ぷらすです。
今回ご紹介するのは、昨年公開され映画好きの話題を呼んだ北欧映画『SISU/シス 不死身の男』ですよ!
不死身の爺さんがたった一人でナチの残党を皆殺しにするだけのフィンランド映画。
今回はネタバレしても面白さには全く影響しない映画だと思うので、ネタバレ全開で感想を書いていきます。気になる方はご注意ください。
画像出展元URL:http://eiga.com
概要
第2次世界大戦末期のフィンランドを舞台に、一人の老兵がナチスドイツの戦車隊と激闘を繰り広げるバイオレンスアクション。監督を務めたのは『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』などのヤルマリ・ヘランダー。同監督作『レア・エクスポーツ ~囚われのサンタクロース~』などのヨルマ・トンミラが不死身の老兵を演じ、『ヘッドハンター』などのアクセル・ヘニー、『セメタリー・ジャンクション』などのジャック・ドゥーランのほか、ミモサ・ヴィッラモ、オンニ・トンミラらが出演する。(シネマトゥディより引用)
感想
翻訳不可能なフィンランド語”シス”の精神でナチスを皆殺しにするジジイ
本作のタイトルでもある「シス」とは日本語への正確な翻訳は難しいフィンランドの言葉で、「すべての希望が失われたときに現れるという不屈の精神」のような意味の言葉なのだとか。
そのタイトル通り第二次世界大戦末期のフィンランドが舞台の本作は、地平線の広がる荒野で一人金掘りをしていた老人アアタミ・コルピが主人公。
つるはし一本で土を掘り続け、ついに大量の金塊を手に入れた彼だったが、たまたま行き会ってしまったブルーノ・ヘルドルフ中尉率いるナチスの残党に金塊と命を狙われるも、実はこの男、故郷に侵攻し妻子を殺したソ連兵をたった一人で300人殺し、“一人殺戮部隊”と敵・味方双方から恐れられる老兵士だったんですね。
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と書くと、ジョン・ウィックやイコライザーのマッコールさんのようなチートな強さの殺人マシーンをイメージするかもですが、この爺さんは特別な戦闘技術があるわけでも強靭な肉体があるわけでもなく。ただ、「絶対に死なない」と決めた不屈の精神と諦めない心。そして普通の人間なら絶対考えもつかないような斜め上の攻撃で、ナチの残党たちを次々屠っていくんですね。
対するナチの残党たちは、自軍が戦争に負ける事は確定していてこのまま本部と合流したところで、待っているのは縛り首にされる未来。そんな彼らが生き延びるにはコルピの持つ金塊が絶対必要なのです。
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なので、落としたドッグタグからコルピの恐ろしい正体を知った後も逃げ出すわけにはいかないし、対するコルピも何があっても金塊を渡すつもりはない。本作はたった90分しかないのに、そんな両者の対決が章立てでテンポ良く描かれていくのです。
また、本作はセリフが極端に少なくて、ナチや、彼らに拉致された女性のセリフは最小限。コルピに至っては劇中ほとんどセリフはなし。映像と、彼ら・彼女らの表情や動き、アクションで物語が進んでいきます。しかし、設定自体がシンプルなので、それだけで十分に物語や彼らの心情が伝わるのです。上手い。
もはや大喜利。コルピ爺さん斜め上のサバイブ術
そんなコルピとナチ残党の対決の様子を解説していくと、まずはファーストインパクト。
田舎道で出会ったコルピとナチ軍ですが、ブルーノ中尉は「どうせ後ろの奴らが殺す」とコルピをスルー。そして後方のナチ兵5人はコルピの金塊に気づいて奪おうとします。なにしろ多勢に無勢。ここは大人しく一旦金塊を渡し、一旦やり過ごしたのち奇習を仕掛け金塊を取り返す――って普通なら思うじゃないですか。
しかし、コルピ爺さんは違います。金塊入りのバッグに手をかけたナチ兵の頭をいきなりナイフで串刺しにするのを皮切りに、コルピは5人を次々にナイフで処すと、そのまま馬に乗って逃亡。
その後も敵に地雷を投げつけてる。敵の銃撃には砂金用の鍋を盾にする。
ガソリンを被った自らの身体に火を放ち、敵が怯んだ隙に川に飛び込み。
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自分を追って川に飛び込んだ敵の首を掻っ切って、切り口から出る酸素を吸って生酸素ボンベに。
縛り首で吊るされたると、吊るされた柱から突き出たボルトを足の傷口にぶっ刺すことで生き延び、つるはし一本で空飛ぶ飛行機にぶら下がり、墜落した飛行機からも生還。
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と、「いや、そうはならんやろ」というコッチのツッコミもなんのその。次々に斜め上?のサバイバル大喜利と根性で生き延びつつ、最後にはブルーノ率いるナチの残党を全滅させるのです。
モデルはランボーと伝説の狙撃兵
そんな本作を手掛けたヤルマリ・ヘランダー監督によれば、本作の主人公コルピは、シルベスター・スタローンのランボーとスコープなしのライフルで500人超のソ連兵を葬り「白い死神」と恐れられフィンランド伝説の狙撃兵シモ・ヘイヘをモデルにしたのだそう。最終的に自身も狙撃で顎を撃ち抜かれる重症を負うも生き延び、96歳の天寿を全うしたシモ・ヘイヘの生命力は、確かにコルピに通じるものがあると思いましたねー。
映画ってこれでいいんだよね
本作はコンセプトも内容も完全にナチスプロイテーションのエンタメに振り切っていて、その奥に何某かの社会的メッセージなどは一切入っていません。
また91分という上映時間も、昨今、2時間30分越えが普通で下手をすれば3時間超の映画も珍しくない昨今の映画事情に逆行しているとも言えるわけですが、でも、僕はこの作品を観て「映画ってこれでいいんだよね」って思ったんですよね。
そりゃぁたまには3時間越えの作品や、鉛を飲み込んだような重い社会的メッセージが込められた映画もいいですけど、長尺で社会的メッセージを盛り込んだ作品ばっかりじゃぁ、観てて疲れちゃいますしね。
やっぱ、映画はこういう90分くらいのキャッキャ楽しめるのがいいなって改めて思いました。
興味のある方は是非!!