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小粒な作品だけど好ましい「ドミノ」(2023)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年公開されたロバート・ロドリゲス監督、ベン・アフレック主演のサスペンス映画『ドミノ』ですよ。

みんな大好きロバート・ロドリゲス監督が構想20年をかけたという作品で、ジャンルとしてはSF?サスペンスになるのかな?

映画のスケールとしては小規模な作品ですが、個人的にはメッチャ楽しめましたねー。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

行方不明の娘を捜す刑事が、現実と見まがう世界に入り込んでいくサスペンス。銀行強盗の現場である男を見つけた刑事が、その男を追って不思議な世界に足を踏み入れる。監督などを手掛けるのは『シン・シティ』シリーズなどのロバート・ロドリゲス。『底知れぬ愛の闇』などのベン・アフレック、『アイ・アム・レジェンド』などのアリシー・ブラガのほか、J・D・パルド、ジャッキー・アール・ヘイリーウィリアム・フィクトナーらが出演している。(シネマトゥディより引用)

感想

ハードルを上げなければ楽しめる?

この作品、僕は予告も観てないしロドリゲス監督・ベンアフ主演以外の事前情報もまったく入れずに観たからか、劇中の仕掛け全部にビックリしたしメッチャ楽しんだんですが、ネットの評価を観ると割と低めだったりするんですよね。

というのも、映画評論家の寺沢ホーク氏が「下町のインセプション」と命名したように、確かに本作の予告編を観たらクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」的な作品を期待してしまうかもしれません。

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いや、両作でやろうとしている事は近いと言えなくもないんですけど、映像や世界観、ストーリーなどなど、全体的にインセプションの1/10くらいの規模だし、ぶっちゃけ観た後に思い返しながら考察したくなるタイプの複雑なストーリーでもないので、ノーランの理屈っぽい作風が好きでインセプションをイメージして観てしまうと肩透かしを食らってしまうかもしれませんね。

逆に、本作の事を何も知らない状態でたまたま(例えば午後ローとかで)遭遇したら「メッチャ面白いじゃん!」って思うタイプの、作品としては小粒だけどサクッと観られて少なくとも観ている間は楽しめる良作だと思います。

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まぁ、設定とかジャンル的なルールに対して、観終わった後思い返して「あれ?あそこおかしくね?」って首をかしげる部分もあるにはあるんですが、少なくとも観ている間は全然気にならなかったのは、物語的な粗の部分を気にさせないロドリゲス監督の上手さというか、インディ体制で数々の小規模なジャンル映画を製作してきた手腕が活きているのだろうと思いました。

特に、クライマックス——というかいわゆるネタばらしの“あの展開”には普通にビックリしたし、その仕掛け自体が映画そのものの構造ともリンクしていて、感心してしまいましたねー。なるほど、それがやりたかったのかと。

まぁ、絵面がアレなので若干バカっぽく見えちゃうかもですけど、そこはロドリゲス監督の愛嬌でもあるんですよね。

というわけで、ここからはややネタバレになるので、気になる方はご注意ください。

 

リバイバルレトロフューチャー

どのジャンルでもそうですが、一時期流行ったけど消えていったネタやアイデア、ファッションなどがある程度時間を置くと新しく感じる現象ってあるじゃないですか。
例えばオカルトのジャンルで言うと、結構昔(多分1970年代?)に人面瘡ブームってのがありまして。人面瘡の設定は色々ですがザックリ言えば、体のオデキが成長して人の顔のようになり、最終的には宿主を乗っ取ってしまうor入れ替わる的な感じ。

これは一時期映画やマンガなどで結構流行って一代ジャンルになっていたんですが、次第に下火になって最近はほとんど見かけなくなっているんですよね。

もう一つは「ジャッロ映画」というジャンル。
こちらは(美女の)過度な流血をフィーチャーし引き伸ばされた殺人シーンが特徴。スプラッタ映画の前身ともいえるジャンルで、心理サスペンスとホラーの融合した作品群でしょうか。イタリアが本場でダリオ・アルジェント監督が有名ですよね。

で、そんな今はすっかり下火になった二つのジャンルを融合させたのが、我らがジェームズ・ワン監督の傑作ホラー「マリグナント 狂暴な悪夢」なんですね。

また、SF?で言うと人間は脳の10%しか使っていないという「脳の10パーセント神話」という例のアレ。現在、これが間違いなのは脳科学者の中では常識で、紛れもない誤情報・都市伝説とされているんですが、僕が子供の頃は、この10パーセント神話はまことしやかに囁かれていたし、SF小説やマンガ、映画の設定でも結構使われていたと思います。

しかし、この設定も次第に下火になって誰も使わなくなった2014年に公開されたのがリュック・ベッソン監督の「LUCY/ルーシー」で、麻薬の影響で脳を100%覚醒させた主人公ルーシーが大変なことになるという作品でした。

で、本作「ドミノ」で使われたのは催眠術。

催眠術や洗脳によって人を自在に操るという設定自体は、前者2例に比べると比較的メジャーというか、手を変え品を変えしながら定期的に映画に登場するんですけど、とはいえ、本作で登場するのは催眠術を超えたスーパー催眠術「ヒプノティック」で、声を聴いた瞬間、いや、一瞬相手を観たその瞬間、いやいや相手の射程距離に入った瞬間に、すでに敵の術中にはまってしまうという。もはや催眠術というより普通に超能力なんですよね。

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本作では、過去に愛する娘を何者かに誘拐された主人公の刑事ダニー・ロークが銀行強盗のタレコミを受け、そこで出会った最強のヒプノティックの使い手デルレーンに翻弄されながらも、自身と家族の真実に迫っていくという物語なんですが、この超能力設定を使って物語を二転三転させながら最後の大どんでん返しにもっていくストーリーテリングや、そんなトンデモ設定にほぼ違和感を抱かせる隙を与えない怒涛の展開は、さすがロドリゲス監督だと思いました。

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ロドリゲス監督といえばケレンの人という印象を持つ人も多いかもですが、そのケレンを十分に発揮するには、ケレンを活かす丁寧なフリや、適度な「抜き」が必要ですしね。

あと、ミッドクレジットの“あの展開”も、続編作る気マンマンだという意見も見ましたが、個人的には続編云々より「“あの展開”を入れる方が映画が締まる」から入れたと思うんですよね。もちろん続編を作るチャンスがあればやりたいのも本音だと思いますが。
ほぼ90分というコンパクトな上映時間も含め、一切ストレスなく観られる作品全体のストーリーテリングや、小規模ながら低予算に見せないスケール感もとても好ましい作品だと思いましたよ。

興味のある方は是非!!