ぷらすです。
今回ご紹介するのは、ベテラン俳優の國村隼さんは出演したことで日本でも話題になったサスペンスホラー『哭声/コクソン』ですよー!
結論から言うと、どこに連れて行かれるのか最後まで分からないジェットコースターみたいな映画で、超面白かったです!
で、今回は色々語りたくなっちゃう作品でもあるのでネタバレします。
というか事前情報を入れないで観る方が絶対に楽しめる作品なので、これからこの作品を観る予定の方は、映画を見た後にこの感想を読んでくださいませー。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
あらすじと概要
『アシュラ』などのクァク・ドウォンが主演を飾り、『チェイサー』『哀しき獣』などのナ・ホンジン監督と組んで放つ異色サスペンス。とある田舎の村に一人のよそ者が出現したのをきっかけに凶悪な殺人事件が頻発し、人々が混沌の中に突き落とされるさまを描く。『華麗なるリベンジ』などのファン・ジョンミンをはじめ、日本からベテラン國村隼が参加。
ストーリー:警察官ジョング(クァク・ドウォン)が妻と娘と暮らす平和な村に正体不明のよそ者(國村隼)が住み着いて以来、住人たちは彼のうわさをささやいていた。やがて、村で突然村人が自分の家族を手にかける事件が発生する。犯人には、濁った目と湿疹でただれた肌という共通点があり……。(シネマトゥディより引用)
感想
どこに連れて行かれるのか分からないジェットコースタームービー
まず、本作がどんな映画なのかをザックリ説明すると、韓国の山間の小さな村にある日、國村隼さん演じる謎の日本人がやってくるんですね。
しかもこの日本人、山の中に一軒だけ建っているボロ屋に住み着き、褌一丁で山の中を走り回ったり、鹿や猪の生肉を四つん這いで喰らったりする姿を、村人が目撃? しています。
画像出典元URL:http://eiga.com /國村隼さん演じる謎の日本人
それとほぼ同時に、平和だった村で家族を手にかける猟奇殺人事件が連続して起こり、犯人はなぜか自分を見失うほど凶暴化してたり、魂が抜けたように惚けていたり。
で、次第に“よそ者”である日本人が疑われ……。
という物語。
そんな事件を捜査するのは、クァク・ドウォン演じる地元の臆病な警察官で婿養子のジョング。
画像出典元URL:http://eiga.com /主人公ジョング(右)
最初は、噂話など気にもとめない彼ですが、次々起こる怪事件や、謎の日本人の怪しげな行動、謎の女のタレコミ、そして愛する一人娘の様子までおかしくなっていき、ジョングの中で、日本人に対する疑惑が生まれていくわけですね。
最初のうち「ははーん。猟奇殺人の謎を追うミステリーか」と思って観てると、コメディーっぽかったり、パンデミックものかと思わせて、ゾンビになり、エクソシストになり、異能バトルになり…と、予想の遥か斜め上をいく展開の連続で、ラストシーンでは、
( ゚д゚)…え? (つд⊂)ゴシゴシ ( ゚д゚)ドウイウコト?
ってなりましたよw
だからといって面白くないかと言えばそんなことはなく、156分もあるのに最後までずっと映画に引き込まれてしまいました!
特に本作で最重要とも言える國村隼さん演じる「謎の日本人」の存在感は凄くて、主人公ジョングと一緒に、終始彼に翻弄されまくりでしたねー!
一方で、ラストに至るまで説明らしい説明はなくて、作品の解釈はほぼ観客に丸投げ状態な作品でもあるので、ネット上では様々な解釈や考察が出ています。
というわけで、ここからは僕もビックウェーブに乗って、自分なりの解釈を書いていこうかと思うので、ここからはネタバレしていきますよー!
冒頭を見逃すな!
本作は基本、新約聖書に準えて物語が作られています。
まず映画冒頭、『ルカによる福音書 第24章』の文言が出てくるんですが、この冒頭の文言が全ての謎の答えであると受け取っていいんじゃないかなーって思うんですよね。
「わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」
これ、同じことをラストの方で「謎の日本人」も言ってるし、さらに物語全体に流れるテーマでもあるので要チェックです。
新約聖書が元ネタ!?
さらにこの映画では、新約聖書をモチーフにしている(と思われる)シーンも沢山出てきます。僕が分かった分だけザックリ上げると、
・謎の女ムミョン(チョン・ウヒ)は初登場時、ジョングに向けて執拗に小石を投げるわけですが、あれは多分「マグダラのマリア」がモチーフなんだと思います。聖書では娼婦だったマリアが村人に石を投げられるのをキリストに救われる有名なエピソードです。
画像出典元URL:http://eiga.com /謎の女ムミョン
ここで石を投げられているのは主人公のジョングですが、ムミョン=マグダラのマリアという捉え方も出来るんじゃないかなと。
・ジョングの娘ヒョジン(キム・ファニ)が(多分)日本人と出会ったあと、嫌いだった魚をムシャムシャ食べるシーンがあるんですが、魚はマンガ「聖☆お兄さん」でイエスのTシャツの模様になったりしてますよね。
あれは初期のキリスト教徒の隠れシンボルマークで、イクトゥス(イクテュス)。
ギリシャ語で魚という意味なんですが、同時にイエス、キリスト、神の、子、救世主の頭文字を並べたものでもあるんだそうです。
また、娘のヒョジンが「悪霊(日本人)」に取り憑かれたと思ったジョングたちが、祈祷師のイルグァン(ファン・ジョンミン)に頼み、悪霊を殺す儀式をするシーンで、人形的なものに鉄の釘を打ち込むシーンは、キリストの磔刑を連想させます。
画像出典元URL:http://eiga.com /祈祷師のイルグァン
・日本人とジョングの通訳を務めるジョングの同僚ソンボク(ソン・カングク)の甥っ子イサム(キム・ドユン)はそのままキリスト教の助祭です。で、イサムは韓国語で2・3(だったはず?)という意味で、3という数字はキリスト教ではとても重要な意味を持つ数字です。(三位一体を表す)
・ラストで、死んだと思われていた日本人がイサムに手の平の聖痕を見せるシーンがあるんですが、これは冒頭の文言にも通じるキリストの復活を連想させますよね。
そこからのやり取りはまんま上記の『ルカによる福音書 第24章』の文言と同じです。
・そんな二人のシーンとカットバックするように同時進行する、謎の女ムミョンとジョングの会話で彼女は「鶏が三回鳴く前に家に入ればお前の家族は死ぬ」とジョングに忠告するわけですが、これはイエスがペトロに「鶏が鳴く前に、おまえは三回私のことを知らないと言うだろう」っていう予言のエピソードがモチーフみたいです。
正直僕はキリスト教の事は詳しくないので、これらもウィキペディアや他の人のブログの受け売りですが、詳しい人ならもっと新約聖書との類似点が分かるかもしれません。
國村隼はキリストだった説!(; ・`д・´)ナン…ダッテ!?
つまりこの作品自体が新約聖書に準えた物語になっていて、國村隼さん演じる「謎の日本人」はイエス・キリストだったんじゃないかなーと。
もっと言うなら、日本人、祈祷師、ムミョンはキリストとその弟子たちが降臨していて、人間=ジョングや村人を試しているのかも。
ただ、それにしては國村隼さんの行動が怖すぎるし、謎の連続猟奇事件とか、幻覚キノコとか、謎の湿疹問題とか、ゾンビ作っちゃった問題とか、とにかくおどろおどろしい悪夢的な映像が次々出てくるし、ジョングのあの行動は仕方なくね? とも思うんですが、それらはあくまで村人やジョングの側からの視点なんですよね。
村人は日本人を最初から怪しい“よそ者”と思ってるし、恐ろしいあれやこれやも最初から日本人の仕業ではと疑うんですよね。
で、ジョング自身は最初、そんな偏見や疑惑には否定的なんですが、何度も噂を聞うちに徐々に日本人を怪しむようになり、娘の様子がおかしくなったことをキッカケに完全に日本人が犯人だと思い込んでしまうわけです。
画像出典元URL:http://eiga.com
キリストだってローマ人やユダヤ教の人たちから見れば最初は怪しげなヤツに見えたハズで、キリストの奇跡も悪魔の仕業に見えたんじゃないかなーと思うんですね。
そんな、イエス・キリストを迫害した人々の視点で見た新約聖書のエピソードを(多分)本作は描いているんじゃないかと。
で、現代の世界情勢に起こっている大小様々な「ディスコミュニケーション」を、韓国の田舎町というミニマムな舞台にを通して描いているんでしょう。(多分)
そう考えれば、劇中、謎の中心を「日本人」にしたことも「韓国映画で描くならそれしかない」と納得しやすいんじゃないかと思います。
村に起こっている謎の猟奇殺人の犯人探しっていうミステリーを物語の推進力に、観客を徐々に物語の核心に導いていく(というか引きずり込んでいく)手法は、「ツインピークス」を連想したりしましたねー。
もちろんこれは数ある解釈の一つで、正解ってわけではないと思うし、正解はこの作品を観た人の分だけあっていいんでしょう。
ただ、観終わったあと思わずいろんな人の解釈を聞きたく(読みたく)なる(そして語りたくなる)作品だし、そういうのを抜きにしてもこれまでのノワール系韓国映画とは一味違う、(ラストのモヤモヤも込みで)超面白い作品でした!
興味のある方は是非!
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