今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

村上春樹の短編小説をイ・チャンドンが映画化!「バーニング劇場版」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作に「シークレット・サンシャイン」や「ポエトリー/アグネスの詩」などで世界から高い評価を集めるイ・チャンドン監督約8年ぶりに撮った新作『バーニング』ですよー!

観終わった直後の率直な感想としては、「うわー、えらいもんに手を出してしまった」でしたねー。「これ、感想書くのメッチャめんどくさいヤツじゃん」とw

でも、観てしまったからには仕方がないので、何とか頑張って感想を書いていこうと思います。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/891287173c896824.jpg?1541984651

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『ポエトリー アグネスの詩(うた)』などのイ・チャンドン監督が、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を大胆に翻案したミステリー。小説家志望の主人公の周囲で起こる不可解な出来事を、現代社会に生きる若者の無力さや怒りを織り交ぜながら描く。主演は『ベテラン』などのユ・アイン。ドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」などのスティーヴン・ユァン、オーディションで選ばれたチョン・ジョンソらが共演する。(シネマトゥディより印象)

感想

僕と村上春樹イ・チャンドン

まず書いておかなくてはいけないのが、僕は村上春樹の原作も、これまでのイ・チャンドン作品も未読(未見)だということ。

っていうか、僕は村上春樹の小説って(多分)初期の作品を1冊読んだきりなんですよね。なので「ノルウェーの森」や「海辺のカフカ」などの代表作も読んだことがないのです。

何ていうか、(初期作品に顕著だと思うんですが)彼の“一人称なのに他人事”みたいな作風がね、どうにも合わなかったんですよ。

対してイ・チャンドンは、有名な監督なので「確か1作くらいは観てたよなー」と思ってWikipediaでチャックしてみたら1作も観たことがなかったです。あれー?

というわけで、今回は完全に手ぶら状態での感想なので、もし調子っぱずれな事を書いてしまったらスイマセン。

NHKのプロジェクトとしてスタート

本作は元々NHKの、村上春樹の短編小説をアジアの映画監督が競作で映像化するプロジェクトの1つとして企画が進められたそうで、2018年12月2日にNHK BS4K、12月29日にNHK総合で日本語吹替による95分の短縮版がそれぞれ放送されたそうです。

その時のタイトルが「特集ドラマ バーニング」で、今年2月に「バーニング劇場版」として約2時間30分の全長版が公開されたんですね。

原作の「納屋を焼く」は1983年初出の短編。ざっくり内容を説明すると、

広告モデルでパントマイムが趣味の「彼女」と、知り合いの結婚パーティで知り合った小説家の「僕」は、ほどなくして付き合うようになります。
ある時、父親が亡くなった「彼女」はその遺産で北アフリカに行くんですね。

暫くして「彼女」は新しい恋人「彼」を連れて帰ってきます。
ある時「僕」との食事の席で、「時々納屋を焼くんです」と告白する「彼」は近々また納屋を焼く予定だと話します。

今まで他者に無関心に装っていた「僕」は、取り憑かれるように「彼」が次に焼く納屋を探すも、結局、納屋が焼かれる瞬間を捉えることはできない。
再開したときに納屋のことを尋ねると、「彼」は「納屋ですか?もちろん焼きましたよ。きれいに焼きました。約束したとおりね」と言い、時を同じくして何故か「彼女」も消えてしまう。という物語。

イ・チャンドンは、物語の舞台を現代の韓国を舞台に移し、原作小説では30代既婚の小説家である「僕」を、20代の貧しい「小説家志望」の青年イ・ジョンス(ユ・アイン)に変更。

内容の方も、大筋は原作小説をなぞりつつ、原作にも登場しタイトルの元ネタでもあるウィリアム・フォークナーの「Barn Burning(納屋を焼く)」的要素を加え、ラストに映画オリジナル展開を入れるなど、大胆な改変をしているんですね。

そういう意味では、原作の「納屋を焼く」を解体・再構築した作品と言えるのかもしれません。

幾重にも張り巡らされた伏線と、どのようにも解釈可能なラスト

本作の主人公イ・ジョンスは、子供の頃母親に捨てられ、暴力衝動の抑えられない父親は公務員への暴行で裁判中のため、家業である牛の世話のために北朝鮮との軍事境界線にほど近いパジュ市の実家に戻るハメになります。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/6a6d7c7b5b30d679/640.jpg?1543193050

画像出典元URL:http://eiga.com / ボンクラ青年ジョンスを好演したユ・アイン

その直前、彼は偶然“幼馴染”の美女ヘミ(チョン・ジョンソ)と出会うんですね。

彼女はモデル(というかキャンペーンガール?)の傍ら、パントマイムを習ったりしていて、ジョンスと飲みに行った店でミカンを食べるパントマイムを披露。
彼女は「そこにみかんがあると思い込むんじゃなくて、そこにみかんがないことを忘れればいいのよ」とパントマイムのコツを教えるんですが、このセリフが後の展開の重要なキーワードになっています。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/0b1edf6a033a2908/640.jpg?1543193052

画像出典元URL:http://eiga.com / ヒロインでありファムファタルでもあるヘミ(チョン・ジョンソ)

その後、彼女はアフリカに旅行に行くと言い出し、その間飼っている猫ボイルにエサをやってほしいとジョンスに頼むんですね。
しかし、ワンルームの狭い部屋なのに、猫の姿はどこにも見えない。

もしや“エア猫”ではと怪しむジョンスでしたが、エサや水はちゃんと減っているので部屋のどこかにいるのは間違いないらしい。

ジョンスは、“見えない猫”にエサをやりに行っては、そこに“いないヘミ”をオカズに自慰に励むのです。

やがて、彼女から帰ってくるので空港に迎えに来て欲しいという電話を受けたジョンスは、喜び勇んで迎えに行くんですが、何故か彼女の隣には見慣れない男が。

ヘミによれば、彼=ベン(スティーブン・ユァン)はアフリカのテロで立ち往生していた時に知り合った“親友”だそうで、人当たりはいいけど、どこか胡散臭い男。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/df41ee5b4300feda/640.jpg?1543193051

画像出典元URL:http://eiga.com / 胡散臭いベンを演じるのは「Z Inc. ゼット・インク」のスティーブン・ユァン

何の仕事をしているかは分からないけど、金持ちでポルシェを乗り回し、高級マンションに住んで、ハイソなお仲間とパーティーを開くようなベンに、ジョンスは持ち前の劣等をフル稼働

三人で食事のあと、部下だか友達だかが持ってきたポルシェを見てすっかり気後れしてしまい、ヘミに「乗せていってもらいなよ」なんて、自分のオンボロトラックから荷物を下ろしたりしちゃうんですよね。

ベンの方も何が気に入ったのか分からないけど、事あるごとにジョンスを誘っては格の違いを見せつけるので、ジョンスはますます卑屈になっちゃう。

ベンはぱっと見好青年で、ジョンスに対しても結構好意的に接してるんだけど、どこか見下してるようにも見えるように演出されていて、どうにも真意がわからない。
見下してるように見えるのは、ジョンスの劣等感からくる被害妄想かもしれないし、逆にそんなジョンスを本当に見下して楽しんでるのかもしれないわけですよ。

そんなある日、牛の世話をするジョンスにヘミから電話で「ベンと近くに来たから寄るわ」なんて電話が。

で、3人で大麻を吸って、ヘミが半裸で踊りだして眠っちゃったあと、ジョンスとベンが二人で話すんですが、そこでジョンスが「ヘミを愛してる」と告白すれば、ベンは「ビニールハウスを燃やすのが趣味」というヤバすぎる性癖を告白

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/0dd4fa7e748e0557/640.jpg?1541984678

画像出典元URL:http://eiga.com

「近々、この近くのビニールハウスを燃やす予定です」なんて言われたジョンスは、燃え盛るビニールハウスの前でニコニコしてる子供の自分を夢に見てしまい、気になって近所のビニールハウスをパトロールするも燃えたビニールハウスはどこにもないんですね。

時を同じくして、ヘミからかかってきた電話に出るも、声はなく、明らかに犯罪臭漂う物騒な物音を残して、彼女は“煙のように”消えてしまい―――というストーリー。

ここから物語はミステリー的な展開になっていくんですが、ここまでで1時間を軽く越えてるんですよねー。

って長いよ!

いやね、映像が綺麗だからまだギリ観てられますけど、ここまでストーリー上の大きな動きがあるわけでも続きが気になるフックがあるわけでもなく、何かこう……いかにも村上春樹っぽい、分かるような分からないようなスカシたセリフ回しが続くので、僕みたいなボンクラは観ていて普通に辛いw

ただ、この何てことない、ある意味で退屈な展開の中に、その後に繋がる伏線が張り巡らされてたり、終盤への重要なキーワードが描かれたりするので、とばすわけにもいかないっていうね。

で、そこから続くミステリー(サスペンス?)的な後半を経ての衝撃のラストは、どのようにも解釈出来るように設計されてるのです。

寓話的な原作を現実(リアル)の物語に

まぁ、前述したように、僕は原作未読なのでハッキリしたことは言えないんですが、それでも色んなレビューや解説を元に本作を読み解くなら、観念的で質量を感じさせない、ある意味おとぎ話的な原作に、イ・チャンドン監督は毒親の呪いとか格差社会とか若者の絶望や焦燥感、諦観や寄る辺なさといった、今の韓国(というか世界中の若者)が抱える問題をつけ加えることで、虚実の境目が曖昧になるという原作の核の部分は残しつつ、捉えどころのない物語に質量を与えて現実(リアル)に引き寄せたのではないかと思いました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89044/photo/d86b035bfa305c75/640.jpg?1543193052

画像出典元URL:http://eiga.com

その上で、最後にどうとでも解釈出来る余白を残すことで、この作品が“観客の物語”になるようなラストを用意したのかなと。

そう考えると、この長さはどうしても必要だったのかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

現代に蘇った“潜水艦モノ”「ハンターキラー潜行せよ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは今年4月に公開された『ハンターキラー』ですよー!

ハリウッド映画としては久しぶりの本格潜水艦モノ。

正直、劇場公開された時は「今さら潜水艦モノかー」とスルーしてしまったんですが、今回レンタルで観たら、思った以上に面白かったですねー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/12a12fcc6c421557.jpg?1548396234

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ジョージ・ウォーレス、ドン・キースの小説を原作にしたアクション。消息を絶ったアメリカ海軍原子力潜水艦の捜索に向かった潜水艦の運命を描く。監督は『裏切りの獣たち』などのドノヴァン・マーシュ。キャストには、『エンド・オブ・キングダム』などのジェラルド・バトラー、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』などのゲイリー・オールドマンらがそろう。(シネマトゥディより引用)

感想

一定の面白さが担保されている“潜水艦モノ”

いわゆる“軍事映画”は、時代を超えて今も世界中で作られている一大ジャンル。
その中でも、“潜水艦モノ”は大体面白くてハズレってそんなにないんですよね。

何故かといえば、海上や地上など、(基本的に)前後左右の平面上で行われる2Dの戦闘に対して、潜水艦は「深度」という縦の要素が加わる3Dの戦闘シーンであることが一つ。

もう一つは、潜水艦同士は視覚ではなく聴覚やセンサーで敵の位置を予測して戦う。また海底の地形などを利用して敵を欺くという、スパイ(忍者)モノ的な面白さがあること。

そして、潜水艦の戦場は海中なので深く潜ると水圧に艦が押しつぶされる危険もあるし、艦が破壊されたら乗組員はまず助からない=戦闘と死が直結している=あらかじめスリル・サスペンス要素を内包していること。

という3つの大きな要素があるからだと思います。

それに加えて、潜水艦モノはある意味で密室劇であり、限定された空間の中で運命共同体の乗組員同士の濃密なドラマが作りやすいという利点も。

それらの潜水艦モノのテンプレートは1957年公開「眼下の敵から」から2000年「U-571」に至るまで数々の映画の中で作り上げられてきたんですね。

ではなぜ近年の映画で潜水艦モノが殆どないのかと言えば、ぶっちゃけストーリーを広げづらい、つまりどれも似たような映画になっちゃうからなんじゃないかと。

そんな中、久しぶりの本格潜水艦モノとして今年公開された本作は、潜水艦モノに要人救出作戦という地上でのアクションを連携させることで、ある意味で硬直していた潜水艦モノというジャンルをアップデートしてみせたんですね。

ざっくりストーリー紹介

2020年に発刊されたジョージ・ウォレスとドン・キースの原作小説「Firing Point」を映画化した本作。

ロシアで起こった軍事クーデターから米軍の潜水艦とネイビーシールズが露大統領を救出するというストーリーに、時間内にミッションを成功させないと米露戦争が起こるっていうタイムリミットを設定することで、観客に飽きさせないスリリングなストーリーテリングをしているんですね。

映画冒頭、ロシア近郊のバレンツ海で、アメリカ海軍原潜タンパ・ベイが、ロシアの原潜と同時に消息不明となる事態が発生。
タンパ・ベイの捜査に当たるべく、アメリカ海軍少将のフィスク(コモン)は、別名“ハンターキラー”と呼ばれる攻撃型原潜アーカンソーの潜航を決定。艦長に海軍兵学校出身ではないものの、現場経験が豊富なジョー・グラスジェラルド・バトラー)を抜擢します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/bcb9c776b31cfa5f/640.jpg?1549964244

画像出典元URL:http://eiga.com / アーカンソーの船長ジョー・グラスを演じるジェラルド・バトラー

捜索に向かったアーカンソー号が発見したのは、無残に破壊されたタンパ・ベイとロシア原潜の残骸。その直後、アーカンソー号は、氷山の下に潜んでいたロシア側とおぼしき原潜の魚雷攻撃を受けるもジョーの機転でこれを撃破し、タンパ・ベイと共に沈んでいたロシア原潜の生き残り3名を救出します。

一方、地上では国家安全保障局NSA)のジョイン(リンダ・カーデリーニ)から、ロシア国内でクーデターが企てられているとの情報を受け、調査のためビーマン隊長(トビー・スティーブンス)率いるネイビーシールズ精鋭部隊4名を秘密裏にロシアに送り込むんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/5119460d2b62d146/640.jpg?1552359862

画像出典元URL:http://eiga.com / ペンタゴンで状況を見守るみなさん。中央のメガネのおじさんは何とゲイリー・オールドマン

ロシアに潜入した彼らが見たのは、現ロシア大統領ザカリンを拘束したロシア国防大臣のドゥーロフ(ミハイル・ゴア)が、海軍基地を占拠する様子。
彼は、他国に依存しないロシア国家の樹立を目指しクーデターを起こしたわけです。
米露原潜を沈めたのもアメリカに罪をなすりつけて大義名分を作り、米国との開戦が目的だったんですね。

米国政府&軍部は直ちに応戦の準備を始めるも、第3次世界大戦を危惧したフィスクは戦争回避のため、潜入したネイビーシールズアーカンソーによる露大統領救出作戦を提言。世界の命運は、彼らに託される事になる。というストーリー。

まぁ、いくら非常時とはいえ勝手にロシア領内に乗り込んで大統領救出っていうのは流石に荒唐無稽ではあるけど、そこに至るまでの前フリやキャラ紹介などのセッティングを非常にテンポよく観せてくれるので、少々強引な展開もそこまで気にならず、ストーリーに集中出来るんですよね。

潜水艦モノ定番のお約束と新鮮な描写

そんな中、敵潜水艦との対決、機雷だらけの海中を敵に気づかれないように敵領地への潜入、敵の攻撃を受けての浸水や水圧で軋む音が響く船内などなど。
潜水艦モノのお約束はしっかりと押さえる一方で、潜水の時に傾いた船内で踏ん張って立っているのでマイケル・ジャクソンのアレみたいになってる描写とか、敵の状況を偵察するための小型水中ドローンなど、新鮮な描写があったのは良かったですねー。

あと、今や潜水艦も諸々の性能も上がっていて、その辺のディテールもしっかり描写されているので、潜水艦好きにはグッとくるんじゃないでしょうか。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89001/photo/7141ea5540e022c4/640.jpg?1549964244

画像出典元URL:http://eiga.com

まぁ、個人的にはもう少し潜水艦同士のドッグファイトも観たかった気もしますが、以前ご紹介したインドの潜水艦映画「インパクト・クラッシュ」に続き、やっぱり潜水艦モノは面白いなーって思いましたねー!(*゚∀゚)=3

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

“マブリー”の魅力詰め合わせ映画「犯罪都市」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きマ・ドンソク主演の実録犯罪映画『犯罪都市』ですよー!
今やマブリーの愛称で国民的人気俳優となった韓国の俳優マ・ドンソクが悪いヤクザをボコりまくるスカっとする映画です!

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/0e818f76e8bb17cc.jpg?1519088205

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『殺されたミンジュ』『アンダードッグ 二人の男』などのマ・ドンソクが主演を務めたクライムドラマ。韓国に進出してきた中国人の犯罪者集団と戦う刑事の活躍を描く。『国選弁護人 ユン・ジンウォン』などのユン・ゲサン、『時間回廊の殺人』などのチョ・ジェユン、チェ・グィファらがそろう。監督はカン・ユンソン。マ・ドンソクが屈強な肉体を生かしたアクションを見せる。(シネマトゥディより引用)

感想

マブリーがヤクザより怖い刑事を好演

マ・ドンソクのプロフィールについては「ファイティン!」の感想でも書いたので、ここでは割愛しますが、ざっくりどんな人かと言えば、役者としては遅咲きながら、持って生まれた愛嬌と厳ついにも程がある肉体を武器に、(韓国映画界でも1・2を争う強面にも関わらず)今や国民的人気俳優となった韓国版シンデレラ・おじさん

そんなマブリーが本作で演じるのは、ソウル南部・衿川(クムチョン)警察に勤務する<強力班>のマ・ソクト刑事。強力班というのは日本で言えばマル暴って感じですかね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/ab59666542abca9e/640.jpg?1525142262

画像出典元URL:http://eiga.com / どんなマフィアより怖い顔のマブリー

衿川にはチャイナタウンがあって、そこには中国からやってきた“朝鮮族”と呼ばれる人たちが住んでいるんですが、その中には当然マフィアもいましてね。

彼らと韓国のマフィアはちょいちょい小競り合いをや揉め事を起こしたりしてるんですが、ソクト刑事はそんな両者の間に入って(主に腕力で)両者の揉め事の調停をして街の均衡を保っていたわけです。

ところがある日、中国から朝鮮族犯罪集団「黒竜組」の3人が乗り込み、サクっとボスを殺害して朝鮮族マフィア「毒蛇組」を乗っ取ったことで、街のパワーバランスが崩れてしまう。

そこで、マ・ソクト率いる警察の強力班は街の平和を守るため「黒竜組」の一掃を試みるが――という内容。

さらには、「黒竜組」に縄張りを荒らされた韓国マフィアも復讐のため動き出して、事態は黒龍組、韓国マフィア、ソクト率いる強力班の三つ巴の様相を呈していくのです。

で、ユン・ゲサン演じる「黒竜組」のボス、チャン・チェンってのが、見た目はロン毛でチャラいんですが、これが絵に書いたような冷酷かつ非情な男でしてね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/cd769c4a6c8f6c73/640.jpg?1525142264

画像出典元URL:http://eiga.com / 極悪非道の黒龍組ボス、チャン・チェン(右)

毒蛇組のボスをバラバラ死体にしてゴミ袋に詰めて捨てちゃったり、敵対する韓国マフィア「イス組」ボスの祝いの席に乱入→イス組ボスを殺害するわ、女子供にも平気で暴力を振るうわ、いざとなれば平気で子分も見捨てる最低のクズ野郎なのです。

そんな彼に従う二人の子分も凶暴で強面だし、他のマフィア組員も全員強面ばかりなんですが――その中でも一番の強面が、我らがマブリー演じるソクト刑事っていうねw

このソクト刑事、マフィアには全く容赦なく暴力を振るうんですけど、市井の人には優しく、後輩にとっては頼れる兄貴的存在。

いわば暴力刑事人情派なのです。

特に女性と子供には優しくて、食堂で働く15歳の朝鮮族少年には、どうやら昔から目をかけてやってるっぽいんですよね。

なので、マフィア同士で揉めようが殺し合いをしようが、基本的には冷静なんですけど、彼らが市井の弱き人々に暴力を振るった途端、ソクト刑事は怒りスイッチがONになって犯人を全力で追い詰めて叩きのめすのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/2843a56f45a94948/640.jpg?1523246060

画像出典元URL:http://eiga.com / 怒りスイッチON!

実録もの

実はこの映画、2004年に衿川で実際に起こった警察による朝鮮族マフィア一斉検挙をベースに脚色しているのだそう。主演のマ・ドンソクは、映画やドラマで役立たずだったり腐敗した組織として描かれる警察像を常々不満に思っていたんだそうです。
自分の知ってる(警察の)友人は全員頑張っていると。

で、本作ではそんな“リアルな警察像”を目指したらしいんですけど……これがホントにリアルなのだとしたら、それはそれで問題があるのでは?と思いましたねーw

本作のソクト刑事の立ち位置って、近年の日本映画で言えば「孤老の血」の役所広司的な感じなんですが、役所広司と違って「ヤクザごときでは絶対彼を殺せない」っていう絶対的な安心感があるんですよね。何故なら演じてるのがマ・ドンソクだからw

マブリーの魅力が詰まったマブリー映画

いわゆる「韓国ノワール」って陰惨でドロドロで痛い描写が多いのが特徴。
もちろん本作でも“痛い”シーンは多々あるんですが、それでも本作は他の「韓国ノワール」とは一線を画しています。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88290/photo/2f239b639372e0cd/640.jpg?1523246061

画像出典元URL:http://eiga.com / マフィアのみなさんも強面揃い!

それはやっぱ、マブリーの持つ愛嬌を引き出した演出が大きいと思うんですよね。例えば、

・ドタバタ走って、逃げる犯人を捕まえた後「膝が痛いだろうが」とこぼすマブリー。

・(悪い人ではないけど)後輩をいびる班長の財布を抜き取って、みんなで銭湯にいくマブリー。

・腕が太すぎて自分の傷が見えないマブリー。

・自白を拒む犯人にヘルメットを被せてボコるマブリー。

・目をかけている少年が売るパンを(マフィアの金で)大量に購入してあげるマブリー。

・自分より大きなマフィアの用心棒をパンチ一発でKOしてみせるマブリー。

・マフィアの店に立ち寄ったら進められるまま酒を飲んで寝てしまい、「黒竜組」の襲撃に気づかないマブリー。

・クライマックスで追い込んだチャン・チェン「一人か?」と聞かれて「まだ独身だ」と返すマブリー。

こんな彼の一挙手一投足を観ているだけで何故か多幸感に包まれるんですよねー。

キャラクターの背景は多くを語らない演出

本作の悪役チャン・チェンと二人の子分は、劇中でその背景がまったく語られません。
ただ、彼らは異常なほど金に執着している様子が描かれるだけなんですが、その描写で金への執着が彼らの出自と関係していることが、それとなく分かる演出をしていたり、彼ら朝鮮族に対する韓国内での立ち位置などもそれとなく描かれていたます。

また、(恐らく)チャン・チェンとは鏡像関係にある15歳の少年に対し、ソクト刑事が「お母さんを恨んでないのか」と問いかけ、少年は「お母さんにも人生があるから」と返す。特にこれ以外で少年の背景は一切語られていないんですが、15歳の少年が学校に行かず働いている理由を、このやりとりだけでそれとなく分かるように提示する演出も実に上手いなーと思いましたねー。

決して語りすぎず、描きすぎず、最低限の描写とセリフでそれとなくキャラクターの背景を匂わせるに留めるという演出は実に気が効いてるし、ソクト刑事がそんな彼をもっと幼いころから気にかけている事も、この短いセリフから伝わってくる。

そういうムダのない映画的描写が、やっぱ韓国映画は上手いと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

シリーズを追いかけてきたファンへ最高のご褒美「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019) *完全ネタバレ

ぷらすです。

今回ご紹介するのは『アベンジャーズ/エンドゲーム』ですよー!
劇場公開初日に観たものの、とてもネタバレ無しで感想が書けない…っていうかストーリーに関わる部分は何を書いてもネタバレになってしまうので、DVDレンタルが始まるまで書いた感想をずっと封印してたんですよねー。

でも、9月4日にレンタルも始まったことだし、そろそろいいかなー?ってことで、満を辞して感想をアップしますよ!

というわけで、今回は完全ネタバレで感想を書いていくので、まだ未見の人はもう知りません!

いいですね? 注意しましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/84951/photo/bb1dec302d34db04.jpg?1554079082

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

アベンジャーズ』シリーズの完結編で、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でヒーローたちの前に立ちはだかったサノスとの戦いを描くアクション大作。人類の半数が失われた地球で、アベンジャーズのメンバーが再び壮絶なバトルを見せる。メガホンを取るのは、前作や『キャプテン・アメリカ』シリーズなどのアンソニー&ジョー・ルッソ。アイアンマンことトニー・スターク役のロバート・ダウニー・Jrらおなじみの面々が出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

MCU11年の軌跡

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)は、2008年公開の「アイアンマン」からスタートした、大手アメコミ出版社マーベル・コミックが自社で実写映画を制作。様々なコミックのキャラクターを一つの世界観で扱うという一大クロスオーバー企画です。

日本で言えば「プリキュアオールスターズ」や「スーパーロボット大戦」みたいな感じだとお考え下さい。

それから11年間、前作キャプテン・マーベルまで実に21作に渡って紡がれた『アベンジャーズ』シリーズの締めくくりとして2019年4月26日に公開されたのが本作『アベンジャーズ/エンドゲーム』なんですねー。

昨年公開されたアベンジャーズ/インフィニティー・ウォー」(18)の衝撃のラストから一年。
世界中のファン待望の本作は、米国での公開からわずか17時間で興収1億ドルを突破。
スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を破って史上最短記録を更新するなど、社会現象とも言える大ヒットになったのです。

その一方で、シリーズが進むごとに物語は複雑化していき、一本の独立した映画としては評価は難しい。

それは本作だけの話ではなくて「ロッキー」や「スター・ウォーズ」などにも言える、シリーズものの宿命なんですよね。
「ロッキー」が映画としてではなく「ロッキーシリーズ」としてファンに評価されるように、「スター・ウォーズ」が「スター・ウォーズというジャンル」として評価されるように。
本作もまた、映画ではなくMCUという一つのジャンルになっているのだと思います。

ざっくりストーリー紹介

前作「~インフィニティー・ウォー」で宿敵サノスに破れ、インフィニティー・ストーンの力で全宇宙の知的生命体を半分にされてしまったアベンジャーズ

メンバーの半数を失った彼らは、インフィニティー・ストーンを取り戻し消し去られた人々を元に戻そうとサノスの居場所を突き止めるも、とき既に遅く、サノスは既にインフィニティー・ストーンを消滅させていました。
ソーが怒りに任せ、サノスを殺すも完全に望みを絶たれてしまったアベンジャーズ

https://eiga.k-img.com/images/movie/84951/photo/acaf4feeeb62217d/640.jpg?1555375425

画像出典元URL:http://eiga.com

しかし、それから5年後のある日、量子世界からアントマンことスコット・ラングが戻ってきたことで、彼らに新たな希望が生まれます。

彼らは量子世界を利用したタイムマシンで過去に戻り、6個のインフィニティー・ストーンを集めて世界を元に戻そうという計画を立てるんですね。

メンバーがそれぞれ過去に飛んでインフィニティー・ストーンを集める旅で、彼らは今は亡き人々との出会いで過去のわだかまりを払拭するも、計画を過去のサノスに気づかれてしまい、現代にやってきたサノス軍団との最終決戦に挑む。

というストーリー。

シリーズ全作を観てきたファンへのご褒美しかない181分

上映時間がシリーズ最長3時間1分という本作。
正直、観る前は「これは膀胱との戦いだな…」なんて思っていた僕でしたが、いざ始まってし合えばそんな事は杞憂に過ぎず、あっという間でしたねー。(もちろん直前にトイレを済ませ、鑑賞中も水分を控えてミントタブレットで乾きを癒す対策は取ってましたが)

シリーズのあらゆる要素を網羅し、過去作のキャラクターを登場させ、本作でシリーズを卒業するファーストアベンジャーズのメンバー6人に最後の花道を用意し、11年間に渡る一大叙事詩に見事に決着をつけた181分。

「え、“あの”作品のフリを“ここ”で回収するの!?」と驚き、MCU作品の特徴とも言えるユーモアやコメディーシーンで笑い、そしてクライマックスでは“そうなる事は分かってるのに”鳥肌が立つほど興奮し、見事な幕引きに涙する。

尿意を感じるヒマなんか1秒たりともありませんでしたよ!

一本の映画であの人数を捌くだけでもただ事じゃないのに、原作も押さえているファンが色々な予想を立てる中、“あえて”タイムマシーンで過去に戻るという一番ベタでシンプルな展開を堂々と採用しながらも、そこに各キャラクターのドラマを入れ込んでシリーズ作品を観てれば観てるほど楽しめる作劇。

まさにシリーズ総決算にして、シリーズ全作を追いかけてきたファンへのご褒美のような作品でしたねー。

2004年のキャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」以降、アベンジャーズの冠がつく作品全てを監督してきたルッソ兄弟は、本作では完全に一見さんを諦めて、ここまでシリーズを支えてきたファンに向けて、最後に最高のプレゼントを用意してくれたのです。

今まで信じてついてきて良かった! ありがとうルッソ兄弟!・゜・(ノД`)・゜・

タイムトラベル理論

とはいえ、多くの観客はアベンジャーズのタイムトラベル理論がイマイチ飲み込めずに混乱したのではないでしょうか。

僕も、バナーが説明するタイムトラベル理論が理解できなくて、ネットで調べまくってしまいましたよw

で、その中で個人的に一番納得出来た理論をご紹介しますね。

サノスがインフィニティー・ストーンを破壊したせいで、サノスを倒して世界を元に戻すというアベンジャーズの希望は無残にも打ち砕かれてしまいます。
そんな時、量子世界に閉じ込められていたアントマンが偶然戻ってきたことで、アベンジャーズはタイムマシンで過去に戻り、集めたインフィニティーストーンを使って世界を取り戻す計画を立てるのです。

しかし、過去を変えれば未来も変わるタイムパラドクスが起こるのでは? という問題がありますよね?
これはつまり、世界線が一つという前提に基づいたタイムパラドックスで「バック・トゥー・ザ・フューチャー」などで描かれているのがこれです。

もう一つ、過去を変えた場合にそこから世界は「変えた世界」と「変えなかった世界」に分岐、世界線が増えていくという考えもあります。
これはアニメ「STEINS;GATEシュタインズゲート」で使われた考え方ですね。

f:id:aozprapurasu:20190508142441j:plain

図にするとこんな感じ。

Aが「バック・トゥー・ザ・フューチャー」パターン。
Bが「STEINS;GATEシュタインズゲート)」パターンです。

対して本作では、アントマン量子世界から戻ってきた事をヒントにタイムマシーンが開発されます。

量子力学には「エヴェレットの多世界解釈」という理論があり、物凄くざっくり言うと世界には“最初から”無数のパラレルワールドが存在している。ってことなんですね。

だったら、別の世界線パラレルワールド)から、インフィニティーストーンを借りてきて世界を元に戻したあと、借りた直後に戻って石を返しちゃえば、自分の世界線ではタイムパラドックスは起こらないよね。っていう説です。

アントマン&ワスプ」のラストでも、量子世界に行くスコットにジャネットが、「時間の渦に飲み込まれないように」と注意してるし、戻ってきたスコットは量子世界で体幹5時間くらいだった(地球では5年)と言っていて、つまり量子トンネルを使えば世界線と時間を自由に行き来する事が出来る。っていう事なのではないかと思われます。

ラストで、別の世界線にインフィニティー・ストーンを返しに行ったキャップが、老人の姿で座っていたのは、石を全て返したあと自分の世界線(過去)に飛んでペギーと結婚。最後を看取ったということではないでしょうか。(自分は氷づけになっているのでその時代のキャップと鉢合わせにはならない)

キャプテン・アメリカ

そんな本シリーズで、メインを張る主人公格のキャラクターと言えばアイアンマンことトニースタークと、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャーの二人です。

第二次大戦中、ナチを裏で操る秘密組織ヒドラとの死闘の末に南極で氷漬けになり、70年後にS.H.I.E.L.D.によって発見され現代に復活したキャップ。

人一倍正義感に溢れながら生まれ持った虚弱体質のせいで入隊が叶わず、政府が極秘に行っていた「スーパーソルジャー計画」の被験者に志願して超人になります。
しかし、与えられた仕事は戦意高揚のマスコットキャラクターで、戦場では親友を失い、氷漬けにされたことで恋人ペギーとも離れ離れ。

復活してみれば世界の様相は様変わりし、同年代の仲間や恋人は亡くなり、それでも己の信じた正義のために戦う彼の元に現れたのは、ヒドラによって改造・洗脳された親友。

https://eiga.k-img.com/images/movie/84951/photo/ad0649740fa0d7e9/640.jpg?1555375424

画像出典元URL:http://eiga.com

過去のある出来事が原因でトニー・スタークと決裂し、親友を助けようとすればテロリスト扱いされ――と、ずっと挫折ばかりの人生を歩んできた彼に用意された最後の花道は、タイムマシーンで過去に戻って恋人ペギーと共に幸せな人生をやり直すというものでした。

時に対立し、時に協力しながら、トニー・スタークと共に「アベンジャーズシリーズ」を引っ張る両輪で有り続けたキャップや、彼を応援し続けたファンにとってこれ以上ない最高の幕引きをルッソ兄弟以下スタッフは用意していたんですねー!!
良かった! 本当に良かったよキャップ! ・゜・(ノД`)・゜・

アイアンマンに始まり、アイアンマンに終わる物語

シリーズ第一作「アイアンマン」は、マーベルコミックでは古参のキャラクターながら、「スパイダーマン」や「Xメン」などに比べると(世界的には)マイナーなキャラクターです。

マーベルコミックは、一時財政難から人気キャラクターの映画化権をバラ売りしていて、それゆえにMCUシリーズでは人気キャラを登場させられなかった。

世界的に名の通ったキャラと言えばハルクとキャプテン・アメリカくらいで、それでも1960年代以降に生まれた人気キャラに比べれば古臭かったり、二軍扱いのヒーローばかり。

そんな中、アイアンマンスーツというガジェットに目をつけてシリーズ第1作に持ってきたこと、さらにジョン・ファヴローという無名の天才を監督に選び、彼の強い推薦でロバート・ダウニー・Jrという(当時)落ち目の俳優を主役に大抜擢した座組が奇跡を呼び作品は大ヒット。その後のMCU作品の方向性が決まります。

ダークナイト」などのダークでリアルな路線が全盛だった当時のヒーロー映画界隈で、コメディーテイストなヒーロー活劇をぶつけることで大ヒットした本シリーズは、その後11年(「インクレディブル・ハルク」という例外はあれど)ブレることなく物語を積み重ね、新作が公開される毎にファンを着実に増やしていくんですね。

その中でも「アイアンマン」は単独シリーズ3作が制作され「アベンジャーズ」「キャプテンアメリカ」シリーズでも中核のキャラクターとして常にMCU作品を引っ張ってきました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/84951/photo/d49c05d0c4046dee/640.jpg?1549243779

画像出典元URL:http://eiga.com

他のヒーローと違い特殊能力も超人的な肉体も持たず、自分の頭脳だけを武器にDIYで作り上げたアイアンマンスーツで地球を守ってきた中年のオッサン。

いつもプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、コンプレックスや自分の弱さと必死に戦い続けた彼はファンに一番近いキャラクターで、だからこそ愛されてきた。

そんな彼に、ルッソ兄弟は最後の最後に(自らの命と引換えに)宿敵サノスを倒して世界を救うという最高の花道を用意したのです。

クライマックスで「I am inevitable(私は絶対なのだ)」というサノスに、「「I am IRONMAN(私がアイアンマンだ)」と返すトニー。

「I am IRONMAN」は、言うまでもなく彼の代名詞と言うべき決め台詞で、僕は単純に感動のシーンとして観ていたんですが、英語が分かる人によれば、実はあれは彼一流のジョークなのだそう。

例えば子供が「I am hungry(お腹がすいた)」と言うとお父さんが「I am Daddy(私はお父さんだ)」って返すジョークがあって、あのシーンではサノスに対して自分の名台詞をジョークにして返したっていう、トニー一流の皮肉の意味も入っているんだそうです。

あのたった一言の中に、トニーの代名詞とも言うべき名台詞、覚悟、皮肉屋であった彼一流のジョークという4つのレイヤーが重ねられていて、かつ、トニー・スタークというキャラクターが全て詰まっているわけですよ!!

怖いわー。ルッソ兄弟怖いわー。

そして、エンドロールの後、シリーズ全作に入っているオマケ映像を入れずに、第1作「アイアンマン」で、トニーがテロリストに捕まった洞窟の中でアイアンマンスーツマーク1を造形する時の、熱した鉄をハンマーで叩く音だけが響く。

あれはアイアンマン=トニースタークへの鎮魂の鐘であり、「どんなに困難な状況でも決して諦めなければ未来は開かれる」というシリーズを通して語られるMCU作品のテーマであり、以降に作られるであろう作品にその精神は引き継がれるという宣言でもあるんですよね。(多分)

つまり、「アイアンマン」で始まったMCUの「アベンジャーズシリーズ」は、「アイアンマン」で幕を閉じたのです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/84951/photo/f3c489516907a7b4/640.jpg?1555375425

画像出典元URL:http://eiga.com

 ブラック・ウィドウの花道

そんな感じで概ね大満足だった本作ですが、一つだけ飲み込めなかった部分がありまして、それはブラック・ウィドウことナターシャの死です。

いや、分かるんです。ソウルストーンを手に入れるためには「愛するものの魂と引き換え」にしなければならず、サノスは養女であるガモーラの命と引換えにソウルストーンを手にする。

だから、本作ではナターシャが自らの命と引換えにソウルストーンをアベンジャーズに齎したんですよね。

本作はファーストアベンジャーズの6人に花道を用意したと前述しましたが、ナターシャの終わりはあまりにも辛すぎるし、ルッソ兄弟ならもっと別の展開も用意できたのではないか。そう思ってしまいます。

あるレビュアーさんは、ナターシャの死を「冷蔵庫の中の女」(男性向けの物語を成立させるために女性が良く死ぬ事)であると書かれていて、僕も最初はそのように感じていました。つまり、ナターシャの物語だけが完結していないと。

しかし、たまたま観ていたYouTubeのレビューで、「ソウルストーンを手に入れるため、サノスはガモーラの命を差し出したが、ナターシャは自分の命を差し出した」と言う話を聞いて、「なるほど! 」と膝を打ちました。

前作「インフィニティー・ウォー」でのガモーラの最後と、本作でのナターシャの最後はまったく同じ構図で撮られています。
それはつまり、ソウルストーンを手に入れるために犠牲になった二人の最後を同じ構図にする作劇的な意味と意図が本作にはあったということなんですよね。

前作でサノスは、彼なりの理屈と正義(生命体の増加で滅びる前に全宇宙の知的生命体を半分に減らす)に従って行動を起こす。
その理屈には一定の理があるように見えるんですが、結局はサノスの安っぽいエゴでしかなかったことが、本作で明らかになる。

また、他のインフィニティーストーンはこれまでのシリーズで登場していたのに、ソウルストーンだけは、前作で初めて登場してますよね。

つまり、前作・本作でのサノスvsアベンジャーズの戦いでの勝利の鍵は、ソウルストーンで、極論を言えばソウルストーンを手にした方が勝利を掴む戦いだったのです。

自分の目的のために愛する娘の命を差し出したサノス。
仲間を救うために自分の命を差し出したナターシャ。

構図は一緒でも両者の行動は実は真逆で、前作で大上段に掲げたサノスの欺瞞を、ナターシャは自らの命と行動で暴いてみせた。その結果、アベンジャーズを勝利に導いたんですね。

つまり、(作劇上)ソウルストーンは正義とそれを貫く信念を図る秤であり、ナターシャは言葉ではなく行動で正義の何たるかを示し、サノスの欺瞞に満ちた“正義”を打ち砕いたのです。

DCEUの「スーパーマンvsバットマン」で、「スーパーマンにただの人間のバットマンが勝てるわけがない」という人がいますがそれは全然的外れで、ヒーローの強さとはスペックではなく“信念の強さ”。
本作ではただの人間であるブラック・ウィドウ=ナターシャの強い信念が、宇宙最強の敵サノスのエゴを打ち破ったのです。

つまりルッソ兄弟とスタッフは、ナターシャにもちゃんと最高の花道を用意してたんですねー。

 

他にも語りたいことは山ほどあるし、(これだけ褒めまくってますが)もちろん全てが完璧というわけではなく、「アレはどうかなー?」 と思うシーンもないではないですが、それを一々論うのも野暮ってもので、前作「~インフィニティー・ウォー」の絶望的なラストから一年、これだけ笑って、泣いて、興奮して、感動させてくれる最高のフィナーレを用意してくれたMCUスタッフ・キャストには、これ以外の言葉はありません。

 

「ありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします」

 

興味のある方は是非!!!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

ただのデス・ゲームものではなかった「SAW-ソウ-」(2004)「SAW-ソウ-2」(2005)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「死霊館」シリーズや「ワイルドスピード/SKYミッション」「アクアマン」などの監督ジェームズ・ワンの原点とも言えるソリッド・ホラー『SAW-ソウ-』と『SAW-ソウ-2』ですよー!!

僕はこのシリーズ、残酷ショーが売りのデス・ゲームものだと思いこんでいて、ずっとスルーしていたんですが、「ぷらすと by Paravi」で添野知生さんの解説を聞いて、俄然興味が沸いたので今回とりあえず2本レンタルしてきましたー!

というわけで、今回は2本まとめてご紹介します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/52656/photo/8e93cc7629790f56.jpg?1469166209

画像出典元URL:http://eiga.com

 

概要

密室で足を鎖でつながれた2人の男が直面する究極の選択と苦悩を描いたスリラー。ともにオーストラリア出身のジェームズ・ワン監督と主演の『マトリックス リローデッド』のアクセル役、リー・ワネルはこの作品で一躍脚光を浴び、低予算での製作映画ながら全米2000館で公開。全く先の読めないストーリー展開とスタイリッシュな映像は必見。<SAW概要>(シネマトゥディより引用)

感想

ジェームズ・ワンってこんな人

「SAW」の監督ジェームズ・ワンはマレーシア生まれ。
幼少期にオーストラリアのパースへ移住して11歳頃から映画の道を志し、メルボルンのロイヤルメルボルン工科大学へ進学後に親友のリー・ワネルと出会って、2人で映画製作をするようになります。

その後2人は「SAW」の長編映画を作るため、8分間のパイロット版DVDを制作して映画会社に売り込み、低予算ながらハリウッドで映画化が実現。

脚本も担当しているリー・ワネルアダム役を演じ、たった18日という短期間で撮影された本作は、2004年にサンダンス映画祭で上映されると熱狂的な支持を受け、波及効果で同年5月にカンヌ国際映画祭でも上映されたのがきっかけとなり世界各国から買い付けが殺到します。

結果120万ドルの低予算映画ながら、1.039億ドルの大ヒットとなり、その後7作に渡るシリーズになっていくんですね。(最新版となる「ジグソウ:ソウ・レガシー」を入れると8作)

しかし、ジェームズ・ワンは続編「SAW2」でダーレン・リン・バウズマンに監督を任せ自身はは製作総指揮に回るんですね。

これはジェームズ・ワンの特徴で、まず自身が監督してテンプレートを作った作品がヒットしたら製作に回り、若手監督にシリーズを任せるのです。(「死霊館」も同じやり方)

そうしてキャリアを重ねた彼は、それまでの“ホラー監督”のイメージを払拭するべく、2007年にはケヴィン・ベーコン主演のアクション映画「狼の死刑宣告
2015年には外様ながら監督した人気シリーズ「ワイルド・スピード SKY MISSION」が大ヒット。
2018年にはDCヒーロー映画「アクアマン」を大ヒットさせ、ハリウッドのヒットメーカーとして確固たる地位を築いていくんですね。

「SAW」シリーズとは

「SAW」シリーズの概要をざっくり説明すると、猟奇殺人鬼ジグソウが、様々なキャラクターを密室に閉じ込めデス(死の)ゲームを強要し追い込んでいくというもの。

ただし、ジグソウ自体が各キャラクターに直接手を下す事は無く、彼がやるのは状況と仕掛けを作り、あとは“参加者”たちがその中でどう動くのかを観察するだけなんですね。

そんなジグソウの立ち位置は、ある意味でシリーズのテンプレを作っては続編を若手監督に任せるワン自身にちょっと重なるような気がしました。

また、本作で描かれるのは参加者同士のデス・ゲームがメインではあるけど、同時進行で警察がジグソウを追うサスペンス展開、閉じ込められた参加者には何かしらの因縁や共通点があり、物語の進行と共にそれらが明らかになっていくというミステリー要素も含んでいます。

ここが、他のデス・ゲームとは少し違うところで、やってることは毎回同じでもキャラクターが変わると、それに応じて必然的に物語が変化していくのです。

また、毎回趣向を凝らした(痛い)仕掛けや装置によって、今回は参加者がどんなひどい目に合うのかもシリーズの楽しみの1つだったりするんですね。

「SAW-ソウ-」(2004)

www.youtube.com

という事を踏まえて、まずは第1作目である「SAW」の感想。

物語は、老朽化したバスルームで目覚めた2人の男、医師のゴードン(ケアリー・エルウェズ)とカメラマンのアダムリー・ワネル)。
両者の足には鎖、2人の間にはカセットレコーダーを握った自殺死体が横たわっています。

そして二人のポケットにはそれぞれカセットテープが。

部屋にはいくつかアイテムがあり、その中から2人は自分たちがおかれている状況を把握・脱出しようとするが……。というストーリー。

2人はバスルームに対角線上に繋がれていて、互いに触れることは出来ない。
しかも、脱出のヒントや指示、アイテムはそれぞれ別なものが与えられるので、2人で情報共有しつつ協力しなければ脱出することは出来ないんですが、そんな状況なので互いに疑心暗鬼になっている。しかも2人が協力しそうになるタイミングで、ジグソーは互いが疑い合うよう揺さぶりをかけてくるんですね。

そして、ゴードンの愛する娘と妻がジグソーに拉致されている事が分かり、ゴードンが手にしたケータイからは娘の泣き声が――。

っていうね。

そこに、ジグソーに相棒を殺された元警官も絡んでいくんですが、ラストのラストでついにすべての真相が繋がった時、「あー、あのシーンもあのシーンも繋がっていたのかー!」という衝撃の展開が待っているんですねー。

まぁ、ジェームズ・ワンのデビュー作でもあるので、今観ると粗さが目立つ部分もあったりもしますが、大ヒットも納得の面白さでしたねー。

「SAW-ソウ-2」

www.youtube.com

出口の無い洋館に閉じ込められた8人の男女がジグソウのゲームに臨むという物語。

今回は遅効性の毒ガスがゲーム開始と共に館内に充満するという極限状況の中で、ゲームに勝ち抜き2時間以内に解毒剤入り注射器を手に入れなければ、ドアが開くまで生きられないというルールです。

一方、刑事エリック(ドニー・ウォルバーグ)は早々に殺人鬼ジグソウ逮捕するも、彼の部屋で発見したモニターに映る息子を含む8人がジグソウに監禁されており、ジグソウのゲームに臨んでいる光景を見て驚愕。

エリックはジグソーに詰め寄るも、彼は動揺することなくエリックと2時間、2人きりで話をする"ゲーム"を要求する――というストーリー。

前作の成功を受けて若干予算も上がったのか、参加人数も増え、彼らを苦しめる仕掛けや装置などもスケールアップしてました。

2作目ということもあって前作ほどの衝撃はなかったけど、8人のゲームとエリックとジグソーのゲームが同時進行で描かれるという設定は面白かったですねー。

また、前作でも脚本を担当したリー・ワネルが本作でも監督のダーレン・リン・バウズマンと共同で脚本を担当してることもあり、前作が本作の謎を解く前フリになっているのも面白かったですねー。

本シリーズは、恐らく1997年公開の「CUBE-キューブ-」にインスパイアを受けていると思われますが、ワンシチュエーションの密室劇に留まらず、警察の攻防など、“部屋の外”のドラマもプラスし、それらが最終的に一本の物語として繋がる構成が(当時としては)革新的だったのかもしれませんし、今観ても十分に面白かったですねー。

とはいえ、残酷で痛いシーンも多々あるので、そういうのが苦手な人にはオススメ出来ないですけどねw

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

 

aozprapurasu.hatenablog.com

orera.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

 

 

タランティーノ1969年のハリウッドを描く「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 」(2019)

観てきました!!

クエンティン・タランティーノ監督9作目となる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を!!

そりゃぁ、待ちに待ったあのタランティーノの新作ですからね!
劇場に行かないという選択肢はないやろ。(by鶴瓶

前作「ヘイトフル・エイト 」は僕の地元では3ヶ月遅れでの公開で、非常に悔しい思いをしただけに、今回、リアルタイムで観れたのは嬉しかったですねー。

というわけで、今回は劇場公開されたばかりの作品なので、出来るだけネタバレしないように気をつけて書きますが、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対に嫌!という人は、本作を観た後にこの感想を読んでくださいね。

いいですね?注意しましたよ?

あ、でも一つだけこれから観る予定の人にアドバイスをさせてもらうなら、グーグルでもウィキペディアでもいいのでシャロン・テートチャールズ・マンソンを調べてから観に行くことを強くオススメしますよー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/89421/photo/81d17396b6e773af.jpg?1556065804

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ジャンゴ 繋がれざる者』のレオナルド・ディカプリオ、『イングロリアス・バスターズ』のブラッド・ピットクエンティン・タランティーノ監督が再び組んだ話題作。1969年のロサンゼルスを舞台に、ハリウッド黄金時代をタランティーノ監督の視点で描く。マーゴット・ロビーアル・パチーノダコタ・ファニングらが共演した。(シネマトゥディより引用)

感想

タランティーノ1969年のハリウッドを描く

本作は1969年のハリウッドが舞台。

以前も書いたかもしれませんが、この時代というのはハリウッドにとって大きな転換期だったと言えます。

いわゆる“ハリウッド黄金期”と呼ばれる時代はここから遡ること20年以上前の1940年代で、英雄の一大叙事詩や、夢のような恋物語が主流の「観客に夢と希望を与える」作品が量産されていました。

しかし、1950年代に入るとハリウッドは独占禁止法によるスタジオ・システムの崩壊やテレビの影響などで斜陽化し、共産主義者を告発する赤狩りが残した爪痕により暗いムードをもった作品も少なからず現れるようになります。

1960年代に入ると、ベトナム戦争公民権運動によって国民の米国への信頼感は音を立てて崩れ、アメリカの各地で糾弾運動が巻き起こります。
テレビではベトナム戦争の悲惨な現状や、黒人によるデモを鎮圧する警察や軍隊の暴力が映し出されているにも関わらず、(ヘイズコードの影響などもあり)“古き良きアメリカ”の価値観で映画を製作していた大手映画会社は若者にそっぽを向かれ、経営もどん底に。

その頃、(主に)若手映画人がフランスのヌーヴェルヴァーグに影響を受け、スタジオを飛び出しオールロケで製作した低予算映画群がアメリカン・ニューシネマです。

1967年公開の「俺たちに明日はない」を皮切りに次々公開されたこれらの映画は、概ね反体制的な人物(主に若者)が体制に敢然と闘いを挑むも、最後には体制に負けるという内容で、それが当時の若者たちの共感を呼んで大ヒット。
1976年の「タクシードライバー」まで、数多くのニューシネマ作品が作られるようになります。

一方1960年代に、ハリウッドと同じく斜陽化していたイタリア映画産業が活路を見出すため製作されたのがイタリア製西部劇で、通称「マカロニ(スパゲッティー)・ウエスタン
本国アメリカでは清廉潔白・完全無欠の正義の味方を主人公にした西部劇もまた、1960年代には衰退していたわけですが、アウトローを主人公に、それまで米国製西部劇では描けなかった流血や暴力など、ある種の悪趣味な見世物表現でマカロニ・ウエスタンは世界的に大ヒットとなり、“本場”アメリカにも逆輸入される形になるのです。

そしてクリント・イーストウッドなどのスターを輩出するんですね。

本作でレオナルド・ディカプリオが演じたリック・ダルトンは、1950年代にテレビ西部劇でスターとなるも徐々に人気に陰りが見え始め、最近では悪役のオファーが増えている。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89421/photo/e99b0af97026e395/640.jpg?1564388710

画像出典元URL:http://eiga.com

そんな彼の演技に目をつけたアル・パチーノ演じる映画プロデューサーのマーヴィン・シュワーズは、彼にマカロニ・ウエスタンの主役として出演をオファーするわけです。

リック・ダルトンというキャラクターはバート・レイノルズをモデルにしているとタランティーノ自身は語っていますが、ダルトンのキャリアに関してはクリント・イーストウッドをモデルにしてる印象。
まぁタランティーノはリック・ダルトンを「イーストウッドになり損ねた男」ってインタビューで語ってましたけども。

そんなダルトンのスタントマン兼運転手が、ブラピことブラッド・ピット演じるクリフ・ブース
仕事上のパートナーというだけでなく、落ち目で不安定になっているダルトンを励まし細々と世話を焼く女房役でもあり、本作では全編通して二人のブロマンス的な関係を中心に描いています。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89421/photo/93659be77cd78392/640.jpg?1563764228

画像出典元URL:http://eiga.com

また、クリフは朝鮮戦争帰還兵ということもあって腕っ節の方も超強い男ではあるんですが、その喧嘩っ早さからプロデューサーに嫌われて、スタントマンの仕事は干されている状態でもあるんですね。

本作はそんな二人を通して1969年当時のハリウッドを淡々と描写していくんですが、そこはシネフィルのタランティーノ
劇中登場する劇中映画のフィルムの質感や小物に至るまでこだわりまくり、当時の空気感までを見事に再現して見せているし、映画ファンやタランティーノファンなら思わずニヤリとしてしまう仕掛けも、ふんだんに盛り込んでいます。

チャールズ・マンソンシャロン・テート

もう一つ、この映画を観る上で重要なのが、チャールズ・マンソン率いるマンソン・ファミリーと、女優のシャロン・テートです。

チャールズ・マンソンは、複雑な出自から社会に適応できず、9歳で犯罪に手を染めてから1967年に釈放されるまで、人生の大半を刑務所で過ごしています。

一時は歌手を目指していくつもの曲を作っていて、ザ・ビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソンら著名な音楽家との交流もあったらしいんですが、結局ミュージシャンとしてデビューはできず、その後、上記の政府への抗議運動と東洋思想などが合流したヒッピーカルチャーと出会い、家出した少女を集め「ファミリー」としてコミューンを作って集団生活を始めるようになります。

劇中で少女たちがゴミ箱を漁って食べ物を集めるシーンがありますが、これも史実。
マンソンは「ファミリー」の少女たちに大型スーパーなどのゴミ箱から食べ物を調達させる一方、フリーセックスやLSDなどのドラッグに耽っていたんですね。

そんな時、彼はビートルズが発売したアルバム『ホワイトアルバム』の中に収録されていた「ヘルタースケルター」と言う曲に激しくインスピレーションを掻き立てられます。
そしてやがて白人対黒人によるハルマゲドンが起こり、黒人が勝つも彼らもまた自滅して最終的に生き残った自分たちマンソン・ファミリーが世界の覇権を握るという、妄想に囚われ、以後、過激なカルト集団になっていくのです。

一方、売れない新人女優だったシャロン・テートは、ロマン・ポランスキー監督の映画出演がキッカケでポランスキーに見初められ結婚・妊娠しますが、ポランスキーが映画撮影のためヨーロッパに行っている時、マンソン・ファミリーに自宅を襲撃され、友人らと共に無残にも殺害されてしまうんですね。

この事件から、彼女は女優としてではなく、ロマン・ポランスキーの妻、またカルト教団マンソン・ファミリーの被害者として一躍有名になってしまったわけです。

そして本作は、この痛ましい事件を“観客が知っている前提”で作られていて、なのでこの流れを押さえているといないとでは、本作を観たときの印象が全然違ってしまうんですねーって………3000文字も書いてるのにまだ、本編に殆ど触れてないんだぜ?

サスペンス映画

本作でシャロン・テートを演じるのは、「スーサイド・スクワッド」のハーレイクイン役で一躍人気女優となったマーゴット・ロビー

https://eiga.k-img.com/images/movie/89421/photo/6eb3d48b9d028112/640.jpg?1563764229

画像出典元URL:http://eiga.com

彼女は劇中リック・ダルトン、クリス・ブースとほぼ絡むことはなく、ポランスキーとデートしたり、街で買い物を楽しんだり、友人とパーティーをしたり。

やがてお腹も大きくなって、幸せそのものなんですね。

しかし、彼女が幸せそうにしている姿を観ながらも彼女の運命を知っている観客は、このあと彼女に起こる悲劇にどんどん近づいている事が分かるので、ハラハラしてしまう。つまり、この映画は“そういうサスペンス映画”なんですね。

劇中では事件に関して何の説明もないまま進むんですが、観客はこの事件を知っているというメタ的な構造になっていて、なので事件の概要をある程度知っておかないと、クライマックスの展開にも、ポカンとするハメになってしまうわけです。

シャロンダルトン

劇中、落ち目になりすっかり自信を失っているダルトンの前に現れるのが、共演者で天才子役のトルーディ
この子はまだ9歳にも関わらず、役者としてのプロ意識がべらぼうに高いんですね。
ダルトンはそんな彼女に触発されて、監督が絶賛する名演技を見せます。
そしてトルーディにも「私の人生で出会った中で最高の演技だった」(意訳)と言われた事に感動して涙する。

このシーン、出演作品で次々素晴らしい演技を見せながらも、中々アカデミー賞を取れなかったディカプリオ自身に何となく重なる気がしたりしましたし、一説では「ジャッキー・ブラウン」の興行的失敗でしばらくの間次回作が撮れなかった時のタランティーノ自身の経験が元になっているのではないかと言われています。

一方のシャロンは、買い物の途中で通りかかった映画館で、たまたま自分が出演している作品が上映されてるのを見つけて、その映画館に入ります。

そして、自分のコメディー演技に観客が笑っているのを見て、涙をこぼしながら喜ぶんですが、実はこの映画館で流れているのは、シャロンを演じるマーゴット・ロビーではなく、シャロン・テート本人の映像なのです。

タランティーノがなぜ、そんなややこしい事をしたのかといえば、女優としてより、ロマン・ポランスキーの妻として、またマンソン・ファミリー被害者として名前が知られてしまった彼女を、女優シャロン・テートとして蘇らせるため。

つまりタランティーノは、彼女がポランスキーの妻”でも、“マンソン・ファミリーの被害者”でもなく、女優シャロン・テートなんだと、今一度世間に知らしめようとしたわけです。

この二つのシーンは、それ自体は何てことないエピソードなんですが、ディカプリオ&マーゴット・ロビーの名演もあり、また、タランティーノの粋な計らいに思わずグッときてしまいました

復讐劇

本作は、それまでのタランティーノ作品の殆どがそうであったように、ある種の復讐劇になっています。
本作を表層的に捉えるなら「あーハイハイ、今回はそういうアレなのね」と思ってしまうし、序盤から中盤にかけての、(敢えて)ドラマ性抑え淡々と観せていく演出は退屈に感じてしまうかもだけど、ちょっと待って欲しい

前作「ヘイトフルエイト」での脚本流出騒動、その後ハリウッドに巻き起こった「#MeToo」運動によって共に数々の作品を手がけた映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが告発された騒動の煽りを受けての謝罪。
また自身も「キルビル」の主演女優ユア・サーマンからパワハラを告発されるなど、(自業自得とはいえ)映画製作に集中出来ない環境が続いたタランティーノ

本作はそんな一連の騒動に対する彼自身のアンサーでもあり、技術的にも政治的にも激変している現在の映画界に対する思いを、同じく大きな転換期であった1969年という時代に乗せて描いた、ある種の寓話なのです。

ショッキングなクライマックス描写に対しては「結局、タランティーノって女性差別主義者なんじゃないの」という意見もいくつか目にしたりしましたが、僕は違うと思う。

まぁ、劇中でのブルース・リーの扱いは僕もどうかと思ったけど。

本作を通して、いったい誰に、そして何に対してタランティーノが復讐しようとしていたのかは、是非、劇場で、ご自身の目でご確認下さい。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89421/photo/95b77a49ba5457fa/640.jpg?1558482964

画像出典元URL:http://eiga.com

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

 

アルゼンチン発新感覚ホラー「テリファイド」(2019)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのはアルゼンチン発のホラー映画『テリファイド』ですよー!
いやー、久しぶりに「怖い!」って思う映画を観ましたねー((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

この映画、ギレルモ・デル・トロプロデュースでハリウッドリメイクされるらしいですが、それも納得の怖さ&上手さでした。

というわけで今回はネタバレありで感想を書くので、これからこの作品を観る予定の人やネタバレは絶対に嫌!という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/90409/photo/b6fad0180c3e45e0.jpg?1545295803

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ザ・ホスピタル』の脚本などを担当してきたデミアン・ルグナがメガホンを取ったホラー。ある住宅で起こる怪奇現象が、ショッキングに映し出される。キャストは、ドラマシリーズなどに出演してきたマクシ・ギヨーネ、ノルベルト・ゴンサロら。シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで上映された。(シネマトゥディより引用)

感想

アルゼンチン発の新感覚ホラー

本作は「未体験ゾーンの映画たち2019」で公開されたアルゼンチン映画だそうで、パッケージのいかにもなB級ホラーっぽさから最初は食指が伸びなかったんですが、あのギルレモ・デル・トロプロデュースでハリウッドリメイクされるという話や、ある人のレビューで俄然気になり始めて、今回レンタルしてきました。

一言で言うなら、久しぶりに怖い映画を観たなーっていう感じ。

しかも、(恐らく)ホラー映画を沢山観ている人ほど怖いんじゃないかって思う演出がされているんですよ。

というのも、ホラー映画っておばけ屋敷的に観客を「わっ!」と驚かせる前の貯めの部分っていうか、キャラクターの行動や音楽で「来るぞ来るぞ…」って思わせる部分があるじゃないですか。

本作はその「来るぞ来るぞ…」が延々続く感じで、それってホラー映画の一番怖い部分がずっと続くって事でもあるんですよね。

来るぞ来るぞ…来ない。来るぞ来るぞ…やっぱ来ない。来るぞ来るぞと思わせて来ないんでしょ…ってホントにキターっ!(;Д;)ギャー! みたいな。

で、ホントかどうかは分かりませんが、アルゼンチンはスプラッタホラーが盛んな土地柄らしく、結構血まみれだったり「え、それ見せるんだ」っていうショッキング描写も普通に描いていて、その辺の絶妙に嫌なバランスは他のホラー映画ではあまり観たことがなくて、新鮮だなーって思いましたねー。

「小さな物語」の向こうに見える絶望的な世界

ブエノスアイレスのとある住宅街の一角。

ある夫婦の家庭で、奥さんが排水口を覗くシーンから物語はスタートします。
もうね、この時点でこっちは「覗いてる奥さんの目を鋭い針のような物が…」って想像しちゃってドキドキなんですが、この時は特に何もなく、帰ってきた旦那に「下水管から話し声が聞こえるの」って奥さんが言うんですね。「『お前を殺してやる』って聞こえるの」と。

旦那の方は「隣に住む男がリフォームしてるからじゃないか」なんて気にもかけないわけですが、その翌日の午前5時。

起きた奥さんがシャワーを浴びに行くんですね。
で、旦那はそのまま寝ているんですが、壁を叩くような音がして目を覚ます。
定期的にドン・ドンと聞こえる音に「隣の男が早朝からリフォームを始めた」と思った旦那は、壁を叩いて文句を言うんですが壁を叩く音は止まらない。

ぶち切れた旦那は、家を出て隣のチャイムを鳴らして文句を言うも、チャイムからは雑音混じりの気配は感じるけど応答はない。

仕方なくベッドに戻った旦那は、壁を叩く音が隣からではなく、バスルームから聞こえる事に気づくんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90409/photo/57f6084c7e306019/640.jpg?1544692845

画像出典元URL:http://eiga.com

で、奥さんが何かしているのかと思ってバスルームの扉を開けると、そこには宙に浮いた血まみれの奥さんが、左右の壁に激しく叩きつけられているのです。
なすすべの無いホアンの目前で奥さんは絶命してしまいます。

で、ここで時間は戻って隣の男の物語に。

目が覚めるとベッドが勝手に動き、暗い屋内を何かが走り回るという謎の怪現象に悩み、眠れない日が続く男は超常現象の研究者に電話で助けを求めますが、秘書らしき女性に「確たる証拠がないと調査はできません」と無下に断られてしまいます。

それならと、ベッドルームにスマホを仕掛けて撮影を試みる男。
そして夜中にバタンという物音で男が目を覚ますと、スマホが倒れているんですね。
男がスマホを確認してみると、ベッドの下からつるっぱげの全裸男が這い出てきて、男をじっと覗き込み、その後クローゼットの中に入っていくのが録画されているのです。

男は護身用の拳銃を持ってクローゼットを開けるも、中には何もいない。
そこで、もう一度スマホを確認しているその後ろで、クローゼットの扉が開いて……。

翌日、男の家の庭に入ってしまったボールを取りに来た少年が、ついでに庭の水道から水を飲んでいると、家の中から「この家に近寄るな!」という男の声が。

その声に驚いた少年が道路に出たその瞬間、彼は走ってきたバスに轢かれて亡くなってしまうんですね。

そして葬儀が終わった数日後、早朝に電話で叩き起された検視官ハノ。
電話の相手は刑事のフネスで、部下を迎えにやるからすぐに来て欲しいと言われます。
ハノが到着したのは、死んだ少年の家。
憔悴した母親を見ながらフネスの案内でキッチンに通されたハノが見たのは、テーブルに座っている少年の死体で、しかもその前には牛乳と朝食が置かれているんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/90409/photo/ce89a9ce315a39e3/640.jpg?1544692845

画像出典元URL:http://eiga.com

フネスが言うには、死んだ息子が帰ってきて朝食を食べているという母親の通報で駆けつけた彼と部下が、少年が動いているところを見たと言うのです。

家のドアには泥だらけの手形、廊下には泥の足跡がキッチンまで続いている。

話を聞いたハノは、とにかく少年を墓に戻して出てこないようにコンクリートで固めるようフネスに言うんですね。

そのやりとりが何だか奇妙で違和感があるなって思っていると、その後、動き出した死体が少年だけではなかった事が明らかになるのです。

その後、この住宅街で起こっている怪現象を解明するため、ハネを含めた3人の専門家とフネスが、3件の家を調査するのだが――というストーリー。

こう書くと、典型的なホラー映画と思うかもですが、実はこうした事件は世界各地で起こっていることが専門家から語られ、推論ながら“悪霊”の正体は異次元にいて“こちら”に敵意を持つ“何か”ではないかという事が語られ、さらに“彼ら”は水分を媒介にして、こちらの次元と繋がる事が出来るらしい事が分かるのです。

え、SF?

いやいや、これはいわゆるオカルト(幽霊とか悪霊とか)の新解釈なんですね。
つまり、この世界には僕たちの住む「この世」にレイヤーを重ねるように別次元があって、それがいわゆる「あの世」ではないかという解釈。
そして、二つのレイヤーは普段交わることはないしあの世の住人の姿は見えないんですが、どうも水(水道水でも血液でも)を媒介に二つの次元は繋がるらしい。
で、あの世とこの世が交わりやすいスポットが世界には存在し、この住宅街の3件はそうであるらしいんですね。

そして、そうしたスポットを起点に人ならざるモノたち(悪霊)は侵食し、その場の水分を摂取・もしくは触ってしまった人間は、あの世の人ならざるモノが見えるようになる(=侵食されてしまう)。その人間が新たなスポットとなって、侵食が広まっていくという設定を本作は描いているわけです。

つまり、それってビデオを介して侵食してくる「リング」と同じ「呪いもの」であり、SFで描かれる異次元からの「侵略もの」(ゼイリブとか)でもあるわけですね。

しかもこっちは絶対に水から離れることは出来ないっていう絶望的な話で、本作で(直接)描かれるのは3件の家の怪現象という小さな物語ですが、その向こうには既に世界中で別次元(あの世)からの侵略が始まっていて、それを止める術はないっていう背景が見えてくる。
けれど“奴ら”の目的も正体も本作の中では一切明かされないっていうね。

これって超怖いくないですか?

同時に革新的かつ、よく出来た物語だと思うんですよね。

もちろん低予算なりのルックだし、物語の運びが分かりにくい部分も多少ありますが、最後の最後まで気が抜けないし、単純にホラー映画としても久しぶりに怖い映画を観たなって思いました。

興味のある方は是非!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング