが出演する。『ブレードランナー』などに携ったダグラス・トランブルリチャード・ユリシックが、VFXに参加している。(シネマトゥディより引用)

感想

ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」の物語

正直、本作のタイトルを最初に見た時は「また日本の配給会社が適当な邦題をつけてる」って思ったんですが、実はこのタイトル原題の直訳でしたw

アメリカには、「トール・テール」というホラ話を西部の開拓者たちの間で語る文化があり、これは日本で言えば桃太郎や金太郎などと同じく、ヒーロー譚の原型でもあり、神話を持たないアメリカ文学の発展にも大きな影響をもたらしているんですね。

そして、本作の一見突拍子もない物語とタイトルには、このトールテールの文脈が背景にあるのだそうです。

本作は冒頭、馴染みのバーで一人酒を飲む老人カルヴィンサム・エリオット)の顔面のアップから物語は始まります。その表情に楽しそうな様子はなく、苦虫を嚙みつぶしたような表情のカルディンのアップから回想パートへ。
若き日のカルディン(エイダン・ターナー)はナチスSSの制服を着て、SSの隊員たちが厳重に警備する邸宅にやってきます。

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そこで持ち物チェックのためポケットから、スキットルやライター、ペンなどを取り出し危険物を持っていない事を確認された彼は、再びその持ち物をポケットに仕舞って建物の中に。

そして2階の廊下を早足で歩きながら先ほどのライターやペン、スキットルなどを次々組み立てるんですね。なんとそれらは組み立て式の銃の部品であり、彼はヒトラー暗殺のためナチスに潜入したアメリカ兵だったのです。

そしてその部屋の奥にはヒトラーの姿が――、ここで店主に肩を叩かれて現実に引き戻されるカルディン。

ってな感じで本作は、年老いたカルディンの若き日のロマンスやヒトラー暗殺に至るまでの回想パートをメインにした前半部分と、老カルディンが政府の依頼を受けカナダの山奥にビックフットを殺しに行く後半部分で構成されているんですね。

で、先にネタバレするとカルディンは前半部分でヒトラーを殺し、後半でビックフットを殺してました。って、タイトルそのまんまの内容でしたねーw

こう書くと、アサイラム的な露悪的悪ふざけB級映画的をイメージするかもしれません。

だって、ヒトラーの方はまぁ100歩譲るとして、ビックフットて!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ

しかも普通に出てくるし、そんなに大きくもない。多分180㎝くらいしかない。そして今どきCGでもない着ぐるみのルックもめっちゃショボい。
っていうかそもそもなんで70過ぎのおじいちゃんに依頼を!?――って思うでしょ?

実はこのビックフット、放っておくと世界が滅亡するくらい凶悪なウイルスの保菌者で、半径800㎞だかの(鳥以外の)生物は全滅してしまうらしい。
で、ビックフットがこのままアメリカに近づいてパンデミックが起こる前に、大統領はカナダに核爆弾を落としビックフットを抹殺する計画らしい。

しかし、このビックフットのウィルスにも抗体を持つ人間が世界に数人いて、カルディンはそのうちの一人だったのです。(他は子供と老人しかいない)

そして、ビックフット暗殺の依頼にきたFBIの男は、子供の頃に祖父からナチスハンター・カルディンの伝説を何度も何度も聞かされてきたと。
で、ここで英雄であるハズのカルディンがなぜこんなに寂しい老後を送っているのか、彼に影を落としているのが何なのかがカルディンの口から明かされるんですね。

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最初は政府からの依頼を断るカルディンですが、なんやかんやあってその後カナダの山奥でビックフットとの対決に向かうわけですが、正直映像的な驚きもアクションの面白さも一切ありません。

ただ、それは監督の意図的な演出なんですよね。

ヒトラーとビックフットとカルディン

どういうことかというと、この後半のビックフット殺害は前半のヒトラー暗殺と呼応する形になっているんですね。
ナチス党総統として今も世界に悪名を轟かせているヒトラーですが、彼自体は別に魔王でも悪魔でもない、何処にでもいるただのひ弱な中年男で、それは前半でカルディンと相対するシーンでヒトラーの手が震えている描写で分かるようになっています。

しかし、ホロコーストなどの歴史的悪行と(恐らく)事実を脚色することで膨らんでいったある種の都市伝説(ホラ話)が、ヒトラーを実物以上に恐ろしい男に仕立て上げた部分があるんだと思います。

それは、ビックフットも一緒で、実際には人間とさほど変わらない……っていうか、ちょっと厳つい人間なら素手で倒せそうなショボくて無害な生物なのに、発見談に尾ひれがついて、謎のモンスターにされてしまっている。

まぁ、本作ではカルディンと戦わせるため、かなり無理矢理なウィルス保菌設定がついちゃってますけどねw

そしてカルディン自身も、ヒトラーを殺した男として伝説の存在になっていて、FBIの男の祖父などに語られるうち、どんどん本人とはかけ離れた人物像になっていたのだと思われます。

つまり形は違えど、ヒトラーとビックフットとカルディンはある種の同類なんですね。
前半、ヒトラー暗殺で大きな挫折を味わい、大切な人を失ったカルディンは過去に縛られたままずっと立ち止まっていたわけですが、老人になりビックフットとの対決で生まれ変わったこで、前に一歩を踏み出せるようになったというのが、本作の本質的なテーマなんだと思います。

うん。まぁ、言いたい事は分かる。

分かるんだけど……まぁ、それと面白さはまた別の話でしてw

そうは言っても、別にビックフットみたいなUMAじゃなくても物語は成立すると思うし、ビックフットがウイルスを云々や、カナダに核攻撃云々みたいな設定と、本作で語られる本質の部分は、食い合わせが悪いと思いましたねー。

また、思った以上に静かな作品だし名優サム・エリオットの重厚な演技も相まって、特に回想シーンが多いはかなり退屈に感じてしまいました。

いや、前述した隠し拳銃を組み立てるシーンや、ビックフットを倒すため、沢山並んだ武器の中から古いライフルとナイフを選ぶシーンなんかはグッときましたけどね。

興味のある方は是非!!

 

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三島由紀夫に“出会う“映画「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」(2020)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1969年に東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた、三島由紀夫と東大全共闘の討論会の様子を、当時の関係者、ジャーナリストや文学者のインタビューを交えて追ったドキュメンタリー映画三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』ですよー!

劇場公開時、かなり気になっていたんですが上手く時間が合わず、今回アマプラで配信されてたのでやっと観ることができました。

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概要

作家の三島由紀夫が自決する1年半前に行った東大全共闘との討論会に迫ったドキュメンタリー。2019年に発見されたフィルムの原盤を修復したことにより、多くの学生が集まった討論会の様子が鮮明に映し出され、当時の関係者や現代の文学者、ジャーナリストなどの証言を交えて全貌が明らかになる。監督はドラマシリーズ「マジすか学園」などの豊島圭介。(シネマトゥディより引用)

感想

三島由紀夫と東大全共闘、伝説の討論会を追ったドキュメント映画

本作は、作家の三島由紀夫自衛隊市ヶ谷駐屯地でのクーデターに失敗し割腹自殺する1年前の1969年5月13日、東大全共闘の学生からの要望に三島が応える形で東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた伝説の討論会を、(テレビ局としては)唯一取材していたTBSが撮影していた当時のフィルムを高精細映像で復元。

そこに当時の関係者や作家の平野啓一郎氏などのインタビューを追加して構成されたドキュメンタリー映画です。

1968年の東大紛争で安田講堂を占拠するも、翌年(1969)年1月に機動隊によって強制排除され事実上の敗北を喫した全学共闘会議

そのままではいかんと思った彼らは士気向上のため、当時本業の作家活動のみならず、戯曲、俳優、映画監督や舞台演出など幅広く活躍し、右翼思想の政治的発言でも知られるスーパースター、三島由紀夫との討論会を計画。

三島を論破して立ち往生させ、舞台上で切腹させる」と900番教室に集まった学生は1000人を超え会場は異常な熱気を帯び、そこに警察が申し出た護衛を断って単身やってきた三島が登壇。

ついに左翼学生と右翼作家三島の討論会の火ぶたが切って落とされる――。

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という内容。

恥ずかしながら僕は三島の小説は一本も読んだことがなくて、ぶっちゃけて言うと彼に対してマッチョ、ゲイ、右翼、割腹自殺という通り一遍のイメージしかなかったんですよ。

しかし、この作品の中で大勢の学生を前に話す三島は、確かに当時の大人ならではの(今から見れば)豪快な雰囲気はありつつも、その語り口はユーモアに富んでいるし、しっかり学生たちの意見に耳を傾け、学生が仕掛けてくる問答にも即答して逆に閉口させる頭の回転の速さなど、僕が今まで抱いていた三島由紀夫のイメージとはずいぶんかけ離れた印象だったんですね。

最初に壇上に上がった三島は、約10分ほど学生たちに向けて語るんですけど、この時点で全共闘の学生たちは毒気を抜かれてたというか、三島由紀夫の魅力に惹かれちゃってる感じで、討論前のピリついたムードが三島の独演会みたいになっちゃうんですよね。

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文字通り「役者が違う」という感じ。

これはもう三島の独壇場か?と思って観ていると、子連れで現れる一人の男によって空気が変わります。
その男とは現在「ホモフィクタス」主宰で劇作・詩・演出・舞踊・俳優・アートパフォーマーと幅広く活躍する芥正彦。

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彼は三島と互角の論戦を繰り広げ、時には三島を追い詰める場面もあるように見えました。

定期的に「解説」が入る親切設計

「~ように見えました」というのは、ぶっちゃけこの二人が何を話しているのかさっぱり分からなかったからです。(〃ω〃)>

何せ東大生とノーベル賞候補作家というガチのインテリ同士の会話で、話してる内容も、こう、非常に観念的っていうか。
なので、集中して聞いているつもりでも、いつの間にか振り落とされてしまうわけですよ。

ただ、ここが本作の素晴らしいところなんですが、この討論会に至るまでの歴史的背景や全共闘の経緯、当時の三島の活躍や右翼的思想に傾倒していく成り立ちなどは冒頭部分でしっかり説明してくれるし、こちらが討論から振り落とされそうになる丁度いいタイミングでインタビューシーンに切り替わり、「ここで彼らが話しているのは~」と、平野敬一郎、内田樹小熊英二有識者が親切丁寧に解説してくれるのです。

なので、三島や全共闘の学生たちが何について語っているのかが分からないという事は全くないし、当時の時代背景などを予習する必要もないんですよね。

正反対だと思ったら

この討論、全共闘の学生は共産主義を目指す左翼だし、対する三島は自分と同じ思想の若者たちを率いて「楯の会」なる自警団的右翼組織?を結成するゴリゴリの右翼で、両者は正反対のように見えます。
しかし、中盤の解説で、形は違えど三島の思想と根底は一緒だということがだんだん分かってきます。
全共闘と三島が目指しているのは、安保反対、憲法改正をして米国の属国から脱却、独立国家を果たすべきという「反米愛国」なんですよね。

そして、両者がそうした政治的スタンスに至ったのは、国や大人ら体制に裏切られたという失望からなのです。

終戦時三島は大学生で、同世代の仲間や友人を戦争で亡くしているし、自身も戦地で殉職する覚悟を決めていたのが、終戦した途端、政治家や大人たちの掌返しを体験してるわけです。

そうした経験が三島を右翼的思想へと駆り立てたのだろうし、その経験があったからこそ全共闘の学生たちに共感し、討論会への参加を決めたのかな?なんて思ったりしました。

 また、この駒場キャンパス以外の大学でも学生と対話をしていることや翌年の彼の行動から考えると、小説家として、自身の思いを乗せた「言葉」がどこまで若者たちに届くのかの実験のようにも思ったりしました。

興味のある方は是非!!

 

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女性差別にも言及する社会派ドキュメンタリー「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」(2021)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ハリウッド映画の現場で活躍するスタントウーマンたちをフューチャーしたドキュメンタリー『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』ですよー!

残念ながら地元のシネコンでは公開されなかったんですが、先日Amazonでレンタルが始まっていたので、早速レンタルしましたよ!

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概要

映画史に刻まれる名アクションシーンでスタントを務めた、スタントウーマンたちに焦点を絞ったドキュメンタリー。ハリウッドで活躍する彼女たちの証言を中心に、女性スタントの歴史や危険なカースタント、発火スタントの舞台裏も映し出す。『ワイルド・スピード』シリーズなどをはじめ、数々のアクション映画に出演してきたミシェル・ロドリゲスが製作総指揮とナビゲーターを担当。『マトリックス』『ワイルド・スピード』シリーズなどの作品で披露されてきたアクションシーンが登場する。(シネマトゥディより引用)

感想

ハリウッド映画の舞台裏を描いただけのドキュメンタリーではない

本作はハリウッド映画やドラマの世界で活躍するスタントウーマンにスポットライトを当てたドキュメンタリー映画で、劇場公開時はネット上でも話題になっていたのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

僕の地元では残念ながら公開されなかったんですが、先日Amazonのレンタルが始まっていたので早速観たんですが、単に映画の舞台裏を描くだけではなくハリウッドに今も横たわる男女・人種差別にも言及する社会派な作品でした。

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1960年代から活躍し、スタントの組合に加入できなかった女性のための組合を設立するなど、スタントウーマン地位確立のために闘ったジュール・アン・ジョンソン

スタント一家に生まれ、70年代からTVシリーズの「ワンダーウーマン」でリンダ・カーターや、「チャーリーズエンジェル」のケイト・ジャクソンのスタントダブルとして活躍したジーニー・エッパー

(当時の)ハリウッドで初めて黒人女性のスタントウーマンで、スタント業界における人種差別の撤廃にも尽力したジェイディ・デイビッドなど。

後進の道を切り開いたレジェンドたちから、スタントウーマンだけでなくアクション監督としても活躍するメリッサ・スタッブス、「ブラック・ウィドウ」までスカーレット・ヨハンソンのスタントダブルを演じたハイディ・マニーメイカら現役組まで30人のスタントウーマンが出演。
製作総指揮も務めた「ワイルド・スピード」のミシェル・ロドリゲスがナビゲーションも務め、普段のトレーニングや現場の映像を挟みつつ、過去から現在にかけてのスタントの移り変わりについて、インタビューを中心に構成されているのです。

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しかしこの作品、単なるバックステージを描いたメイキングフィルム的なドキュメントではなく、彼女らスタントウーマンが“男性社会“である映画・スタント業界での不当な待遇との闘いの歴史にも言及しているんですね。

マッチョイムズの呪い

僕が子供の頃、アメリカはレディーファーストの国でアジア諸国に比べて人権先進国だと思い込んでいたけれど、近年のミートゥー運動やブラックマターのニュースを見るたび、「あー、そんな事はないんだな」と。
むしろアジア諸国よりずっと遅れている(ように見える)分があったり、リベラル派が主流な印象のある現在のハリウッドですら、未だそうした差別が根強く横たわっていることに問題の根深さを感じずにいられません。

もちろん、アメリカの成り立ちやお国柄もあると思うので一概には言えませんが、女性差別・蔑視問題に限って言うなら、法やシステムとは別に、未だアメリカマッチョイムズの呪いが解けていない社会の構造に大きな問題がある気がするんですよね。

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特に常に危険が伴うスタントの世界は言わずもがなで、そんな“男性社会“の中で自分たちの居場所を守るため数々の理不尽と戦ってきたスタントウーマンたちの告発は、映画業界だけでなく世界中の女性が共感するだろう普遍的な証言集でもあり、そういう意味で本作には映画史的価値の高いドキュメンタリーになっていると思いましたねー。

映像の少なさ

ただ、うーん……。
インタビュー自体は素晴らしいんだけど、全体的な印象としてはもっと現場の映像を見せてほしかったってのが正直なところでした。
まぁ、権利の問題も絡むだろうし、映像が少ないのは本作だけでなく映画系ドキュメンタリー全体にありがちな問題ではあるんですが、特に本作はスタントウーマンを描いた作品ですからね。
映画の出演シーンや舞台裏のメイキング映像などはかなり重要だと思うし、そういう意味で個人的に本作はちょっと物足りない感じがしました。

まぁ、ない物ねだりなんですけどね。

興味のある方は是非!!

 

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圧倒的世界観に溺れる99分「JUNK HEAD」(2021)

ぷらすです。

一足遅れながら地元のシネコンで限定公開されていたので観てきましたよ『JUNK HEAD』をね!

先に一言で感想を言うなら、孤高のクリエイター・堀貴秀の脳内が100%表現された圧倒的世界観に溺れる99分でした!

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概要

絶滅の危機に瀕した人類が地上で暮らし、地下には人工生命体が住む世界を舞台に描くSFストップモーションアニメ。地下調査員が人工生命体たちと協力しながら人類再生の道を模索する。堀貴秀が監督や原案などを一人で手掛け、制作に約7年の歳月を費やした本作は、第21回ファンタジア国際映画祭で、長編アニメーション審査員特別賞を受賞した。(シネマトゥデイより引用)

感想

製作期間7年!クリエイターの執念と狂気

個人的に「JUNK HEAD」という作品自体は、数年前にYouTubeにアップされていた30分版を観て知っていたし、これだけの規模とクオリティーの作品をたった一人で作り上げたという事にビックリしたんですよね。

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このYouTube版で、 監督、原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形、セット、衣装、映像効果、音楽、声優すべてをたった一人で担当した堀貴秀さんは高校卒業後、本職の内装業の傍ら芸術活動をしてきたそうですが、新海誠さんがデビュー作「ほしのこえ」を1人で作り上げたことを知って「映画は1人でも作れるんだ!」と衝撃を受け、そこから本職の内装業(といってもテーマパークなど、アート色の強い仕事が多かったらしい)と並行しながら2009年から4年の歳月をかけて、このYouTube版「JUNK HEAD1」を独学で完成。

そして、クラウドファンディングに失敗したり、英語が分からなくてハリウッドからのオファーをうっかり断ってしまったりしつつ、平均3名のスタッフと凡そ3年の時間をかけ、YouTube版を膨らませる形で本作、劇場版「JUNK HEAD」を完成させたのだそうです。

こうしてまとめてしまえば「へー凄いね」くらいの感じでしょうが、たった一人、ストップモーションアニメをイチから独学で学びながら計7年もの間作り続ける堀監督の執念には(いい意味で)狂気を感じるし、そのバックストーリーからもう面白いんですよね。

それは再開発で取り壊されそうになった台湾の「彩虹眷村」の建物を自身の壁画で埋め尽くした黄永阜氏と同じで、まず作品に圧倒され、バックストーリーを知って二度圧倒されるみたいな。
そういうある種の狂気すら感じる過剰さが伝播して、観客の心を動かすのです。

堀貴秀の脳内を100%表現した圧倒的世界観

そんな本作を要約すると、遺伝子操作で長寿になった代償に生殖機能がなくなり絶滅の危機にある未来の人類は、地下世界に暮らす人口生命体[マリガン]の遺伝子情報を調査するため主人公を広大な地下世界へと送り込むのだが――というストーリー。

このあらすじだけ聞けば「どっかで聞いたような設定」って思うかもしれません。
しかし、本作の面白さはその発想自体ではなく、自身の発想を自身の手で100%再現した圧倒的世界観と、その世界観を構成するディテールの作り込みにあるのだと僕は思うんですよね。

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画像出展元URL:http://eiga.com  / 職場の倉庫に作られたセット

例えるなら特撮マンから監督になったギレルモ・デル・トロと同タイプの作家性というか。

人間とは違う進化を遂げた人工生物マリガンたちの、グロかわいいルックや作品世界の独自原語(ポルトガル語かロシア語っぽい?)、食物連鎖が日常だったりマリガンたちにも階層や差別があったり。
そういう堀監督の脳内に広がるイメージを、物語の都合で希釈することなく、主人公を通して僕ら観客に追体験させてくれるんですね。

さらに、作劇場重要なキャラクターが割とあっさり死んでしまったり、っていうかそもそも主人公が劇中で計3回死んでしまったりする展開なんかは、いわゆるハリウッド的作劇とは全然違うし、ストップモーションアニメ界のトップランナーでもあるアードマン社やライカとも違う。その死生観も含めどこか仏教的というか東洋思想がベースにあるような。

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画像出展元URL:http://eiga.com  /この人が…

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画像出展元URL:http://eiga.com  / こんな姿に

かといって、じゃぁ中国・韓国・インド映画っぽいかというとそういう訳でもなく、もちろん邦画とも何か違う。あえて言うなら純度100%「堀貴秀の世界」なんですよね。

それはつまり、作劇に他人の考えが入らなかったからこそ実現した純度の高さだと思うし、(色々苦労もあったでしょうが)たった一人で制作していた時間が長かった事の恩恵と言えるかもしれません。

”独学”ゆえのオリジナリティー

あと、恐らく堀監督が元々映像や創作畑の人ではないってのも本作のオリジナリティーに繋がっていて、もちろんストップモーションアニメだから出来ないっていうジャンル的制限もあるかもですが、映画関係のプロなら(映像的にも物語的にも)絶対切るだろうっていうシーンが生かされてたり、逆に、入れれば絶対に盛り上がるシーンやカットが抜けていたり。

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そんなある種の違和感や歪さは、観る人によって評価の分かれるところなのだと思うんですが、個人的にはもし脚本や映像・編集などのプロが関わって観客が見やすい様に本作の凸凹を均して観やすく整地されてしまったら、こんなには面白くはなってないと思うんですよね。

劇中の違和感や歪さも含めて「JUNK HEAD」という作品世界を構成しているし、物語自体は王道でストレートなのに、本作には油断したら何処に連れていかれるか分からない緊張感が常にあるのです。

で、そんな感じで圧倒されていると、いきなりジャンプの打ち切りマンガみたいな終わり方をするわけですが、実はこの作品、堀監督の計画では3部作の第2部なのだそうです。(SW的な?w)

で、続編が作られるかどうかは本作のヒットおよび、堀監督の会社「株式会社やみけん」で制作されたパンフレットの売り上げに掛かっているらしい。

というわけで、もしこれから本作を観る機会があれば絶対映画館に観に行った方がいいと思うし、続編を観るためにも鑑賞後はパンフ購入必須ですよ!

興味のある方は是非!!

 

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13日の君の名は。「ザ・スイッチ」(2021)

ぷらすです。

先日、久しぶりに映画館で『ザ・スイッチ』を観てきました。
あの「ハッピー・デス・デイ」と「~2U」を手掛けたクリストファー・ランドン監督最新作と聞いて、期待に胸を躍らせて劇場に行きましたよ!

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概要

気弱な女子高生とシリアルキラーの体が入れ替わってしまうホラー。24時間以内に入れ替わりを解かなければ永遠に中年殺人鬼の姿で生きることになる女子高生が、自分の体を取り戻すべく奔走する。『名探偵ピカチュウ』などのキャスリン・ニュートンと『ドッジボール』などのヴィンス・ヴォーン一人二役に挑み、『セラとチーム・スペード』などのセレスト・オコナーらが出演。『ゲット・アウト』などを手掛けてきたジェイソン・ブラムが製作、『ハッピー・デス・デイ』シリーズなどのクリストファー・ランドンが監督を務めた。(シネマトゥディより引用)

感想

「中年殺人鬼⇔冴えない女子高生」のスラッシャーコメディー

これは別にネタバレでも何でもないので最初に書きますが、本作の内容を一言で言うと、中年の殺人鬼と気弱で冴えない女子高生の入れ替わりモノです。

登場人物AとBの肉体と精神が入れ替わる「入れ替わりモノ」はSF、ファンタジー、ハートウォーミング、サスペンス、スリラーなど国やジャンル、内容を問わず数多くの作品が作られている、もはや物語の王道ジャンルの一つ。

日本でも大林宜彦監督の「転校生」や記録的大ヒットとなった劇場アニメ「君の名は。」、最近だと綾瀬はるか高橋一生W主演のドラマ「天国と地獄 〜サイコな2人〜」など小説、マンガ、アニメ、実写作品などメディアを問わず数多くの作品がありますよね。

そんな「入れ替わりモノ」最新作である本作。殺人鬼と女子高生の入れ替わりということで「天国と地獄~」を連想する人も多いかもですが、こっちの殺人鬼は高橋一生のような優男ではなく、身長196㎝の大男で「デンジャラス・プリズン -牢獄の処刑人-」や「ブルータル・ジャスティ」など、バイオレンス界の新星 S・クレイグ・ザラー監督作品でも常連の強面俳優ヴィンス・ヴォーン

そんな彼がお面を被って残虐の限りを尽くすアバンタイトルは、ほぼ「13日の金曜日」のジェイソンですよ。

そんなヴィンス・ヴォーンと入れ替わる気弱な女子高生ミリーを演じるのは「スリー・ビルボード」での フランシス・マクドーマンドの娘役や、「名探偵ピカチュウ」でCNMの新人記者ルーシー役を演じたキャスリン・ニュートン

そんな正反対の二人が入れ替わるコメディー映画ながら、スラッシャーホラーの残酷シーンもしっかり見せるのが「ハッピー~」との違いで、R-15指定も納得の切り株描写満載なので「ハッピー~」の残酷描写がぬるいと不満だった人も満足出来るんじゃないでしょうか。

逆に、残酷描写は苦手という人に本作はちょっと厳しいかもですが、(アバンシーンを除けば)殺されるのは、冒頭で殺されるクラスメイトをネタにSNSで「いいね」を貰おうとするようなクズい女子や、人気者のイケメンなのを鼻にかけてミリーをからかう男子、自分に逆らえないのをいいことにミリーにハラスメントする教師に、ブッチャーと入れ替わってイケてる女になったミリーを集団レイプしようとするジョックス(体育会系)の奴らなどなど、殺されるべくして殺されるヤツらばかりなので、基本心が痛むことないし、殺し方もいちいち創意工夫に溢れているので飽きることなく観られるようになってるんですねー。

オッサンのキスシーンに萌える

もう一方の見どころはヴィンス・ヴォーンとキャスリン・ニュートンが演じる入れ替わりの演技。

まぁ、ヴィンス・ヴォーンはリメイク版「サイコ」でノーマン・ベイツ、2013年のコメディー映画「インターンシップ」の主役、女子プロレスラーの半生を描いた「ファイティング・ファミリー」のコーチ役など、スリラーからコメディー、人間ドラマなど幅広い役柄を演じる芸達者な役者ですからね。
見た目オッサンの女子高生もコミカルかつ非常に魅力的に演じていましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com / 左から、入れ替わる前のミリー、ナイラ、ジョシュの仲良し三人組

入れ替わった事に気づいたミリーは、学校に忍び込んで親友のナイラセレステ・オコナー)とジョシュ(ミシャ・オシェロヴィッチ)に助けを求めるも、なんたって見た目は殺人鬼ブッチャーですからね。
中身がミリーだとは中々信じてもらえなかったり、警官のお姉ちゃんに追いかけられて母親が務めるしまむら的な服屋に飛び込み、偶然が重なって更衣室のカーテン越しに母親と心を通わせたり。

そして、片思いの男子ブッカー(ユリア・シェルトン)に正体を明かし、元に戻るための協力を頼む流れのなかで2人が両思いだったのが分かってのミリー(外見はブッチャー)とブッカーのキスシーンでは、(もちろん面白コメディーとして描かれているんだけど)あまりに芝居が自然なので、だんだんヴィンス・ヴォーンが可愛く見えてくるっていうw

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画像出展元URL:http://eiga.com / ブッチャー姿のミリーとミリーが恋する男子ブッカー。

その一方で、ミリーの体に入ってしまったブッチャー。
見た目のインパクトも含めついヴィンス・ヴォーンに目が行ってしまいますが、キャスリン・ニュートンの芝居も何気に上手だしとても自然なんですよねー。

目が覚めてミリーの体と入れ替わった事にブッチャーが気づくシーンでは「あ、やっぱおっぱい揉んで確かめるんだ」って思いましたよw(この件「君の名は。」の感想でも書いたな)

ちなみに本作の原題は「Freaky」で、クリストファー・ランドン監督はインタビューで「『フリーキー・フライデー』に触発されたオリジナル作品を作る」と述べたそうです。

「フリーキー・フライデー」は中学生のジョディ・フォスターが母親と入れ替わるというアメリカでは有名なテレビ映画で、2003年に「フォーチュン・クッキー」として劇場映画にリメイクされたんですよね。

OPタイトル、13日の金曜日風フォントで「Freaky」の文字がどーんと映し出されたあと、「Friday(金曜日)」の文字が画面に大写しになるのは、インスパイア元の「フリーキー・フライデー」のタイトルとパロディー元の「13日の金曜日」に掛けたダブルミーニングになっているんですね。

何てことないシーンの中に

あと、僕が個人的に関心したのは、ブッチャーの体になってしまったミリーが、劇中のドタバタのなかで自分が凄い力持ちになっている(大男ですからね)事に気づくシーンがあって、逆にミリーの体を手に入れたブッチャーがいつも通り相手を惨殺しようとするんだけど、非力な女子高生なので危うく獲物に返り討ちにされそうになって戸惑うっていうシーン。

それ自体は別に何てこともない短いシーンなんですが、実はこのシーンで描かれているのは本作の重要なテーマで、自分をいじめていた男子がブッチャー姿の自分に怯えるのを見て、ミリーは力を持つ事の自由さに気づくのです。

元々内気なミリーは、父親の死でより内にこもる正確になり、本当は都会の大学に行きたいけれど、夫を亡くしたショックでアルコールに溺れ自分に依存している母親を気遣って言い出せずにいるし、自分をいじめたり利用しようとするイケてるグループの女子や男子にも抵抗出来ずにいる。

つまり、本作においてミリーは弱者(性別や人種セクシャリティー的マイノリティー)の象徴として、逆にブッチャーは暴力的強者(マジョリティー)や前時代的マッチョイムズの象徴として描かれているんですよね。

なので、ラストのある展開はスラッシャーホラーとしてはお約束だけれど、本作のテーマに対して監督からの回答の暗喩にもなっていて、それゆえに超スッキリするのです!

「ハッピー~」とは別物

そんな感じで、本作は「ハッピー~」2作同様に隙のない脚本で非常に面白く出来ているんですが、それでも「ハッピー~」的な面白さを求めて観ると肩透かしを食らってしまうかもしれません。

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画像出展元URL:http://eiga.com 

「ハッピー~」2作はどちらかというとSF的で、主人公ツリーが誕生日をループし続ける理由も2作を通して明確に明かされるし、その謎解き自体が物語をけん引する魅力でもあるんですが、本作でブッチャーとミリーが入れ替わる理由は、冒頭でブッチャーがたまたま手に入れたナイフ(実はインカ帝国?の儀式に使う呪具)の効果で、24時間以内に同じナイフでブッチャー(ミリーの体)を刺さないと2度と元の体には戻れないっていう物語の始まりとオチをつけるのためのスイッチ以上の役割はないんですね。

なので「ハッピー~」ほど理に落ちた感じにはならないし、物語的にもランドン監督の手口(作劇)にコッチが慣れてしまった部分もあって、「ハッピー~」の時ほどの驚きもない分、幾分ストーリーが淡白に感じてしまうかもしれません。

とはいえ、今やホラー映画業界では飛ぶ鳥を落とす勢いのブラムハウス制作で、「ハッピー・デス・デイ」と「~2U」を手掛けたクリストファー・ランドンの監督ですからね。観て損はしない面白い作品なのは間違いないですけどね。

興味のある方は是非!!!

 

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SWの魅力を再発掘したドラマシリーズ「マンダロリアン」感想

ぷらすです。
今回は映画の感想ではないんですが、先日、ディズニープラスのオリジナルドラマ「マンダロリアン」を友達の家で見せてもらったので感想を書こうと思います。

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マンダロリアン

正史9部作の終焉と「マンダロリアン」の登場

1977年(日本では翌78年)公開の第1作を小学校高学年で食らったドンピシャ世代ながら、「スター・ウォーズ」(以降SW)にあまりハマれなかった――という話を、僕はSWシリーズ劇場版の感想を書くたび何度も書いてきたわけですが、改めてその理由を振り返ってみると、SWではなく中心にドンと置かれたスカイウォーカの物語に乗れていなかったんだと思います。

僕は元々、王子や王女、貴族が登場するような西洋史観のファンタジーが苦手だったし、当時はSFも正直あまり好きじゃなくて、SWにはその両方が入ってましたからね。

SW正史(劇場版)では42年間9本の映画に渡ってスカイウォーカー一族の家族喧嘩を延々見せられてきたわけですが、旧3部作/オリジナル・トリロジー(4.5.6)はまだ、どハマりはしないまでもそれなりに楽しん気がするけど、新3部作/プリクエル・トリロジー(1.2.3)はどんなに話が盛り上がっても「でも結局この人は最後ダースベイダーになるんでしょ」って思うと楽しめず。

ルーカスからディズニー体制に移った続3部作/シークエル・トリロジー(7.8.9)に至って、やっと数十年ぶりに物語が前に進んでくれたのは良かったけれど、なんていうかこう……作り手も観客も「SWらしさ」という呪いに掛かっていて、あんなに自由だったSWがひどく窮屈な映画になっていたし、そんな新作を気に入らなかったコアなファンが叩いてる感じもなんだかなーと。

そうなると、一応全作品観てるけど元々そんなにSWにハマれなかった身としてはどこか疎外感があり、それらの周辺状況も含めてちょっと引いてしまうというか、ファンと作り手、ファン同士のゴタゴタも全部含めての大騒ぎがSWなんだろうな……なんて悟ったような事を思っていたわけです。

そして、2019年公開の「エピソード9/スカイウォーカーの夜明け」をもって、予定されていた劇場版SW9部作は幕を閉じたことでやがてファンの熱も冷めるだろうと思われたんですが、僕のTwitterのTLは一向に熱が冷める気配がない。どころか、その熱は時間を追う程に上がっていく。

何だろうと思ったら、「スカイウォーカーの夜明け」公開と前後するように、ディズニー作品専門の配信チャンネル『Disney+』で配信が開始されたSWのスピオフドラマ「マンダロリアン」の評判が回を追うごとに上がっていったんですね。

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主人公交代でSWの魅力が浮き彫りに

「マンダロリアン」はSWシリーズ初となる実写ドラマ作品で、脚本・企画・ショーランナー(現場の総責任者)を「アイアンマン1・2」を手掛けたジョン・ファヴローが務め、SWのアニメシリーズ「クローン・ウォーズ」のデイブ・フィローニや、数多くのTVドラマシリーズを手掛けたリック・ファミュイワ、デボラ・チョウ、「ジョジョ・ラビット」を手掛けたタイカ・ワイティティなど錚々たるメンバーがエピソード監督を担当(デイブ・フローニは製作総指揮も)。

映画「SW・EP6/ジェダイの帰還」から5年後の銀河を舞台に、孤独な賞金稼ぎの"マンダロリアン"が、ヨーダと同種族の赤ん坊の通称ベビー・ヨーダこと”ザ・チャイルド”と共に銀河の星々を旅するというのが物語の大筋で、基本は30分1話完結の8話構成になっているんですね。(エピソードによっては50分だったり40分だったりすることも)

主人公に名前がなく周囲から“マンドー“と呼ばれているのが、クリント・イーストウッド演じるマカロニウエスタンの主人公ジャンゴ(名無し)インスパイアなのは一目瞭然だし、シーズン1では黒沢明の「七人の侍」をリスペクトしたエピソードもあり。また、ベビー・ヨーダとマンドーの、時に親子、時に相棒のような関係性は「子連れ狼」インスパイアなのだとか。

つまり、「マンダロリアン」とは銀河の辺境を舞台にした西部劇で、それはスペースオペラとしてのSW”への原点回帰とも言えるし、シリーズの中心にあったスカイウォーカー家がスッポリ抜けた代わりに、”名無し”のオリジナルキャラを主人公に据えたことで、彼を通してSWのもう一つの大きな魅力である「多様性溢れる世界観」が浮き彫りになったのです。

“あの時“のワクワクを再現

ところで、SWに詳しくない人は「そもそもマンダロリアンって何?」って思うかもしれません。
マンダロリアンはSW/EP5~6に登場。ファンの人気を得て、その後アニメシリーズや小説にもたびたびメインで登場する人気のキャラクター、ボバ・フェットのビジュアルでもお馴染みの、ライトセイバーでも斬ることが出来ない最強の金属ベスカーで作られ、ミサイルや火炎放射器などを仕込んだ鎧やヘルメットに身を包む戦闘民族の総称

過去の大きな戦争で故郷の星と、多くの同胞を失った彼らの生き残りは銀河に散らばっていて、その高い戦闘能力を活かして傭兵や賞金稼ぎで生計を立てているらしいんですね。(僕はこの辺の設定に詳しくないので端折ります)

主人公のマンドーも惑星ネヴァロのギルドに所属している賞金稼ぎですが、SW/EP6で新銀河共和国が帝国側に勝利したことで仕事が激減。
マンドーは裏の仕事と知りながら帝国の残党から50歳の要人を捕獲するという依頼を引き受けるのです。

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ところが辺境の星で捕らえた獲物は確かに50歳ではあるけど、あのヨーダと同種族の幼児(ザ・チャイルド)だったんですね。
自身も孤児でマンダロリアンに拾われた過去を持つマンドーは、依頼を果たすべくザ・チャイルドを連れて惑星ネヴァロを目指すも、同じ境遇のザ・チャイルドに徐々に情が移っていき――というのがシーズン1のあらすじ。

全8話のストーリーの中で、SW劇場版で人気のキャラクターやマシン、武器などが次々に登場するだけでなく、映画ではチョットしか登場しないようなキャラクターたちの生態?や生活様式などが、マンドーやザ・チャイルドとの関わりの中で深掘り――というか、むしろ掘り返されることで、SW正史とは似て非なる新たな表情を見せてるのです。

それは1977年の「SW/EP4新たなる希望」が世界中のファンを虜にしたのと同じ、スペースオペラならではの世界観の面白さや、マシンや武器のディテールのカッコよさにワクワクした“あの時”の再現でもあり、それこそが「マンダロリアン」がファンのみならず、SWに乗れなかった人や、SWを知らない新規ファンをも取り込んでいる理由なのです。

僕自身、「マンダロリアン」を観て初めて、多くのファンがSWに熱狂する(面白さの)理由がやっと分かったんですよね。

「なるほど、こういう事なのかー!( ゚д゚)」ってw

さらにシーズン2では、正史(映画版)に留まらず、コミック、小説、アニメーションシリーズなどで人気のキャラクターも登場して、その世界観を更に拡張。続くシーズン3の制作も決定しているようなので、これからどうなっていくのかが今から超楽しみです!(;゚∀゚)=3ハァハァ

そして、第1作から42年ぶりに僕にSWの面白さ、楽しさを教えてくれたジョン・ファヴローとデイブ・フローニには、心から「ありがとう」と言いたいですよ!

興味のある方は是非!!

 

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