今日観た映画の感想

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マ・ドンソク版オーバー・ザ・トップ「ファイティン!」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きマ・ドンソク兄貴主演の韓国映画ファイティン!』ですよー!

なんとシルベスター・スタローン主演の「オーバー・ザ・トップ」以来の本格アームレスリング映画でしたよ!(*゚∀゚)=3

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概要

『アンダードッグ 二人の男』『犯罪都市』などのマ・ドンソクを主演に迎え、アームレスリングに生きがいを見いだす男を描くスポーツドラマ。養子としてアメリカに渡った主人公が、祖国に戻りアームレスリングの世界に身を置く。『殺戮にいたる山岳』などのクォン・ユルや、『春の夢』などのハン・イェリらが共演する。(シネマトゥデイより引用)

感想

その昔「オーバー・ザ・トップ」という映画があってだな…

1987年。「ロッキー」シリーズや「ランボー」シリーズの大ヒットで、ハリウッドのスーパースターだったシルベスター・スタローンがある映画の主演を務めて話題になりました。

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その作品のタイトルは「オーバー・ザ・トップ
トラックの運転手でアームレスリングの強豪でもある男が、10年間離れ離れだった息子のためにアームレスリングの世界大会に出場するというストーリー。

当時スタローンはすでに“筋肉俳優”として半笑いで語られる存在であり、アームレスリングという題材を扱ったこの作品も、世間的な評価は決して高くはなかったように記憶しています。

ただ、僕を含めた当時のボンクラ男子にとってこの作品の印象は強く(テリー・ファンクも出てたしね)、腕相撲の前にキャップをクルリと回す(鍔の部分が後頭部にくる)リンカーン・ホークの真似をしたものです。

それから31年後の昨年、なんと再びアームレスリングを扱った映画が韓国で制作されました。

主演を務めるのは、「新感線/ファイナル・エクスプレス」や「犯罪都市」など独特な存在感で人気を博すあのマ・ドンソク兄貴!

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超強面なのに、韓国ではマブリー(マ・ドンソク+ラブリー)の愛称で親しまれている、あのマ・ドンソク兄貴ですよ!

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ずんぐりむっくりの固太りで、熊のような風貌と50cm以上の上腕筋を誇る彼が、元世界10位のアームレスラーを演じるのだからオーバー・ザ・トップ」にやられた世代の元ボンクラ男子(僕は今も現役だけど)たちは当然必見の映画なのです!

ざっくりストーリー紹介

子供の頃に韓国からアメリカに養子に出されたマーク(マ・ドンソク)は、アームレスリングの世界で頂点を目指すも、人種差別による八百長疑惑をかけられて除名された過去を持つ孤独な男。

今はクラブの警備係として働く彼は、ある日スポーツエージェントを名乗る兄弟分のパク・ジンギ(クォン・ユル)から韓国で開かれるアームレスリングの大会に誘われ、故郷へ。
そこで、ジンギから教えられた実母が住む家を訪ねたマークは、初めて会う妹のスジン(ハン・イェリ)と彼女の子供ジュニョンとジュニと出会うんですね。

ずっと心を閉ざしていたマークは、妹や二人の子供たちという家族を得て少しづつ心を開くようになるも、妹スジンにはマークに言っていない秘密があり――というストーリー。

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昨今の韓国映画としてはビックリするくらいベタなストーリーで、ところどころに挟まれるギャグシーンも「え、今時それする!?」というくらい昭和感が漂ってるんですよねーw

マークに父親はなく、シングルマザーだった母が生活苦から一人息子のマークを養子に出したため、彼はずっと「母親に捨てられた」という思いの中でずっと孤独に生きてきました。

そんな彼が、アームレスリングに生きがいを見出すキッカケとなるのが、子供の頃に観た「オーバー・ザ・トップ」だったわけですよ!!

分かる!分かるよ兄貴!オーバー・ザ・トップ」は最高だよね!・゜・(ノД`)・゜・

この独白だけでも激アツですが、劇中でマ・ドンソクがアームレスリングの時にキャップをくるりと回すシーンもしっかり入っていて、もう大★感★激ですよ!

一方弟分のパク・ジンギ(クォン・ユル)は、マークを大会に出して一儲けしてやろうという小悪党なんですが、高利貸しの社長ユ・チャンス(これがまた絵に書いたような悪役っぷりw)をスポンサーにしようとしたり、八百長を引き受けたり。
しかし、実は彼がそこまでお金に固執するのにはある事情があって、さらに妹のスジンもユ社長に借金がある事が分かります。

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紆余曲折あって、マークは“家族”や弟分のため、そして自分の夢を叶えるためにアームレスリングの大会に望むわけですね。

マ・ドンソクの説得力

そもそもこの映画は「マ・ドンソクに腕相撲をやらせたら面白い」という監督の思いつきから始まっていて、韓国映画にしてはストーリーがぶっちゃけ緩めだったりします。
しかし、主役に腕周り50cmを超えるマ・ドンソクを置くことで、元アームレスリングの世界ランカーという設定に抜群の説得力が出ているんですね。

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さらに本作では、マ・ドンソクの見た目イジリや愛されキャラとしてのマ・ドンソクの可愛らしさまでを余すところなく映し出していて、ある意味この映画は、マ・ドンソクのアイドル映画と言える作品に仕上がっていたりします。

その上で、アーム・レスリングの技やルールなどは劇中でしっかり説明していて、観客がマークに乗れるように設計されているんですね。

個人的には、大会に向けてマークの特訓シーンまでしっかり描かれていているところにオーバー・ザ・トップ」リスペクトが感じられて超アガりましたよ!!

「手」の映画

アームレスリングは、お互いの手と手をしっかりと握り合わなければ出来ません。
劇中いろいろあって、一度はバラバラになってしまうマークたち。
しかし、紆余曲折を超えてのクライマックスで、マークの脳裏にそれまで描かれてきた“家族”や弟分のジンギ、韓国で出来た仲間たちとの握手や拳を合わせるシーンがフラッシュバックします。

僕が「ゆるいなー」と思っていた日常シーンに巧妙に入れ込まれていた、子供達やスジン、ジンギとの「手」の描写が実は重要な伏線であり、クライマックスで一気に回収される仕掛けになっていたわけですよ!

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そしてそれは、ずっと孤独だと思い込んでいたマークが多くの家族や仲間たちに囲まれていた事に気づくシーンでもあるのです!

なんだよ、最高じゃないかーーー!!!

それらをセリフではなく、「手」の描写で表すことで、本作はアームレスリングという主題にしっかり意味を持たせてたのです!

そしてその裏には韓国の収入格差や、そんな中で子供を育てるシングルマザーの問題も織り込まれているんですが、あえてそれをサラリと描く演出もニクい。

中盤まではゆるいと思っていた本作ですが、終わってみればもう号泣でしたよ!!

これだから韓国映画は侮れないんだよなー。

興味のある方は是非!!!

 

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劇的リフォームの結果ほぼオリジナルに「サスペリア」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ダリオ・アルジェント監督が1977年製作に制作した同名クラッシックホラーを「君の名前で僕を呼んで」などのルカ・グァダニーノ監督がリメイクした『サスペリア』ですよー!

正直、こんなに分からない映画を観たのは久しぶりで、観終わったあともしばし( ゚д゚)ポカーンでしたよw

なので今回の感想は、ネットで読んだネタバレ解説&映画評論家の町山智浩さんの解説を元に書いてます。

あと、今回の感想はネタバレありで書いていくので、これから本作を観る予定の人やネタバレは絶対に嫌!という人は、映画のあとにこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

1977年製作のダリオ・アルジェント監督作を、『君の名前で僕を呼んで』などのルカ・グァダニーノ監督が再構築したホラー。1970年代のドイツを舞台に、あるバレエ舞踊団の秘密を描く。『フィフティ・シェイズ』シリーズなどのダコタ・ジョンソンが主人公を演じ、ティルダ・スウィントンクロエ・グレース・モレッツ、アルジェント監督版にも出演したジェシカ・ハーパーらが共演。音楽は、レディオヘッドトム・ヨークが手掛けた。(シネマトゥディより引用)

感想

劇的リフォーム

まず、本作の感想の前にダリオ・アルジェントのオリジナル版のストーリーをざっくり紹介すると、ドイツの名門バレエ学校に入ったアメリカ娘のスージーが奇怪な体験や次々起こる殺人事件の真実を追っていくと、その学校は魔女の巣窟だった事が発覚。
不死を望む魔女エレナ・マルコスに狙われるスージーだったがピンチを切り抜けマルコスを倒す。というストーリー。

本作はそんなオリジナル版と、「インフェルノ」「サスペリア・テルザ 最後の魔女」からなる、“魔女三部作”を解体、再構築したリメイク版です。

ただ、オリジナル版の設定は使っているものの、ほぼオリジナル新作といっても過言ではない内容になっていて、あまりの劇的リフォームっぷりに、本家アルジェントも「こんなんサスペリアちゃうわ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」と怒ったとか何とか。

確かに、“原作”というより“原案”と言ったほうがシックリくるくらい、オリジナル版の要素はほとんど無くなってました。

では、ルカ・グァダニーノ監督が本作で何をしたのかと言うと、オリジナル版が公開された1977年のドイツの状況やナチスや魔女の歴史を徹底的に調べ上げて、オリジナル版にはなかったメッセージ性をぶっ込んでいったわけです。

さらに結末も変更し、政治や女性問題も絡めてストーリーの中に何重ものレイヤーを重ねて行ったんですね。

オリジナル版と本作の違い

といっても、ストーリーの大筋はオリジナル版とほぼ同じ。

ただ、スージーダコタ・ジョンソン)が入るのがバレエ学校→舞踏学校に変わっています。

これは町山さんの解説によれば、ドイツのマリー・ヴィグマンという女性が「舞踏(コンテンポラリーダンス)」を始め、地を這うように踊ることから「魔女の踊り」と名付けていたらしいんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 舞踏を踊る生徒たち。


で、舞踏学校を開設して多くの弟子を育てるも、第二次世界大戦に入ると彼女の踊りを嫌ったナチスに学校を閉鎖されるわけですが、このマリー・ヴィグマンや舞踏(魔女の踊り)という設定を本作では取り入れているのだそうです。

ちなみに、日本の“暗黒舞踏”のルーツにもなってるのも彼女の踊りなのだとか。

また、生徒の一人パトリシア・ヒングルクロエ・グレース・モレッツ)失踪の謎を探る“探偵”役として、ジョセフ・クレンペラー(ルッツ・エバースドルフ)というユダヤ系の老心理療法士が登場するんですが、この人のモデルになっているのはヴィクトール・クレンペラーというロマンス語学者。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 最初に失踪するパトリシア(クロエ・グレース・モレッツ

劇中のクレンペラーは戦時中、ナチによって奥さんが収容所に送られてしまうわけですが、この奥さんはドイツ人(アーリア人)なんですね。
しかし、ユダヤ人のクレンペラーと結婚していたことで捕まって収容所に送られてしまうのです。

で、このエピソードはそのまま戦後発行されたヴィクトール・クレンペラーの手記のエピソードを引用しているようです。

三人の魔女

この舞踏学校の先生たちは、全員魔女です。(オリジナル版も同じ)
で、そんな魔女たちのリーダーとして君臨しているのがエレナ・マルコス
そのマルコスに次ぐ実力者がティルダ・スウィントン演じるマダム・ブランで、魔女界のリーダーは選挙によって選ばれるシステムらしいです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ミス・ブラン(ティルダ・スウィントン

劇中でも選挙が行われ、マダム・ブランは僅差でマルコスに敗れるわけですが、そのマルコスは命が尽きようとしていて、彼女を長らさせるため魔女たちは新たな「魂の器」を舞踏学校の生徒から選ぼうとしているのです。(冒頭で失踪するパトリシアもその一人)

そんな中、アメリカからやってくるのがスージー
彼女はオハイオ出身でキリスト教メノナイト派の信徒ですが、幼い頃からマダム・ブランの“魔女の踊り”に惹かれてドイツの舞踏学校までやってきます。

ここでネタバレ

実は彼女の正体は“溜息の母”という魔女界の聖母マリア的存在

オリジナルでは“溜息の母”はマルコスだったんですが、本作ではマルコスは偽物?で、スージーこそが本物の“溜息の母”だったわけです。

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画像出典元URL:http://eiga.com /“溜息の母”ことスージーダコタ・ジョンソン

そしてクライマックスで覚醒したスージーは、マルコスやマルコス支持派の魔女たちを殲滅します。(その直前マダム・ブランはマルコスによって殺されている)

これはつまり、第二次大戦のドイツを舞踏学校=魔女の館に置き換えていて、独裁者のマルコスはヒトラーのメタファーで、彼女を支持した魔女たちはナチ党員や支持者のメタファーなのでしょう。

そこにやってきた溜息の魔女スージーによって、ナチは壊滅させられ舞踏学校に囚われていた少女たち(ユダヤ人や虐げられた女性のメタファー?)は真の開放を得るわけです。

それと連動するように背景ではドイツ赤軍(RAF)によるハイジャック事件の一部始終が背景に置かれ、前述したようにジョセフ・クレンペラーの奥さんは収容所に送られていて、舞踏学校のすぐそばにはベルリンの壁がそびえ立っています。

つまり、本作のテーマは“分断”と“開放”なんですね。多分。

真の主人公

そんな本作の主人公は当然スージーだと思うじゃないですか。
しかし全編を通して観ると、真の主人公はスージーではなく、老心理療法士ジョセフ・クレンペラーであることが分かります。

長きに渡り、ナチから妻を救えなかった事で自分を責め続けた老人は、パトリシアの話を妄想と決めつけて相手にせず、さらにその友人サラ(ミア・ゴス)も救うことが出来ません。

全てが終わったあと、そんなクランペラーの元に現れた“溜息の母”スージーは彼に妻の最後の様子を伝え、妻、パトリシア、サラの記憶を消します。
そうすることで、彼はやっと長年背負い続けた重い荷物を下ろすことが出来るのです。

一人3役!?

ちなみに、このクランペラーを演じているルッツ・エバースドルフは実在しません。
本作を観た人は何となく気づいているのではないかと思いますが、クランペラーを演じたのは全身に特殊メイクを施して性別を変えたティルダ・スウィントンなんですね。
さらに彼女はマルコスもあわせ、本作でなんと一人3役を演じているのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ジョセフ・クレンペラーを演じるルッツ・エバースドルフを演じるティルダ・スウィントン(ややこしいわw)と奥さん役のジェシカ・ハーパー(オリジナル版のスージー

もちろんこれは意図があってのことで、グァダニーノ監督によれば、

「この映画は精神分析学に強く関係する作品です。ティルダだけが自我(ego)、超自我(superego)、そしてイド(ido)を演じられるというアイデアが気に入ったんですよ。」

のだそう。

イドとは日本語だと“本能的な欲望”を意味しているらしく、おそらくは永遠の命と若い肉体を欲するマルコスのことでしょう。

超自我は舞踊団の暴走を抑えながらその筆頭者を務めるミス・ブラン、自我はクライマックスの一部始終に“立ち会う”事になるクランペラーかな?

 

事ほど左様に、ホラーのクラッシックとも言える「サスペリア」を解体し、現代的味付けを加えて再構成するという非常に意欲的な本作ではありますが、正直に言えばやっぱ152分は長いし、色々詰め込みすぎてて飲み込みづらい作品だなとは思いました。

解説を読んだり聞いたりしないと、何が言いたかったのか分からなかったですしね。(それは僕の理解不足なんでしょうけど)
その辺の難解な演出は評価の分かれるところかもしれません。

ちなみにポストエンドクレジットのスージーが雪の降るベルリンの街にたたずんでいる短いショット。

彼女が最後にカメラをジッと見つめて終わるこのシーンには諸説あるみたいですが、監督によれば、

「マダム・サスペリオルムは世界を見ている、未来を見ているんです。闇の中を歩き、カメラの向こう側を見ているんですよ。もしかすると、彼女は私たちを見ているのかもしれませんね。」

とのこと。

つまり、彼女は1977年のカメラの向こうから、僕らが住む現在の世界(情勢)を見つめているって事なんでしょうね。

興味のある方は是非!!

 

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反骨精神溢れる“奇作”「パンク侍、斬られて候」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年公開された綾野剛主演の時代劇『パンク侍、斬られて候』ですよー!

狂い咲きサンダーロード」や「爆裂都市 BURST CITY」の石井岳龍(聰亙)監督と、“クドカン”こと宮藤官九郎がタッグを組み、パンクロッカー出身の芥川賞作家である町田康の同名小説を実写映画化し、綾野剛浅野忠信染谷将太ら豪華キャストが出演する事でも話題を呼んだ本作は、疾走感が溢れ熱量の高いカオスな奇作でしたねー。

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概要

芥川賞作家・町田康が執筆した、江戸時代が舞台の人気小説を映画化。規格外の能力を持つがいいかげんな侍である主人公・掛十之進には綾野剛がふんし、自らがまいた種で起こる騒動に翻弄(ほんろう)されるさまが描かれる。『謝罪の王様』などの宮藤官九郎が脚本を手掛け、『シャニダールの花』で綾野と組んだ石井岳龍監督がメガホンを取る。共演は、北川景子東出昌大染谷将太浅野忠信、渋川清彦、國村隼豊川悦司ら。(シネマトゥデイ より引用)

感想

“あの”石井岳龍監督作

日本大学藝術学部映画学科の卒業制作として発表したインディペンデント映画「狂い咲きサンダーロード」で一躍インディーズ界の旗手となった石井聰互。
その後「爆裂都市 BURST CITY」や「逆噴射家族」など斬新で前衛的なアクション映画で80年代に活躍し、当時の若者を中心に絶大な人気を誇ったスター監督の一人です。

その後、2010年に石井“岳龍”に改名してからも、ドラマやPV、映画監督として第一線を走り続けているトップランナーなんですね。

僕は特別に石井監督のファンというわけではないけど「狂い咲きサンダーロード」や「爆裂都市 BURST CITY」の名前は知っているし、「逆噴射家族」はレンタルビデオで何度も観ました。

そんな石井監督がメガホンを取り、クドカンこと宮藤官九郎の脚本で町田康の同名小説を実写映画化。しかも綾野剛を始め人気俳優を揃えた(邦画としては)ビックバジェットな作品ということで、公開時はそれなりに気になってはいたんですよね。

ただ、原作を読んだわけではないし、ドラマはともかくクドカンの映画作品は正直あまり得意ではないこともあってスルーしてたんですが、今回、たまたまTSUTAYAで目の止まったので思い切って観ることにしたわけです。(前置きが長いw)

正直に言えば序盤から中盤までの、時代劇なのに現代語や横文字が飛び交うあまりに突飛な世界観に「あー失敗したかなー」って思いながら観ていたわけですが、後半一気にエンジンがかかり、アクセル全開でひたすらカオスに向かっていく超展開に、いつの間にか物語に引き込まれてしまいましたよ

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セコい嘘やハッタリを発端に、やがて事が大きくなりどんどん収集がつかなくなっていく様子を、日本の政治や民衆のメタファーとして描く展開はどうも原作小説に忠実らしいんですが、同時に石井監督の反骨精神や怒りが爆発しているようにも見えました。

それでいて、風呂敷を広げるだけ広げておいて何だか有耶無耶に終わって観客を煙に巻くラストは、商業映画とインディ映画を行き来しながらキャリアを重ねた監督ならではの老獪さも見え隠れしてましたねー。

そこにクドカンらしいポップでオフビートな悪ふざけノリや、町田康のぶっ飛んだ設定がミックスされることで、今のご時世には中々観ることの出来ない、とんでもないカルト映画になったのだと思います。

石井岳龍版「平成狸合戦ぽんぽこ」?

そんな本作のストーリーをざっくり紹介すると、江戸時代とある街道で、自らを「超人的剣客」と豪語する浪人・掛十之進(綾野剛)は突然、巡礼の物乞いの老人を斬り捨てます。
偶然居合わせた黒和藩の藩士長岡主馬が理由を聞くと、彼は「この者はこの地に恐るべき災いをもたらす“腹ふり党”の一味である」と言い放つんですね。

しかしそれは、士官したい十之進のハッタリ。
それを次席家老の内藤帯刀(豊川悦司)にアッサリ見抜かれ、敵対派閥の長である次席家老の大浦主膳(國村隼)を失脚させる陰謀に協力させられる事になった十之進が、嘘に嘘を重ねるうちに、やがて誰も予想だにしなかった大事に発展していき――という物語。

実は党首がとっくに捉えられ処刑された腹ふり党は既に壊滅していて、内藤はつじつま合わせのために、元幹部の茶山半郎(浅野忠信)に“ネオ腹ふり党”を組織させようとするわけですね。

そこに、人語を話す猿(永瀬正敏)やら、サイコキネシスを操るオサム(若葉竜也)やら、トンデモキャラによるトンデモ超展開が次から次へと巻き起こっていくわけです。

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で、僕はこの作品を観ながら、高畑勲監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」を思い出してたんですよねー。

いや、ストーリーも展開もまったく違うんですけど、作品に内包される精神性というか、それこそ反骨精神だったり、現代社会への批判や皮肉の入れ方だったり。
ご存知の方も多いと思いますが、高畑監督ってある意味でガチ中のガチじゃないですか。

一見、宮崎駿の方がエキセントリックな人に見えるけど、実は高畑勲の方がずっとヤバイっていう。

もちろん世代も背景も違う高畑監督と石井監督ですが、両者が内に秘めているパンク的な精神性は、実はかなり近いんじゃないかって本作を観て思ったし、寓話の中に世の中に対する痛烈な批判やメッセージを込めている「平成狸合戦~」と本作は(諦観も含めて)かなり近いものがある気がするのです。

まぁ、まったく見当はずれかもですが。

面白いかは別問題

じゃぁ本作は面白かったんですかと聞かれると、それとこれとは別問題でしてw
そもそもこの作品を時代劇だと思って観ると肩透かしを食らってしまうので、僕は割と序盤で江戸時代風の異世界ファンタジーだとチャンネルを切り替えて観てたんですよね。

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それでもストーリー上のアラはどうしても見えてしまうし、奇抜なキャラクターを演じる役者が奇抜な演技をしたり、面白シーンで変顔や変な行動をする、宇多丸師匠言うところの「ベロベロバー」演技には正直辟易してしまう。

原作小説のト書きをそのままナレーションとして使って、ちびまる子ちゃん的な感じでツッコミを入れるっていう手法は少しなら面白いかもだけど、全編それでやられると正直しつこいしイラっとしてしまいます。

そういうアレコレを加味すると、“映画”としては正直、微妙だなーって思うんですよね。
ただ原作付きとは言え、今のご時世にこれだけぶっ飛んだ珍作というか奇作を(邦画としては)ビックバジェット作品として仕上げて公開できたという事実は、邦画界にとっては明るい話なのではないかなと思ったり。

それもただバカバカしいだけのコメディではなく、その中に前述したような批判やメッセージを織り込んで物語に奥行きを出した石井監督の手腕は、個人的には好ましく思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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同窓会みたいな続編「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、全てスウェーデン出身のポップスバンドABBAの楽曲で構成されたブロードウェイミュージカル「マンマ・ミーア!」の同名実写映画公開から10年越しで公開された続編『マンマ・ミーア!/ヒア・ウィー・ゴー』ですよー!

あんなに綺麗に終わった前作の続編をどうやって作るんだろう?と思ってましたが、まさかの「ゴッドファーザーⅡ」形式でしたー!

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概要

娘が母親の元彼たちを結婚式に招待したことで巻き起こる騒動を描いた『マンマ・ミーア!』の続編。前作のその後と母親が娘の父親候補と出会った青春時代を交錯させながら描く。メリル・ストリープアマンダ・セイフライドら前作のキャストのほか、新たに『シンデレラ』などのリリー・ジェームズ、『戦火の馬』などのジェレミー・アーヴァイン、オスカー女優のシェールらが参加。『17歳のエンディングノート』などのオル・パーカーが監督を務めた。(シネマトゥディより引用)

感想

“10年越し”の続編

ギリシャにある架空の島カロカイリ島で小さなホテルを営む母ドナ(メリル・ストリープ)と、ソフィ(アマンダ・サイフリッド)母娘。

そんなソフィーがドナの元彼3人(ソフィーの父親候補)を結婚式に招待したことで巻き起こる騒動を描いた前作から10年。

まさかの続編は、母娘の夢だった立派なホテルが完成し、オープニングパーティーに向けて奔走するソフィが、ニューヨークでホテル経営を学ぶ夫?のスカイとホテルを巡って口論となりギクシャクしている最中に彼女が妊娠に気づくところからスタート。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 若き日のドナ&ザ・ダイナモス(左からターニャ、ドナ、ロージー

その後、現在とドナの過去を行き来しながら、前作のメインキャストの若き日々を語っていくという物語です。

つまり「ゴッド・ファーザー」でマーロン・ブランドが演じたドン・コルレオーネの若き日を、パートⅡでロバート・デ・ニーロが演じるみたいな事ですね。

大学を出たドナ(リリー・ジェームズ)が運命探しの旅に出て、サム(ピアース・ブロスナン/ジェレミー・アーヴァイン)、ハリー( コリン・ファース / ヒュー・スキナー)、ビル(ステラン・スカルスガルド / ジョシュ・ディラン)と出会い一夜を共にしながらカロカイリ島で暮らし、やがてソフィを身籠り出産するまでが明らかになっていくわけですね。

で、何が驚いたかというと、冒頭でドナ(メリル・ストリープ)が亡くなっている事が分かるんですよ。

僕の朧げな記憶で前作は八方丸く収まってめでたしめでたしな終わり方だったので「あれ? 前作でそんなシーンや伏線あったっけ??」と、本作を観終わったあとにネットで調べてみたんですが見当たらず。

つまり、前作ヒットの立役者だったメリル・ストリープ抜きでストーリーが進んでいくわけです。

しかも回想部分がわりと唐突に始まる上に、誰の回想なのかも分からず物語が進むので、最初のうちは回想だと気づかなくてちょっと混乱してしまいましたねー。

メリル不在で進むストーリー

まぁ、それも最初のうちだけ。
リリー・ジェームズ演じる若き日のドナのエネルギッシュな歌声は素晴らしいし、ドナ、ターニャ( クリスティーン・バランスキー / ジェシカ・キーナン・ウィン)、ロージージュリー・ウォルターズ / アレクサ・デイヴィーズ)のトリオバンド“ドナ&ザ・ダイナモス”とのコーラスも良い。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ソフィーの3人の父親、サム、ハリー、ビルも登場

旅の途中で出会う若き日のサム、ハリー、ビルもいい感じに歌ったり踊ったりしてましたしね。

ストーリーは前作と変わらず(基本)幸福感に包まれているし、現在パートの クリスティーン・バランスキージュリー・ウォルターズのコンビや、ピアース・ブロスナンコリン・ファースステラン・スカルスガルド演じる3人の父親たちの関係性も変わらず、アマンダ・サイフリッド演じるソフィも相変わらず歌が上手いです。

そして全編に流れるABBAの曲、特に「ダンシング・クイーン」「マンマ・ミーア」のシーンは前作を観ている人なら否が応にもアガるハズ。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 一夜限りのドソフィー&ザ・ダイナモス結成

ただ、ミュージカルシーンで盛り上がれば盛り上がるほど、メリル・ストリープがいない事がどうにも物足りなく感じてしまうわけですよ。

前作はメリル・ストリープが演じるドナというキャラクターが実質的に物語の牽引力になっていて、その肝心のメリルが登場しない本作はどうも締まらないというか、(もちろん他のキャストはみんな素晴らしいんだけど)どこかフワフワしていて中々物語に没入出来ないんですよね。

で、正直メリル・ストリープが出ないなら続編作る意味なくね? と思っていた終盤。

洗礼に訪れた教会で赤ちゃんを抱えたソフィーと若き日のドナーが生まれたばかりのソフィーを抱える姿がオーバーラップする「マイラブ・マイライフ」のシーンで、一気に持って行かれちゃうんですよねー!!

あれはズルイww そりゃ涙腺も決壊しますよw
というかこのシーンを観せるためだけの本作と言っても過言ではありません。

そこから怒涛のフィナーレで大団円となるわけですねー。

同窓会映画

そんなこんなで、本作を一言で言うなら“同窓会”です。

前作から10年が経って、歳を重ねた前作メンバーが全員集まって、そこに彼らの若き日を演じる若手キャストも混じり、みんな揃ってワイワイキャッキャと歌い踊る。
それを前作のファンが観てハッピーな気持ちになるっていう構造。
なので、多分この作品だけ観た人はあまり楽しめないんじゃないかな?って思いました。

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画像出典元URL:http://eiga.com / マンマミーア!

あと「ストーリーが浅い」という意見もあったけど、それは本作だけじゃなくて前作m…げふんげふん。

というわけで、前作を観て気に入った人は、本作を観ればそれなりに楽しめるんじゃないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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良くも悪くもヨーロッパ・コープスらしい作品「TAXi ダイヤモンド・ミッション」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープのドル箱シリーズ最新作『TAXi / ダイヤモンド・ミッション』ですよー!

僕はこのシリーズ98年公開の第1作しか観てないと思うんですが、久しぶりにみた本作は良くも悪くもヨーロッパ・コープ作品だなーって思いましたねーw

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

激しいカーアクションでヒットを記録した『TAXi』シリーズの第5弾。スピード狂の警官とタクシー運転手コンビの暴走を描く。フランスのヒットメーカー、リュック・ベッソンが製作と共同脚本を担当し、『レイジング・ドッグス』などで役者としても活動しているフランク・ガスタンビドゥが監督、共同脚本、出演を兼任。エドゥアルド・モントート、ベルナール・ファルシーらシリーズおなじみの面々も出演を果たした。(シネマトゥデイより引用)

感想

ベッソンスピリッツ伝承

僕はこのシリーズは98年公開の第1作しか観てなくて、なのでイキナリ本作を観て内容分かるかな? と思ったんですが、全くの杞憂でしたねーw

これまではフランスのマルセイユを舞台に、スピード狂のタクシー運転手ダニエル・モラレース(サミー・ナセリマルセイユ市警のダメ刑事エミリアン・クタン=ケルバレーク(フレデリック・ディーファンタル)の二人がタッグを組み数々の事件を解決するというバディムービーでしたが、本作はパリからマルセイユに左遷されたスピード狂の刑事シルヴァン・マロ(フランク・ガスタンビド)とダニエルの甥っ子で間抜けなタクシー運転手エディ・マクルー(マリク・ベンタルハ)に主役を交代した続編でありリブート作品。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 新コンビのシルヴァン・マロ(フランク・ガスタンビド)とエディ・マクルー(マリク・ベンタルハ)

また本作は本シリーズの大ファンだというフランク・ガスタンビドが、共同脚本・監督・主演を務めていて、ベッソンは制作・脚本で関わっているみたいですね。

一応続編ということで、第1作から出演しているジベール署長(本作では市長)やマルセイユ市警の刑事アラン(本作では署長)は登場しているし、ストーリー的にも前作とふんわりと繋がってはいるんですが、これまでのシリーズを全く観ていない人でも普通に楽しめる作品だと思います。

基本やってること第1作と変わらないですしねーw

そんな本作のもう“一人”の主役と言えるのが、ダニエルが運転していた改造タクシーのプジョー・407
ボタン一つでトランスフォームしたり、時速300kmを超えるスピードが出たり、挙句羽が出て空も飛べちゃう小学5年生が考えたようなスーパーマシンです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 空だって飛べちゃうプジョー・407

本作ではそんなプジョー・407と宝石強盗団の乗るフェラーリランボルギーニとの超高速カーチェイスと、マルセイユ警察で働く変人揃いの警官たちやエディが巻き起こす笑いが見所なんですね。(というかそれ以外何もないとも言えるけど)

そこはさすがシリーズ大ファンのフランク・ガスタンビドだけあって、良くも悪くもベッソンの小五スピリッツを完璧に引き継いでいると言えるのではないでしょうか。

ただ一方で、サミー・ナセリ演じるダニエルとフレデリック・ディーファンタル演じるエミリアンの関係性が好きでシリーズを観てきた人は、主人公が交代した本作には乗れないかもしれません。基本的に色々下品だしw

ストーリーはハチャメチャ、登場人物はバカばかり

で、肝心の内容はというと、やり手だけど警察署長の奥さんに手を出して左遷されたシルヴァン。赴任先のマルセイユ警察でファラーリ、ランボルギーニで宝石強盗をする通称“イタリア人”の捜査を担当する事に。

しかし、スーパーカー相手にパトカーでは太刀打ち出来ないということで、ダニエルの甥っ子エディのつてで超改造されたプジョー・407を入手。
二人はバディとして宝石強盗団を追う――というストーリー。

なんですが、脚本が悪いのか、編集が悪いのか、監督の腕が悪いのか、それとも全部なのか、とにかくストーリーはしっちゃかめっちゃかで、エピソードの繋げ方も乱暴なので、誰が何の目的で何処で何をしてるのかがよく分かりません。

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画像出典元URL:http://eiga.com / まったく意味のないクラッシュシーン

そのくせ、本筋に関係ない無駄なエピソードをジャンジャンぶっ込むわ、さほど笑えないギャグシーンも満載だし、(多分)伏線は張ってるものの一切回収する気はなく、登場キャラも分かりやすく全員バカなので観ていて混乱は増すばかりっていう。

そもそも、超目立つスーパーカーで逃走とか潜入捜査が完全にバレてるのにそのまま計画続行とか、敵の車を止めるために太っちょの女性警官が橋から車にダイブとか、普通に考えてありえない行動の数々も本シリーズの世界観ではアリで、つまり本作は“そういう映画”だし、その辺の雑さがまさに「ヨーロッパ・コープ」らしさなんですけどね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 「TAXi」と言えばこの人

例えば「サメ映画」とか「ゾンビ映画」とか好き者がウシャウシャ笑いながら観るジャンルの一つとして「TAXi」シリーズはあるっていう感じで、本作を楽しむにはそれなりの(ボンクラ)リテラシーが必要というか。

なので、万人には勧められない作品ですが、重い内容の真面目な作品とセットで観るにはいいかもしれませんね。

興味のある方は是非!

 

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イーストウッドの遺書的な作品「グラン・トリノ」(2009)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、クリント・イーストウッド監督・主演作『グラン・トリノ』ですよー!

一時期、イーストウッド作品を何本か観てた時に、この作品も観たとすっかり思い込んでいたんですが、電子書籍を出す時にブログを読み返していたらまだ観てなかった事に気づいて、今回レンタルしてきました。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ミリオンダラー・ベイビー』以来、4年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた人間ドラマ。朝鮮戦争従軍経験を持つ気難しい主人公が、近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流を通して、自身の偏見に直面し葛藤(かっとう)する姿を描く。イーストウッド演じる主人公と友情を育む少年タオにふんしたビー・ヴァン、彼の姉役のアニー・ハーなどほとんど無名の役者を起用。アメリカに暮らす少数民族を温かなまなざしで見つめた物語が胸を打つ。(シネマトゥディより引用)

感想

頑固なクソじじいと内気な小僧の交流と伝承の物語

本作はイーストウッド作品の中でも特に評価が高い1本です。

タイトルとなったグラン・トリノは 1972年から1976年に生産されたフォードのフォード・トリノという車の名前で、「ダーティー・ハリー3」でイーストウッド演じるキャラハン刑事が乗り回していた車でもあるらしいです。

長年連れ添った奥さんを亡くしたポーランド系米国人で元自動車工の老人ウォルト・コワルスキーは息子や孫との関係も悪く、誰彼構わず毒づき、近所に住み始むモン族(ベトナムラオス、タイの山岳地帯にすむ民族集団)の人たちを“ネズミ”呼ばわりするような頑固なクソじじい

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画像出典元URL:http://eiga.com

そんなある日、悪い従兄弟に無理やり逆らえずウォルトの愛車グラン・トリノを盗もうとした隣人の少年タオを救った事から隣人一家との交流が始まり、やがて凝り固まったウォルトの心も少しづつ和らいでいくのだが――というストーリー。

頑固ジジイが若者との交流を通じて精神性を伝承していくというテーマはイーストウッドが中年のアル中歌手レッド・ストーバルを演じた1982年の作品「センチメンタル・アドベンチャーと共通しているし、もう一つの“贖罪”というテーマは1992年の許されざる者に共通しています。

対比構造

ウォルトが頑なに人を遠ざけるようになった原因は、どうやら自身の朝鮮戦争出兵という過去に起因しているらしいんですね(今風に言うならPTSD)。

ご近所に住むモン族の人々は、ベトナム戦争アメリカに協力したことで自国を追われた人々であり、ウォルトと近所に住むモン族は対比構造にあります。

その上で、息子や孫たちとの折り合いが悪く孤独なウォルトに対して、モン族の互助的コミュニティーの繋がりの強さや、マッチョなアメリカ人のウォルトと内気で奥手なモン族の少年タオ・ロー(ビー・ヴァン)もまたカルチャー&ジェネレーション双方で鏡像関係にあると言えます。

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そんな二人を繋げるのが、タオの勝気で今時な姉のスー(アーニー・ハー)。
この二人を悪い従兄弟や輩どもから守った事で、ウォルトは隣人たちに認められるようになり、付き合いを深めるうちにウォルトもまた隣人たちの人となりを好ましく思うようになるのです。

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愛車の盗難未遂という最悪な出会いをしたウォルトとタオでしたが、モン族の掟でタオがウォルトの手伝いをするうち、二人が徐々に打ち解けて本当の祖父と孫のようになっていき、奥手なタオに毒づきながらも面倒を見るウォルトの様子は、ベタだけど何とも微笑ましい。けれどそのシーンも必要以上にベタベタと描かずサラリと見せるあたりはイーストウッドらしいなーと思いました。

しかし、その一方でウォルトの体は病に冒されて余命幾ばくもない事が分かり、またウォルトの紹介で仕事をするようになったタオがリンチを受けた悪い従兄弟に脅しをかけたことが裏目にでて物語は急変。

物語はクライマックスへと向かいます。

そう書くと、クリント・イーストウッドを知る人なら当然、悪い従兄弟たちを皆殺しにする「許されざる者」的な展開になると思われるかもですが、隣人たちの幸せを踏みにじった従兄弟たちとどう対峙するかは是非、映画本編でご覧ください。

イーストウッドの遺書

映画作家晩年の作品には、遺書とも言える作品が必ずあります。
黒澤明なら「夢」だし、アレハンドロ・ホドロフスキーなら「リアリティーのダンス」「エンドレス・ポエトリーだし、宮崎駿なら「風立ちぬ高畑勲なら「かぐや姫の物語とか。

イーストウッドの場合、最初の遺書的な作品は「センチメンタル・アドベンチャー」で、そこから約10年後に更新されたのが本作ではないかと思われます。(さらに10年後の今年公開された「運び屋」で更新されるわけですがw)

朝鮮戦争従軍というウォルトの経歴は、イーストウッド自身の経歴とも重なるし、ウォルトはこれまでイーストウッドが演じてきた数々のキャラクターや、自身の人生ともリンクする部分が少なくありません。

本作の公開時イーストウッドは79歳なので、この作品を自身の集大成に――と考えていてもおかしくないですよね。

それに、本作の主人公ウォルトは饒舌に自身の心情を語ります。
朝鮮戦争で多くの敵を殺したこと、その事で深く傷つき自己嫌悪することで子供達とも上手く接することが出来なかったこと、若い神父やクライマックスでのタオに向けてのセリフなどなど。

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画像出典元URL:http://eiga.com

もちろん脚本あってのセリフでしょうが、イーストウッドの他作品と比べるとかなりストレートなセリフを話しているし、そのセリフの端々に彼自身のメッセージが込められているようにも見えるんですよね。

まだ未見ですが、それから更に年齢を重ねた主演作「運び屋」の主人公もまた、かなり饒舌なキャラクターらしい事を考えれば、やはり本作は(当時の)イーストウッドの遺書なのだと思うのです。

つまり、ウォルトのセリフや行動にイーストウッド自身が乗っかっているから本作は多くの観客の心を打ち、イーストウッド作品の中でも評価の高い一作となってるんだと思います。

興味のある方は是非!!

 

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豪華で贅沢なミュージカル映画「メリー・ポピンズ リターンズ」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、1964年に公開された前作から54年ぶりの続編となる『メリー・ポピンズ/リターンズ』ですよー!

僕は1964年のオリジナル版はもちろん原作も未読なので、今回がメリー・ポピンズ初体験なんですが……。

結論から先に言うと、思った以上に面白かったです!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

第37回アカデミー賞の5部門で受賞した名作『メリー・ポピンズ』のおよそ半世紀ぶりとなる続編。前作の20年後の大恐慌時代を舞台に、再び現れたメリー・ポピンズが起こす奇跡を描く。主演は『ヴィクトリア女王 世紀の愛』などのエミリー・ブラント、共演にコリン・ファースメリル・ストリープベン・ウィショーらのほか、前作に出演したディック・ヴァン・ダイクも出演。『シカゴ』などのロブ・マーシャルがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

前作から25年後のロンドンが舞台

 

近年、過去の名作アニメを実写化した作品を数多く公開しているディズニー。
正直、僕はあまりこの流れが好きではなくて、なのでこれまでディズニーアニメの実写版はほとんど観ていなかったんですね。

さらに恥ずかしながら1964年の「メリー・ポピンズ」も観たことがないし原作の方も未読。なので僕にとっては本作がメリー・ポピンズ」初体験になります。

そんな僕の感想を一言で言うと「思った以上に面白かった」です!

本作は1964年の前作から25年後のロンドンが舞台

前作では子供だったマイケル・バンクスベン・ウィショー)と姉のジェーンエミリー・モーティマー)は大人になり、マイケルはジョン(ナサナエル・サレー)、アナベル(ピクシー・デイヴィーズ)、ジョージー(ジョエル・ドーソン)の父親になっているんですが、時代は世界恐慌真っ只中なので画家では食べていけずに、現在は父親の勤めていたフィデリティ信託銀行のパートタイムとして働いているんですね。

さらに、愛する奥さんも失っていて生活苦から自宅を抵当に融資を受けていたんですが、ある日銀行の弁護士がやってきて、期限までに一括返済出来ないなら家を取り上げると言われてしまいます。

窮地に追い込まれたマイケルが、ジェーンと共に父親が所有していたはずの銀行の株券を探すも見つからずに余裕を失っていたその時、なんと25年前に自分の教育係だったメリー・ポピンズエミリー・ブラント)が当時と変わらぬ姿で現れて――というストーリー。

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画像出典元URL:http://eiga.com  エミリー・ブラント演じるメリー・ポピンズはクールで優しい

64年版の雰囲気を残しつつ、エミリー・ブラント演じるメリー・ポピンズはより原作に近いキャラにアップデートしているのだそうです。

さらに、前作でメリーの親友として重要な役割を果たしていた煙突掃除夫のバートに当たる役を、彼の弟分だったという設定のガス灯の点灯夫ジャックが引き継ぎ、ブロードウェイ出身のリン=マニュエル・ミランダが演じています。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ブロードウェイ出身のリン=マニュエル・ミランダ。歌も踊りも素晴らしい。

贅沢なミュージカルシーン

ところで僕は64年版を観てないので知らなかったんですが、メリー・ポピンズ」ってミュージカル映画だったんですね。

もちろんディズニー映画だからミュージカルシーンは入るだろうとは思ってましたが、こんなにガッツリミュージカルとは思ってなかったのでちょっとビックリ。

で、このミュージカルシーンが、近年見たミュージカル映画と比べても非常に贅沢に作られていて見ごたえがあるんですよ!

特にリン=マニュエル・ミランダ演じるジャックとその仲間たちが歌い踊るナンバー「小さな火を灯せ」は、ジャックと仲間たちのピタリと合った踊りやメリーと子供たちとの韻を踏んだ言葉のやり取りなど(前作で楽曲を担当したシャーマン兄弟を意識した曲調もあって)「雨に唄えば」などの古き良き時代のハリウッドミュージカルを思い起こさせるし、前作と同じくアニメと実写が融合した「ロイヤルドルトン・ミュージックホール」や「本は表紙じゃわからない」のシーンはTHE・ディズニー映画って感じでワクワクしました!

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画像出典元URL:http://eiga.com / これぞTHA・ディズニーという実写とアニメの融合

豪華で贅沢な歌とお踊りと、お馴染みバンクス家の通りや、ロンドンの街並みを再現した屋内セットでの撮影など、オールドスタイルな画作りが懐かしさを思い起こさせ、そこにBMX(競技用自転車)や最新のCG技術を入れ込むことで2019年の作品としてもしっかりアップデートしているんですよね。

エミリー・ブラントと、リン=マニュエル・ミランダの歌声も素晴らしくて、劇場で吹き替え版を観た人も、ぜひDVDやブルーレイでは(ミュージカルパートだけでも)字幕にして本人たちの歌声を一度聞いてみて欲しいですよ。

歌詞もいい

また全ての楽曲の歌詞は、もちろんシーンに合わせた楽曲なんですが、ダブルミーニング的に観客へのメッセージも込められているんですよね。

本作の背景である恐慌時代のロンドンや余裕を失っていく大人たち、客から搾取することしか考えない銀行などの背景が、そのまま現代の世界情勢とリンクしていて、本作で描かれる余裕や希望を失った大人たちはイコール現代の大人たちに重なります。
そんな僕を含めた大人の観客に向けたメッセージとも言えるワードが、歌詞の中に含まれているので、一つ一つの楽曲が響くし、だからこそ子供だけでなく大人たちも楽しめる作品になっているんじゃないでしょうか。

なのでラストシーンのナンバーは多幸感に溢れていて、(ほんの少しの切なさも相まって)観ていてグッときてしまうんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / メリーと三人の子供たち。

「前作に比べると楽曲のメロディーが弱く印象に残らない」という意見もあるようですが、本作から観た人にとって“メリーポ・ピンズ”はエミリー・ブラントでジャックはリン=マニュエル・ミランダで。
将来、本作の楽曲を聞いて“メリー・ポピンズ”を思い出すんじゃないかと思います。
その上で一歩踏み込むファンなら、64年版の「メリー・ポピンズ」も観たいって思うかもしれませんね。

 

最初は「まぁ、一応観ておくか」くらいの気持ちでしたが、観終わってみたら「ナメててスイマセンでしたー!!」って思うくらい面白かったしミュージカル映画としても素晴らしかった本作。

興味のある方は是非!!

 

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