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海外では酷評の嵐だけど「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」(2022)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ベイマックス」のドン・ホールが監督、「ラーヤと龍の王国」で脚本を務めたクイ・グエンが共同監督と脚本を務めたディズニー映画『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』ですよ。

伝説的な冒険一家の親子3世代が、奇妙で不思議な世界で壮大な冒険を繰り広げる物語で、ディズニー100周年記念作品でしたが海外では酷評の嵐に。
果たしてこの作品は本当に面白くなかったのか。本作を観た僕の感想は果たして。

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

冒険家のクレイド一家を主人公に、奇妙な世界で繰り広げられる冒険を描くアクションアドベンチャー。謎に包まれた「ストレンジ・ワールド」に迷い込んだ一家が、そこである真実を知ることになる。第87回アカデミー賞長編アニメ賞を受賞した『ベイマックス』などのドン・ホールが監督を担当。ホール監督作『ラーヤと龍の王国』で脚本を手掛けたクイ・ヌエンが共同監督などを務める。(シネマトゥディより引用)

感想

あれ?面白いじゃん

2022年11月に日米で同時公開されたディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品の本作。しかもなんとディズニーの100周年記念作品なのですが、もしかして劇場公開していたことも気づいていなかった人が結構いたのではないでしょうか。

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というのもこの作品、ディズニー映画、しかも100周年記念作品でありながら、公開時に全然宣伝されずにスルッと始まり、その一月後の12月にはDisney+でサクッと配信されているんですよね。

僕も公開されるというのはぼんやり知ってたんですが、いつ劇場公開するのかな?なんてぼんやりしているうちに公開が始まっていつの間にか終わり、配信が始まったのにも気づかず。

ぶっちゃけそこまで興味のなかったので、そのまま1年以上ほったらかしにしてしまってたんですよね。

しかしこの作品。本国アメリカでは結構話題にはなっていたようです。主に悪い意味で。曰く「ポリコレ要素全部乗せ」「ポリコレ団体へのアリバイ作り」「ポリコレの押し付け」などなど、映画業界で何かとポリコレが話題に上がる昨今ですが、特にディズニー作品はその急先鋒でもあり、ゆえにやり玉に挙げられがちではあるんですよね。

なので僕もそれなりに覚悟をして本作を観たわけですが—————って、あれ?普通に面白かったんですけど?

ざっくりストーリー紹介

そんな本作のストーリーをざっくり紹介すると、今まで誰も越える事が出来なかった高い山々に囲まれた国「アヴァロニア」の伝説的冒険家イェーガー・クレイドは、息子サーチャーを含むクルーと共に前人未到の山脈を超える冒険に挑戦します。

しかし、その途中で電力を発する植物「パンド」を発見したサーチャーはイェーガーに一旦国に戻ることを進言するが、聞き入れられずにケンカ別れ。その後イェーガーが国に戻ることはなかったんですね。

一方サーチャーが持ち帰ったパンドによって電気を得た「アヴァロニア」は文明国家になり、サーチャーは自分のパンド農園を息子のイーサンに継がせようと思っていたのです。

そんなある日、国中のパンドが突如枯れ始め国家は存亡の危機に。

元探検隊のクルーだったカリスト大統領の要請で、パンド専門家のサーチャーも調査に参加、地下に広がる“もう一つの世界”へと向かうのだった――。というストーリー。

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で、まぁ同行を禁じられたイーサンが探検隊に潜り込み、それを追ってきたサーチャーの妻メリディアンも同行する展開になっていくわけですが——、どうです?あらすじだけ聞くと何か面白そうじゃないですか?

実際、個人的には思った以上に面白くて、地底に広がる“もう一つの世界”やそこに住む生物のビジュアルデザインは単純にワクワクするし、その中で行われる冒険やアクションのアニメーションも楽しい。そして後半、この世界に関するある事実が明かされるんですが、そこは普通にビックリしましたしね。

父と息子、そして孫という世代間の確執と相互理解というのが本作の大きなテーマなんですが、そこもかなり丁寧に描かれていて好感が持てるし、本作で孫世代のイーサンたちの間で流行っているゲームを、イェーガー、サーチャー、イーサンの三人でプレイするシーンがあり、三世代それぞれの価値観の違いをこのゲームを通して描くアイデアは凄く良かったですねー。

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正直ディズニー作品としてはかなり小粒ではあるけれど、1時間40分という上映時間も含め個人的には満足度は高かったし、かなり手堅くまとまっているという印象で、それもそのはず、監督はあの「ベイマックス」のドン・ホールだったんですよね。

まぁ、アバンでの「インディ・ジョーンズ」を完全にパク……オマージュしたロゴデザインや音楽はちょっとやりすぎかな?とはおもいましたけどもw

本作のポリコレについての所感

で、本作が酷評されているポリコレ表現に関してですが。

個人的には主人公のイーサンがゲイであることや、それを両親や友人が普通に受け入れていること、ペットのワンコの足が一本欠損していること自体はそこまで気にならなかったんですけど、それよりも、それらの設定が作劇に何の関係も意味もない事の方が気になりましたねー。

本作の描き方だと、イーサンの恋愛相手は女の子でも作劇上何の問題もないし、ワンコが3本脚なのも作劇になんの貢献もしていない。結局、ただ「設定のための設定」でしかないんですよね。

これはもう、ポリコレ団体への配慮や、そうした思想を無理やり物語にねじ込んだと思われても仕方がない。

特にアニメーションの場合、画面に映っているモノ全てには必ず製作者の意図が入っているものですしね。

こうした多様性・包括性を推し進める人達の事を西洋では”目覚めた人”「WOKE」と呼ぶそうですが、それこそWOKE的には「それが(特別視されない)当たり前の世界」なのだから特に触れる事もない。という事なんでしょう。でもそれが実際に物語のノイズになってしまっているのは間違いないんですよね。

例えばワンコの過去に何があったか。イーサンが自分の性に葛藤したり、両親が息子がゲイであることを飲み込んだ経緯など。ほんのワンカット、ちょっとした一言の「匂わせ」でいいから入れてくれれば、この設定ももっとすんなり飲み込めるし、物語のノイズにもならないと思うのです。

多分、アニミズムが思想の根本にある僕ら日本人は、キリスト教的価値観が思想の根底にある西洋諸国の人と比べれば、物語に登場する性的マイノリティーなどの多様性や包括性に対する嫌悪感は少ない方だと思うけど、それでも「それが当たり前の世界」にするはもうちょっと段階を積むことが必要だと思うし、本当に世界に多様性をもたらすには一段づつ丁寧に階段を積み上げていく必要があると思うんですよね。

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「急いては事を仕損じる」のことわざがあるように、あまり急いで雑に、かつ強引に事を進めようとすれば、むしろそこには拒絶と分断を生み出すだけじゃないかと個人的には思う次第です。

興味のある方は是非!!